定年は何歳?60歳・65歳・70歳で変わる、知っておきたい定年とお金の関係

人生の一区切りを迎える年齢である「定年」。かつては55歳、その後60歳が一般的となりましたが、現在は65歳までの継続雇用が義務化されています。一方で「自分の定年の年齢はフレキシブルに決めたい」と考える人もいます。そんなニーズに応える人事制度が、「選択定年制」です。

定年は何歳?60歳・65歳・70歳で変わる、知っておきたい定年とお金の関係

定年は60歳?65歳?定年の現状

定年は60歳?65歳?定年の現状

「高年齢者雇用安定法」では、従業員の定年を60歳以上と定めています。その上で、定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、以下のいずれかの雇用確保措置を実施しなければなりません。

①定年を65歳まで引き上げること
②65歳までの継続雇用制度を導入すること
③定年制度を廃止すること


②の継続雇用制度については、希望者全員を対象とする必要があります。継続雇用先は、自社だけではなく、グループ会社とすることも認められています。

厚生労働省「令和元年 高年齢者の雇用状況」の集計結果では、調査全企業(161,378社)のうち、継続雇用制度の導入が77.9%とほぼ8割を占め、定年の引上げは19.4%、定年制度の廃止は2.7%にとどまっているのが現状です。

【参考】厚生労働省「令和元年 高年齢者の雇用状況」詳しくはこちら

自分で定年が選べる「選択定年制度」

自分で定年が選べる「選択定年制度」

選択定年制度とは?

このように定年の引き上げや継続雇用制度が行われている一方で、企業の中には選択定年制度を導入しているところがあります。これは、定年をいつに設定するのか、その時期を事業主と労働者で事前に話し合って決定する人事制度をいいます。60歳を過ぎた時点に設定するケースもありますが、早期退職制度のように60歳前に設定するケースもあります。

選択定年制のメリット・デメリット

選択定年制度のメリット・デメリットを、利用する従業員の立場で述べてみます。
60歳を過ぎた時点に設定できる場合、メリットは、1年ごとの契約更新を行う必要がないため、定年まで安心して働くことができるということです。健康保険の給付や福利厚生制度も従来通り適用されます。

デメリットは、60歳前に定年を設定してその後働かない場合、生涯収入が減少します。
60歳を過ぎた時点で設定する場合でも、60歳以降の賃金が低下することがある点に注意してください。また、選択した定年時に退職一時金が支給されるケースでは、例えば、「60歳時に退職一時金を活用して住宅ローンを繰り上げ返済したい」など、60歳時にまとまった資金が必要でも、それに対応できない可能性があります。

定年の年齢が変わるともらえるお金も変わる

定年の年齢が変わるともらえるお金も変わる

導入されている選択定年制度の内容により、各種受給できる金額にメリット・デメリットもあります。それぞれについてしっかり確認しておきましょう。

退職金

選択定年制度の設計により、受け取れる金額が異なります。60歳以降の勤続期間を退職金の算定に含める場合は、60歳以降の定年を延長するほど支給額が増えることが期待できます。60歳よりも前に定年を設定する場合には、退職一時金を加算する優遇制度がセットとなるケースがあります(早期退職優遇制度)。

在職老齢年金

60歳から64歳の期間で特別支給の老齢厚生年金を受給する人は、注意が必要です。特別支給の老齢厚生年金の月額と、その時点の給与収入月額(直近1年間の賞与を12で割った額を含む)が「一定額」を超える場合に、特別支給の老齢厚生年金がカットされます。
現行はこの「一定額」は28万円ですが、2022年4月からは47万円に引き上げられ、現行よりもカットされにくくなります。

65歳からの老齢厚生年金

選択定年制度で60歳以降も働く場合、厚生年金の被保険者期間が延びることになります。したがって、65歳からの老齢厚生年金の受給額がアップすることが期待できます。
60歳よりも前に定年を設定しその後就労しない場合は、50歳時以降のねんきん定期便に記載されている金額を下回ることになるので、注意が必要です。

雇用保険の基本手当

選択定年制度による退職が自己都合退職となる制度であれば、7日+最長3ヵ月の不支給期間がある点に注意しましょう。また、基本手当の日額は、離職の直前6ヵ月の間の給与で決まります。したがって、60歳より後の選択定年制度の場合、60歳で給与が大幅に下落すると、基本手当も少なくなる点にも注意してください。

高年齢雇用継続基本給付金

60歳よりも後に定年を設定するケースで、60歳時点の賃金と比較して、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満となった場合に、60歳以降の賃金の最大15%が支払われる給付です。60歳時点の賃金の減少が25%を超えなければ支払われません。

まとめ

まとめ

2021年4月1日に「改正高年齢者雇用安定法」が施行されます。事業主が65歳から70歳までの高年齢従業員の就業機会を確保するため、70歳までの定年引上げ、70歳までの継続雇用制度・再就職支援制度の導入、定年の廃止のほか、高年齢者が起業することを支援して業務委託契約を締結する制度の導入や、事業主が実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入が、努力義務となるものです。

このような改正のもとで、今後の選択定年制度も変化することになるでしょう。自らのライフプランにもとづくキャリアプランの設計がより多様化していくことになりそうです。

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