住民税に要注意!定年退職後にかかる税金まとめ
定年退職を迎えた後にはホッと一息、といきたいところですが実は定年退職後に考えなければいけない税金があります。「これから年金生活だから大丈夫」と思っていると思わぬ落とし穴があるので、ぜひ定年退職後の税金について知っておきましょう。また、定年退職時にもらえる退職金の税金についても解説します。

定年退職後は特に住民税の時期に要注意!

定年退職後の税金の中でも、住民税には特に注意が必要です。以下のふたつのポイントをよく理解しておきましょう。
ひとつ目のポイントは、退職金から1年分の住民税のうち、未納分が引かれるということです。住民税は6月~翌年5月という括りで納入します。退社する場合は、翌年5月までの残りの住民税は、給与もしくは退職金から引かれます。たとえば、10月に退社するなら11月~来年5月まで、2月に退社するなら3月~5月までの住民税が引かれるといったイメージです。つまり、時期によっては退職金から住民税が多く引かれてしまうことがあるのです。
ふたつ目のポイントは、住民税は去年の所得を基に計算されるということです。つまり、退社した翌年は、給与などの収入がなくても、働いていた昨年の所得を基に計算された住民税を納付しなければならないのです。このため、退職後1年間は住民税の負担が重くなりがちです。住民税の仕組みを理解し、あらかじめ住民税として納付するためのお金を用意しておくことが大切だといえます。
また、退職後は自分で住民税を納付しなければなりません。一般に、住民税の納付方法には一括納付と分割納付が選べます。一括納付の場合は6月30日まで、分割納付の場合は6月30日、8月31日、10月31日、翌年1月31日の4回に分けての納付です。
その他の定年退職後にかかる税金まとめ

ここからは、定年退職後にかかる税金を項目別に解説します。
所得税
再就職などして所得がある場合は、もちろん所得税を支払わなければなりません。また、年金も雑所得と見なされるため、年金額が一定ラインを超えると所得税を払わなければなりません。この一定ラインとは、控除を受けられる金額のことを指します。控除額は年齢によって異なり、以下のように定められています。
年齢別の年金控除額(令和2年分以降)
年齢 | 控除の内訳 | 合計控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | ・公的年金控除60万円 ・基礎控除48万円 | 108万円 |
65歳以上 | ・公的年金控除110万円 ・基礎控除48万円 | 158万円 |
【参考】国税庁「基礎控除」詳しくはこちら
【参考】国税庁「公的年金等の課税関係」詳しくはこちら
つまり65歳以上で年金受給額が158万円以下、もしくは65歳未満で受給額が108万円以下であれば課税されることはありません。年金に所得税がかかる場合、控除額を引いた所得から、5.105%が所得税、さらにその2.1%が復興特別所得税として差し引かれます。基本的に所得税は年金から天引きされる形で徴収されます。
住民税
上記で述べた通り、住民税は「前年度の収入」にかかるため、退職後翌年は負担が大きくなります。また、所得税と同じく、年金にも住民税がかかります。基本的には所得の10%ですが、各自治体の諸事情により、財政上必要だと認められた場合に限り変更することができます。そのため住民税は自治体によって多少異なります。
固定資産税
土地や住居などの不動産を持っている場合、固定資産税がかかります。戸建てでおよそ10~12万円といわれていますが、評価額によって異なります。
退職金にも税金はかかるが特別な控除がある

退職したときに受け取る退職金。実はこの退職金にも、給与と同様に所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。退職金の額によっては提示された金額をそのまま受け取る事が出来ません。
ただし一般的に、退職金は一度にもらう額が大きく、そのまま税金を計算すると多額の税金を負担しなければならなくなります。そこで退職金は給与とは違った特別な計算方法を用いて、税金を計算します。
例えば、退職所得控除と呼ばれる特別な控除が受けられる、控除を引いた金額の半分が課税の対象になるといった計算方法です。これにより、退職金にかかる税金の負担が、ぐっと抑えられています。ただし、この退職所得控除額は、勤続年数や年収によって異なるため注意が必要です。
退職金の源泉徴収の計算方法

ここまでは退職金には税金がかかるという話をしてきましたが、それではいったいどのくらいの税金が退職金から差し引かれるのでしょうか?具体的な金額の目安と計算方法を紹介します。
まず、受け取った退職金から控除額を引いて、さらに1/2をかけ、課税対象となる「課税退職所得金額」を算出します。
【計算式①】(退職金-退職所得控除額)×1/2
※1,000円未満切り捨て
退職所得控除額は、国税庁が発表している表によって算出できます。勤続年数によって細かく定められているため、以下のURLから確認してみてください。
【参考】国税庁「源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和2年分)」 詳しくはこちら
計算式①で算出した課税退職所得金額に、所得金額によって定められている税率をかけ、さらに控除額を引きます。これに102.1%をかけた金額が、徴収される所得税・復興特別所得税の金額です。
【計算式②】(課税退職所得金額×税率-控除額)×102.1%
税率・控除額は、上記「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和2年分)」をご確認ください。
さらに住民税は、所得税の計算の際に算出した課税退職所得金額に10%(都道府県税率4%+市町村税率6%)をかけると算出できます。ただし、税率は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の住民税を確認してみてください。
<具体的な金額の目安>
ここでは、【A:退職金1,000万円・勤続年数20年】と【B:退職金2,000万円・勤続年数30年】を例に、具体的な税金額と、手取り額(一般退職手当の場合)をご紹介します。
源泉徴収額と手取り額の目安
例 | A | B |
---|---|---|
所得税(復興特別所得税含む) | 51,050円 | 155,702円 |
住民税 | 10万円 | 25万円 |
税金の合計額 | 15万1,050円 | 40万5,702円 |
手取り額 | 984万8,950円 | 1,959万4,298円 |
「退職所得の受給に関する申告書」について
退職金にかかる税金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくことで、自動的に適切な課税がなされます。そのため、原則確定申告をする必要はありません。ただし、退職金を受け取るまでに上記の書類を提出しなかった場合、一律で20.42%の源泉徴収を受けるため、確定申告をしてその徴収額に過不足がないかを確認しなければなりません。
まとめ
老後の生活は収入が減少する方が多くいると思います。収入が減った方は支出をコントロールし、なるべく抑えたいものです。税金は退職金や年金など、収入がある以上どうしてもかかってきてしまうものなので、予めどれくらいの支出になるか計算し、必要額を用意しておきましょう。その上で家計のやりくりを目指せるとよいですね。
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