財形貯蓄は資産形成の王道!メリットや注意点、そのほかの制度まで解説

財形貯蓄制度は、会社や団体に勤務する人(勤労者)を対象とした福利厚生制度です。この記事では、財形貯蓄制度についてメリットや注意点、そのほかの制度について解説します。マイホーム取得や老後資金、結婚・教育等の資金の準備にむけて、毎月少額でも資産形成できる財形貯蓄制度を活用しましょう。

財形貯蓄は資産形成の王道!メリットや注意点、そのほかの制度まで解説

財形貯蓄制度とは「勤労者財産形成促進制度」のこと

財形貯蓄制度とは「勤労者財産形成促進制度」のこと

財形貯蓄制度とは、勤労者の計画的な財産形成を促進することにより、勤労者の生活を安定させ、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としたものです。1971年に施行され制定された勤労者財産形成促進法に基づいており、現在の厚生労働省が所管で国と企業が力を合わせて勤労者の自助努力を支援する制度です。

財形貯蓄を活用するには、勤務先企業にこの制度が導入されていなければなりません。勤務先企業が従業員の給与から積立金を天引きする形で、従業員ごとの財形貯蓄の口座に積み立てます。月額1,000円からの積立が可能なので、気軽に始めることができます。

積立をおこなう金融商品は、勤務企業先が契約した金融機関が取り扱う財形貯蓄向けの金融商品です。例えば銀行なら定期預金等の預金、保険会社(生命保険・損害保険)なら財形積立保険、証券会社なら公社債投資信託等でしょう。

財形貯蓄制度は3種類

財形貯蓄制度は3種類

財形貯蓄には、一般財形・住宅財形・年金財形の3種類があります。

(1)一般財形貯蓄(一般財形)

一般財形貯蓄(一般財形)は、積み立てた資金の使い道が自由な財形貯蓄です。原則として1年間積み立てた後は、自由に払い出しができます。資金の使い道が決まっていない人が、手始めに資産形成するのに適しています。
例えば、マイカーの購入、旅行費用、結婚式の費用、子供の教育資金等を計画的に準備するための手段としても用できます。ただし、一般的な預金と同様に、利子に対して20.315%(復興特別所得税を含む国税15.315%、地方税5%)が課税されます。

(2)財形住宅貯蓄(住宅財形)

財形住宅貯蓄(住宅財形)は、住宅を購入するための頭金やリフォームのための資金づくりを目的とした財形貯蓄制度です。加入資格があり、55歳未満の国内勤務者が対象です。
後述の年金財形と合わせて元本と利子の合計550万円までは、利子に対して課税されません。

(3)財形年金貯蓄(年金財形)

財形年金貯蓄(年金財形)は、老後の資産づくりを目的とした財形貯蓄制度です。加入資格は、55歳未満の国内勤務者です。
住宅財形と合わせて元本と利子の合計550万円までは、利子に対しては課税されません。

また、財形積立保険の場合は、払込金額385万円までに発生した運用収益は非課税です。老後の年金を非課税で受け取ることができます。

財形貯蓄7つのメリット

財形貯蓄7つのメリット

財形貯蓄には以下のような主に7つのメリットがあります。

①資産形成の王道「給与天引き」

資産形成において運用収益はもちろん重要ですが、習慣化することも非常に重要です。財形貯蓄は給与から天引きして積み立てるので、資産形成を習慣化することができます。

一方で、積立額はボーナス支給月だけ増額したり、毎月の積立額を変更したりとフレキシブルに設定することができます。

②住宅財形と年金財形は利子が非課税になる

現在の日本では低金利の状況が続いているので、メリットを実感しにくいのですが、利子に課税されることなく元本に組み入れられますので、効率的な仕組みといえます。
ただし、非課税限度額を超えると、その後に発生した利子等については、非課税限度額を超えた元利合計額全体から発生する利子が課税扱いになるので、注意してください。

③奨励金の制度が導入されている会社もある

毎回の積立金額に応じて「奨励金」を付加している会社もあります。結果的に高い金利が付くことになり、低金利の現在ではありがたい制度といえます。ただし、この奨励金は、給与として所得税の課税対象となる点に注意してください。

④財形住宅融資が使える

一般財形、住宅財形、年金財形のいずれの場合も、要件を満たせば財形住宅融資と呼ばれる住宅ローンを活用できます。金利は借入時のものが5年間固定され、その後5年ごとに利率が見直されるタイプです。

⑤中断や移動ができる

育児休業を取得する等で積立をおこなうことが難しい場合は、中断することも可能です。ただし、住宅財形と年金財形では中断期間が2年を超えると利子が課税扱いとなりますので、注意が必要です。産前産後休業、育児休業、海外転勤の場合は、2年を超えても一定の救済措置があります。

転職先に財形貯蓄の制度があれば、それまで積み立ててきた金額を移換することもできます。

⑥万が一の災害等で引き出す場合にも非課税となる

住宅財形・年金財形から、災害、失業、疾病等の理由で引き出しをおこなう場合でも、利子が非課税となります。

⑦金融機関が破たんした場合には保護される

財形貯蓄制度は、金融機関が経営破たんした場合でも、勤労者の資産を保護する仕組みがあります。
預貯金なら預金保険制度、保険商品なら生命保険契約者保護機構・損害保険契約者保護機構、証券会社の投資信託なら日本投資者保護基金等があります。財形貯蓄制度でも、資産は守られている点は安心です。

財形貯蓄5つの注意点

財形貯蓄5つの注意点

メリットだけでなく、財形貯蓄の注意点も確認しておきましょう。

①現状は金利が低い

現在の経済情勢では、金利が低く利子等の運用収益は望めません。奨励金によって上がる金利に期待するか、金融商品としての安全性を享受するくらいに考えておきましょう。

②現金化するには時間がかかる

財形貯蓄を払い出したい場合、申請書類を提出した翌月の25日に振り込まれる等、現金化には一定の時間がかかります。現金化したい場合は、スケジュールを確認しておきましょう。

③目的外の払い出しにはペナルティがある

住宅財形や年金財形を本来の目的(住宅購入や年金)以外で払い出した場合、5年間さかのぼって利子に課税される等のペナルティがあります。目的のために払い戻したことが分かる書類等が必要になります。

④住宅財形の払い出しには必要書類が多くなる

住宅財形を払い出すには、建設・購入・リフォームする住宅に要件があり、それを示す書類が必要になります。
工事請負契約書・登記事項証明書・住民票の写し等、準備する手間や費用がかかる点には注意しましょう。

⑤退職したり役員になると積立ができなくなる

退職したり、役員に昇格した場合は、財形貯蓄をおこなうことができなくなります。財形貯蓄制度は勤労者を対象としているため、退職して企業に勤めていない場合は積立を継続できません。役員も勤労者ではないので、財形貯蓄制度を活用できなくなります。

財形貯蓄に向いている人・向いていない人

財形貯蓄に向いている人・向いていない人

財形貯蓄は、資産形成を習慣化したい人や、安全確実にコツコツと積み立てていきたい人、勤務先で奨励金の制度が導入されている人等に向いた制度です。また、これから住宅を購入する予定があり、財形住宅融資を活用したい場合は、財形貯蓄の積立額を増やすことにより、融資額を増やすことが可能になります。
一方、株式投資信託等のように、リスクをとってリターンを狙える金融商品を計画的に活用できる人は、財形貯蓄だけにこだわらず、さまざまな選択肢を探ってもよいでしょう。

財形給付金制度

財形給付金制度は、事業主が財形貯蓄をおこなっている勤労者一人につき最高10万円までを拠出し、7年経過ごとに拠出金の元利合計額を勤労者に支給する制度です。毎年、労使の合意によりおこなわれるため従業員の資産形成のペースをアップする効果が期待できます。

財形基金制度

財形基金制度は、財形給付金制度と同様に、事業主が財形貯蓄をおこなっている勤労者一人につき最高10万円までを拠出します。財形給付金制度との違いは、財形基金制度は「財形基金」を通じて事業主が拠出した資金の運用をおこなっている点です。
なお、財形給付金制度、財形基金制度ともに、従業員が受け取る給付金については一時所得となり、50万円までは課税されません。

財形持家転貸融資制度

財形持家転貸融資制度は、財形貯蓄の残高が50万円以上ある勤労者が活用できる住宅ローンです。財形貯蓄残高の10倍を上限(最高4,000万円)に、実際に要する費用の90%相当額まで借入することができます。金利は5年ごとに見直すタイプです。

なお、この融資を利用するためには、事業主が勤労者に対して5年以上、年間3万円以上を利子補給金または住宅手当として支給する負担軽減措置がおこなわれていることが要件となっています。

事務代行制度

事務代行制度は、厚生労働省が定めた事務代行団体が事務を代行して中小企業の勤労者の財産形成を支援する制度です。
中小企業の事業主にとって、財形貯蓄制度にかかる事務負担を軽減することができるありがたい制度でしょう。

まとめ

財形貯蓄制度は、勤務先企業が従業員の給与から積立金を天引きする形で、従業員ごとの財形貯蓄の口座に積み立てます。財形貯蓄制度の種類によって積立金の使用用途は違いますが、資産形成に役立つ制度です。

昨今の低金利で財形貯蓄は金利の面ではメリットは少なくなっています。しかし給与天引きによる積立で、資産形成を毎月の習慣にすることができます。
勤労者の資産形成を支援する制度をしっかりとチェックして、今後のライフイベントにかかる資金に備えてはいかがでしょうか。

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