【FP解説】先取り貯蓄とは?財形貯蓄やNISAを活用して資産形成しよう

「節約しているつもりなのに、なぜかお金が貯まらない」「ついついお金を使いすぎて、いつも家計がピンチ!」という方は多いもの。そんな方におすすめしたい貯蓄方法が、「先取り貯蓄」です。今回は先取り貯蓄のメリットや、性格別におすすめ先取り貯蓄の方法、成功するための3つのポイントをご紹介します。

【FP解説】先取り貯蓄とは?財形貯蓄やNISAを活用して資産形成しよう

先取り貯蓄とは?向いているのはどんな人?

先取り貯蓄とは?向いているのはどんな人?

先取り貯蓄とは、その名の通り、毎月の給与から貯蓄する分を先に取り分けて貯蓄してしまう方法です。つまり、毎月の給与をもらったら、あらかじめ決めた額をすぐに貯蓄に回して、残ったお金で生活する方法です。給与が振り込まれたその日に、別の口座に先取り貯金分を移してしまえば、簡単に使う事ができなくなるので、まとまったお金を貯める事ができるようになります。
貯蓄用の口座を作るだけで始める事ができ、特に高度なテクニックや面倒な手続きも必要ないので、貯蓄や家計管理が苦手な人、ずぼらで面倒くさがりの人にぴったりの貯蓄方法と言えるでしょう。

「老後資金は少なくとも、2,000~3,000万円は必要」ともいわれる時代。仮に退職金を2,000万円受給できるとしても60歳の定年までに3,000万円貯めるには、40歳から65歳までに毎月少なくとも3.3万円の貯蓄が必要です。

これまで貯蓄ができていないという人は、1日も早く先取り貯蓄を始め、貯蓄の習慣を作る事から始めましょう。

性格別おすすめ先取り貯蓄法

性格別おすすめ先取り貯蓄法

1.堅実派におすすめ「財形貯蓄」

何ごとも焦らず堅実に取り組みたい性格の方には、財形貯蓄がおすすめ。財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄制度)は、企業が従業員の給与から毎月一定額を天引きし、提携先の金融機関の口座で自動的に積立貯金をしてくれる仕組みです。最初に貯蓄額を設定してしまえば、あとは毎月の給与やボーナスから自動的にその額が引かれていくので、本人が何もしなくても自然にお金が貯まっていきます。あくまでも貯蓄なので、特に投資的な効果は期待できませんが、ともかくコツコツお金を貯めたい人にはぴったりの方法です。財形はすべての企業で導入されているわけではありませんが、導入されている場合は、利用を検討してみるとよいでしょう。
なお、財形貯蓄には「一般財形貯蓄」「住宅財形貯蓄」「年金財形貯蓄」があり、それぞれ次のような違いがあります。特に目的を決めずに長期的に貯めたいのであれば、預入金額550万円までの利息が非課税になる「年金財形貯蓄」がおすすめです。

財形貯蓄の種類と概要

 項目  一般財形貯蓄 住宅財形貯蓄 年金財形貯蓄
目的 自由 住宅取得またはリフォーム 老後資金
利用可能年齢 制限なし 満55歳以下 満55歳以下
積立期間 3年以上 5年以上(※注1) 5年以上
利息への課税 20.315%が課税される 550万円までは非課税 550万円までは非課税

※注1:途中で住宅を購入する場合は短縮可能

2.ちゃっかりさんにおすすめ「社内預金」

社内預金は財形貯蓄と同じく、勤務先の企業が給与やボーナスから一定額を天引き・貯蓄してくれる福利厚生サービスです。財形貯蓄との違いは、天引きしたお金の預金先と利息。財形貯蓄の場合は天引きされたお金が外部の金融機関の口座に保管されるため、利息も通常の金融機関の預金と同じです。

一方、社内預金の場合は天引きしたお金を外部の金融機関に預けるのではなく、会社が管理する事になります。社内預金については、厚生労働省令で定める利率(下限利率=現在は0.5%)以上の利率を設定しなくてはならない事が法律で定められているため、一般の金融機関に預金する場合と比べて、かなり好条件で預金ができる事になります。着実に貯蓄しながらも、利息でお得にお金を増やしたいというちゃっかりさんには、ぴったりの先取り貯蓄法だといえるでしょう。
注意点としては、社内預金は会社の業績悪化時に廃止される可能性があるほか、会社倒産時には払い戻されなくなるというリスクがあるという事です。そのようなリスクも考慮したうえで、もし勤務先の企業に社内預金制度がある場合は、選択肢の1つとして考えるとよいでしょう。

3.勉強好きにおすすめ「つみたてNISA」

単に貯蓄するだけでなく資産運用もしながら効率よくお金を増やしたい人、そのためには金融機関の勉強会に参加したり自分で投資の勉強をしたりするのも厭わないという人には、「つみたてNISA」の活用がおすすめです。
「つみたてNISA」とは、長期の積立・分散投資による資産形成を後押しするために創設された税制優遇制度の事。証券会社や銀行で専用口座を開設し、月額1,000円から3万3000円(年間40万円)を上限に、自身で指定した金額を自動的に引き落としで積み立て、その資金で投資信託が購入できる仕組みです。自動引き落としの日を給与振込日の翌日に設定しておけば、お金を使ってしまう前にNISAに積立ができるので、まさに「先取り貯蓄」と同じ感覚で「先取り投資」が可能に。しかも、最長20年間は投資から得た利益が非課税になるというメリットもあります。

ただし、投資信託はあくまでも運用商品なので、当然、元本が目減りする等のリスクがあります。ある程度は自分で調べたり、勉強したりする必要があるので、ものぐさなタイプの人には向いていません。

つみたてNISAを含めた現行のNISA制度は、2024年から新NISAへと生まれ変わります。新NISAでは投資枠が拡大し、非課税期間も無制限になるなど、より使いやすい制度になります。
投資初心者の方でも非課税枠を活用しながら長期の積立・分散投資ができるので、資産運用や投資の勉強をしながら、先取り投資を行いたい方はNISA制度の活用をおすすめします。

先取り貯蓄に成功するための3つのポイント

先取り貯蓄に成功するための3つのポイント

自分に適した先取り貯蓄を始めたものの、「お金が貯まるまで、続けられるかな?」と不安になる人もいるかもしれません。ここでは、先取り貯蓄に成功するためのポイントを3つご紹介しましょう。

ポイント1:まずは家計を見直す

先取り貯蓄を始めても、毎月の貯蓄金額に無理があると続けられません。まずは、毎月どのくらいであれば無理なく先取り貯蓄に回せるのかを割り出しましょう。その際に必ず行いたいのが、家計の見直しです。家計簿をつける等して無駄な支出を見極め、その分を先取り貯蓄に回しましょう。無駄遣いではない必要経費まで無理に切り詰めて貯蓄に回してしまうと、結局は長続きしません。

ポイント2:明確に目標設定し、家族で共有する

先取り貯蓄を始めると、これまでのように自由に使えるお金が少なくなるため、例えば外食や旅行を控えたり、買いたいものを我慢しなければならない場面が出てきます。このストレスを乗り切るために欠かせないのが、明確な目標をもつ事と家族の協力です。「5年後にマイホームを買う」「定年記念に世界一周旅行に行く」といった明確な目標をもち、家族で一致団結して取り組めばモチベーションを維持できます。先取り貯蓄を始める前に家族会議を開き、先取り貯蓄の目標とその達成期限を家族で共有しておくようにしましょう。

ポイント3:定期的に方法を見直す

最初に決めた先取り貯蓄の方法が、必ずしもベストだとは限りません。経済情勢の変化で預金の金利が下がったり、勤務先の会社の業績が悪くなって社内預金制度が廃止される可能性も十分に考えられます。常にアンテナを張って情報収集につとめ、必要があれば、より有利な方法に切り替えられる体制を整えておきましょう。

先取り貯蓄+αを習慣に

先取り貯蓄+αを習慣に

先取り貯蓄を続けている限りは、ほぼ確実にお金を貯める事ができます。例えば月に5万円を先取り貯蓄にまわせば、1年に60万円、2年で120万円と、着実に貯蓄額が増えていく事になります。これはこれで嬉しい事ですが、それだけで満足してしまうのは、もったいない事。先取り貯金+αで次の事に取り組めば、より効率的にお金を貯められるはずです。

1.常に家計を見直す

必ず家計簿をつけて、月々の収支をしっかり確認し、無駄があれば見直しを。ポイント還元やクーポン等お得なサービスを活用して上手に節約も楽しみましょう。

2.保険を見直す

年齢やライフステージの変化に応じて必要な保険の内容は変化します。必要のない保障のために掛金が高くなっている可能性も十分考えられます。中立的な立場のファイナンシャル・プランナーに依頼する等して、一度、保険の見直しをしてみましょう。

3.先取り貯蓄以外の貯蓄もする

先取り貯蓄をしているからといって、手元に残った給与やボーナスを全部使い切ってしまうのは問題です。余剰金も無駄遣いせず、別途貯金するように心がけてください。

4.収入を増やす努力も怠らない

当然の事ですが、支出を減らすだけでなく収入を増やす努力も必要です。最近は副業を解禁する企業も増えているので、可能なら副業をする等して収入増を図りましょう。増えた収入は貯蓄に回すのもよいですが、一部を頑張る自分や家族へのご褒美に使ってもよいでしょう。「また、がんばろう」という気持ちが芽生え、モチベーションの維持に役立ちます。

【参考】厚生労働省HP「財形貯蓄制度」詳しくはこちら
【参考】金融庁HP「つみたてNISAの概要」詳しくはこちら
【参考】三菱UFJ信託銀行HP「つみたてNISA」 詳しくはこちら

まとめ

まとめ

先取り貯蓄は始めるのが早ければ早いほど、目標達成が早くなります。ただし、貯蓄の目的も目標額もライフステージに応じて変化するので、1つの方法に固執する必要はありません。今のライフステージと収入に見合った先取り貯蓄の方法や額について、一度専門家であるファイナンシャル・プランナーや金融機関の担当者に相談してみる事をおすすめします。

ご留意事項
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