退職金はNISAで運用しよう!新NISA制度やおすすめの運用方法も紹介

定年を迎えて退職金を受け取ったものの、預金口座で眠ったままになっている方は「NISA」を利用して運用してみてはいかがでしょうか。NISAであれば、一定金額までの金融商品への投資で得られた運用益に税金がかからなくなります。本記事では、NISAの制度内容や退職金の運用に利用するメリット等を解説します。

退職金はNISAで運用しよう!新NISA制度やおすすめの運用方法も紹介

退職金をNISAで運用しても大丈夫!

退職金をNISAで運用しても大丈夫!

勤め先から支払われた退職金は、セカンドライフを送るうえで貴重な資金源となります。人生100年ともいわれる時代においては、受け取った退職金を単に取り崩して生活をするのではなく、運用をして増やし、資産寿命を延ばすことも重要です。

投資初心者の方は、運用と聞くと大暴落して失敗したら......と思う方もいるでしょう。しかし、2023年6月現在、日本では低金利が続いているため、退職金を預金口座に入れっぱなしにしていても資産はほとんど増えていきません。そこで活用したいのが「NISA」です。

NISAであれば、一定金額の範囲内で投資した金融商品での運用益が非課税となります。また、2024年1月からは新しいNISAの開始が予定されており、より使い勝手のよい制度に改正される予定です。
ここでは、NISAの基本的な仕組みや新しいNISAの制度内容をご紹介します。

NISAとは

NISA(少額投資非課税制度)とは、毎年一定金額までの新規投資で得た利益が非課税になる制度のことです。金融商品を運用して得た利益には、原則として20.315%の税金がかかります。例えば、株式に投資をして受け取った配当金や、売却時に発生した利益は課税の対象です。

しかし、株式をNISA口座で保有していたのであれば、一定期間は配当金や売却益に税金がかからないため、利益のすべてを得ることができます。
現行NISA制度には「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があります。
このうち、退職金の運用先として活用しやすいのは一般NISAとつみたてNISAであり、制度内容はそれぞれ以下の通りです。

一般NISA つみたてNISA
非課税の対象  株式や投資信託等の配当金や分配金、売却益  一定の要件を満たす投資信託への投資で得られる分配金・売却益
年間投資枠 120万円 40万円
非課税保有期間 最長5年間 最長20年
非課税保有限度額 最大600万円 最大800万円
対象年齢 18歳以上 18歳以上
口座開設期間 2023年まで 2023年まで

【参考】金融庁「新しいNISA」詳しくはこちら
【参考】金融庁「一般NISAの概要」詳しくはこちら
【参考】金融庁「つみたてNISAの概要」詳しくはこちら

一般NISAは、上場株式や投資信託、ETF(上場投資信託)等幅広い金融商品が対象です。年間投資枠は120万円であり、つみたてNISAの40万円よりも高く設定されています。
一般NISAの非課税保有期間は5年間です。例えば、一般NISA口座で株式に投資をした場合、5年間は配当金や売却益に税金がかかりません。
つみたてNISAは、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象となっています。また、非課税保有期間は20年であり、一般NISAよりも長く設定されています。

2024年からは新NISAが始まる

2024年から始まる新しいNISAの年間投資枠や非課税保有期間等の制度内容は、以下の通りです。

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【参考】金融庁「新しいNISA」詳しくはこちら
※①整理・管理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型の投資信託等は除外

新しいNISAでは、つみたてNISAは「つみたて投資枠」へ、一般NISAは「成長投資枠」へとそれぞれ役割が引き継がれます。

つみたて投資枠の年間投資枠は120万円であり、つみたてNISAの3倍に拡充されます。成長投資枠の年間投資枠は240万円であり、一般NISAの2倍です。
また、つみたて投資枠と成長投資枠は併用が可能であるため、 両者を合わせると年間で360万円まで新規投資ができます。
非課税保有期間については、つみたてNISAは20年間、一般NISAが5年間でしたが、つみたて投資枠と成長投資枠についてはどちらも無期限に延長されます。

非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1,800万円です。成長投資枠のみを利用する場合は、1,200万円となります。

新しいNISAの非課税保有限度額は、再利用が可能です。商品を売却すると、その商品を買い付けた時の価格の分だけ、翌年の非課税保有限度額が復活します。

なお、新しいNISAの開始が発表されたことで、一般NISAやつみたてNISA、ジュニアNISAで新規投資できるのは2023年末までとなりました。

退職金をNISAで運用するメリット

退職金をNISAで運用するメリット

退職金をNISAで運用するメリットは、以下の通りです。

・投資で出た利益に税金がかからない
・長期投資に向いている
・分散投資でリスクが軽減できる
・手数料の低い商品が多い
・確定申告が不要

1つずつ解説します。

投資で出た利益に税金がかからない

NISAであれば、株式や投資信託等を運用して得られた利益にかかる約20%の税金が非課税となります。貴重な老後資金である退職金を、効率よく増やすことができます。

例えば、一般NISA口座で100万円の株式に新規投資をしたとしましょう。2年後に株価が130万円となっていたため売却しました。この場合、通常であれば30万円の利益に対してかかる約6万円の税金が非課税となります。

NISAを利用することで、本来であれば税金として徴収されるはずであった利益も、手元に残すことができます。

長期投資に向いている

つみたてNISAは、長期投資を支援するための制度ということもあり、非課税保有期間が20年と長めに設定されています。また、新しいNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠のどちらも、非課税保有期間が無期限となります。
そのため、NISAは退職金で長期投資をする時に活用しやすいです。

長期投資とは、一般的には投資期間が10年以上である投資のことをいいます。長期投資であれば、運用で得た収益が元本に加えられて運用されることで、利息が利息を生んで資産が膨らんでいく「複利効果」が期待できます。
また、10年以上の運用が前提であれば、保有する金融商品の価格が一時的に下落したとしても、落ち着いて価格の上昇を待つことができるでしょう。長い時間をかけてじっくりと退職金を運用したい人は、NISAの利用をおすすめします。

分散投資でリスクが軽減できる

つみたてNISAやつみたて投資枠では、長期・分散・積立投資に適した投資信託で退職金を運用できます。投資信託は、投資家から集められた資金が1つにまとめられて、国内外の株式や債券等に分散投資される商品です。

投資によるリスクを抑えるためには、投資する銘柄や地域等を分散して投資することが重要といわれています。値動きが異なる複数の資産に分散投資をすると、1つが値下がりしてもほかのものの値動きと相殺されることで、保有資産全体の損失を抑えられるためです。

とはいえ、投資の経験者でもない限り、資金の投資対象を1つずつ選んで分散投資をするのは困難でしょう。その点、投資信託であれば、経済や金融等の知識がある運用のプロが、資金の運用先を代わりに選んでくれます。

資産運用の初心者でも、NISAを活用すると分散投資によるリスク軽減効果を得ながら退職金を運用することが可能です。

手数料の低い商品も多い

つみたてNISAの対象商品となるためには、金融庁が定める一定の要件を満たしていなければなりません。

例えば、投資家から集めた資金の投資先に株式が含まれる投資信託(公募株式投資信託)の場合、 以下のような条件を満たす投資商品がつみたてNISAの対象となります。

・販売手数料はゼロ(ノーロード)
・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定
・信託契約期間が無期限または20年以上であること
・分配頻度が毎月でないこと 等
【参考】金融庁「つみたてNISAの概要」詳しくはこちら

つみたてNISAの対象商品は、購入時に販売手数料を支払う必要がありません。投資信託を保有するあいだに支払う信託報酬は、一定水準以下となっています。
また、つみたてNISAの対象商品は2023年6月23日時点で233本です。
【参考】金融庁「つみたてNISAの対象商品」詳しくはこちら

世の中には数多くの金融商品が販売されているため、すべての手数料を比較して投資先を選ぶのは困難でしょう。つみたてNISAであれば、数ある投資信託の中から厳選された低コストの商品を選んで、退職金を運用することができます。

確定申告が不要

金融商品に投資をし、売却益や分配金を得た場合、基本的には「確定申告」をして税金を納めます。確定申告とは、1年間の所得を計算して所得税の金額を確定し、納税する手続きのことです。
NISA口座で金融商品を運用していたのであれば、売却益や分配金等にそもそも税金がかからないため、確定申告も不要です。

退職金をNISAで運用する手順

退職金をNISAで運用する手順

退職金をNISAで運用する時の手順は、以下の通りです。

1. 口座を開設する金融機関を選ぶ
2. 口座を開設する
3. 金融商品と投資(積立)金額を決める
4. 商品を購入する

順番に解説をしていきます。

1.口座を開設する金融機関を選ぶ

NISA口座は、証券会社や銀行、信託銀行等の金融機関で開設できます。まずは、NISA口座を開設する金融機関を選びましょう。

金融機関を選ぶ時は、商品のラインナップや管理画面のみやすさ、手数料等を比較します。ネット証券は手数料が安いというメリットもありますが、対面でNISAの相談をしたいのであれば、店舗数や担当者の有無等も踏まえて検討することをおすすめします。
NISA口座を開設できる金融機関は、一人につき1つのみです。また、金融機関は原則として1年に1回しか変更できないため、NISA口座の開設先は慎重に検討することが大切です。

2.口座を開設する

金融機関を選んだら、口座の開設手続きをします。
金融機関の多くは、パソコンやスマートフォン等から必要事項を入力すると、口座の開設に必要な書類が郵送されてきます。
送られてきた書類を記入し、以下の本人確認書類やマイナンバー確認書類のコピーを添付して金融機関に返送しましょう。

・本人確認書類:運転免許証・健康保険証等
・マイナンバー確認書類:個人番号カード・通知カード等

すでに証券口座を開設しており、マイナンバーも届けている金融機関でNISA口座を開設する場合、マイナンバー確認書類の提出は基本的に不要です。金融機関に書類を送付すると、何も問題がなければ数営業日でNISA口座が開設されます。

口座の開設方法や必要書類等は金融機関によって異なるため、よく確認したうえで手続きをしましょう。

3.金融商品と投資(積立)金額を決める

口座の開設ができたら、投資する商品と投資金額を決めましょう。
商品を選ぶ時は、金融機関のWebサイトにある検索機能を使って候補を絞りこむ方法があります。また、店舗の窓口や担当者に相談をして決めるのもよいでしょう。

投資金額については、運用目的や毎月の収支等をもとに決めることが大切です。投資の経験が浅いうちは、少額から投資するのも方法でしょう。商品や投資金額の判断に迷う時は、金融機関やファイナンシャル・プランナー等に相談することをおすすめします。

4.商品を購入する

商品が決まったら、注文の手続きをしましょう。注文方法は金融機関や商品等で異なりますが、基本的には投資金額等の条件を入力し、口座区分をNISAに指定します。

つみたてNISAの場合は、積立の設定が必要です。商品を選び、積み立てる金額や積立のタイミング(毎月・毎日等)を入力して、設定をしましょう。

投資信託に投資をする場合は、注文を確定する前に「目論見書」を確認する必要があります。目論見書には、商品(ファンド)の目的や投資対象、運用方法等の重要事項が記載されているため、必ず目を通しましょう。

退職金をNISAで運用する時の注意点

退職金をNISAで運用する時の注意点

退職金をNISAで運用する時は、以下の点に注意が必要です。

・リスクの高い商品に投資をしない
・一括投資をしない
・短期の変動に惑わされない
・ほかの運用方法も組み合わせる

注意点を1つずつみていきましょう。

リスクの高い商品に投資しない

退職金をより多く増やしたいからといって、高いリターンが期待できる商品に投資をするのはあまりおすすめできません。高いリターンが期待できる商品は、リスクも高いためです。

退職金をリスクの高い商品に投資した結果、資産が大幅に減ってしまい老後の生活が苦しくなってしまっては本末転倒でしょう。
定年退職をしたあとの場合、運用で発生した損失分を働いて補うことは困難です。そのため、退職金を運用する時は、リスクの高い商品は避けることがポイントです。

一括投資しない

投資で利益を得るためには、商品の価格が安い時に購入して、高い時に売却をする必要があります。とはいえ、金融商品の価格は、経済状況や金利、投資家の心理等さまざまな要素の影響で変動するため、投資するタイミングを正確に判断するのはプロでも困難です。

退職金の運用で一括投資をすると、商品の価格が高い時に購入してしまい、そのあと下落が続く「高値づかみ」をする可能性があります。

そこでおすすめしたいのが「ドルコスト平均法を用いた積立投資」です。ドルコスト平均法とは、値動きがある金融商品を、決まったタイミングで一定の金額ずつ買い続ける方法のことです。
ドルコスト平均法では、商品の価格が高い時は少なく、価格が低い時は多く購入します。そのため、金融商品の価格が変動するリスクを抑えることが可能であり、高値づかみを避けやすくなります。

退職金を堅実に運用していきたいのであれば、一括投資ではなくドルコスト平均法による積立投資をするとよいでしょう。

短期の変動に惑わされない

退職金を運用していると、保有する商品の価格が一時的に下がった時に、不安を感じてしまうかもしれません。
しかし、ドルコスト平均法による積立投資をしているのであれば、商品価格が下がった時は多くの口数を購入するよい機会でもあります。
そのため、退職金を運用する時は、一時的に商品の価格が下がっていたとしても惑わされることなく、長期的な視点で積立投資を続けることが大切です。

ほかの運用方法も組み合わせる

NISAには、元本保証がありません。退職金のほとんどをNISAで運用していると、資金が必要になった時に損失が発生しており、資金繰りに苦労する可能性があります。
そのため、退職金を運用する時はNISAだけでなく、ほかの運用方法も組み合わせるとよいでしょう。

例えば、退職金を元本保証のある銀行預金でも運用すると、資金が必要となった時に資金不足が起きるリスクを軽減することが可能です。運用目的や老後のライフプラン等をもとに運用方法を選び、それぞれの運用比率を慎重に決めて、退職金を堅実に運用することが大切です。

退職金のおすすめの運用方法

退職金のおすすめの運用方法

退職金を運用する時は、NISAを用いた金融商品への投資だけでなく、以下の商品を活用する方法があります。

・退職金向けの定期預金
・個人向け国債
・個人年金保険

退職金向けの定期預金は、通常の定期預金よりも金利が高いという特徴があります。また、元本保証付きの商品であれば、金融機関が破綻した時に1,000万円までの元本と破綻日までの利息が保護されるため、安全性は高いといえます。

個人向け国債は、国が発行する債券に投資をする方法です。個人国債に投資をすると定期的に利子を受け取ることができ、満期になると元本が返還されます。国が破綻しないかぎり、元本と利子が保証されるため、比較的安全に退職金を運用できます。

個人年金保険は、保険料を支払うと契約時に定めたタイミングになった時に年金を受け取れる商品です。年金の受取期間は、10年等の一定期間または一生涯が一般的です。

ほかにも、退職金の運用方法にはさまざまな種類があります。金融機関やファイナンシャル・プランナー等にも相談し、ご自身に合った運用方法をよく考えることが大切です。

まとめ

まとめ

長年会社員として勤めてきて、退職金を手にした方はNISA口座で運用することをおすすめします。目の前の生活費や住宅ローンの支払いにあてたり、貯蓄に回すことも重要ですが、NISAを活用して将来に向けて資産形成をすることができます。
退職金をNISA口座で運用した場合、運用益に税金がかかりません。また、NISAであれば長期投資や分散投資もしやすいため、退職金を安定的に運用しやすいでしょう。

一方で、NISAで退職金を運用するとしても、リスクの高い商品を選んだり一括投資をしたりするのは避けた方がよいでしょう。リスクの低い商品を選んで積立投資を心がけ、定期預金や個人向け国債等も組み合わせたうえで堅実に退職金を運用することが大切です。

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