積立NISAの利益は20年後どうなる?新NISA制度での試算も解説

現行のつみたてNISAの非課税期間は20年ですが、20年間運用を続けることがよいとは限りません。2024年1月から、新しいNISA制度が始まるため、現行のNISA制度と比較しながら、違いを理解していきましょう。運用し続けた場合の20年後の選択肢や新しいNISAで2つのパターンで利益の試算も参考にしてみてください。

積立NISAの利益は20年後どうなる?新NISA制度での試算も解説

現行のつみたてNISAを20年間運用すべき?

現行のつみたてNISAを20年間運用すべき?

つみたてNISAは、少額から投資信託を積み立てることができる非課税制度です。日本に住んでいる18歳※以上の人が利用でき、毎年40万円を上限として、長期間の積立・分散投資に適した一定の投資信託を購入することができます。
※口座を開設する年の1月1日現在

通常の課税口座(特定口座・一般口座)内で投資をすると、得られた利益に対して20.315%の税金がかかります。しかし、つみたてNISA内で購入した投資信託については、保有している間に得た分配金や、値上がりした後に売却して得た利益(譲渡益)に対して、購入した年から数えて20年間は税金がかかりません。

2024年以降、NISA制度は抜本的な拡充と恒常化が図られ、これにより現行のつみたてNISAは終了します。しかし、すでにつみたてNISAで保有している商品を売却する必要はなく、20年間はそのまま非課税で運用を続けることができます。もちろん、任意のタイミングで売却をすることも可能ですが、引き続き運用を続けることで、時間を味方につけながら資産を増やしていくことができるでしょう。

現行のつみたてNISAの新規買い付けは2023年末まで

現行のつみたてNISAの新規買い付けは2023年末まで

新しいNISA制度へ移行することに伴い、現行のつみたてNISA制度は終了し、新規買い付けはできなくなります。2023年末が現行のつみたてNISAの最終の買い付けになるので注意しましょう。今後もNISA制度を活用し、非課税枠で投資を行いたい場合は、新しいNISA制度の枠組みにそって新たに銘柄の買い付けを進めていくことになります。

新しいNISAとは?

2024年1月からは新しいNISA制度が導入される予定です。新しいNISAのポイントを確認しましょう。

・非課税で保有できる期間に期限がなくなり、無期限で運用できる
・目的別に「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを活用でき、併用も可能
・年間投資枠は360万円まで(つみたて投資枠:120万円、成長投資枠:240万円)
・非課税で保有できるのは最大1,800万円(成長投資枠は最大1,200万円)
・売却した場合は翌年に投資枠が復活し、再利用可能
・NISA制度実施期間は恒常化

まず、非課税で保有できる期間が無期限になりました。現行NISAでは、一般NISAで5年・つみたてNISAで20年と期限付きであったのに対し、無期限になったことで投資の幅が広がります。また、一般NISAとつみたてNISAの併用が出来ない現行制度に対し、新しいNISAでは併用が可能になりました(一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」と名称が変わっています)。

年間の投資枠の上限は、現行制度と比較して成長投資枠は2倍の240万円、つみたて投資枠は3倍の120万円と大幅に拡大されました。生涯の非課税投資枠が新設されましたが、売却した場合には取得価格分の枠が復活し、再利用できるようになります。

NISA制度が恒常化されることも、今後より長期的な目線で投資戦略をすすめられるメリットになるでしょう。

【参考】金融庁「新しいNISA」詳しくはこちら

現行NISAと新しいNISAの併用はできる?

現行NISAを活用していた場合も、新しいNISA制度と併用して運用を続けることができます。現行NISAは2023年末で終了しますが、保有している商品を売却する必要はありません。それぞれの最長の非課税保有期間(一般NISA:5年、つみたてNISA:20年)が終了するまでは、非課税での運用メリットを享受してもよいでしょう。

現行のつみたてNISAを20年運用したあと、どうする?

現行のつみたてNISAを20年運用したあと、どうする?

では、現行のつみたてNISAの非課税期間の終了後はどうしたらよいのでしょうか。 

非課税期間が終了した後は、新しいNISA制度に運用資金を移すこと(ロールオーバー)はできないため、選択肢は次の2つとなります。

・売却して現金化する
・課税口座(一般口座・特定口座)に払い出しをして運用を続ける

出典 

注意:現金を利用する予定があれば、売却することも可能ですし、利用する予定がない場合は、課税口座に移しそのまま運用を続けることも可能です。

売却して現金化する

非課税期間の20年以内であれば、売却して現金化しても投資から出た利益に税金がかかりません。課税口座で運用した場合と比較して、より多くの現金を手元に残すことができます。

20年間必ず運用しなくてはならないわけではないので、資金が必要になるタイミングや、自分が目標としていた金額に達した場合等で現金化を検討してもよいでしょう。

課税口座に払い出す

課税口座とは、投資から出た利益に対して税金がかかる口座です。NISA口座から課税口座へ資産を移した場合は、「その時点での評価額」で購入したものとみなされ、そのまま運用を続けることになります。これまでの運用益部分には課税されず、払い出し後の運用益部分だけが課税対象となります。

注意が必要なのは、課税口座へ払い出す時点で商品に損失が出ている場合です。

つみたてNISAで合計120万円の投資をしたと仮定しましょう。20年後、評価額が20万円減の100万円となった状態で課税口座に払い出しをしたとします。この場合、払い出しをした時点の100万円で購入したとみなされます。
その後の運用で評価額が120万円まで回復し、積み立てた元金と同額になったとしても、20万円は運用益とみなされ課税されてしまいます。損失が出ている場合はその点を理解した上で、運用を続けるかどうか判断をしましょう。

現行のつみたてNISAが20年後に大暴落していたらどうする?

現行のつみたてNISAが20年後に大暴落していたらどうする?

20年後の市場がどうなっているのかは、誰も確実には予想をすることができません。非課税期間ギリギリまで運用を続けていたとしても、売却をしようとしたタイミングで大きく元本割れをおこしている可能性も考えられます。

投資から出る利益を非課税で受け取りたい場合は、市場の動きにアンテナを張っておくことが大事です。非課税期間が終了する5年ほど前から、保有している商品の過去のデータや将来の値動きを想定して売却のタイミングを考えていきます。場合によっては、早めに売却して現金化することも戦略の1つです。もちろん、非課税期間終了まで保有を続け、その時期に市場が下落している場合は課税口座へ移すことも可能です。

なるべく損失を出さないためにも、投資をスタートする際には、目標とする金額や目的を決めておきましょう。ゴールを明確に設定することで、売却のタイミングを逃さずに投資を成功させることができます。

新しいNISAのつみたて投資枠で運用した20年間後を試算

新しいNISAのつみたて投資枠で運用した20年間後を試算

では、新しいNISAのつみたて投資枠を活用して20年間積立を続けた場合をシミュレーションしてみましょう。新しいNISA制度では、非課税期間に20年の制限はないので、積立のゴール年数はご自身で設定することができます。

今回は、2つのパターンで試算しました。

20年間同じ金額を買い付ける場合

まずは、毎年90万円(毎月75,000円)を20年間積み立てた場合をみてみましょう。その場合、投資元本は新しいNISA制度の投資上限である1,800万円になります。これを年利1%の場合と年利3%の場合で運用をした結果が下記の表です。

■毎年90万円を20年間積み立てた場合の金額

年利1% 年利3%
積立総額 1,800万円 1,800万円
20年後の金額 1991.7万円 2,462.3万円
運用益 191.7万円 662.3万円

※金融庁 資産運用シミュレーションにて計算

毎年90万円を積立投資することは、簡単なことではないかもしれませんが、余剰資金がある方は、年利0.001%の普通預金で積立をするより利益が得られるかもしれません。普通預金の利息は税金が引かれるため、20年間積立をした場合でも100円も増えません。

毎年120万円を15年積み立て、売却後に再度120万円を5年積み立てた場合の金額

では、途中で一度売却をするパターンを試算してみましょう。つみたて投資枠で毎年120万円(毎月10万円)を積立てていくと、15年後に非課税投資枠の上限である1,800万円に達します(下記一覧表、積立総額①)。この段階で一旦全額を売却し、残りの5年間また同様に年間120万円を買い付けます(下記一覧表、積立総額②)。

■毎年120万円を20年間積立てた場合の金額

年利1% 年利3%
積立総額① 1,800万円 1,800万円
15年後の金額 1,941.1万円 2,269.7万円
売却益 141.1万円 469.7万円
積立総額② 600万円 600万円
5年後の金額 615万円 646.5万円
運用益 15万円 46.5万円
20年の積立総額①+② 2,400万円 2,400万円
20年の運用益 156.1万円 516.2万円
20年の運用成果 2,556.1万円 2,916.2万円

※金融庁 資産運用シミュレーションにて計算

先ほど試算した毎年90万円を20年積み立てた場合と比較すると、今回の方がトータルの運用益は少ないことが分かります。複利の効果を味方にして、長期目線で積み立てていくことが資産運用においては大きなメリットとなる例ではないでしょうか。

元本割れの不安に対するおすすめの考え方

元本割れの不安に対するおすすめの考え方

新しいNISAは、投資をするうえで優遇された制度ではあるものの、利益がでないことには非課税の恩恵を受けることはできません。そして、投資をする以上は、元本割れがおこる可能性があることを理解しておかなくてはいけません。
元本保証がないことで不安に感じる場合、次のような考え方を身に着けておくとよいでしょう。

感情に左右されずにコツコツ積み立て続ける

株価の値動きを気にしすぎると、長期的な積立が難しくなる恐れがあります。値下がりのフェーズが長く続くと、一時的に積み立てた資産は目減りしてしまうからです。その状況でも投資を途中でやめずに続けるのは、感情に左右されない強いメンタルが大切です。

感情に振り回されないためにおすすめなのが、ドル・コスト平均法での買い付けです。これは、価格が変動する金融商品を、定期的に同じ購入額で買い付ける方法です。購入時期が分散されることで、価格変動のリスクを下げることが期待できます。株価が安い時期には多く、高い時期には少ない株数を購入するので、結果として1株あたりの購入価格(平均購入単価)は抑えられます。「毎月5万円の買い付けを10年間続ける」等と決めたら、値動きに過敏にならずある程度放置して、コツコツと確実に資産を増やしていきましょう。

株・債券・不動産投資信託(REIT)等、分散投資のバランスを見直す

「卵を1つのカゴに盛るな」というイギリスのことわざが、資産運用ではよく使われています。1つのカゴにすべての卵を入れていた場合、そのカゴを落とすと卵は全部割れてしまいます。しかし、複数のカゴに分散していれば、どれか1つのカゴを落としても全部の卵が割れてしまうリスクを避けられるという教えです。つまり、複数の資産に分散して投資をすると安定性が増すのです。

株式・債券・不動産投資信託(REIT)のように資産で分ける、投資対象を日本・世界・新興国と地域で分ける等、方法はさまざまです。時間が経過すると金利や相場も変動しますので、定期的に資産配分を見直しておきましょう。

目的に合わせてNISAを活用しよう

NISAを活用するための一番の方法は、目標金額と利用する目的を初めに決めておくことです。子供が大学に進学する15年後までに400万円を達成する、自分が65歳になるまでに2,000万円を達成する等、具体的であればあるほどよいでしょう。これが決まれば、毎月の積立金額や売却を検討し始める時期に迷うことがなくなります。便利な制度をご自身のライフプランに最大限活かすため、ぜひ考えてみてください。

まとめ

まとめ

積立NISAの非課税期間は20年間ですが、20年間運用を続けることがよいとは限りません。20年間の非課税期間が終わる前にタイミングをみて売却することや課税口座に移管することも選択肢の1つです。

2024年1月から始まる新しいNISA制度は、現行NISA制度と比較して大幅に使い勝手が上がっています。

長期投資は複利の効果も受けやすく、少額投資でも10年20年単位で継続することで手元のお金を大きく増やすことも期待できます。投資初心者の方は特に、自動的に積み立てていける仕組みを利用して、NISAを活用した投資をはじめてみませんか。

ご留意事項
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