退職金を資産運用する上で失敗しないためのポイント!大損する投資事例も紹介
「人生100年時代」といわれるような日本の長寿化に対応して、退職金を老後の資産としてうまく運用したい。今回は退職金を運用するために金融商品に投資するにあってのポイントや失敗の事例をご紹介します。長期的な分散投資を意識した資産運用をしましょう。

みんな何に使っている?退職金の使い道

退職にあたって手にする退職金。老後に備えてうまく活用したいものですよね。実際のところ、ほかの人たちは退職金を何に使っているのでしょうか。65歳~79歳男女へアンケート調査を行ったところ、退職金の主な使い道として挙げられたのは以下の通りです。
1.生活資金 34.4%
2.資産運用 25.1%
3.住宅ローン返済 19.8%
4.消費済み 14.0%
5.その他 6.7%
【参考】フィデリティ退職・投資教育研究所「高齢者の金融リテラシー ~生活に不安を抱えながらも資産の持続力に楽観的~ 2019年2月(pdf)」詳しくはこちら
生活資金が最も多いのは予想ができますが、資産運用を挙げた人がおよそ1/4もいます。資産をうまく運用して、増やそうという意識を持つ人が多いことが伺えるでしょう。

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退職金の注意点
退職金を受け取る際に注意したいのは、退職金には税金がかかるため、勤務先から通知された額面よりも手取り金額が減る可能性があることです。
退職金の税額計算では、まず退職金の額から勤続年数に応じた「退職所得控除」を差し引き、残りの金額の1/2に税率を掛けて算出します。
【退職所得控除額の計算方法】
・勤続年数20年以下…40万円×勤続年数
・勤続年数20年超……70万円×(勤続年数-20年)+800万円
※勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げて計算
例えば、勤続35年であれば1,850万円超、勤続20年であれば800万円超の退職金を受け取ると税金がかかることになります。そのため、手取り金額が減ることを意識して使い道を考える必要があります。
【参考】国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)[2019年4月1日現在法令等]」詳しくはこちら

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退職金はどう使う? 賢い運用方法

退職金はどのように使うのがいいのでしょうか。「資産寿命」を延ばすという視点で考えると、その一部を運用に回すことも検討に値します。運用に回すのに妥当な金額は各々の世帯の状況によりますが、目安としては、以下のように概算してみると良いでしょう。
運用に回す金額の上限の計算方法
退職金の金額+退職金受取り時の世帯貯蓄額-生活資金として残す概算額(後述)
-退職金受取り時の住宅ローン残高=運用に回す最大金額
生活資金として残す概算額
運用する期間を最低10年間確保するために、退職金受取り後の10年間の収支を出し、生活資金として残しておくべき金額の概算を計算します。
生活資金として残す概算額=①+②+③+④-A-B-C
①1ヵ月の生活費(住宅ローンの月支払額を除く)×12ヵ月×10年
②住宅リフォームの予定費用(持ち家の場合)
③マイカー購入の予定費用(必要な場合)
④医療費などの予備費(1人当たり100万円程度)
A.退職金受取り後の手取り年収額×退職金受取り後の勤続期間
B.公的年金の受給見込額(「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」で確認)×退職金受取り後10年間の受給期間
C.企業年金の受給見込額(ある場合のみ)×退職金受取り後10年間の受給期間
計算のサンプル例
ここからは、実際の二人世帯の家庭を想定して、ここで紹介した計算を行ってみたいと思います。
<モデルケース>
夫60歳:60歳退職、65歳まで再雇用、65歳から公的年金受給、企業年金なし
妻60歳:60歳退職、65歳から公的年金受給、企業年金なし
退職金の金額 1,500万円
退職金受取り時の世帯貯蓄額 1,000万円
退職金受取り時の住宅ローン残高 500万円
①1ヵ月の生活費(住宅ローンの月支払額を除く):25万円
②住宅リフォームの予定費用(持ち家の場合):400万円
③マイカー購入の予定費用(必要な場合):200万円
④医療費などの予備費(1人当たり100万円程度):200万円(100万円×2人)
①25万円×120ヶ月+②400万円+③200万円+④200万円-(A)240万円×5年間-(B)(200+150)万円×5年間=850万円(生活資金として残す概算額)
1,500万円+1,000万円-850万円-500万円=1,150万円
予定より支出がかさむ可能性も考え、運用に回す資産は、この方法で算出した金額よりは少なめにするのが賢明です。また、算出した額がマイナスになる場合は、退職後10年以内に資産寿命が尽きてしまうことを意味するため、支出を大幅に減らすなど、家計の見直しを優先してください。

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退職金を投資に使う場合に知っておくべき2つのポイント

運用に回す金額を決めたら、次はどのような金融商品を購入するかを考えます。記憶に新しい「老後資金2000万円問題」の元になった金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書ですが、実は、さまざまなデータに基づき老後に向けた資産形成や管理の必要性と方法を、一般の人にもわかりやすく説明しています。以下、投資についての説明から引用します。
長期・積立・分散投資による効果は、積立が長期であればあるほど、投資先を分散すればするほど、収益がバラつきにくくなる特徴がある。(中略)リスクをコントロールし、一定のリターンをもたらしやすい点で、多くの人にとって好ましい資産形成のやり方であると考えられる。
【参考】金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理(2019年6月)」詳しくはこちら
ポイント① 長期投資
退職金を運用に回すときは、運用期間を長く確保する工夫が必要です。10年間を目安に、その間は取り崩さないですむ金額を投資するようにしましょう。

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ポイント② 分散投資
分散投資で特に重要なのは、株式と債券など異なる資産種類、国内と海外など異なる市場を組み合わせて投資することです。分散投資の基本となるのは、国内外株式、債券のそれぞれに投資する方法です。他にも、投資の運用のプロが投資者から集めた資金を運用する「投資信託」もあります。投資の初心者であれば、ひとつで複数の資産種類や市場へ分散して投資する「バランス型」の投資信託で運用するのもひとつの方法でしょう。
ただし、預貯金などとは異なり株式や投資信託などの資産運用は運用コストがかかったり元本割れなどのリスクが伴ったりするので、この記事で示したような資産運用に回す金額などを計算し、慎重に運用する必要があります。初めて資産運用をする方は、金融機関やファイナンシャル・プランナーなどに相談してみることも検討してみてはいかがでしょう。

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資産運用を始める前に! 知っておきたい退職金運用失敗事例

退職金を資産運用に回す場合には、先述したふたつのポイントを考える必要がありますが、逆に以下のような運用は避けるべきだと考えられます。
NGケース①退職金を一括・全額投資する
全額投資してしまうと、生活費不足や想定外の出費などの理由から、短期間で取りくずす可能性が高くなります。運用期間が短いと、評価額が低いタイミングで取りくずす可能性も高くなり、その結果、損失となりやすいのです。
NGケース②ひとつの資産種類や市場に偏って投資する
偏って投資すると、収益がバラつきやすくなります。つまり、リスクが大きくなります。
まとめ
人生100年時代と呼ばれる現代は、生涯の生活費総額の増加に備えて、「資産寿命」を延ばす必要が高まっています。そのために有効なのが、退職金の一部を上手に投資に使うことです。生活費や急な出費によって取り崩すことを考慮して、長期間運用が可能な投資額にすること、分散投資をすること、コストを意識して金融商品を選ぶことを心がけ、老後も資産運用と上手に付き合っていきましょう。

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ご留意事項
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