退職金を投資して運用しよう!おすすめの投資先や失敗事例も紹介

退職金という大きなお金を手にした時、投資で増やすという選択肢もあります。しかし、退職金は老後の資金として重要なため、上手に運用しなくてはいけません。本記事では、退職金を運用する時のポイントや注意点、おすすめの投資先などをご紹介します。分散投資やリスクの考え方、退職金の使い方も参考にしてみてください。

退職金を投資して運用しよう!おすすめの投資先や失敗事例も紹介

退職金は投資して運用しよう!

退職金は投資して運用しよう!

多くの会社員が定年退職にあたって手にする退職金。退職金の額は、会社の規模や勤続年数によって大きく異なりますが、大学・大学院卒の退職金の平均額は約2,000万円です。
このような大きお金を手にして、どのように使えばよいか悩む方も少なくないでしょう。
老後生活を安心して過ごすためには、この退職金をどのように使うかが大きなポイントとなります。

人生100年時代、定年退職後も人生はまだまだ続きます。
厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によれば、65歳の平均余命は男性19.44年、女性24.30年です。仮に65歳で定年退職したとしても、男性は約20年、女性は約25年もの長い時間があります。

退職金は、こうした退職後の長い人生を支える資金基盤となります。
しかし、退職金や年金が減少傾向にあり、低金利が続く現在、退職金をそのまま取り崩していては、遅かれ早かれ、老後資金が足りなくなる可能性があります。

これを解決するには、退職金を上手に運用することが有効です。

例えば、2,000万円の退職金を、65歳から毎月10万円取り崩したとすると、81歳の時には資産が尽きてしまいます。一方で、2,000万円を年率3%で運用した場合、毎月10万円取り崩しても、87歳まで資産を確保できます。

このように、退職金を運用することで、資産寿命を延ばすことを考えていく必要があるのです。

退職金を投資する時のポイント

退職金を投資する時のポイント

退職金を運用する必要性が高まっているとはいえ、老後の生活を支える大切なお金です。退職金は、できるだけリスクを抑えて投資したいものです。
退職金を投資する時には、以下の3つのポイントを意識するようにしましょう。

ポイント① 分散投資

資産運用でリスクを抑えるには「分散投資」が重要です。
分散投資とは、投資先や投資のタイミングを分ける投資方法で「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」などがあります。

退職金の投資先としては、預貯金、債券、投資信託、株式などさまざまな金融商品が挙げられますが、それぞれ値動きやリスクが異なります。
1つの資産に集中して投資すると、その資産が大きな損失を出した場合、取り返しがつきません。その点、株式と債券など異なる種類に投資をしたり(「資産の分散」)、国内と海外など異なる市場を組み合わせて投資する(「地域の分散」)と、1つの商品が大きく値下がりした場合でも、資産全体の損失を抑えることができます。

また、一度に多額の投資を行うのではなく、複数回に分けて投資する「時間の分散」も有効です。

ポイント② 長期投資

退職金を運用にまわす時は、運用期間を長く確保する工夫が必要です。
株式や投資信託など価格が日々変動する商品の場合、短期の運用では、タイミングによって大きな損を出してしまうことがあります。
運用期間を長くすると、投資による価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できます。

また、長期投資には、運用で得られた利益を再び投資することで、利益が利益を生み出し、雪だるま式に増えていく「複利」の効果があります。投資期間が長ければ長いほど、複利効果も大きくなる傾向にあります。

ポイント③ 積立投資

同じ商品を一定の頻度・金額でコツコツと購入していく「積立投資」も、投資のリスクを抑える方法として有効です。

投資は「安値で買い、高値で売る」ことによって利益を出しますが、買い時や売り時を判断するのは難しいものです。
積立投資は、毎月決まった額で同じ商品を購入し続けるため、価格が安い時は多く、価格が高い時には少なく買い付けることになり、結果的に平均購入単価を抑えることができます。これを「ドルコスト平均法」といい、長期的に取り組むほどメリットが大きくなります。

退職金のおすすめの投資先

退職金のおすすめの投資先

退職金を投資する時のポイントを抑えたうえで、おすすめの投資先を紹介します。

退職金専用の定期預金

一部の金融機関には、退職金専用の定期預金が用意されています。
預け入れることのできる資産が退職金に限られている定期預金で、通常の定期預金よりも金利が高く設定されています。

ただし、退職金の受取りから一定の期間内に申し込むこと、預入金額に最低金額が設けられているなどの条件がある場合もあります。
優遇金利の適用期間は3ヶ月程度と短い場合がほとんどで、適用期間が過ぎれば、自動的に通常の定期預金の金利に戻ります。

また、比較的高金利のプランは、預け入れたお金の一部で投資信託やファンドラップの購入が必要とされていることにも注意が必要です。

投資信託

投資信託とは、複数の株式や債券などに投資するパッケージ商品です。資産運用の専門家が投資家から資金を集め、それをまとめて投資・運用し、その運用成果が投資家に還元されるという仕組みです。

投資信託は、少額から始められるうえ、運用をプロに任せられるため、初心者でも始めやすいでしょう。分散投資により、リスクを抑えることができるのも投資信託のメリットです。

一方で、投資対象の株式や債券は価格が変動するため、損失が出る可能性があります。また、投資信託は原則、購入時・保有時・売却時に手数料がかかるという点も頭に入れておきましょう。

個人向け国債・社債

債券は、国や企業(発行体)が投資家から資金を借り入れるために発行されます。国が発行する債券を「国債」企業が発行する債券を「社債」といいます。
債券に投資すると、定期的に利息を受取ることができるうえ、満期を迎えると最初に投資したお金(元本)が戻ってきます。

国債や社債には、個人でも購入できる「個人向け国債・社債」があります。
個人向け国債・社債は、株式よりはリスクが低く、預貯金よりはリターンが大きい商品です。個人向け国債・社債は、安全性を重視しつつ、ある程度のリターンを得たいという人に向いています。

ただし、国債は利回りが低く、元本を大きく増やすことはできません。社債は国債よりは高い利回りを期待できるものの、発行会社の業績が悪化すると元本割れや債務不履行のリスクがあることに注意しましょう。

貯蓄型の保険

保険商品の中にも、退職金の投資先として活用できるものがあります。

保険には「掛け捨て型」と「貯蓄型」があり「貯蓄型」は、万が一の時に備える「保険」としての機能を持ちながら、満期時や解約時にお金を受け取れ「貯蓄」としての機能も併せ持ちます。
個人年金保険、終身保険などがこれにあたり、退職金の投資先としても活用できます。

ただし、低金利が続く現在の状況下では大きな利回りは期待できません。なかにはお金を増やす投資としての側面が強い商品もありますが(変額保険や外貨建て保険)、市場リスクをともない、運用実績や為替の変動によって受け取れるお金が増減します。払込んだ保険料を大きく下回る場合もあることに注意が必要です。

株式投資

株式投資とは、企業が発行している株式を売買して収益を得る投資方法です。
株式投資の最大のリターンは、株価上昇による「値上がり益」です。
さらに、企業が利益を出した時に「配当金」を受け取れたり、企業によっては自社の製品やサービスを提供する「株主優待制度」を実施したりしていることも魅力の1つです。

一方で、株価が値下がりする可能性や、投資した企業が倒産して大きく損することもあります。株式投資はハイリスク・ハイリターンの投資方法ですので、そのことをしっかりと理解したうえで取り組むようにしましょう。

退職金を投資するうえでの注意点

退職金を投資するうえでの注意点

資産寿命を延ばすために、退職金を運用して少しでも老後資金を増やしたいところですが、退職金を投資する際には以下の点に注意しましょう。

まずは「お金の色分け」をする

まずは「お金の色分け」をしてみましょう。
「お金の色分け」とは、自分の持っている資産を、使う目的や時期によって分類することです。この色分けをすることで、どのくらいの資産を投資にまわせるか、どのような金融商品や運用方法が自分に合っているかを考えやすくなります。

一般的には、以下の3つの色分けがあります。

・日常やいざという時に必要なお金
当面の生活費や、病気やケガの治療費にとっておきたいお金です。月々の生活費の半年から1年分が目安です。
このお金は預貯金などにしておき、いつでも引き出せるようにします。

・近い将来使う予定のあるお金
数年以内に使う目的や時期が決まっているお金です。退職後であれば、自宅のリフォーム費用や子供の結婚の援助資金などが考えられます。
このお金は、使う時期まで減らさないような運用を心掛けましょう。使う時期に応じて、リスクの低い金融商品を選びます。

・当面使う予定のないお金
10年以上先の生活費やイベントのお金です。子供に残すつもりのお金もここに含まれます。
余裕のあるお金なので、少しリスクをとって、収益性の高い金融商品で運用することを考えてもよいでしょう。

ハイリスク・ハイリターンの投資は避ける

金融商品や投資方法にはそれぞれリスクとリターンがあり、リスクとリターンは相関関係にあります。高いリターンを得るためには、高いリスクを取らなければなりません。資産運用の際には、自分のリスク許容度(どのくらいの損失を受け入れられるか)を見極める必要があります。

リスク許容度は、年齢や家族構成、収入・資産、性格などによって異なりますが、退職金は老後生活を支える基盤となる資産なので、大きなリスクをともなう投資商品・方法は避けたほうがよいでしょう。

お金の勉強をする

退職金を投資する前に、お金の勉強をすることも大切です。

例えば、老後生活にはどのくらいお金が必要なのか、自分はどのくらい年金をもらえるのか、こうしたことを調べておくと、老後のマネープランが立てやすくなります。前述の「お金を色分け」することも、この一環です。

そのうえで、実際に運用する商品について、仕組みや特徴、メリット・デメリットを自分で確認するようにしましょう。
金融機関や保険会社に勧められるがままに購入したところ、自分のリスク許容度には合っていなかった、想定外の手数料が多くかかったという話をよく耳にします。

大切な退職金をどう使うか、どのように運用するかは、他人任せにせず、自分でしっかりと判断することが大切です。

もし余裕があれば、退職前に実際に投資を経験してみることをおすすめします。投資について学ぶには、実際に投資を経験することが一番の近道です。NISAやiDeCoなど、政府が推奨している制度を利用すれば、税制優遇を受けながら、比較的リスクを抑えた投資を行うことができます。
また、退職前から運用することで、運用期間を長く取れるというメリットもあります。

みんな何に使っている? 退職金の使い道

みんな何に使っている? 退職金の使い道

実際のところ、世間の人は退職金を何に使っているのでしょうか。65歳~79歳の男女を対象にアンケート調査を行ったところ、退職金の主な使い道として挙げられたのは以下の通りです。

1.生活資金 34.4%
2.資産運用 25.1%
3.住宅ローン返済 19.8%
4.消費済み 14.0%
5.その他  6.7%

出典 

【参考】フィデリティ退職・投資教育研究所「高齢者の金融リテラシー ~生活に不安を抱えながらも資産の持続力に楽観的~ 2019年2月(pdf)」詳しくはこちら

退職金の使い道のトップが生活資金であることは予想ができますが、資産運用にまわしている人もおよそ1/4います。退職金を運用して、老後資産を増やそうという意識をもつ人が多いことが伺えます。

資産運用を始める前に! 知っておきたい退職金運用失敗事例

資産運用を始める前に! 知っておきたい退職金運用失敗事例

最後に、退職金の運用で避けたいケースを紹介します。

NGケース①退職金を一括・全額投資する

退職金を全額一括で投資してしまうと、手元の生活費が不足したり、想定外の出費があったりなどの理由から、短期間で取りくずすことになる可能性が高くなります。
一般的に投資は、運用期間が長ければ長いほど、安定した収益が期待できます。運用期間が短いと、評価額が低いタイミングで取り崩す可能性も高くなり、その結果、損失となりやすいのです。
また、投資するタイミングによっては、高値掴みとなる可能性もあります。

NGケース②1つの資産種類や地域に偏って投資する

前述の通り、リスクを抑えるには「分散投資」が重要です。1つの資産種類や地域に偏って投資すると、その投資対象が何らかの要因で下落した場合、資産全体に大きな損失が出てしまいます。
退職金を投資する場合は、できるだけリスクを軽減することが基本です。投資先を分散することを心掛けましょう。

まとめ

退職金は、退職後の生活を支える基盤となるものです。しかし、人生100年時代、退職金をそのまま取り崩していては、老後資金が足りなくなる可能性があります。退職金を投資・運用して資産寿命を延ばすことも考えてみましょう。

退職金を運用する際には、できるだけリスクを軽減することが基本です。長期・積立・分散投資を心掛け、老後も資産運用と上手に付き合っていきましょう。

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