特定口座とは?源泉徴収のありなしや確定申告が必要な場合を徹底解説

金融機関の口座には「一般口座」「特定口座」「NISA口座」といった種類があり、どの口座で取引をするかによって課税方法や申告方法が違ってきます。特定口座を使うメリット・デメリット等、特定口座の特徴を紹介します。源泉徴収のありなしや確定申告が必要な場合も参考にしてみてください。

特定口座とは?源泉徴収のありなしや確定申告が必要な場合を徹底解説

特定口座とは?

特定口座とは?

特定口座は、株式等の譲渡・売却の申告・納税手続きの負担を軽減するための仕組みです。
株式等を譲渡・売却した場合は、利益に対して税金が課せられます(所得税15%。住民税5%、復興特別所得税が所得税の2.1%)。原則は、1月1日から12月31日までの1年間の売買損益の合計を計算し、翌年の3月15日までに確定申告が必要になります。特定口座では、株式等の譲渡損益や配当金を計算し、税額を計算した上で年間取引報告書を作成してくれる口座です。

株取引をおこなう口座の種類と申告方法

証券口座には、「一般口座」「特定口座」、そして「NISA口座」の3つがあり、それぞれ、下記の違いがあります。

・一般口座
原則、自分で損益計算をし、計算明細書を作成した上で、確定申告が必要です。

・特定口座
その金融機関の特定口座内での譲渡損益や配当金等を計算し、税額を算出した上で年間取引報告書を作成してくれます。

・NISA口座
売却益が非課税のため、確定申告は不要です。

出典 

特定口座の源泉徴収ありとなしはどう違う?

特定口座は、発生した利益の税金分を源泉徴収をしてもらうのか・自分で申告するのかを選択します。

<「源泉徴収あり」の場合>

特定口座で源泉徴収ありを選択した場合、金融機関が利益から税金を徴収・納税(源泉徴収)してくれます。つまり、源泉徴収ありを選べば、自分で申告をしないで済ませることも可能になります。

ただし、特定口座の中で損益を計算してくれるのはあくまでも1つの金融機関の特定口座内だけです。複数の金融機関に特定口座を持ち、取引をしている場合は、それぞれの金融機関が発行した年間取引報告書をもとに、自分で確定申告をする必要があります。

<「源泉徴収なし」の場合>

特定口座で源泉徴収なしを選択した場合、確定申告が必要になります。証券会社から発行される「特定口座年間取引報告書」を利用することができます。

■株取引をするための3つの口座

株取引をするための3つの口座

※1つの金融機関で一般口座、特定口座、NISA口座のすべての口座を作ることができますが、取引をする時にはどの口座で取引をするかをその都度選択する必要があります。ただし、NISA口座は1つの金融機関にしか作ることはできません。

特定口座を利用するメリット

特定口座を利用するメリット

年間取引報告書を作成してもらえて、税金の徴収も可能な特定口座のメリットを下記にまとめました。

確定申告の手間が省ける

特定口座の「源泉徴収あり」にしておけば、証券会社が自動で税金を精算してくれるので、確定申告の必要がなく、煩わしさがありません。
また、源泉徴収ありなしに関わらず、年間損益等が記載された「特定口座年間取引報告書」を金融機関が交付してくれますので、自分で確定申告をする場合でも、特定口座年間取引報告書をもとにおこなえば手間はさほどかかりません。

ほかの所得と分離される

課税関係は、ほかの所得(給与所得や事業所得等)とは分離されています。そのため、配偶者控除や扶養控除等の適用有無を判断する際、株式等の譲渡所得を配偶者等の合計所得金額に含める必要がありません。
収入を扶養範囲内ギリギリで納めている方も、証券の売買等で利益が出たとしても心配する必要はないでしょう。

特定口座の注意点

特定口座の注意点

特定口座を利用する場合には次のような点に注意してください。

利益が年間20万円以下の場合の注意点

給与所得者や年金所得者では、年間20万円以下の利益については申告・納税は原則不要です。それにもかかわらず、「源泉徴収あり」を選択している場合、自動的に税金が引かれてしまうため、確定申告で取り戻す必要があります。

「源泉徴収あり」でも確定申告が必要なケース

源泉徴収ありの口座以外の口座や、ほかの金融機関での損益と損益通算する場合は確定申告が必要です。1つの特定口座内であったとしても、繰り越し控除を利用する場合にも、確定申告が必要であるため、源泉徴収ありでも油断は禁物でしょう。

どんな人が特定口座を作るべき?

証券取引が初めての方は、まずは特定口座での取引をおすすめします。
また、税金の計算等の面倒なことはお任せしたいという方は特定口座の「源泉徴収あり」を選ぶとよいでしょう。なお、「NISA口座」とは違い、特定口座は複数の金融機関で開設することができますが、慣れてくるまでは1つの金融機関のみで取引をしたほうがよいでしょう。

確定申告するべきなのはどんな時?

確定申告するべきなのはどんな時?

特定口座の「源泉徴収あり」であれば、確定申告は原則不要です。ただし、以下のようなケースでは、確定申告が必要になります。

「一般口座」「特定口座の源泉徴収なし」を選択している人

「一般口座」「特定口座の源泉徴収なし」を選択している人が、その年中に取引があり、利益が出ている場合には確定申告が必要です。

株式等の譲渡損の繰り越しをしておきたい人

株式等の譲渡損の繰り越しをしておきたい人

一般口座はもちろん、特定口座の源泉徴収のあり・なしに関わらず、株式等の売却により生じた損失は確定申告により、その年の上場株式等の利子等・配当等と損益通算ができます。

また、損益通算してもなお控除しきれない損失については、翌年以後3年間にわたり確定申告をすることによって繰り越し控除することができます。この場合、売買しなかった年があっても確定申告しておかないと損の繰り越しができませんので、翌年へ繰り越すためには必ず確定申告をおこなう必要があります。

複数の金融機関に証券口座を持ち、取引をしている人

特定口座の源泉徴収ありにしておいてもほかの金融機関との調整はしてもらえませんので、複数の金融機関との取引がある場合には、確定申告が必要になります。

ただし、上記のような確定申告をすれば税金が戻ってくる場合でも、家族の扶養に入っている人は、確定申告をすることにより譲渡益を収入として合算することになります。収入が多くなると、扶養から外れて社会保険料の支払いが発生したり、家族の所得税が増えたりすることもありますので注意が必要です。

■一般口座・特定口座の税金について

一般口座・特定口座の税金について

まとめ

まとめ

特定口座は、株式等の譲渡・売却の申告・納税手続きの負担を軽減するための仕組みです。特定口座では、株式等の譲渡損益や配当金を計算し、税額を計算した上で年間取引報告書を作成してくれます。源泉徴収ありを選択すれば、確定申告の手間を省くこともできます。

また、税金は口座内の売買だけでなく、他の収入や、家族の収入にも影響してきます。よくわからないまま手続きをしてしまうと、かえって手取りが少なくなることもあります。税金の知識に不安がある人は、特定口座(源泉徴収あり)や非課税口座のNISA口座などの利用から始めるとよいでしょう。
なお、税金に関しては、毎年税制の変更があり、個別の状況によっても変わってきますので、具体的な内容につきましては、お近くの税務署や税理士に相談してみてください。

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