年金の受給資格を徹底解説!あなたの国民年金・厚生年金の給付について

老後の生活を支える国民年金、厚生年金等の公的年金と私的年金の受給資格について解説します。これから年金を受け取る方が知っておきたい年金制度の全体像とそれぞれの年金制度の受給開始年齢や制度の仕組み、大まかな給付額等参考に老後について考えましょう。

年金の受給資格を徹底解説!あなたの国民年金・厚生年金の給付について

まずは年金の全体像を理解しよう!

まずは年金の全体像を理解しよう!

年金には国の制度である公的年金と政府以外の民間組織が運営している私的年金があるのをご存じでしょうか。政府以外の民間組織が運営している私的年金があるのをご存じでしょうか。年金受給資格をきちんと理解するために年金の全体像について知りましょう。

公的年金とは

国の制度として運営されているのが公的年金です。公的年金には2種類あり、国民年金と厚生年金です。

国民年金は、年金制度の基礎部分にあたるため基礎年金とも呼ばれます。給付される国民年金は3種類あり、老後の生活を支える老齢年金、ケガや病気で生活が制限される際の保障となる障害年金、家庭の生計を支えていた被保険者の遺族に支給される遺族年金です。

厚生年金は、国民年金に上乗せされる公的年金です。第2号被保険者となる民間企業に勤める会社員、公務員が加入する制度です。保険料の納付は加入者と企業で折半します。第1号被保険者である自営業者や農業者、学生および無職の方は厚生年金に加入することができません。

私的年金とは

公的年金に給付を上乗せできる制度を私的年金と呼びます。公的年金と違い、政府以外の民間組織が運営している制度で、私的年金の種類を大まかに分けると企業型と個人型があります。

■企業型年金
・確定拠出年金制度
・確定給付企業年金制度
・厚生年金基金制度

■個人型年金
・国民年金基金制度
・iDeCo(個人型確定拠出年金)
・個人年金保険

企業型年金は、退職金制度に並ぶ福利厚生のひとつとして導入されています。企業型年金は3種類ありますが、その1つが確定拠出年金制度です。企業が拠出した掛け金を制度の加入者が運用し、運用益と掛け金の合計額が給付額になります。
2つ目の確定給付企業年金は、加入期間に応じて給付額が決まっている制度です。企業が運用と給付の責任を負っています。
3つ目が厚生年金基金制度で、国が行う厚生年金の支給を企業が設立した厚生年金基金が代行し、運用や管理を行います。上乗せされる給付金額は企業の実情によって独自に決まります。現在は時代の流れや新規基金設立ができなくなる法改正の影響もあり、代替となる確定給付企業年金に移行、もしくは解散が促されています。

個人型年金の種類は主に3種類です。1つ目が国民年金基金制度で、自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が任意で加入できます。自営業の方でも厚生年金のように上乗せできる年金として利用されています。

2つ目はiDeCo(個人型確定拠出年金)で、国民年金基金連合会が主体となり運営管理機関の金融機関などが運営する制度です。20歳以上65歳未満の人が主な対象で、ほとんどの人が任意で加入できます。自分で掛け金を拠出して運営会社が提示した金融商品を選び、年金資産の運用を行います。

3つ目が個人年金保険です。民間の保険商品であり、公的年金の金額に不安がある場合に老後の生活資金を準備するためにあります。確定年金、有期年金、終身年金の3種類から選択するのが一般的です。給付額が確定している定額年金タイプと運用成績で給付額が変わる変額年金タイプがあります。

国民年金の受給資格

国民年金の受給資格

20歳からすべての人が加入し、長期にわたって納付し続ける国民年金ですが、いつ受け取れるのか、どのぐらいの金額になるのかは加入者にとって気になるところです。以下では、年金の受給条件といくら受け取れるのかについて解説します。

国民年金を受け取るための条件

国民年金を受け取るための条件として、納付期間が定められています。受給に必要な納付期間は10年以上です。平成27年7月31日までは納付期間が25年以上という条件でしたが、法改正により変更されました。

納付期間とみなされるのは保険料の納付期間と免除期間を合計した期間です。10年未満となる場合は60~65歳の任意加入等で条件を満たす方法があります。

受給開始年齢の3ヶ月前に年金請求書が自宅に送付されます。国民年金を受給するには手続きが必要なため、届いた年金請求書に必要事項を記入し、そのほかの添付書類と一緒に年金事務所か年金相談センターへ持参しましょう。

国民年金はいつから、いくらもらえるか

国民年金は、原則65歳から受給することができます。この国民年金を老齢基礎年金といい、老後の生活資金として支給されます。受給できる年金額は、20~60歳の間に保険料を納めた月数等を考慮して計算されます。満額受け取れるケースは20~60歳の40年間のすべてで保険料を納めた場合です。
未納の期間がある場合は、60歳以降も任意加入して65歳までの間に40年分の納付額に足りるように、保険料を納めることも可能です。

受給できる年金の満額は、基本年金額をもとに物価や賃金等を考慮して毎年変化しています。令和4年に受給できる年金の満額は77万7,800円です。20歳から年金に加入し60歳までの40年間すべて保険料を納めた場合に受給できます。

給付される年金額を算出する計算式は以下です。
77万7,800円×保険料納付済み月数
+(全額免除月数×4/8)+(1/4納付月数×5/8)
×(半額納付月数×6/8)+(3/4納付月数×7/8)
÷40年(※加入可能年数)×12ヶ月

やむを得ず免除期間がある場合でも、上記の計算式の通りで全額免除なら半額納付等減額した金額だけ納めたことになります。満額は受け取れませんが、追納の仕組みがあるため保険料の後払いで年金額を増やすことができます。

付加保険料(400円)を納付していた方は「200円×納付月数分」が基礎年金に上乗せされます。例えば、20年支払った場合は4万8,000円分が基礎年金に追加されます。

通常の受け取り方以外には、減額されるものの60~64歳と早めに受給できる繰り上げ受給、受け取りが遅くなるもののその分増額がある65歳1ヶ月~75歳までの間で繰り下げ受給も任意で選択できます。(繰り下げは一部の方のみ70歳まで)

厚生年金の受給資格

厚生年金の受給資格

基礎年金を土台として2階部分に例えられる厚生年金ですが、その受給条件や受け取れる金額について以下で解説します。

厚生年金を受け取るための条件

厚生年金自体は従業員が常時5人以上いる事業所や工場、商店などの個人事業所に適用される仕組みになっています。つまり、その事業所に雇用されている70歳未満の従業員は全員厚生年金に加入しています。正社員以外のアルバイト、パート、一定の労働時間を超える方も対象です。

老齢厚生年金を受け取る条件として以下を満たす必要があります。

・厚生年金保険料を納めている期間が1ヶ月以上
・老齢基礎年金(国民年金)の受給条件を満たす(納付期間10年以上)
・65歳以上(老齢厚生年金の場合)

出典 

厚生年金は基礎年金の上乗せ部分のため、基礎年金の受給資格がない場合は老齢厚生年金も受給できません。

上記の条件を満たしていなくても老齢厚生年金が特別に支給される方がいます。以下に当てはまる方は、特別支給の老齢厚生年金の対象です。
・昭和36年4月1日以前生まれの男性
・昭和41年4月1日以前生まれの女性

特別支給の老齢厚生年金の受給条件として以下を満たす必要があります。

・国民年金に10年間加入している
・厚生年金に1年以上加入している
・生年月日に応じた受給開始年齢に達している

出典 

特別支給の対象の場合、生年月日に応じて60歳~65歳の間に報酬比例部分の年金を受給できます。受給開始年齢は個人の性別と生年月日によって異なります。

例を挙げると、昭和33年5月に生まれた女性の方なら64歳から報酬比例部分の受給が始まります。65歳からは老齢厚生年金と基礎年金の受給に切り替わります。すべての例を紹介できないため、給付対象の方はいつから受給できるのか、日本年金機構に確認してください。

【参照】日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」詳しくはこちら

厚生年金はいつから、いくらもらえるか

厚生年金は、国民年金と同様に原則65歳から受給可能です。もらえる金額は「老齢厚生年金の給付額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」で算出できます。具体的な金額を出すには計算が必要ですが、過去の収入と加入期間によって受給額が決まります。給与所得が多い人ほど受給額も多くなります。

報酬比例部分は基礎部分の金額にあたり、加入期間と過去の収入などによって変動します。計算式は以下です。
A)平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの加入期間月数
B)平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以降の加入期間月数

報酬比例部分=A+Bで算出できます。


経過的加算は「特別支給の定額部分で計算した額ー老齢厚生年金に加入している期間における老齢基礎年金額」で算出します。特別支給制度では報酬比例部分と定額部分がありますが、65歳になると老齢基礎年金と老齢厚生年金に変わります。年齢によっては、定額部分よりも基礎年金の額の方が少なくなってしまうことを考慮し、年金支給額に経過的加算が入ります。

特別支給の定額部分の計算式は以下です。
1,621円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数
※令和4年4月分から

加給年金は、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になったとき、65歳未満の配偶者や年度末までに18歳に達した子がいる場合に受給額が加算されます。例えば65歳未満の配偶者と生計をともにしているなら22万3,800円の加算があります。(加算には届出が必要)

受給額の計算は上記の通りですが、実際にやるとなると手間がかかります。以下のWebサイトで簡単かつ正確に受け取り予定の年金額を確認できるため、利用してみるとよいでしょう。

そのほかの年金の受給資格

その他の年金の受給資格

企業型、個人型を含む私的年金の受給条件やもらえる仕組み等について解説します。障害を負ってしまった時に受け取れる障害年金や家族を失った遺族が受け取れる遺族年金の受給条件も以下で触れます。

企業型年金の受給資格

企業型の年金制度は3種類あり、確定拠出年金制度・確定給付企業年金制度・厚生年金基金制度です。それぞれの受給資格について解説します。

確定拠出年金制度の受給資格

確定拠出年金の受給資格がある人は、制度を導入する企業に勤める方です。掛金は企業が拠出しますが、マッチング拠出制度によって規約があれば加入者も上乗せ分として掛金を出せます。年金の運用や管理は金融機関等に業務委託するのが一般的で、企業が拠出した掛金は加入者ごとに管理するために資産管理機関に入金されます。年金の給付額は運用結果によって変わり、受給できる年齢は60~75歳未満の任意のタイミングです。

給付の受け取り方は分割で支給される年金タイプと、一括で全額を受け取る一時金タイプから選択可能です。年金と一時金を併用できるケースも多くあります。もらえる支給金額は加入者の運用成績によりますが、企業年金連合会の資料によると老齢給付金として引き出された1件当たりの金額は令和4年で年金タイプが69万円、一時金タイプが474万円です。

【参照】企業年金連合会「確定拠出年金統計資料(PDF)」詳しくはこちら

確定給付年金制度の受給資格

確定給付企業年金の受給資格がある人は、制度を導入する企業に勤める方です。給付額は加入時に決められており、加入期間中に積み立てを行い、60~65歳の退職時以降に一時金もしくは年金形式で給付額を受け取ります。

年金の管理・運用する形態は2種類あります。生命保険会社や信託会社が年金資金の運用・管理を行う規約型と企業年金基金が運用・管理を行う基金型です。どちらの場合でも受給者に給付する金額が確定しているため、不足分が発生したら企業が追加拠出することになっています。平均年金額は、企業年金連合会の資料によると62万3,000円というデータがあります。

【参照】企業年金連合会「企業年金に関する基本統計」詳しくはこちら

厚生年金基金の受給資格

厚生年金基金の場合、受給資格があるのは制度を導入する企業に雇用されている方です。年金の給付は厚生労働大臣が認可した特別法人によって行われます。もらえる金額は老齢厚生年金のうち基金が代行する部分と企業が独自に上乗せする分です。具体的な金額は月収や加入期間によって変わります。厚生年金基金の支給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から受給できる場合もあります。なお、受け取り形式は年金タイプのみです。

iDeCoの受給資格

個人型確定拠出年金にあたるiDeCoで支払った掛金は原則60歳まで引き出せません。60歳以降になると掛金とその運用益の合計を受け取れるようになります。合計額がいくらになるかは運用成績次第のため、人によって受け取る金額が異なります。引き出す時は一括か分割のどちらかを選択することも併用することも可能です。

企業年金連合会の資料によると、老齢給付金として引き出された金額は令和4年で一件当たりが年金タイプで68万円、一時金タイプで332万円です。実際にこの金額近く受け取れるかどうかは運用成績次第になりますが参考にはなるでしょう。
なお、受け取り形式は一時金として一括で受け取る方がやや多くなっています。受け取り方によって税金の扱いが異なります。一時金タイプの場合は退職所得、年金タイプの場合は公的年金等雑所得です。

【参照】企業年金連合会「確定拠出年金統計資料(PDF)」詳しくはこちら

個人年金保険の受給資格

個人年金保険は民間の保険商品のため、契約をして一定年齢まで保険料を払い続けます。契約時に決めた受給開始年齢に達すると給付を受けることができます。

受給期間は契約時に5年・10年・15年等の期間から任意に設定し、受給が始まったらその期間は受け取り可能です。公的年金と異なり、商品によって保障内容や保険料に違いがあるため、契約時に自分の将来設計に適したものを選ぶ必要があります。基本的に給付額は保険料に応じたものです。しかし、変動タイプの保険は運用成績が悪いと元本割れの恐れがあります。定額タイプは契約時に確定した給付金額が受け取れます。

保証期間がある商品の場合は、保証期間内の被保険者の死亡後、遺族に年金が支払われます。保証期間がない場合は被保険者の死亡時点で終了です。確定年金は被保険者の生死に関係なく確定期間に応じた給付があります。

国民年金基金の受給資格

国民年金基金の加入対象者は第1号被保険者である20~60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生等です。国民年金の免除中の方、農業者年金に加入している方、会社員の方や扶養配偶者の方は加入資格がありません。

国民年金基金の加入は口数制になっており、年金額と給付の型は任意で選択できます。1口目は終身年金のA型(15年間保証)とB型(保証なし)から選択します。いずれも65歳から受給可能です。A型は保証期間中に加入者が亡くなった場合に遺族へ一時金が支払われますが、B型はその仕組みがありません。1口目は途中で減額したり、型の変更(A型からB型、B型からA型)したりはできません。掛金は加入した年齢によって変わります。

2口目以降は終身年金A・B型に加えて確定年金のI、II、III、IV、V型から選択できます。確定年金の支給開始年齢は65歳と60歳のものがあり、いずれも一定の保証期間がつきます。掛金や年金額は国民年金基金の公式サイトよりシミュレーションが可能です。

障害年金の受給資格

障害年金は、病気・ケガで生活や仕事に制限が発生した場合に受け取れる公的年金の仕組みです。制度には障害基礎年金と障害厚生年金があります。

障害基礎年金の受給には以下の条件を満たす必要があります。

・初診日の前々月までに加入期間の3分の2以上の保険料納付(免除でも可)
・初診日に65歳未満で前々月まで保険料の滞納がない
・障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にある
 -国民年金加入期間
 -20歳前または日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
・障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当している

出典 

対象年齢は現役世代を含みます。納付していないと万が一のときにもらえなくなるため、納付が厳しいときは免除制度を利用するようにしましょう。受給額は障害等級が2級の場合、年金満額の77万7,800円で、1級は97万2,250円です。生計をともにする子がいる場合は加算があります。

障害厚生年金の受給条件は上記の基礎年金の条件に加えて障害等級が1~3級に該当する障害を負った場合です。障害基礎年金に上乗せして支給されます。治癒したあと、年金の認定基準より軽い障害が残る場合は障害手当金の支給があります。

遺族年金の受給資格

遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者だった人が亡くなった際、生計をともにしていた子どもやその配偶者、その他遺族が受け取れる公的年金です。遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

以下のいずれかを満たしている方が亡くなった場合に遺族基礎年金を受給できます。

・国民年金の被保険者だった、あるいは被保険者であって日本に住所がある60歳~65歳未満の方
・老齢基礎年金の受給者、あるいは受給資格があった人

出典 

受給対象者は年度末までに18歳に達した子のある配偶者か子となります。
令和4年度の受給額は年金の満額である77万7,800円です。子どもがいる場合は加算があります。

以下のいずれかを満たしている方が亡くなった場合に遺族厚生年金を受給できます。

・厚生年金の被保険者
・初診日のある病気・ケガが原因で初診日から5年以内に死亡
・老齢厚生年金または1~2級の障害厚生年金の受給者
・老齢厚生年金の受給資格があった人

出典 

妻、子、夫、父母、孫、祖父母のうち優先順位の高い遺族の方が受け取れます。受給額は報酬比例分の4分の3の額です。条件によってはさらに加算があります。

まとめ

まとめ

公的年金である国民年金、厚生年金の受給条件として、10年以上の加入期間が必要です。受給額は納めた保険料や免除期間の有無などによって変わります。
一方、私的年金は政府以外の民間組織が運営している制度で、受給資格もさまざまです。掛金の積み立てを行い、一定の年齢に達すると受給できます。代表的なものとして企業年金、iDeCoなどがあります。

年金の仕組みや受給条件を理解して、老後の生計について考えましょう。

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