国民年金の未納期間は要注意!免除・猶予・追納について徹底解説

国民年金の保険料は納付期限から2年以内に納めないと「未納」扱いとなってしまいます。未納期間があると、老後に受け取れる年金額が少なくなってしまいます。今回は年金の未納期間が年金受給額に及ぼす影響と、未納期間を取り戻すことができる「追納制度」「免除」「猶予」について解説します。

国民年金の未納期間は要注意!免除・猶予・追納について徹底解説

国民年金の未納分があるとどうなる?

国民年金の未納分があるとどうなる?

国民年金は20歳以上60歳未満の人が月々保険料を納め(令和5年度は月額16,520円)、65歳以降に「老齢基礎年金」が支払われる制度です。
受け取ることができる老齢基礎年金の額は、納付した保険料の額によって決まり、例えば令和5年度の老齢基礎年金(満額)は67歳以下の場合、年間79万5,000円がめやすとして支払われることになります。
では、何らかの理由で保険料を納めなかった場合にはどうなるのでしょうか。
この記事では、国民年金の未納がある場合にどのようなことが起こるのかを説明します。

老齢基礎年金が減額される

年金の保険料の未納期間があると、基本的にその期間に応じて年金額が減額されます。保険料を納めていない期間が長くなれば長くなるほど、将来もらえる年金額が少なくなってしまうのです。また、やむを得ない事情による保険料の支払いの免除・猶予を受けている場合も、受け取れる額は減額されるため注意をしましょう。

年金納付期間が10年未満は年金がもらえない

保険料の納付期間が10年に満たない場合は、たとえ保険料を納めた期間があったとしても、老齢基礎年金を受け取ることができなくなってしまいます。ただし、免除・猶予の措置を受けている期間は、受給資格期間には算入されます。

障害年金や遺族年金がもらえない可能性がある

過去の納付期間が3分の2未満であるなど規定期間の国民年金を納めていないと、怪我や病気で障害認定を受けた場合に受け取れる「障害年金」や配偶者を亡くした際に受け取れる「遺族年金」が受け取れなくなるおそれもあります。
国民年金を未納のままにしておくと、老後だけでなく自分や家族に万が一のことがおきた場合に備えれなくなる場合があることを覚えておきましょう。

未納期間が長いと差押えされる

自営業などの国民年金第一号被保険者は、サラリーマンのように給与から保険料が天引きされることがなく、国民年金を自分で納付する義務があります。自動引落の手続きをしていないと、うっかり納付を忘れてしまうこともあるでしょう。
支払い能力がある状態で、納付期限までに納税をしないことが続けば、催促状が届きます。催促状に記載された指定期限までも未納だった場合、財産の差し押さえを行われることがあります。また、催促状の指定期限後の支払いには、延滞金も発生するので注意しましょう。

国民年金の未納期間がある場合の対処法

国民年金の未納期間がある場合の対処法

失職や休職で収入が途絶えた際など、どうしても毎月の保険料が支払えなくなることも考えられます。厚生労働省の発表によると、令和4年度の国民年金の保険料納付率は約80%で、約20%の人が保険料を納めていません。
では、経済的理由で保険料が納められない場合は、どうすればいいのでしょうか。

【参考】厚生労働省「令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況」詳しくはこちら

未納分が2年以内の場合は追納する

納付が遅れると日本年金機構から「国民年金未納保険料納付推奨通知書(催告状)」が届き、未納期間や金額を確認することができます。国民年金の保険料の納付期限は、原則として対象月の翌月末日(例:2023年1月分の納付期限は2023年2月末日)ですが、期限を過ぎてしまった場合も2年以内であれば、後から保険料を納めることができます。
2年以内の未納を遡って保険料を納付することを「追納」といいます。2年を過ぎてしまうと後から納めることができなくなってしまうので、注意してください。

すぐに支払えない場合は免除・猶予制度を活用する

国民年金では、経済的事情で保険料を納めることができない人のために、保険料の免除制度と納付猶予制度を設けています。いずれの制度も本人から申請があった場合のみ、利用できる制度です。経済的に保険料の納付が難しいことが予想される場合は、年金事務所に相談し、必ず申請手続きを済ませておきましょう。

・免除制度

所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下(※)の場合や失業した場合など、保険料を納めることが経済的に困難な場合に、保険料の納付が免除される制度です。免除の割合は本人や世帯主、配偶者の前年度の所得によって判断されることになっており、全額免除、4分の3免除、2分の1(半額)免除、4分の1免除の4つのケースに分けられます。
免除された分の保険料は支払わなくてもよいことになりますが、その分、老後に支給される年金の額が少なくなります。

・納付猶予制度

20歳から50歳未満で本人と配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合に、保険料の納付が猶予される制度です。猶予された期間は、年金の受給資格期間には算入されるので未納扱いとはなりません。しかし、猶予期間後に保険料を納付しない限り、支給される年金額は少なくなります。

任意加入制度で年金額を増やす

60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たせなかった場合や、40年の納付期間がなく老齢基礎年金を満額受給ができない場合、国民年金の任意加入制度を利用することができます。国民年金の任意加入制度を利用することで60歳以降でも年金の保険料を支払い、年金額の増額が見込めます。60歳の誕生日の前日から手続きをすることができます。

ただし、厚生年金保険・共済組合等の加入者や、老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方などは対象外であったりと任意加入制度には加入条件があります。また、任意加入制度を受ける場合は、免除・納付猶予制度の申請や学生納付特例が使えなくなるため注意しましょう。

免除や猶予を受けて追納することのメリット

免除や猶予を受けて追納することのメリット

保険料の免除や猶予の承認を受けた期間がある場合でも「追納制度」を使うことで免除・猶予期間中の保険料を後から支払うことできます。ここでは「追納」による2つのメリットを説明します。

年金の受給額を増やすことができる

免除や猶予を受けていた期間の年金保険料を追納することで、年金の受給額を増やすことができます。
ただし、保険料の追納が認められるのは、追納が承認された月からさかのぼって10年分のみです。
免除や猶予期間のある人は、経済的に余裕ができ次第、10年以内に追納して、できるかぎり未納分を減らすことをおすすめします。

税負担を軽減する効果がある

追納によるもう1つのメリットは、節税効果が期待できることです。追納分を含め、国民年金の保険料は全額が社会保険料控除の対象となって所得から差し引かれるため、所得に応じて課税される所得税や住民税が安くなるのです。

例えば課税所得金額が約300万円、追納保険料額合計が約40万円(2年分)の場合、所得税・住民税が最大8万円軽減されるとされています。追納保険料の年末調整または確定申告の手続を忘れないようにしましょう。

年金以外にも老後の資金を作ろう

「人生100年時代」といわれる世の中で、長期化する老後期間を考えると、年金だけでは十分な老後生活が送れないのではと考える方も多くなってきました。そこで国民年金だけではなく、私的年金などを利用し、老後資金を増やす活動が注目されています。

iDeCo

iDeCoは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。自分で掛金を月々5,000円から積み立てることができ、掛金と運用益の合計額を原則60歳以降に受け取ることができます。
iDeCoのメリットは、将来の老後資金を準備しながら、現在の所得税・住民税を軽減できるところにあります。しかし、運用実績によっては元手が割れるおそれがあることを頭に入れておきましょう。
またiDeCoは、原則60歳まで引き出すことができないので老後資金以外の目的では利用をおすすめできません。

NISA

NISAは、NISA口座内で毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に税金がかからなくなる制度です。
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。NISAを利用した元本から発生した利益はすべて非課税になることがメリットです。NISAも運用実績によっては元本割れのリスクがあるので注意しましょう。

個人年金保険

個人年金保険とは、契約時に定めた年齢まで保険料を払い込んだ後、一定期間給付が受け取れる貯蓄型の保険です。自分で保険会社に契約を申し込む必要があります。
個人年金の保険料は、所得控除対象のため、毎年の所得税・住民税を節税することができます。しかし、個人年金保険の種類によっては、金利の影響を受けて不利になる場合があり、予定した定額の年金額を受給できないケースもありますので、よく比較をしたうえで加入を検討しましょう。

まとめ

まとめ

20歳以上60歳未満の人に加入が義務付けられている国民年金。65歳以降に満額を受け取るためには、40年間すべての保険料を支払わねばなりません。ただし、経済的に余裕がなく月々の保険料の支払いができない場合は、年金事務所で申請すれば保険料の支払いの免除もしくは猶予を受けることができます。ただし、免除や猶予を受けると将来受け取れる年金が減ってしまうので、経済的に余裕ができ次第、免除・猶予期間の保険料を追納することをおすすめします。
未納期間がある方で追納可能な期間は、免除・猶予を受けてから10年以内に限られており、これを過ぎると追納できなくなることに注意が必要です。

年金以外の老後資金の準備方法を検討しておき、老後の生活に備えるようにしておきましょう。

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