国民年金が未納だとどうなる?未納で起こるデメリットや追納可能な年数を紹介

国民年金の保険料は期限から2年以内に納めないと、「未納」扱いとなってしまいます。未納期間があると、どれぐらい老後に受け取れる年金額が少なくなってしまうのでしょうか? 今回は年金の未納期間が年金受給額に及ぼす影響と、未納期間を取り戻すことができる「追納制度」について解説します。

国民年金が未納だとどうなる?未納で起こるデメリットや追納可能な年数を紹介

国民年金の未納分があると、将来の年金はどうなるの?

未納分があると、将来の年金はどうなるの?

国民年金は20歳以上60歳未満の人が月々保険料を納め(2020年度は月額16,540円)、65歳以降に「老齢基礎年金」が支払われる制度です。受け取ることができる老齢基礎年金の額は納付した保険料の額によって決まり、保険料を40年間欠かさず支払った場合は、老齢基礎年金が満額(2020年度は約78万円)支払われることになります。しかし、未納期間があるとその期間に応じて減額され、保険料を納めてない期間が長くなれば長くなるほど、将来もらえる年金額が少なくなってしまうのです。

納付期間が10年に満たない場合は年金がもらえないことも

さらに、保険料の納付期間が10年に満たない場合は、たとえ保険料を納めた期間があったとしても、老齢基礎年金を受け取ることができなくなってしまいます。また、国民年金を納めていないと、怪我や病気で障害認定を受けた場合に受け取れる「障害年金」や配偶者を亡くした際に受け取れる「遺族年金」が受け取れなくなるおそれも。国民年金を未納のままにしておくと、老後だけでなく自分や家族に万が一のことがおきた場合についても、十分な備えができなくなってしまうのです。

2年以内なら後から納めることができる

主に自営業者が加入する国民年金は、サラリーマンが加入し、給与から保険料が天引きされる厚生年金と違い自主的に納める必要があるので、自動引落の手続きをしていないと、うっかり納付を忘れてしまうこともあります。納付が遅れると日本年金機構から「国民年金未納保険料納付推奨通知書(催告状)」が届き、未納期間や金額を確認することができます。国民年金の保険料の納付期限は原則として対象月の翌月末日(例:2020年1月分の納付期限は2020年2月末日)ですが、期限を過ぎてしまった場合も2年以内であれば、後から保険料を納めることができます。2年を過ぎてしまうと後から納めることができなくなってしまいますので、注意してください。

国民年金を払えないときは「免除制度」または「猶予制度」の活用を

免除・猶予期間の保険料は、10年分なら追納が可能

とはいえ、失職や休職で収入が途絶えた際など、どうしても毎月の保険料が支払えなくなることも考えられます。実際、厚生労働省の発表によると平成30年度の国民年金の保険料納付率は約68%で、約32%の人が保険料を納めていません。では、経済的理由で保険料が納められない場合は、どうすればいいのでしょうか?

【参考】厚生労働省「平成30年度の国民年金の加入率・納付率」 詳しくはこちら

国民年金では、経済的事情で保険料を納めることができない人のために、保険料の①免除制度と②納付猶予制度を設けています。いずれの制度も本人から申請があった場合のみ、利用できる制度です。手続きをせずに未納期間が続くと、年金を受け取れなくなるおそれがあります。経済的に保険料の納付が難しいことが予想される場合は、年金事務所に相談し、必ず申請手続きを済ませておきましょう。

①免除制度

所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下(※)の場合や失業した場合など、保険料を納めることが経済的に困難な場合に、保険料の納付が免除される制度です。免除の割合は本人や世帯主、配偶者の前年度の所得によって判断されることになっており、全額免除、4分の3免除、2分の1(半額)免除、4分の1免除の4つのケースに分けられます。
免除された分の保険料は支払わなくてもよいことになりますが、その分、老後に支給される年金の額が少なくなります。

②納付猶予制度

20歳から50歳未満で本人と配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下(※)の場合に、保険料の納付が猶予される制度です。猶予された期間は、年金の受給資格期間には算入されるので未納扱いとはなりませんが、猶予期間後に保険料を納付しない限り、支給される年金額は少なくなります。

※免除・猶予が認められる所得の目安は(扶養親族の数+1×35万円)+22万円
例)妻と子供1人を扶養している場合(2+1)✕35万円+22万円=127万円

免除・猶予期間の国民年金保険料は、10年分なら追納が可能

前述のとおり、保険料の免除や猶予の承認を受けた期間がある場合は、保険料を全額納付した場合と比べて年金の受給額が少なくなってしまいますが、「追納制度」を使って免除・猶予期間中の保険料を後から支払えば、年金の受給額を増やすことができます。

ただし、保険料の追納が認められるのは、追納が承認された月からさかのぼって10年分のみ。例えば、2020年の2月に追納が承認された場合、追納できるのは10年前の2010年の2月以降の未納の保険料であり、それ以前の未納分については追納できません。また、すでに年金を受給中の人が過去の未納分について追納することはできないので、注意が必要です。

追納にはどんな手続が必要?

免除期間・猶予期間の保険料の追納をするには、年金事務所への申請が必要です。まず、日本年金機構のウェブサイトの「国民年金保険料に関する手続き」のページから、「国民年金保険料追納申込書」をダウンロードし、必要事項を記入の上、身分証明書(マイナンバーカードもしくはマイナンバーが確認できる書類と免許証またはパスポートなど)を添えて年金事務所の窓口に持参もしくは郵送で提出してください。

追納が承認された場合は、通知書と納付書が郵送されてくるので、納付書に記載されている期限内に金融機関やコンビニエンスストア等で保険料を追納してください。未納分の保険料を一括で支払うこともできますし、1ヶ月分~6ヶ月分まで分割して支払うこともできます。追納申込書に分割区分を選ぶ欄があるので、無理なく払える金額を考えた上で決めてください。なお、追納の場合は、未納分のうち古い月の分から納めなくてはならず、新しい月の分を先に支払った場合は、支払い分の保険料が還付されてしまうので、注意しましょう。

追納したほうがお得? 追納のメリットとは

追納したほうがお得? 追納のメリットとは

免除や猶予を受けていた期間の年金保険料を追納すると年金の受給額を増やすことができますが、追納にはもうひとつ大きなメリットがあります。それは、節税効果が期待できることです。追納分を含め、国民年金の保険料は全額が社会保険料控除の対象となって所得から差し引かれるため、所得に応じて課税される所得税や住民税が安くなるのです。

一時的に手持ちのお金が減ってしまうので追納を迷う人もいますが、年金の増額と節税効果を考えると、多くの場合、結果的には追納したほうがお得です。免除や猶予期間のある人は、経済的に余裕ができ次第、10年以内に追納して、できるかぎり未納分を減らすことをおすすめします。

そもそも自分に未納期間があるかどうかがわからない人、免除や猶予について知りたい人は、年金事務所に相談しましょう。窓口に行くことに抵抗がある人は、日本年金機構が運営するウェブサイト「年金ねっと」の活用を。登録すれば自身の年金記録や将来の年金見込額を24時間いつでもオンラインで確認することができます。

【参考】年金ねっと 詳しくはこちら

まとめ

20歳以上60歳未満の人に加入が義務付けられている国民年金。65歳以降に満額を受け取るためには、40年間毎月欠かさず保険料を支払わねばなりません。ただし、経済的に余裕がなく月々の保険料の支払いができない場合は、年金事務所で申請すれば保険料の支払いの免除もしくは猶予を受けることができます。ただし、免除や猶予を受けると将来受け取れる年金が減ってしまうので、経済的に余裕ができ次第、免除・猶予期間の保険料を追納することをおすすめします。追納可能な期間は免除・猶予を受けてから10年以内に限られており、これを過ぎると追納できなくなることに注意が必要です。

【参考】
日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 詳しくは
こちら
日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」 詳しくはこちら

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