がんなども対象となる「障害年金制度」の基礎知識

障害年金とは、病気や怪我で働けなくなった際に老齢でなくても受けられる年金のことです。この記事では、どういった条件で受給できるのか、実際に支給される金額など、障害年金制度の基本的事項を解説します。

がんなども対象となる「障害年金制度」の基礎知識

障害年金とは?

障害年金とは?

病気や怪我で就労が厳しくなったときに受け取れる障害年金。受給には、病気や怪我の程度、それに年金を納めていたかどうかなどのさまざまな条件が設けられています。

国民年金・厚生年金、それぞれの障害年金をみていきましょう。

(1)障害基礎年金(国民年金)

国民年金加入期間に初診日のある病気や怪我が原因で、障害等級が1~2級の障害が残った場合、障害基礎年金の対象となります。また、まだ国民年金に加入していない20歳前の人や、国民年金を脱退した60歳以上65歳未満の人でも、条件を満たしていれば受給できます。

(2)障害厚生年金(厚生年金)

厚生年金加入期間に初診日のある病気や怪我が原因で、1~3級に当てはまる障害が残った場合に障害厚生年金の対象となります。1級と2級の場合は、障害基礎年金を併給することが可能です。

(3)障害手当金(厚生年金)

厚生年金に加入しており、初診日から5年以内に病気や怪我が治ったものの軽度の障害が残ってしまった場合、障害手当金という一時金を受け取ることができます。

障害年金をもらうための条件

障害年金をもらうための条件

障害年金をもらうためには、定められた期間に年金を納付していることが大前提です。初診日の月の前々月までに、年金加入期間の2/3以上の期間において年金を納めている必要があります。また、初診日に65歳未満で、かつ初診日の月の前々月までの1年間きちんと納付していることも条件です。

受取人が20歳前の場合はそもそも年金の納付義務がないため、受給が可能です。また、60~65歳未満の人は、過去に国民年金を納付している、現在日本に住んでいる、年金の繰り上げ請求をしていない、という条件があります。

障害の重さを示す等級が、障害基礎年金だと1~2級、障害厚生年金だと1~3級が受給の対象です。

障害年金が支給される障害の程度を確認しよう

1級は、日常生活を1人で送ることが困難とされる人が認定されます。ほぼ寝たきりの生活で、ほとんどの動作に他人の介助が必要な状態です。

2級は、最低限生活する上での動作はできるものの、他人の手助けが必要な状況があり、就労して収入を得るのは厳しいという障害が当てはまります。

3級は、一般的な日常生活は送れるものの、就労するには制限のある状態です。3級は「傷病が治らないもの」と定められています。もし、傷病が治ったうえで障害が残り就労が厳しい場合は、障害手当金という一時金の受給対象となります。

障害等級は身体障害だけでなく、うつなどの精神障害、入院や自宅療養などで就労が厳しいがんや糖尿病、その他疾患などにも適用されます。

等級を満たしていると認定されるのはいつ?

役所に必要書類を提出してから認定がおりるまで一般的には3ヶ月程度、障害厚生年金の場合は半年ほどかかるケースもあるようです。受給の認定がおりると年金証書が送られ、さらにその1~2ヶ月後に年金の支給が始まるという流れです。つまり、申請から実際に受給するまで最短でも半年ほど、長い場合は8ヶ月ほどの期間を要します。

障害年金の金額はいくら?

障害年金の金額はいくら?

それでは、支給額の具体的な金額を確認してみましょう。

障害基礎年金の支給額とは

支給額は等級により変動します。詳細は下記の通りです。

障害基礎年金の支給額

等級 月額 年額
1級 81,427円 977,125円
2級 65,141円 781,700円

【参考】障害年金支援ネットワーク:「令和2年度(2020年度)の障害年金の金額」詳しくはこちら

高校卒業前の子供がいる場合は、その人数に応じて加算されます。子供に1級、2級の障害がある場合は条件が高校卒業前から20歳未満となり、2年延長されます。
加算額は下記の通りです。

子の加算額

子の数 月額 年額
1人目、2人目 18,741円 224,900円
3人目 6,250円 75,000円

【参考】障害年金支援ネットワーク:「令和2年度(2020年度)の障害年金の金額」詳しくはこちら

障害厚生年金の支給額とは

障害厚生年金の額は厚生年金の加入期間や収入によって変動します。障害等級が1級もしくは2級の場合は、障害基礎年金を併給することが可能です。
また、受給者に配偶者がおり、かつその年収が一定額以下といった条件を満たしている場合は、さらに配偶者加給年金が加算されます。この額は、子供の加算額の1人目、2人目の額と同じです。

障害厚生年金の支給額

等級 金額
1級 報酬比例の年金×1.25+配偶者加給年金
2級 報酬比例の年金+配偶者加給年金
3級 報酬比例の年金(最低保証額48,858円/月)
(最低保証額586,300円/年)
障害手当金 報酬比例の年金の2年分(最低保証1,172,600円)

【参考】障害年金支援ネットワーク:「 令和2年度(2020年度)の障害厚生年金の金額」詳しくはこちら

障害年金がいくら支給されるか計算してみよう

障害年金の支給額がいくらになるかは、個人の収入や家族構成などの状況に応じて変わってきます。例として、障害等級が2級で、専業主婦の妻、高校卒業前の子供が2人いる家庭がいる場合を考えてみましょう。

【障害基礎年金】
 65,141円(受給額)+18,741円(子の加算)×2=102,623円/月

出典 

【障害年金支給額】
102,623円(障害基礎年金)+18,741円(配偶者加給年金)+報酬比例の障害厚生年金×1.25

出典 

つまり、「障害基礎年金+配偶者加給年金=12万1,364円」に障害厚生年金の「報酬比例の年金×1.25」を足した額となります。報酬比例の年金は人によってさまざまですが、2級の場合で、配偶者と子供2人の4人世帯は一般的に月額15万から18万円ほどが目安になります。

障害年金が途中でもらえなくなることも……

障害年金が途中でもらえなくなることも……

障害年金の受給を認定する年金証書には、次回の診断書提出の日程が記載されています。この手続きを行わなければ支給が止まるおそれもあるので、十分に注意しましょう。

障害年金の認定には、更新なしの「永久認定」と更新が必要な「有期認定」がある

手足の欠損など障害の治療が今後も見込めない場合は、更新が不要となる「永久認定」です。逆に、改善の余地がある場合は、定期的に医師の診断書を提出する「有期認定」です。

労災関係の給付も受け取れるときはどうなる?

労災保険の保険給付と、厚生年金保険及び国民年金の保険給付とは、一緒に併給することが可能です。ただ、同一の事由で労災保険の給付と厚生年金保険等の給付が全額支給されることは、二重の填補が行われることになるため、こうした場合は、事業主の負担割合や国の負担割合等を考慮して一定の方法により調整されることになっています。

また、労災保険による補償が行われず会社が障害補償を行う場合、会社から補償金がもらえる代わりに障害年金は6年間支給停止となります。これは、例えば国による労災認定が受けられず、結果として労災が給付されないようなとき、民事で会社の賠償責任が認められるケースが挙げられます。

失権してしまうと、再び支給を受けられない?

3等級にも該当しなくなって3年間が経つか65歳になると支給が止まりますが、症状が悪化して再び等級に該当すれば再開されます。65歳未満の場合はあくまで支給停止という形であり、失権するのは65歳以降もしくは受給者が死亡したときです。

障害年金を申請するときの流れ

障害年金を申請するときの流れ

申請するときにまず把握しておきたいのが、障害認定日による請求の仕方です。病院との連携が大切になってくるので、通院の履歴は残しておくことが肝心です。

障害認定日による請求の例

障害に関わる初診日から1年6ヶ月経過した日に、健康状況を確認して障害かどうかを決めます。ここで障害と認定されると、この日が障害認定日です。この認定日から3ヶ月以内の診断書を添付することで、翌月分から障害年金を受給できます。この流れが障害認定日請求です。諸々の手続きに数か月かかっても認定日から5年以内であれば、さかのぼって年金を受給できます。

事後重症による請求の例

初診日から1年6ヶ月経過した日に認定がおりなかったものの、その後悪化して等級に該当する障害に認定された場合は、事後重症請求という形になります。書類受付日の翌月から受給されます。障害認定日請求とは違って、実際に障害と認定された日までさかのぼって請求することはできません。

まとめ

まとめ

障害年金を受給するには、初診日とその病院をしっかり把握している、年金に加入している、という点が大前提です。特に初診日の把握は何よりも重要です。病院にかかる際は、そのときの記録をきちんと残しておくようにしましょう。

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