加給年金とは?受給条件・金額・手続きを解説!年の差婚夫婦は必見

加給年金とは、自身が65歳で老齢厚生年金を受け取り始めてから、配偶者が65歳になるまで受け取れる加算です。この記事では、加給年金の対象者や条件、金額の計算方法などを解説します。年間約39万円の加給年金が付くケースがあり、夫婦間の年の差が大きいと受け取る期間が長くなるため、合計額が数百万円にものぼる可能性があります。

加給年金とは?受給条件・金額・手続きを解説!年の差婚夫婦は必見

加給年金制度とは

加給年金制度とは

加給年金とは、老齢厚生年金と老齢基礎年金を満額受け取れるようになった時(基本的には65歳)に加算されて受け取ることができる年金です。

主に公務員や会社員(以下、会社員等と表記します)であった期間が長い人が年金を受け取る時に、条件を満たす配偶者や子がいた場合に加算される年金制度です。
加給年金は、夫婦の公的年金の加入状況や収入などによって、受け取れるケース、受け取れないケースがあります。

加給年金制度の対象者の条件

加給年金制度の対象者の条件

加給年金が受け取れる条件には、夫や妻の年齢や年金の加入状況などの条件があります。
以下では、便宜的に年上の方を「夫」年下の方を「妻」として記載しますが、夫妻が逆のケースでも同じです。
なお、国民年金には加給年金制度はないため、夫婦とも自営業で国民年金のみといった場合には加給年金は付きません。

夫の条件

①65歳以上で老齢厚生年金を受け取っている
②65歳より若い場合でも定額部分を受け取っている
③厚生年金(共済組合)加入期間が20年以上ある
④③が20年未満でも、男性は40歳以降、女性は35歳以降に厚生年金加入期間が15~19年(生年月日により異なる)ある
⑤厚生年金が停止されていない(在職中で給与等により厚生年金が全額停止の間は加給年金は付かない)
⑥妻子の生計を維持している(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族であるなどの事項が認められる場合)

妻の条件

①65歳未満である
②厚生年金(共済組合)加入期間20年以上の老齢厚生年金(特別支給含む)や退職年金を受け取る権利がない
③男性は40歳以降、女性は35歳以降の厚生年金加入期間が15年~19年以上(生年月日により異なる)の老齢厚生年金(特別支給含む)を受け取っていない
④年収850万円(または所得655万5,000円)未満である
注1:②は会社員等の期間が20年(③は厚生年金加入期間が15~19年)より短い場合は加給年金を受け取れるという意味です。
注2:②について、加入期間20年以上の老齢厚生年金・退職年金を受け取る権利を持っていても、以下の場合は加給年金の支給停止における経過措置として、引き続き加給年金を受け取ることが可能です。・2022年3月時点で加給年金が支給されている場合 ・2022年3月時点で妻が厚生年金に20年以上加入した実績があり、老齢厚生年金などを受け取る権利を持っていても支給停止となっている場合

子の条件

①18歳到達年度の末日まで、または、20歳未満で1級・2級の障害の状態にある
②年収850万円(または所得655万5,000円)未満である

加給年金で受け取れる金額はいくら?

加給年金の支給額は以下の表のように、対象者によって金額が変わります。
夫婦のみで、妻が加給年金の要件を満たす場合は、妻が65歳になるまで、夫の年金に39万7,500円が上乗せされます。
要件を満たす子供がいる場合は、2人までなら1人につき22万8,700円、3人以上いる場合は3人目からは1人につき7万6,200円が上乗せされます。

加給年金の対象者と支給額※

対象者 加給年金の支給額
配偶者 39万7,500円
(特別加算16万8,800円を含む)
1人目・2人目の子 それぞれ22万8,700円
3人目以降 それぞれ7万6,200円

※夫が1943年4月2日以後生まれの場合。特別加算額は生年月日によって異なる

モデルケースで金額を確認!

モデルケースで加給年金の金額を確認してみましょう。
夫が65歳になり、加給年金を受け取れるケースで、その時の家族が以下のような場合、年金額は図のようになります。

■モデルケース
・夫65歳
・妻60歳
・子21歳、17歳、16歳の3人

●子の加算
21歳の子供は年齢的に加給年金の要件を満たしていないため該当しませんが、2人目、3人目の子供は加給年金の対象となり、それぞれ18歳の年度末になるまで1人あたり22万8,700円が加算されます。

●妻の加給年金と振替加算
妻は65歳から自身の年金(国民年金と厚生年金※)を受け取るものとします。
妻が65歳になるまでは夫に加給年金が付き、妻が自分の年金を受け取る年齢になると、夫の加給年金は停止され、妻自身に振替加算が年間1万5,323円付くという流れになります。
振替加算に関しては後述しますが、夫が死亡しても生涯加算され続けます。
※経過措置の条件に該当するものとする

このケースの場合、加給年金が約267万円と振替加算で約38万円受け取るので合計約305万円になります(妻が90歳で亡くなった場合)。

(加給年金)計算式:39万7,500円×5年間(配偶者)+22万8,700円(1人目)+22万8,700円×2年間(2人目)=267万3,600円......①

(振替加算)計算式:1万5,323円×25年間(65歳から90歳まで)=38万3,075円......②

①+②=305万6,675円

【参照】日本年金機構「加給年金額と振替加算」詳しくはこちら

加給年金の受け取りに必要な手続き

加給年金の受け取りに必要な手続き

加給年金を受け取るためには、手続きが必要です。必要書類を揃えて、年金事務所で申請を行いましょう。

加給年金の申請に必要な書類

加給年金の申請に必要な書類は、原則として以下の3点です。現在は、②や③を省略できる場合が増えています。
将来的にはさらに簡素化される可能性もあるので、ご自身の年金受給スタートの時に送られてくる書面や年金事務所等で事前に確認してみてください。

①戸籍謄本
②世帯全員の住民票写し
③妻や子の所得証明書または非課税証明書

注:①②は加算開始日以降に発行されたもので、かつ提出日の6ヵ月以内のものを用意してください。

加給年金の申請方法

加給年金の申請に必要な書類を準備したら、最寄りの年金事務所または年金相談センターで申請手続きを行います。
申請手続き後、日本年金機構から加給年金の手続きのお知らせが届くので、同封の返信はがきに必要事項を記入して返送しましょう。

特別支給の老齢厚生年金の請求時に、加給年金の対象となる妻や子が確認されていなかった場合などは「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」の提出が必要です。

振替加算とは

振替加算とは

モデルケースに出てきたように振替加算は、夫の加給年金が停止すると代わりに妻に付く加算です。加給年金を受け取った人は、誰でも振替加算を受け取れると思われがちですが、一部例外があります。

また、妻が65歳よりも後に老齢基礎年金を受け取る権利を持った時には、加給年金の対象者でなくても、受給条件を満たしていれば、妻の老齢基礎年金に振替加算が加算されます。

振替加算の対象者となる条件

①妻が1926年4月2日から1966年4月1日までの間に生まれていること
②妻が加入期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取れる権利が発生していないこと
③妻の共済組合などの加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の加入期間が<表1>の期間未満であること

<表1>

妻の生年月日       共済組合などの加入期間を除いた
厚生年金保険の35歳以降の加入期間
1947年4月1日以前 15年
1947年4月2日〜1948年4月1日 16年
1948年4月2日〜1949年4月1日 17年
1949年4月2日〜1950年4月1日 18年
1950年4月2日〜1951年4月1日 19年

振替加算で受け取れる金額はいくら?

振替加算で受け取れる金額は、生年月日により以下のように異なります。

振替加算の額(抜粋)

生年月日 振替加算額(年)
1959年4月2日~1960年4月1日 2万7,444円
1960年4月2日~1961年4月1日 2万1,269円
1961年4月2日~1966年4月1日 1万5,323円
1966年4月2日~ 0円

【参照】日本年金機構「加給年金額と振替加算」詳しくはこちら

年金の受取り額を増やす方法

年金の受取り額を増やす方法

加給年金のほかにも年金の受取り額を増やす方法があります。老後の資産形成のために、できることから始めましょう。

年金を繰り下げて受け取る

現在、65歳から受給することができる老齢基礎年金や老齢厚生年金は、最長75歳まで(※)遅らせることができます。年金を繰下げ受給することで、年金の受取り額を増やすことができます。

繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることができます。

繰下げ受給で1ヶ月遅らせるごとに、受け取れる年金額が0.7%ずつ増加し、最大で75歳まで繰り下げることで84%増加します。

※1952年4月1日以前生まれの方(または2017年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げ上限年齢が70歳までとなります。その場合の増加率は最大で42%となります。

【参照】日本年金機構 「年金の繰下げ受給」詳しくはこちら

60歳以降も働く

厚生年金は、原則70歳まで加入できます。60歳以降も会社などで働いて厚生年金保険料を納めていれば、将来受け取る年金額が増えます。また、繰下げ受給の増額率も反映されるので、大きく年金額を増やすことができます。

ただし、60歳以降も働く場合には注意が必要です。60歳以降、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る制度のことを「在職老齢年金制度」といいます。在職老齢年金制度では、老齢厚生年金の額と給与(賞与を含む)の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止になる場合があります。

60歳以降も働きすぎると、年金が減ってしまうということを覚えておきましょう。

iDeCoやNISAに加入する

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、国民年金や厚生年金とは別に年金を受け取れる私的年金制度です。自分で決めた掛金を自分で選んだ運用商品で運用し、老後(原則60歳以降)に掛金とその運用益を受け取ることができます。

iDeCoのメリットは、掛金が全額所得控除になるため、所得税や住民税が軽減される点です。また、運用益にかかる税金も非課税で、年金を受け取る際も税制優遇が受けられます。

NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は、運用で得た利益に税金がかかりません。
いつでも解約ができて、60歳以降(年齢の上限なし)も投資が続けられます。2024年1月から始まる新しい制度では、非課税の投資が無期限でできるうえ、1年間に投資できる枠が拡大されます。

まとめ

まとめ

加給年金とは、老齢厚生年金と老齢基礎年金を満額受け取れるようになった時(基本的には65歳)に加算されて受け取ることができる年金です。

加給年金を受け取れるかどうかは、夫婦の年齢や年金加入歴に加えて、65歳以降の働き方によっても変わります。自分と配偶者が将来、いくら年金をもらえるのかを把握しておくことは老後の生活設計をするうえでとても大切なことです。

気になる方は事前に年金事務所などに予約したうえで、相談するとよいでしょう。

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