【年金の種類】公的年金・私的年金の種類を理解して老後資金を備えよう

年金にはさまざまな種類があり、大きくは「公的年金」と「私的年金」に分けられます。それぞれの年金制度に含まれる種類や概要、給付要件、給付金額などを解説します。国が運営している公的年金に入っていれば安心とは限りません。将来の年金生活をイメージして、老後に安心して暮らせる資産形成をしてきましょう。

【年金の種類】公的年金・私的年金の種類を理解して老後資金を備えよう

年金の種類について

年金の種類について

日本の年金制度は、国の制度として加入する「公的年金」と、企業が独自に導入したり、個人が任意で加入する「私的年金」の2つに大きく分けられます。そしてそれぞれ、いくつかの種類があります。

日本の年金制度とその種類

種類 概要
公的年金 国民年金 20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度
公的年金 厚生年金 70歳未満の会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する年金制度
私的年金 企業年金 企業が独自に導入する年金制度で「確定給付企業年金」や「企業型確定拠出年金」などがある
私的年金 iDeCo 個人が掛金を拠出・運用しながらつくる年金で、税金面のメリットが大きい
私的年金 国民年金基金 厚生年金に加入できない自営業者などが国民年金に上乗せできる年金
私的年金 個人年金保険 民間の保険会社が取り扱う年金づくりに特化した保険

公的年金とは

公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎的な年金制度です。学生や無職の人、専業主婦なども加入する義務があります。

一方、厚生年金は、企業などに雇用されている70歳未満の会社員や公務員などが、国民年金に上乗せして加入するものです。仕事をしていても自営業やフリーランスの人は加入できません。

会社員や公務員は国民年金と厚生年金の2つの制度に加入し、どちらの年金も受け取れることから、日本の公的年金は「2階建て」と呼ばれます。

国民年金と厚生年金について、制度の対象者(被保険者)や保険料についてみていきましょう。

①国民年金の被保険者と保険料

全国民が対象である国民年金の被保険者の分類と保険料について解説します。

【国民年金の被保険者】

国民年金の被保険者は、属性(働き方)によって「1号〜3号」の3つのタイプに分類されています。

[第1号被保険者]
第1号被保険者は、自営業者やフリーランスとその配偶者、学生、無職の人などです。第2号被保険者、第3号被保険者に該当しない人が第1号被保険者になります。

[第2号被保険者]
第2号被保険者は、会社員や公務員などです。第2号被保険者は、国民年金にプラスして職場を通じて厚生年金にも加入します。

[第3号被保険者]
第3号被保険者は、第2号被保険者(会社員など)に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者です。

【国民年金の保険料】

国民年金の保険料は、所得などに関係なく一律で、1ヶ月あたり1万6,520円(令和5年度)です。

第1号被保険者は、国民年金保険料を自分で納めなければなりません。納付書や口座振替、クレジットカードで支払うことができます。2023年2月からは、納付所のバーコードをスマートフォンの決済アプリ(auPAY、楽天ペイなど)で読み取ることで、電子決済もできるようになりました。
また、半年分、1年分などまとめて前払いすると割引があります。

なお、学生や低所得の人など、国民年金保険料の納付が経済的に難しい時は、保険料の免除や納付が猶予される制度を利用することができます。

第2号被保険者の国民年金保険料は、厚生年金保険料に含まれるため、勤務先を通じて納めることになっています。詳しくは後述します。

第3号被保険者の国民年金保険料は「基礎年金拠出金」として、厚生年金制度全体で負担する仕組みになっています。よって、自分で納める必要はありません。

②厚生年金の被保険者と保険料

厚生年金の被保険者と保険料について解説します。

【厚生年金の被保険者】

厚生年金の被保険者は、厚生年金制度が適用されている会社などに常時雇用される70歳未満の人です。また、国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員も該当します。

勤務時間や勤務日数によっては、厚生年金の被保険者にならないこともありますが、近年、加入要件が緩和され、被保険者の範囲が拡大しています。

【厚生年金の保険料】

厚生年金の保険料は、毎月の給与を一定のルールで区分した「標準報酬月額」と賞与の額(標準賞与額)に、それぞれ共通の料率(18.3%)をかけて算出します。国民年金のように定額ではなく、基本的には給与が多いほど保険料も高くなる仕組みです。

厚生年金保険料は会社と折半して負担します。上記の計算式で算出した保険料の半額を、給与から天引きされるかたちで支払うことになります。
なお、厚生年金保険料として給与から差し引かれている保険料には、国民年金保険料も含まれています。

公的年金から受けられる給付は?

公的年金から受けられる給付は?

公的年金から支給される年金は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つがあります。国民年金と厚生年金のそれぞれから支給されますが、支給要件は異なります。

①老齢年金

一定の年齢になると受け取ることができるのが老齢年金です。国民年金から支給されるのが「老齢基礎年金」厚生年金から支給されるのが「老齢厚生年金」で、生存している限り生涯支給されます。

老齢年金はいずれも、原則として65歳から受給できますが、60歳から65歳までの間に繰り上げて受け取る「繰上げ受給」や、66歳から75歳までの間に繰り下げて受け取る「繰下げ受給」を選択することもできます。なお、繰上げ受給の場合は一定の割合で減額され、繰下げ受給の場合は一定の割合で増額されます。

【老齢基礎年金】

国民年金から支給される老齢基礎年金は、受給資格期間(保険料を納付・免除されていた期間などの合計)が10年以上ある人が、原則65歳から受け取ることができる年金です。

老齢基礎年金の支給額は、国民年金の保険料を納めた期間によって変わります。20歳から60歳まで40年間すべて保険料を納めた人への支給額は、年額79万5,000円(68歳以上は79万2,600円、令和5年度)です。保険料の納付期間が40年未満の人は、不足期間に応じて減額されます。

【老齢厚生年金】

厚生年金から支給される老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたうえで、厚生年金の被保険者期間が1年以上ある人が、原則65歳から受け取ることができる年金です。老齢基礎年金に上乗せして支給されます。

老齢厚生年金の支給額は、厚生年金に加入していた時の報酬(給与・賞与)や加入期間によって決まります。
厚生労働省の発表によると、令和3年度の老齢厚生年金受給者の平均月額は、老齢基礎年金も含めて14万5,665円です。

②障害年金

障害年金は、けがや病気によって日常生活や仕事が制限される障害を負った時に、受け取ることができる年金です。国民年金から支給されるのが「障害基礎年金」厚生年金から支給されるのが「障害厚生年金」です。

障害年金を受け取ることができるのは「加入期間中に初診日(医師などに初めて診察を受けた日)がある」「障害認定日に一定の障害の状態にある」「一定期間以上、年金保険料を納付している」などといった要件を満たした人です。

障害年金は老後に限りませんので、65歳未満で障害を負った場合でも対象になります。

【障害基礎年金】

障害基礎年金は、国民年金に加入中のけがや病気によって1級、2級の障害が残った時に受け取ることができる年金です。日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で国民年金制度に加入していない期間のけがや病気による障害も保障されます。20歳より前のけがや病気による障害も同様に保障の対象ですが、障害基礎年金の支給は20歳を過ぎてからとなります。

障害基礎年金の支給額は、障害の等級に応じて支給される基本額が異なり、受給する人に一定の要件を満たす子どもがいれば基本額に加算があります。

基本額は、1級の場合で年額99万3,750円(68歳以上は99万750円)、2級の場合で年額79万5,000円(68歳以上は79万2,600円)です。
子どもの加算額は、二人目までは一人あたり22万8,700円、三人目以降は各7万6,200円です(金額はいずれも令和5年度)。

【障害厚生年金】

障害厚生年金は、厚生年金に加入中のけがや病気で、1〜3級の障害が残った時に受け取ることができる年金です。1級または2級の場合は、障害基礎年金も同時に受け取ることができます。

障害厚生年金の支給額は、厚生年金加入中の報酬や加入期間によって異なります。また、1級または2級の場合は、一定の要件を満たす配偶者がいれば、加給年金額として年額22万8,700円(令和5年度)がプラスされます。

3級の場合は、加給年金額はありませんが、最低保証額が年額59万6,300円(68歳以上は59万4,500円、令和5年度)と定められています。
さらに、3級より軽い障害の場合でも「障害手当金」という一時金が支給されることがあります。

③遺族年金

遺族年金は、国民年金・厚生年金に加入していた人が死亡した時、その人に生計を維持されていた配偶者や子どもなどが受け取ることができる年金です。国民年金から支給されるのが「遺族基礎年金」厚生年金から支給されるのが「遺族厚生年金」です。

【遺族基礎年金】

遺族基礎年金は、亡くなった人の子どものいる配偶者または子どもに支給されます。つまり、亡くなった人に子どものいない場合、その配偶者は遺族基礎年金を受給できません。
この場合の子どもとは「18歳になる年度末までの子」または「20歳未満の障害等級1・2級の子」です。

遺族基礎年金の支給額は定額で、年額79万5,000円(68歳以上は79万2,600円)に子どもの加算額がプラスされます。子どもの加算額は、二人目までは一人あたり22万8,700円、三人目以降は各7万6,200円です(金額はいずれも令和5年度)。

【遺族厚生年金】

遺族厚生年金は、亡くなった人が厚生年金に加入していた場合に遺族が受け取ることができる年金です。受け取ることができる遺族に優先順位があり、最も順位の高い人に支給されます。順位は、1.配偶者・子、2.父母、3.孫、4.祖父母の順で、例えば配偶者や子どもに支給されると、それ以降の順位の人には支給されません。

また、夫・父母・祖父母が受け取る場合は「被保険者の死亡時に年齢が55歳以上である」という条件があります。
支給額は、死亡した人の厚生年金加入中の報酬や加入期間によって異なります。

私的年金とは

私的年金とは

私的年金は、公的年金に上乗せして企業や個人が準備する年金です。「公的年金は2階建て」と述べましたが、私的年金に加入することで、年金を「3階建て」にすることができます。

私的年金には、会社単位で加入する「企業年金」個人単位で加入する「iDeCo(イデコ)」や「国民年金基金」保険会社が販売する「個人年金保険」などがあります。それぞれの特徴と概要を押さえておきましょう。

①企業年金

企業年金は、企業の福利厚生制度の1つで、従業員の退職後の生活保障として設けられた年金制度です。企業年金制度の有無や掛金・給付内容などは企業によって異なります。

企業年金はいくつか種類がありますが、代表的なものに「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(企業型DC)」があります。

確定給付企業年金(DB)は、企業と従業員間の規約に基づき、あらかじめ決められた金額を給付する年金制度で、現在、日本で最も利用の多い企業年金制度です。
掛金は原則企業が負担し、企業が拠出・運用・管理・給付までの責任を負います。

将来受け取れる金額があらかじめ約束されているため、従業員にとっては安心感がある一方、企業が拠出から給付までの全責任を負うため、企業にとっては負担が大きい制度といえます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用して将来の年金をつくる年金制度です。給付額があらかじめ決まっている確定給付企業年金に対し、企業型確定拠出年金は、個人の運用によって将来受け取れる金額が変動します。
柔軟な制度設計が可能なため、従来の企業年金制度からの移行が多く、利用が拡大している制度です。

掛金は企業が拠出しますが「マッチング拠出」という制度を導入している場合は、企業の掛金に上乗せして従業員本人も拠出することができます。従業員本人の掛金は給与から天引きされ、全額が所得控除の対象になるため、所得税・住民税の支払いが軽減されるメリットがあります。

一方で、将来受け取れる金額は従業員自身の運用によって増減しますので、適切な運用スキルを身につける必要があります。

②iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金・イデコ)は、基本的に20歳以上65歳未満のすべての人が加入できる私的年金制度です。加入者自身が掛金を拠出し、運用商品も加入者が選んで運用し、将来、運用成果に応じて給付が受けられるという仕組みです。

掛金は、国民年金の被保険者種別(1号〜3号)と、企業年金の加入状況によって上限額が決まっています。例えば、会社員(第2号被保険者)で勤務先に企業年金がない場合は、毎月の掛金の上限は2万3,000円です。

iDeCoの最大のメリットは、税負担の軽減効果が高いということです。
まず、掛金全額が所得控除の対象になり、所得税・住民税の支払いが軽減されます。また、運用による利益(運用益)は非課税で再投資が可能です。受け取る時も控除があり、税負担を軽減することができます。

一方で、将来受け取れる金額は運用成果によって変動します。原則として運用中の資産は60歳までは引き出すことはできず、中途解約もできない点はデメリットでしょう。

③国民年金基金

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなどの国民年金の第1号被保険者が、国民年金に上乗せして加入することができる私的年金制度です。国民年金基金は、国民年金に上乗せして厚生年金に加入している会社員などとの年金額の差を解消するために創設されました。ただし、厚生年金は強制加入であるのに対し、国民年金基金は任意加入です。

掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。
iDeCoのように個人で運用するものではないため、掛金の支払いによって将来受け取れる金額が確定します。また、65歳から生涯受け取る終身年金が基本ですので、長い老後の生活に備えることができます。

一方で、加入は任意ですが、一度加入すると、自分の都合で任意に脱退することができません。

④個人年金保険

個人年金保険は、民間の保険会社などが取り扱う保険商品です。毎月一定額の保険料を払い込み、契約時に決めた年齢(60歳など)から年金として受け取るのが基本的な仕組みです。

保険料や加入期間、年金額、受取方法などを自由に選択できるため、自分のライフプランに合わせて利用することが可能です。また、一定の条件を満たせば、保険料が「個人年金保険料控除」の対象になり、所得税や住民税が軽減されます。

一方で、保険商品ですので、途中で解約すると元本割れするリスクがあります。また、仕組みが複雑な商品もありますので、利用する際にはしっかりと確認するようにしましょう。

まとめ

まとめ

年金制度は「公的年金」と「私的年金」に分かれており、それぞれ種類があります。年金制度や種類を知ることは、老後資金の準備としてはもちろん、万一の時の保障の準備にも役立ちます。
公的年金を基本とし、足りない部分は私的年金も活用しながら、不安のない老後生活が送れるよう、早いうちから資金準備を始めましょう。

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