長期投資には重要な「リバランス」ってなんですか?

投資をしていれば一度は耳にする「リバランス」という言葉について、みなさんはその意味や内容を十分に理解していますか? リバランスは、リスクを適度に抑えつつ、目標とする利回りを達成するための重要な投資方法となっています。リバランスを学び、今よりひとつ上の投資家を目指していきましょう。

長期投資には重要な「リバランス」ってなんですか?

まずはここから!「ポートフォリオ運用」とは?

まずはここから!「ポートフォリオ運用」とは?

「リバランス」を知る前に、知っておかなければいけないものがあります。それは「ポートフォリオ」です。ポートフォリオとは、「投資家が保有する資産全体またはその構成のこと」を指すもので、もともとは証券等の保管がポートフォリオ(紙ばさみ)で行われていたことに由来します。

例えば、私達の老後を支える年金は2020年4月1日以降、運用利回り1.7%を確保する目的で「国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%、」という「基本ポートフォリオ」によって運用されています(年金積立金管理運用独立行政法人「第4期中期目標期間(2020年4月1日からの5ヶ年)における基本ポートフォリオ」より)。

■年金積立金運用の基本ポートフォリオ

年金積立金運用の基本ポートフォリオ

【参考】年金積立金管理運用独立行政法人「基本ポートフォリオの考え方」 詳しくはこちら


年金のように、複数の異なる資産に分散して運用することを「ポートフォリオ運用」といいます。ポートフォリオ運用を行う目的は、リスクの低減です。例えば株式だけで運用を行っていると、相場が暴落した際には大きな影響を受けてしまいます。しかし、債券などのほかの資産に分散をしていれば、暴落相場でもその影響を抑えることができるのです。

リバランスとは?

リバランスとは?

リバランスとは、金融商品の組み合わせを定期的に見直すことです。例えば、先程見た「年金積立金運用の基本ポートフォリオ」が、下記のイメージ図左のように1年経過後に株式相場の上昇の影響を受けてのように変化があったとします。

■リバランスのイメージ

リバランスのイメージ

当初の基本ポートフォリオに比べると、株式の比率が上昇していることがわかります。もともと株式の比率は全体の50%(国内株式25%、外国株式25%)を基本としているので、70%(国内株式35%、外国株式35%)は比率が高すぎることから、イメージ図右のように比率を50%に戻す作業を行います。

具体的には、上昇した株式の比率が当初の割合に戻るよう一部を売却し、その売却した資金を使って比率が下がっていた債券を買ってもとの比率に戻し、全体を当初の比率に戻します。このように金融商品の組み合わせを見直す作業のことを「リバランス」といいます。

なぜリバランスが必要なの?

なぜリバランスが必要なの?

では、なぜリバランスをしなくてはいけないのでしょうか? 前述の年金を例に見てみましょう。もともと国内・国外の株式・債券を25%の比率を基本ポートフォリオとしていた年金ですが、これは長期的に年金積立金の運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保するように定められたものでした。つまり、「運用利回り1.7%を得るために、最低限必要なリスクを負ったポートフォリオ」ということです。

ところが、1年経過した時点で、株式の比率が高まりました。一般的に「債券」より「株式」の方が、リスクが高いといわれているため、1年経過後のポートフォリオでは基本ポートフォリオよりリスクが高くなってしまったということになります。この比率のままでは基本ポートフォリオに比べて、高いリスクのまま運用を続けることになってしまいます。

投資をする上でリスクを考える事はとても重要です。もちろんリスクが高い分、結果的に利回りが高くなる可能性もありますが、年金はあくまでも運用利回り1.7%の確保を目指しているため、過度なリスクをとる必要がありません。そのためリバランスを行い、基本ポートフォリオで定めたリスクを維持しているのです。

リバランスのタイミングは?

リバランスのタイミングは?

では、リバランスはどのようなタイミングで行えばよいのでしょうか?
毎日ポートフォリオをチェックして比率を元に戻せば、目標としているリスクを維持し続けられるかもしれません。しかし、個人で行うこととしては、時間や手数料を考えるとあまり現実的ではありません。

リバランスは年1回を目安に

リバランスのやり方は、「定期的にすべき派」と「一定割合以上ずれたら随時すべき派」に分かれますが、個人で行う場合、一般的には「年1回程度が適当」だと考えられています。その理由は、余計な気負いを減らすためです。仮に株式が暴落したとき、安くなった株を買ってリバランスする行為は、投資家としては正しい行為ですが、そんな暴落した状況下ではなかなか冷静な精神状態ではいられず、誤った判断をしてしまうリスクがあります。リバランスを年に1度の行事として習慣づけ、それ以外の市場の動きは一旦スルーしておく、という考え方が一般で浸透しているようです。

さらに1%など、少しのズレならさほど気にする必要はないとされています。比率がどれくらい変わっていたらリバランスを行えばよいかについては、例えば、目安を±10%にするなどのルールを定め、過度な売買を控えて売買手数料を抑えつつリバランスを行い、リスクをコントロールしていきましょう。

リバランスのメリット・デメリット(注意点)

リバランスのメリット・デメリット(注意点)

リバランスをする最大の目的は「リスクをコントロールして、目標利回りの達成確率を維持すること」です。リバランスを怠ると、知らず知らずの間に過剰なリスクを抱えて運用を続けることになってしまうので、年1回のチェックは欠かさず行い、その際資産比率の変動がルールで定めた数値以上あればリバランスを行いましょう。

一方、デメリットとして挙げられるのは、リバランスするために売却・購入を行うので売買手数料がかかることです。そのため、リバランスは年1回を目安に各資産比率がルールで定めた数値以上の変動があったときに絞って行うと良いでしょう。

まとめ

リバランスは長期投資の際には、目標達成に近づくための資産運用に必要かつ重要なメンテナンスのひとつになります。難しいものではなく、理解すれば誰でも簡単に行えるものなので、ぜひリバランスをマスターして、より良い資産形成を行ってください。

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