認知症になった親のお金の管理はどうする?成年後見人制度や事前の対策を解説

親が認知症になって自分でお金の管理ができなくなった時、どうしますか?今回は、本人に代わって通帳やお金の管理をできるようにする「成年後見人」や「日常生活支援事業」を解説します。口座凍結されたり、管理方法の選択肢がなくなったりしないよう、親が認知症になる前にしておくべきことが分かるでしょう。

認知症になった親のお金の管理はどうする?成年後見人制度や事前の対策を解説

認知症になるとお金の管理が難しくなる

認知症になるとお金の管理が難しくなる

認知症になると認知機能が低下し、銀行預金や家計費の管理が難しくなります。
支給された年金をすぐに使いきってしまう、自分の欲しいものを次々と買い込んでしまう、通帳やキャッシュカードを何度も紛失してしまうといった行動が増え、日常生活に支障が生じます。

高齢者を狙った悪徳商法や特殊詐欺などの被害に遭うことも、認知症になると起こりうる金銭トラブルの1つです。自分がお金を使ったことを忘れてしまい、家族や知人にお金を盗まれたと思い込んでしまう、といった被害妄想も認知症が原因だといえます。家族が信用できずに暴言を吐いてしまったり、法的手段に訴えたり、と家族が代わりにお金を管理することが容易でない事態に陥ることもあります。

そこで知っておきたいのが、家族以外の人が代理人となって認知症の人の財産を不当な契約などから守る制度です。認知症の症状が出る前、出た後で利用できる制度やサービスも異なりますので、どのような選択肢があり、どのような手続きが必要なのかを知っておくことが必要でしょう。

認知症になったら「成年後見制度(法定後見制度)」を利用する

認知症になったら「成年後見制度(法定後見制度)」を利用する

認知症などで判断力が落ち、自力でお金の管理ができなくなった人のための制度としては、後見人が財産管理を行う「成年後見制度」がよく知られています。
ただ、成年後見制度は、本人や家族が後見人を決められない・手続きが難しい・後見人への報酬を支払わねばならないなどの理由で敬遠されるケースが多く、利用率は伸び悩んでいます。

最高裁判所の調査によると、2022年1月から2022年12月末までの成年後見制度の利用者数は、計24万5,087人です。2025年の推定認知症患者数は675万人~730万人と推定されていることを考えると、認知症になった人の数%しか成年後見制度を利用していないことになります。

では、成年後見制度を利用していない認知症患者の家族は、どのようにして患者のお金の管理を行っているのでしょうか。

【参考】最高裁判所「成年後見関係事件の概況―令和4年1月~令和4年12月-(P13)」詳しくはこちら

【参考】内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版)「第2節 高齢期の暮らしの動向 2.健康・福祉(P21)」詳しくはこちら

軽度の認知症なら「委任状」により現金の引き出しなどが可能

多くの金融機関では、病気や障害のために店舗に来ることができない人のために、手続きの一部を代理人に委任できる仕組み「委任状」を設けています。認知症の症状が軽度で、本人が委任状を書ける場合は、この制度を利用して代理人が金融機関で預貯金の払い戻しや、振り込みなどの手続きをすることができます。
金融機関によって委任状の手続き方法が異なる場合があるので、ホームページなどで確認しましょう。ホームページから委任状をダウンロードできる金融機関もあります。

認知症になった場合のお金の管理方法

認知症になった場合のお金の管理方法

認知症になった場合の金銭管理においては、成年後見人制度のほかにも利用できる制度があります。
各市町村の社会福祉協議会が行っている「日常生活自立支援事業」は、公的な制度の1つで、金銭管理や福祉サービスの利用を支援する事業です。専門職員による定期的な訪問が受けられるほか、必要に応じて「日常的金銭管理サービス」や「書類等預かりサービス」といったサービスも受けることができます。

金銭トラブルを起こしてしまったり、自分でお金の管理ができなくなったり、認知症になった時の不安は尽きません。しかし、このような制度を上手に活用することで自ら金銭管理を行い、できる限り自立した生活を送ることができます。

日常的金銭管理サービス

「日常的金銭管理サービス」は、週1~2回の頻度で自分の預金口座から現金を引き出してきてもらい、自宅で受け取ることができるサービスです。市町村によっては、税金や公共料金・保険料などの支払いの手続きの代行を頼めるケースもあります。

サービスの利用には利用者の所得に応じて、0円~1万円/月程度の利用料が必要です。有料ではありますが、信頼できる職員が本人の預金口座から生活費を引き出して来てくれるので、離れて暮らしている家族にとっても大変便利なサービスだといえるでしょう。

書類等預かりサービス

日常生活自立支援事業では、日常的金銭管理サービスで使う預金通帳や銀行印、年金証書や権利書、保険証書などの重要書類を預かる「書類等預かりサービス」も提供しています。書類等の保管は原則として、金融機関などの貸し金庫で行い、毎月数百円~千円程度の費用がかかります。

認知症になると口座が凍結される?

認知症になると口座が凍結される?

認知症になった場合、銀行側の判断で預金口座が凍結されてしまうおそれがあります。
凍結されると、家族であってもお金を動かせなくなってしまうため、介護費用や医療費用、生活費が引き出せなくなってしまいます。預金口座が凍結される理由は、口座名義人が詐欺などの犯罪や、口座の不正使用に巻き込まれで財産を失うのを防ぐためです。

認知症になった後も口座の利用を続ける方法は「法定後見制度」を利用するのが基本です。
しかし、前述したように、この制度は手続きが煩雑で時間と費用もかかり、凍結解除は現実的ではありません。家族の経済的な負担と手間を軽減するためにも、認知症になる前に金銭管理に関してできることを知っておく必要があるでしょう。

認知症になる前にお金の管理に関してできること

認知症になる前にお金の管理に関してできること

お金の管理に関して、まだ認知症になっていないからこそできる対策があります。判断能力が十分あるうちに、将来に備えて公的な制度や金融機関のサービスの手続きをしておくことで、自分の意思に基づいて資産管理することが可能になります。

お金の管理方法を決めておく

家族が認知症になる前に、あるいは物忘れが悪化する前に、今後のお金の管理の方法について親族間で話し合い、方針を定めておくことが必要です。

注意すべき点は、家族が本人に代わって金銭を管理するのは最終手段とすること。高齢の親は、自分の財布からお金を自由に使えないと、自尊心を傷つけられたと感じてしまいます。
公的な制度や金融機関の商品などを利用して、なるべく本人が自分の意思や意見に沿ってお金の管理方法を決定できるようにしましょう。

また、家族が本人の通帳を管理する場合、親族間でトラブルが生じる可能性があります。誰か一人がお金を管理するのであれば、お金の流れをほかの人間が確認できるようにする、お金を使う時の決まりを設けるなどすると、周囲から疑いの目を向けられることを防げます。

任意後見制度を利用する

任意後見制度とは、成年後見制度の1つで、判断能力が不十分になり財産管理や施設入居の契約などを行えない人を守るための制度です。

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所が後見人を選任します。対して、任意後見制度は、本人の判断能力が衰える前に本人が自分の意思で後見人を選ぶことができます。
任意後見人には、家族や友人、弁護士、司法書士、社会福祉士などの第三者、社会福祉協議会や信託銀行などの法人を選任することができますし、複数の後見人を立てることも可能です。
任意後見人の職務や報酬は、本人との間の契約する内容によって異なります。誰を任意後見人にするのか、何を依頼するのかを前もって本人が決められる点も大きな特徴です。

家族信託を利用する

家族信託とは、将来、自分で財産を管理できなくなった時のために、財産の管理をする権限を家族に与えておくことをいいます。

元気なうちから資産の管理・処分を託すことで、本人の指示に基づく財産管理を行うことができます。本人が判断能力を喪失した後は、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。
さらに、積極的な資産運用や組み換え(不動産の売却や置換、アパート建設など)も家族の責任と判断で可能となります。

財産管理委任契約を結んでおく

さまざまな場面で使える包括的な委任状「財産管理等の委任契約書」というものがあります。骨折などの身体的な理由で寝たきりになったような場合に、金融機関からの預貯金の引き出しができます。役所での住民票や戸籍謄本の取得なども可能です。

メリットは、この契約書1通で手続きごとに委任状を書く手間が省けること。信頼できる家族や第三者と契約を結んでおくと、長期入院や出歩くことが困難になった時に、受任者が代理人となってサポートしてくれます。

身内がきちんと財産管理をしていても、ほかの血縁者から要らぬ疑いをかけられるケースもあります。そういった時に財産管理等委任契約書を作成しておくことで、受任者を守ることができるでしょう。

信託銀行に相談する

認知症になる前にお金の管理に関してできること

信託銀行とは、銀行業務に加え、顧客の金銭や土地などの財産を運用・管理する「信託業務」を行う銀行です。

信託銀行では、万が一、契約者本人が認知症などで判断能力が低下した場合に、あらかじめ指定しておいた代理人(家族など)が信託財産を引き出せる商品が用意されています。こういった商品について説明を受けることで、認知症になった時のお金の管理について親自身が考えるきっかけが生まれるかもしれません。

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また、将来のお金の管理の方法について話し合う際に、信託銀行の担当者に同席してもらうのもよい方法です。親子だと感情が邪魔をして冷静な話し合いができない場合も、専門家の客観的な意見やアドバイスなら素直に受け入れてくれるケースも多いものです。

まとめ

認知症になってしまった場合に、金銭の管理をする方法として、成年後見制度が整備されています。しかし、手続きが煩雑なうえに管理の柔軟性も低く、後見人への報酬もかかってしまうなど、決して使い勝手がいいとはいえません。

認知症が発症する前、もしくは重症化する前に、家族間でお金の管理方法について話し合い、本人の意思を明確に確認しておくと安心です。

任意後見制度や信託銀行などで取り扱っている家族で財産管理できる商品は、そうした本人の意思に基づいて財産を管理できるうえに、不当な契約や不利益などから法律や金融の専門家が守ってくれるところが大きなメリットです。上手に活用して、自分の資産は自分で守りましょう。

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