いざというとき両親のお金の管理はどうする?家族ができる手続きとは

親が認知症になって自分でお金の管理ができなくなったとき、どう対処すればよいのでしょうか?たとえ親に預貯金があっても、自由に引き出せなくなると、親の生活費や医療費などを子供が肩代わりしなくてはならなくなってしまいます。そこで今回は、本人に代わって家族が親の通帳やお金の管理をできるようにする方法をご紹介します。

いざというとき両親のお金の管理はどうする?家族ができる手続きとは

原則は成年後見制度だが、利用者は少ない

原則は成年後見制度だが、利用者は少ない

認知症などで判断力が落ち、自力でお金の管理ができなくなった人のための制度としては、後見人が財産管理を行う「成年後見制度」がよく知られています。ただ、成年後見制度は本人や家族が後見人を決められない・手続きが難しい・後見人への報酬を支払わねばならないなどの理由で敬遠されるケースが多く、利用率は伸び悩んでいます。

最高裁判所の調査によると、2019年12月末現在の成年後見制度の利用者数は計22万4,442人。2020年の推定認知症患者数は602万人~631万人と推定されていることを考えると、認知症になった人の数%しか成年後見制度を利用していないことになります。では、成年後見制度を利用していない認知症患者の家族は、どのようにして患者のお金の管理を行っているのでしょうか?

【参考】最高裁判所「成年後見関係事件の概況―平成31年1月~令和元年12月-」詳しくはこちら

【参考】内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版)「第2節 高齢期の暮らしの動向 2.健康・福祉」詳しくはこちら

軽度の認知症なら「委任状」により現金の引き出しなどが可能

病気や障害のために店舗に来ることができない人のために、多くの金融機関では、手続きの一部を代理人に委任できる仕組みを設けています。認知症の症状が軽度で、本人が委任状を書ける場合は、この制度を利用して代理人が金融機関で預貯金の払い戻しや振り込みなどの手続きをすることができます。委任状は各金融機関のホームページでダウンロードすることができます。金融機関によって手続きが異なる場合がありますので、ホームページ等で確認しましょう。
代理人に手続きを行ってもらうには、まず本人(預貯金口座の持ち主)が委任状に必要事項を記入します。代理人は記入済みの委任状と自分自身の身分確認ができるもの(運転免許証など)と印鑑を金融機関に持参し、手続きの代理を申請します。
金融機関が委任状や代理人の身分確認をして問題がなければ、代理人による手続きが認められることになります。ただし、引き出し金額が大きい場合や口座の解約等を希望する場合は、意思確認のために金融機関から委託者に電話等で問い合わせが入る場合があります。

離れて暮らしている家族にも安心!「日常生活支援事業」

離れて暮らしている家族にも安心!「日常生活支援事業」

以下の条件に当てはまる人は、各市町村の社会福祉協議会が行っている「日常生活支援事業」の支援を受けることができます。

・判断能力が不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人)
・本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人

社会福祉協議会に事業の利用を申請して認められると、専門職員による定期的な訪問が受けられるほか、必要に応じて「日常的金銭管理サービス」や「書類等預かりサービス」といったサービスも受けることができます。ただし、サービスの利用には原則として一定の費用がかかります。

日常的金銭管理サービス

「日常的金銭管理サービス」は、週1~2回の頻度で自分の預金口座から現金を引き出してきてもらい、自宅で受け取ることができるサービスです。市町村によっては、税金や公共料金・保険料などの支払いの手続きの代行を頼めるケースもあります。サービスの利用には利用者の所得に応じて、0円~1万円/月程度の利用料が必要です。有料ではありますが、信頼できる職員が本人の預金口座から生活費を引き出して来てくれるので、離れて暮らしている家族にとっても大変便利なサービスだと言えるでしょう。

書類等預かりサービス

日常生活支援事業では、日常的金銭管理サービスで使う預金通帳や銀行印、年金証書や権利書、保険証書などの重要書類を預かる「書類等預かりサービス」も提供しています。書類等の保管は原則として金融機関等の貸し金庫で行い、毎月数百円~千円程度の費用がかかります。

両親が認知症になるまえにしておくべきことは?

成年後見制度を使わずに家族のお金の管理ができる方法を紹介しましたが、いずれも認知症が重篤化してしまい、本人の判断力や理解力が完全に失われてしまった場合は、利用できません。認知症は誰にでも罹患する可能性のある疾患です。家族が認知症になる前に、あるいは認知症が悪化する前に、今後のお金の管理の方法について話し合い、方針を定めておくことをおすすめします。「お金のことは聞きづらい、話しづらい」という人には、間接的に親の意思を確認できる以下の2つの方法をおすすめします。

エンディングノートを活用する

エンディングノートを活用する

エンディングノートは、自分に万が一のことが起こった時に備え、家族や知人・友人に伝えたいことを書き留めておくノートの総称で、一般の書店などでも購入することができます。書式や内容は様々ですが、中には財産の内訳や、その使いみちについての希望などを記載するページを設けているものもあります。何かの機会に、さりげなくお金に関する希望や意思を確認するのも良いでしょう。ただし、エンディングノートには遺言のような法的な効力はないことに注意が必要です。

信託銀行を活用する

信託銀行を活用する

信託銀行とは、銀行業務に加え、顧客の金銭や土地などの財産を運用・管理する「信託業務」を行う銀行です。信託銀行では、万が一、契約者本人が認知症などで判断能力が低下した場合に、予め指定しておいた代理人(家族など)が信託財産を引き出せる商品が用意されています。こういった商品について説明を受けることで、認知症になったときのお金の管理について親自身が考えるきっかけが生まれるかもしれません。

また、将来のお金の管理の方法について話し合う際に、信託銀行の担当者に同席してもらうのも良い方法です。親子だと感情が邪魔をして冷静な話し合いができない場合も、専門家の客観的な意見やアドバイスなら素直に受け入れてくれるケースも多いものです。

まとめ

親が認知症になってしまった場合に金銭の管理をする方法として、成年後見制度が整備されていますが、手続きが煩雑な上に管理の柔軟性も低く、後見人への報酬もかかってしまうなど、決して使い勝手が良いとはいえません。認知症が軽度で本人の意思確認ができるなら、成年後見制度ではなく、金融機関の委任状による手続きの代行制度や、社会福祉協議会の日常生活支援事業のサービスを、信託銀行などで取り扱っている家族で財産管理できる商品で活用することができます。認知症になる前、もしくは重症化する前に、親子でお金の管理方法について話し合い、必要であれば専門家のサポートも利用して、親の意思を明確に確認しておくと安心です。

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