定年後に年金で損する「収入制限」に要注意!働きすぎで年金の一部・全部が支給停止に

定年後もまだまだ働くつもりでいるという方も多いことでしょう。しかし、定年後に働きすぎると、年金が減額、もしくは全額停止になる可能性があることをご存知でしょうか? この記事では、老後の生活において、年金を受け取りながらも働くための収入の基準をご紹介します。

定年後に年金で損する「収入制限」に要注意!働きすぎで年金の一部・全部が支給停止に

年金の「収入制限」とは

年金の「収入制限」とは

近年では定年を65歳とする企業も増えており、さらに定年後も働くことのできる企業が増えてきました。そのため、60歳以降も働こうと考えている方が多いのではないでしょうか。そんな方に注意してほしいのが、年金の「収入制限」です。実は、年金を受け取っている時に、働いて一定の収入を得ることで、受け取れる年金が減額される「在職老齢年金制度」という仕組みがあるのです。そこで、年金を受け取りながら働くための注意点などを確認してみましょう。

対象となるのは厚生年金の加入者

在職老齢年金とは、厚生年金に加入しつつ受給する老齢厚生年金のことを指します。つまり、減額や全額停止の対象となってしまうのは、厚生年金のみです。基礎年金に関しては減額の対象とならないので、たとえ在職老齢年金制度で全額停止になっていても、老齢基礎年金の満額にあたる約6万5,000円(2021年現在)は受け取ることができます。

【参考】日本年金機構「年金の受給(老齢年金)」詳しくはこちら

年金の収入制限に関するルール

年金の収入制限に関するルール

年金の収入制限(=在職老齢年金)に関するルールをご紹介します。

「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計金額が基準

基準となるのは「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額です。「総報酬月額相当額(給与月額)」とは、月給(標準報酬月額)に直近1年間の賞与を12で割った額を足した額です。つまりボーナスを含めた給料を平均した月額のことを指します。「年金月額」とは、老齢厚生年金(年額)を12で割った額、つまり厚生年金の月額です。配偶者や子がいる場合に加算される加給年金は含めません。それでは、年金の収入制限にはどのようなルールが適用されるのか見ていきましょう。

基準金額を超えた場合はその金額に応じて減額の程度が決まる

基準金額を超えた場合、どの程度の金額が減額されるのでしょうか?その金額は「基準金額をいくら上回ったか」と「年齢」で決定されます。年齢は65歳未満と65歳以上で分けて考えます。

65歳未満の場合は「28万円」が支給停止の基準

65歳未満と65歳以上で異なる基準金額が定められている

60歳以上65歳未満と、65歳以上で異なる基準金額が定められています。この基準金額を超えてしまうと、年金がカットされてしまいます。

60歳以上65歳未満の基準金額は、「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額が28万円です。28万円を超えた場合、老齢厚生年金の減額もしくは全額支給停止が適用されます。
こちらのルールについては、男性で1961年4月2日以降、女性で1966年4月2日以降生まれの人は、年金の受給開始が原則65歳からとなるので関係ありません。ただし繰上げ受給により65歳より前に受給開始すると、減額対象となることもあるので、繰上げ受給を考えている方は把握しておきましょう。

65歳以上の基準金額は、「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額が47万円です。47万円を超えた場合、老齢厚生年金の減額もしくは全額支給停止が適用されます。

65歳未満の支給停止額の計算方法

65歳未満の場合は、「総報酬月額相当額(給与月額)」や「年金月額」の大きさによって、細かく計算方法が分けられています。まずは「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額が28万円以下のパターン。これは基準金額に満たないので、当然減額はなく、年金は全額支給されます。
次に「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額が28万円を超えた場合、支給停止額の計算方法は以下の表の通りとなります。

総報酬月額 年金月額28万円以下 年金月額28万円超
総報酬月額相当額47万円以下 (総報酬月額相当額+年金月額-28万円)×1/2 総報酬月額相当額×1/2
総報酬月額相当額47万円超 (47万円+年金月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-47万円) (47万円×1/2)+(総報酬月額相当額-47万円)

【参考】生命保険文化センター「在職老齢年金について知りたい」詳しくはこちら

65歳未満の支給停止額の計算例

例えば、「総報酬月額相当額(給与月額)」が30万円、「年金月額」が20万円だったとします。この場合は表の左上の計算方法で考えるので、実際に式に数値を当てはめると、
(30万円+20万円-28万円)×1/2=11万円となり、老齢厚生年金から11万円が減額されます。よって実際に受け取ることのできる年金額は、20万円-11万円=9万円となります。

もう一例挙げると「総報酬月額相当額(給与月額)」が50万円、「年金月額」が30万円だったとします。この場合は表の右下の計算方法で考えるので、実際に式に数値を当てはめると、
(47万円×1/2)+(50万円-47万円)=26万5,000円が支給停止額となり、受け取ることのできる年金額は、30万円-26万5,000円=3万5,000円です。

65歳以上は「47万円」が支給停止の基準

年金の収入制限の今後

続いて65歳以上の支給停止額の計算方法をご紹介します。65歳以上になると、年金カットの基準が少し緩くなります。「総報酬月額相当額(給与月額)」と「年金月額」の合計額が47万円を超える場合は、47万円を超えた額の1/2の年金の支給が停止されます。

65歳以上の支給停止額の計算例

先ほどの例と同じく「総報酬月額相当額(給与月額)」が50万円、「年金月額」が30万円だった場合、(80万円-47万円)×1/2=16万5,000円が支給停止額となり、受け取ることのできる年金額は、30万円-16万5,000円=13万5,000円となるのです。

年金の収入制限の今後

在職老齢年金制度があると、年金を受け取りたい人にとって老後は働きづらくなってしまいます。そこで政府は近年、制度の見直しをおこなっており、高齢者でも働きやすい制度作りを目指しています。2022年4月からは60〜65歳未満の基準額も28万円から47万円に引き上げられる予定です。収入制限の基準が引き上げられれば、今後はより働きやすくなることでしょう。基準額は随時調整される可能性があるので、常に目を向けてみてください。

まとめ

老後の働き方に少なからず影響する在職老齢年金制度。年金をもらいながらも給与収入を得るには、自分の収入制限の基準を知っておく必要があります。ぜひ、今回紹介した計算方法で自身の収入制限を確認してみてください。また、今後の収入制限の調整にも目を配りながら自分らしい老後の生活スタイルを考えていきましょう。生活していきましょう。

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