退職金の計算方法!種類による違いや税金を理解して老後資金に備えよう

退職金は、勤続年数や退職時の給与、役職、退職理由などによって金額が異なります。この記事では、退職金の計算方法や受け取る際にかかる税金について解説します。老後資金として期待できる年金をうまく活用するために、仕組みや金額を把握しておきましょう。

退職金の計算方法!種類による違いや税金を理解して老後資金に備えよう

まずは知ろう!退職金の仕組み

まずは知ろう!退職金の仕組み

退職金にはさまざまな種類があり、退職金の仕組みはその種類ごとに異なります。企業によって採用している退職金の種類にも違いがあり、なかには退職金制度を設けていない企業も少なくありません。まずは、退職金の種類や仕組みについて理解することが大切です。

退職金は会社によってありなしが決まる

退職金制度は、すべての企業が設けているものではありません。法律上では、退職金制度の設定は義務づけられておらず、任意で設けることとされています。必ず設定しなければならないものではないことから、退職金制度を設けていない企業もあります。

退職金の確立過程として、第二次大戦後の頃には終身雇用制度を前提に、定年まで長く働き続けた社員に支払う「賃金の後払い」や「老後の生活保障」との考え方がありました。その後、高度経済成長期に退職金制度が普及してからは、多くの企業が退職金を採用していたため、仕事をやめるときには退職金を受け取ることが当たり前と思っている人もいるかもしれません。

ただし近年では、年齢に関係なく転職するケースも増加し、成果主義を採用する企業が増えたことから、従来の日本で主流だった終身雇用制度を採用する企業が減少している傾向もみられます。働き方の多様化が進み、正社員以外の働き方で従業員を採用する企業も増加しています。さまざまな変化が生じ、退職金制度は当たり前ではなくなっているでしょう。

現在では、転職をするとその都度退職金が支払われるのではなく、確定拠出年金制度のように、次の就職先でも同じ制度が導入されているときには退職金の残高を引き継いでもらえる新しい制度も施行されています。複数の退職金制度が存在し、その運用方法や受け取る金額などの幅は広くなっています。退職金制度の有無や採用している種類は各企業によって異なるため、将来自分はどれだけ受け取れるかについて確認しておくことが大切です。

退職金の平均支給額

厚生労働省が発表した「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」の「退職給付(一時金・年金)の支給実態」では、2017年に退職金制度がある企業において「勤続20年以上で45歳以上の退職者」に支払われた退職金の額などがわかります。この調査では、主な退職理由として「早期優遇」「会社都合」「定年」「自己都合」の4種類が挙げられています。

早期優遇や会社都合の場合は、退職金の金額が高額になります。一方で、自己都合で仕事をやめるケースでは比較的低い金額です。定年退職のケースにおいては他の理由と比べ、標準的な退職金額が設定されていると考えられます。2017年に定年を理由に支払われた退職金は、学歴別・職種別でみると以下の通りです。

・大学・大学院卒(管理・事務・技術職):1,983万円
・高校卒(管理・事務・技術職):1,618万円
・高校卒(現業職):1,159万円

退職金の給付制度の形態は、「退職一時金制度のみ」「退職年金制度のみ」「両制度併用」の3パターンに分けることが可能です。それぞれのパターンで退職金平均にも違いがあり、退職一時金制度のみのケースよりも退職年金制度のみのケースが高額になっています。さらに両制度併用のケースでは、より高額の退職金が支払われています。2017年における、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の退職金支払額は以下の通りです。

・退職一時金制度のみ:1,678万円
・退職年金制度のみ:1,828万円
・両制度併用:2,357万円

【参照】厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態」詳しくはこちら

退職金の種類は4つ

退職金の種類は、運用方法などを基に、「退職一時金」「退職金共済」「確定給付年金」「確定拠出年金」の4種類に分けられます。
受け取り方法は大きく2種類あり、退職金をまとめて一度に受け取る「一時金」、60歳以降になってから数年間に分けて年金としてお金を受け取る「企業年金」に分けられます。

退職一時金

退職一時金とは、従業員が仕事をやめるときに、退職金を一回でまとめて受け取る制度です。その金額や受け取る時期は、各企業の就業規則や退職金規定などであらかじめ定められています。退職一時金の金額は、従業員の勤続年数や退職時の役職といった条件を基に決められます。規定などで定められている通りの方法で計算でき、確定した金額を受け取れます。

退職金共済

退職金共済は、事業主(企業)が退職金共済機構と契約して毎月の掛け金を預け、退職金共済機構が運用を行います。従業員が仕事をやめるときに退職金共済機構がやめる従業員に対して直接退職金を支払う制度です。
退職金の金額は、「掛け金月額×納付月数」によって決定します。また、43月以上の被共済者には、運用の収入状況に応じて上乗せされる「付加退職金」が支払われます。

確定給付年金

確定給付年金は、「Defined Benefit Plan」の略で「DB」とも呼ばれる制度です。企業が信託銀行や生命保険会社など外部に掛け金を預けて管理や運用を任せ、退職金の資金を捻出します。運用が思うようにいかず不足が出た場合でも、不足分は会社が補填するため従業員の受取額は減額されません。

確定拠出年金

確定拠出年金は、「Defined Contribution Plan」の略で「DC」とも呼ばれます。外部に預けた掛け金を従業員が自身で管理・運用する制度です。掛け金は基本的に企業が全額負担しますが、会社によっては従業員が自分で資金を出して上乗せすることも可能で、将来受け取る退職金の金額は本人が運用した結果によって決まります。

退職一時金の計算方法

退職一時金の計算方法

退職一時金の計算方法は、主に4つあります。どの計算方法を採用するかは企業が定めています。

基本給連動制

基本給連動制は、退職時の基本給に勤続年数によって設定した支給係数をかけて計算します。中にはその時の役職や、退職理由が自己都合か会社都合かを加味して計算する企業もあります。
退職理由が会社都合の場合に出る退職金を100%とした場合、自己都合の場合は80%に設定している企業が多いようです。

基本給連動制の場合で、計算してみましょう。
例えば支給係数を勤続10年で10、20年で20、30年で30とします。さらに自己都合の退職として、最後に0.8を掛けて合計を出してみます。

■基本給連動制の退職金の一例

・基本給30万円/勤続10年
30万円×10×0.8=240万円

・基本給45万円/勤続20年
45万円×20×0.8=720万円

・基本給50万円/勤続30年
50万円×30×0.8=1,200万円

出典 

別テーブル制

別テーブル制は、勤続年数だけでなく、役職を考慮した計算方法です。
勤続年数ごとに基本給とは別の退職金基準額を設定します。さらに、一般社員なら1、課長なら1.2といった役職に応じた係数と、退職理由(自己都合か会社都合かなど)と組み合わせたテーブル(表)を作成し、それを基に計算します。

勤続年数と役職を考慮し、自己都合の場合でシミュレーションしてみます。

■別テーブル制の退職金の一例

・勤続10年(基準額100万円)/一般社員(1)/自己都合退職(0.8)
100万円×1×0.8=80万円

・勤続20年(基準額200万円)/課長(1.2)/自己都合退職(0.8)
200万円×1.2×0.8=192万円

・勤続30年(基準額300万円)/部長(1.5)/自己都合退職(0.8)
300万円×1.5×0.8=360万円

出典 

定額制

定額制では、役職や基本給などは考慮されず、勤続年数によってあらかじめ決められた額が支払われます。就業規則や退職規程によって確認ができます。

ポイント制

ポイント制は、勤続年数や職能ポイントなど、さまざまなポイントを付与して退職金を計算する方法で、勤続年数に応じた1年あたりのポイントや役職などの階級によって1年あたりのポイントを付与していきます。
ポイントの単価を設定し、勤続年数や役職などの階級のポイントを合算して計算していきます。

例えば、1年ごとに20ポイント、その他役職に応じて一般が5ポイント、主任が20ポイント、係長が30ポイントという様なポイント制度とします。1ポイントの単価が1万円の会社では、以下のような計算になります。

■ポイント制の退職金の一例

・勤続10年(200)/一般職10年(50)/自己都合退職(0.8)
(200+50)×1万円×0.8=200万円

・勤続20年(400)/一般職10年(50)主任10年(200)/自己都合退職(0.8)
(400+50+200)×1万円×0.8=520万円

・勤続30年(600)/一般職10年(50)主任10年(200)係長10年(300)/自己都合退職(0.8)
(600+50+200+300)×1万円×0.8=920万円

出典 

退職金共済の計算方法

退職金共済の計算方法

退職金共済は、自社内で退職金を積み立てるのが難しい企業が、外部の機関に委託して積み立てていく形式を採用しています。退職金に充てる資金が潤沢でない中小企業を中心に普及している制度です。

代表的な機関としては、厚生労働省の所管である独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部(中退共)があります。中退共に加入し退職金を受け取るケースでは、退職金の計算をするときに「基本退職金」だけでなく必要に応じて「付加退職金」をプラスするケースもあります。

基本退職金は、掛け金月額と納付月数から計算することが可能です。毎月の掛け金は、5,000円から3万円までの16種類が準備されているため、勤続年数などに応じた掛け金を決定します。退職金の受け取り額は、掛金月額と納付月数に応じて固定されている金額で、43月以上は予定利回り1%で運用された額となります。

長期間納付している人の退職金を手厚くするため、働いている期間が長くなるほど高額の退職金を受け取れる仕組みとなっています。逆に、働いている期間が短いとそれほど高額な給付が受け取れません。

働いた期間(掛け金納付月数)が12月未満のケースでは支給されず、働いた期間が12月から23月では掛け金よりも受け取る金額が低くなります。24月から42月の間働いたケースでは、掛け金相当の基本退職金を受け取ることが可能です。そして、働いた期間が43月以上のケースになると、掛け金よりも高額の基本退職金を受け取れます。

付加退職金は、運用利回りが予定運用利回りよりも高かったケースなどで基本退職金に上乗せされ、受け取ることが可能なお金です。運用収入の状況によってその金額が決まります。掛け金納付月数が43月以上の人に支給される退職金であり、毎年厚生労働大臣が運用収入の見込み額などから支給率を定め加算しています。

確定給付年金は給付額が決まっている

確定給付年金は給付額が決まっている

確定給付年金は、日本で多くの企業が採用している制度です。事業主(企業)が従業員にあらかじめ給付内容を約束しておき、将来その約束した内容に基づいて決められた金額を従業員が受け取れます。給付額が決められているため、「Defined Benefit Plan(DB)」とも呼ばれています。

確定給付年金には「規約型確定給付企業年金」と「基金型確定給付企業年金」の2種類があります。規約型確定給付企業年金は、事業主(企業)が生命保険会社や信託会社と契約を結び、企業外部に年金資金の管理・運用を依頼する方法です。

基金型確定給付企業年金では、事業主(企業)が別法人としての企業年金基金を設立し、その企業年金基金が年金資金の管理・運用、年金の給付を行います。ただし、どの企業でも基金が設立できるわけではなく、要件として300人以上の従業員の加入が必要です。

確定拠出年金(DC)の計算方法

確定拠出年金(DC)の計算方法

確定拠出年金とは、加入者本人が企業から拠出された掛け金を用いて運用し、その運用結果により年金額が決定する制度のことです。拠出額は原則として企業が決定します。掛け金額の決定方法には「定額」と「定率」があり、企業ごとに定めている年金規約によっても掛け金額は異なります。
定額は加入者全員に同一の掛け金を支払い、定率では加入者の給与などに一定の比率を掛けた金額の掛け金を支払う方法です。

確定拠出年金では、拠出金額に月額5万5,000円の上限額が設定されています。また、確定拠出年金と他の制度を併用しているケースでは拠出金額の上限が低くなることもあるため、上限を超えない範囲で拠出金額を設定しなければなりません。掛け金が拠出限度額内の場合、従業員本人が掛け金を上乗せする「マッチング拠出」を取り入れることも可能です。

確定拠出年金上限額

企業が採用している制度 拠出限度額(月)
・確定拠出年金(DC)のみ 5万5,000円
・確定拠出年金(DC)
・退職一時金
5万5,000円
・確定拠出年金(DC)
・退職金共済
5万5,000円
・確定拠出年金(DC)
・確定給付年金
2万7,500円
・確定拠出年金(DC)
・厚生年金基金
2万7,500円
・確定拠出年金(DC)
・退職一時金
・厚生年金基金など
2万7,500円

確定拠出年金では、拠出額を利用して従業員本人が保険商品や投資信託などの資産運用を行います。将来の受取金額は、拠出額の他に運用利回りによって増えるケースと減るケースがあります。

確定拠出年金は、「将来の受取額=拠出金額×年金終価係数」で目安の計算が可能です。年金終価係数は、毎期一定の金額を積み立てながら、一定の利率で複利運用した場合の積立金合計額を求めるときに使用する係数です。年金終価係数は、エクセルではFV関数を利用して計算できます。年金終価係数をまとめた「年金終価係数表」に、積み立て期間と運用利率を当てはめると、最終的な受け取り額の目安が算出可能です。

年金終価係数表

積立期間(年) 1%     2%     3%    
1 1 1 1
2 2.01 2.02 2.03
3 3.0301 3.0604 3.0909
4 4.0604 4.1216 4.1836
5 5.101 5.204 5.3091
6 6.152 6.3081 6.4684
7 7.2135 7.4343 7.6625
8 8.2857 8.583 8.8923
9 9.3685 9.7546 10.1591
10 10.4622 10.9497 11.4639
11 11.5668 12.1687 12.8078
12 12.6825 13.4121 14.192
13 13.8093 14.6803 15.6178
14 14.9474 15.9739 17.0863
15 16.0969 17.2934 18.5989
16 17.2579 18.6393 20.1569
17 18.4304 20.0121 21.7616
18 19.6147 21.4123 23.4144
19 20.8109 22.8406 25.1169
20 22.019 24.2974 26.8704

毎年60万円ずつの拠出金を運用利回り年2%で20年間積み立てたケースでは、以下の方法で受け取り額が計算できます。
・利回り年2%で20年間積み立て→年金終価係数24.2974
・将来の受取額=年額60万円×年金終価係数24.2974=1,457万8,440円

退職金にも税金がかかる!場合によっては確定申告が必要

退職金にも税金がかかる!場合によっては確定申告が必要

退職金は税法上「退職所得」と呼ばれ、所得税と復興特別所得税、住民税の課税対象になります。退職金は、他の所得とは別に税金がかかる「分離課税」で源泉徴収されるため原則的に確定申告をする必要はありません。

退職金は、長い期間勤めてきた働きに対する報償的な意味合いがあるため、他の所得とは異なり「退職所得控除」が設けられ、税金面での負担を抑える配慮がなされています。また、退職所得だけを記載している源泉徴収票も受け取れます。

ただし、分離課税で源泉徴収されるためには、あらかじめ勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出しておかなければなりません。提出をしなかったケースでは、一律20.42%の税率で所得税額及び復興特別所得税額の源泉徴収が行われます。分離課税ではなく源泉徴収をされてしまった場合には還付を受けることができますが、その場合には確定申告が必要です。

退職所得の受給に関する申告書を勤務先に出していて手続きをする必要がない場合でも、確定申告を行った方がよいケースもあります。退職前の給与が前年度に比べて少ないケースや、高額の医療費を支払っているケースでは確定申告により所得税が還付される可能性があります。

退職金にかかる税金はいくら?

退職金の場合、原則的に退職控除額を差し引いて算出した「退職所得」に税金がかかります。所得税計算に使用する「退職所得控除」は、勤務先に退職所得の受給に関する申告書をあらかじめ出していた場合にだけ受けられる控除です。退職所得控除額は勤続年数が長い方が高く、税制面で優遇される仕組みとなっています。

退職所得控除額一覧

勤続年数 退職所得控除額
勤続20年以下 40万円×勤続年数
勤続20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職所得控除額の計算式は勤続年数が20年以下と20年超えのケースで異なります。税額を計算する前には、自分の勤続年数に当てはまる計算式を使って、退職所得控除額を出さなければなりません。

退職金の所得税計算に必要な税率は、課税対象となる退職所得額に応じて5~45%までの7段階に分かれています。そのため、適切な税率を使用して算出しましょう。さらに、所得税の2.1%分となる復興特別所得税も納付するため、両方の税額を計算する必要があります。

退職金にかかる税率と控除額一覧表

課税退職所得額 税率  控除額   
1,000円〜
194万9,000円
5% 0円
195万円〜
329万9,000円
10% 9万7,500円
330万円〜
694万9,000円
20% 42万7,500円
695万円〜
899万9,000円
23% 63万6,000円
900万円〜
1,799万9,000円
33% 153万6,000円
1,800万円〜
3,999万9,000円
40% 279万6,000円
4,000万円〜 45% 479万6,000円

退職金の受け取り時にかかる住民税の税率は、都道府県民税4%と市区町村税6%を合わせた10%です。住民税も所得税と同様に、収入金額や退職所得控除額などを基に計算ができるため、退職所得を出したあとに住民税率を掛ける方法で算出できます。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金にかかる税金は、勤続年数、退職金額などがわかると計算できます。勤続年数の数え方は端数切り上げのため、1年未満の期間があるケースでは、1日だけの勤務だったとしても1年分として加えることができます。所得税率と控除額は税金が課される退職所得がいくらになるかで変わるため、「退職金にかかる税率と控除額一覧表」に当てはめ、その数字を用いて計算しましょう。

【退職所得控除額の計算方法】
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

【所得税の計算方法】
1.退職所得額=(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2
2.所得税額=退職所得×所得税率-控除額
3.復興特別所得税額=所得税額×2.1%

【住民税の計算方法】
・住民税額=退職所得×住民税率10%

出典 

退職金にかかる税金のシミュレーション

以下は、勤続年数が18年、退職金が1,500万円だった場合のシミュレーションです。自身が払う所得税や住民税を算出する際の参考にしてください。

【1.退職所得額を計算】
(退職金1,500万円-(40万円×勤続年数18年))×1/2=390万円
※勤続5年以下の場合で、300万円超の退職所得がある場合は、300万円以上の部分については2分の1は適用されません。

【2.所得税・復興特別所得税額を計算】
390万円が課税対象の退職所得のため、退職金にかかる税率と控除額一覧表に当てはめて、税率が20%、控除額が42万7,500円となります。復興特別所得税2.1%もここで追加するため、所得税額に102.1%を掛けます。

(390万円×所得税率20%-42万7,500円)×102.1%=35万2,500円×102.1%=35万9,902.5円
1円未満の端数は切り捨てされ、税額は35万9,902円になります。

【3.住民税を計算】
退職所得額390万円×住民税10%=39万円

【4.税金の総額を算出】
所得税35万9,902円+住民税39万円=74万9,902円

出典 

上記の計算より、退職金にかかる税金は74万9,902円です。

「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと確定申告が必要

「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと確定申告が必要

退職金を受け取る際、事前に勤務先へ退職所得の受給に関する申告書を提出していると、所得税と復興特別所得税を勤務先で天引きして納付してもらえるため、基本的には本人が確定申告をする必要がありません。

この申告書を提出していなかった場合には、控除額などが正しく反映されることはなく、一律20.42%の所得税率が用いられ、源泉徴収が行われています。申告書が未提出だった場合、正しい税額ではなく暫定で税金を支払った状態になるため、本来よりも多めに納税しているケースがあります。ただし、確定申告を行うことで控除などが適用され、余分に支払っていた税金があった場合には還付を受けられます。

まとめ

退職金にはさまざまな種類があり、各企業が採用している退職金制度は異なります。近年では自分で運用するものもあるため、企業がどの退職金制度を採用しているかによって将来受け取る金額に違いが生じます。

自分が将来受け取れる退職金がいくらになるかは、就業規則などを調べて計算することが可能です。退職金を受け取る際には税金も支払わなければならないため、受け取る額と実際に使える金額の違いにも注意が必要です。退職金は将来の備えとして重要となるため、細かい点までよく確認しておくことが大切です。

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