今の時代だからこそ、家族に「想い」を伝える大切さを考える(3)

遺言の良さを理解し、積極的に活用しましょう。元気なうちに、これから先のことを見据えて家族と話あっておけば、万が一の時も安心です。今回は、とある夫婦が相続の不安について、専門家に相談したケースをご紹介します。

今の時代だからこそ、家族に「想い」を伝える大切さを考える(3)

甥と姪への願い

Aさまご夫婦は、すでに40年以上連れ添い、引退後は、お互いの趣味を楽しみ、支え合いながら暮らしてきました。
最近は、元気なうちにと、二人の今後についていろいろと話し合うことが多くなってきました。病気をしたら? 介護の時は在宅介護にするか施設に入居するか? 延命措置の考え方は? など..。そのような中、どちらかが、先に逝ったあとの財産をどうするかについても話をしました。

まず、お互いの財産について整理しようと決めました。
今の自宅は、ご主人が現役時代に購入し、すでに築30年以上経ちます。また、奥様には実家から継いだ財産があります。お子様がいないことから、自宅や奥様の財産を将来どうするか気がかりです。
次にどちらかが一人になった時のことを話し合いました。
入院時や、また施設に入るとしても身元保証など一人ではできないことなどが心配です。またその際に、夫の兄弟の子でよく遊びに来る甥と姪にお願いできることはないかなど、不安な事例を話し合いました。

自分たちの考え方

自分たちの考え方

自分達には子供がいないことから、財産の分け方をしっかり考えておきたい。

①お互いの親から相続した 夫婦それぞれの財産

●妻が実家からの相続で承継したマンションは、家を継いだ妻の兄に分与したい。
●夫は、金融資産のみを親から相続したため、相続時には特別な配慮はしない。

②夫婦としての財産

●基本的にそれぞれお互いに財産を渡すことにしたい。
●二人に将来何かあれば、夫の甥と姪に面倒を見てもらうことをお願いしようと考えており、財産の遺贈を検討したい。
●自宅など不動産を保有しているため、相続発生時にどのように考えたらいいか、アドバイスが欲しい。

自分たちの想いをどう残すかについてアドバイスが欲しい。

専門家のアドバイス

専門家のアドバイス

相続承継に関しての工夫(お互いの親から相続した夫婦それぞれの財産と夫婦としての財産の整理)

●お子さまがいない場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟が4分の1ですが、遺留分がないので、遺言を活用することで自由な配分が可能になります。また、特定の甥や姪に財産の遺贈を考えるのであれば、遺言を残す必要があります。
●夫婦お互いに財産を渡すことを考えるのであれば、それぞれで遺言を準備したほうがいいでしょう。
●遺言を作成するにあたり、財産を残そうとした配偶者が先に亡くなった場合に、どうするかも合わせて考えておくといいでしょう。いわゆる補充遺言の活用です。これは、どちらかが先に死亡した時に、遺言を書き換えられればいいのですが、その時の自分の健康状態等の予測ができないため、遺言内で「もしも配偶者が先に死亡していた時は」との内容を補充しておくというものです。
●また、夫または妻の遺言に妻または夫からの財産がすでに相続されている場合の記載もしておくといいでしょう。妻または夫の財産を相続した後も遺言の書き換えが不要となります。
●夫所有の不動産については、最終的に夫の甥か姪に遺贈するのであれば、不動産を共有することはなるべく避けましょう。後日、甥と姪の不動産に対する考えが相違したり、甥と姪に代替わりが起こると所有関係がさらに複雑になり争いの元になる可能性があるためです。今回、不動産が二箇所ありますので、一箇所ずつそれぞれに遺贈することを検討されてはいかがでしょうか。
●考えを残すにあたっては、法的効力を持たすべき財産の分け方等に関しては遺言で、希望に関するものはエンディングノート(※)を活用されてはいかがでしょうか。

※自分に万が一があった時に大切な人に伝えておきたいことを書きとめるノート

ご夫婦の結論

ご夫婦の結論

①相互で遺言を作成する。夫婦どちらかが先に死亡した場合の補充遺言を付ける。
②夫の財産は、妻に全て相続させる。もし、妻が先に死亡 していた場合は、自宅は、甥に遺贈し、マンション は姪に遺贈する。残預金を甥と姪に2分の1ずつ渡す。
③妻の財産は、賃貸マンションを妻の兄に相続させ、残りは全て夫が相続する。ただし、夫が先に死亡していた場合は、夫に相続・遺贈する予定の金銭資産を夫の甥と姪に遺贈する。

今回の結論を出すにあたっては、事前に将来を託す甥と姪に相談し、二人の了解のもとに介護のことや終末医療のことはエンディングノートに記載し、財産の分別は、法的効果のある遺言を作成することに決めました。

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