今の時代だからこそ、家族に「想い」を伝える大切さを考える(2)

遺言の良さを理解し、積極的に活用しましょう。平均寿命が延びた今、私たちは歳を重ねるにつれて、衰えと上手く向き合っていくことが必要となります。今回は、相続の不安について、専門家に相談したある家族のお話を紹介します。

今の時代だからこそ、家族に「想い」を伝える大切さを考える(2)

「子」への想い

最近は平均寿命も延び、人生100年時代と言われています。
ただ、寿命の延びは同時に衰えと上手く向き合うことを考える必要があるとも言えます。
最近よく言われている健康寿命(※1)は、個人差はありますが、平均寿命より男性で約9歳、女性で約12歳短いと言われています。
今回は、自宅が財産の大半を占めているBさんの悩みについてのお話です。
注1 健康寿命とは、「心身ともに健康で、自立して活動的な生活が送れる期間」

Bさんは、80歳を迎えます。夫を5年前に亡くし、現在は身体の衰えや災害・防犯面で一人暮らしに不安を感じていました。

ある時、子どもたち(長男・次男・長女)が遊びに来た時に、ふとその不安を口にしました。子どもたちも心配していたとのことで、皆で相談した結果、次男家族が同居することになりました(次男家族は、妻と子どもが1人)。

Bさんとしては、将来、自宅は同居している次男夫婦に遺したいと考え、それ以外の資産を次男以外の子どもたち2人に渡そうと思いました。しかし、自宅以外の財産は夫の遺した退職金が中心で、財産の評価では自宅が全体の約3分の2を占めています。そのため、次男以外が不満を持つのではないかと心配していました。

そんな時、友人の相続があり、自宅を巡り子どもたちの間で話し合いがこじれてしまったと聞きました。そこでBさんは、今の自分の考えにどのような問題があるのかを専門家に相談することにしました。

専門家の意見

専門家の意見

今回の場合、財産における自宅不動産の比重が大きいため、一部の推定相続人に財産が偏り、遺留分(※2)が侵害されるおそれがあります。課題は、遺留分侵害をどのように考え、資産を承継していくかになります。

考え方の主なポイントは次のような点です。

①自宅を次男に承継する場合、まずは、遺留分侵害額や相続税負担額の現状での概算を確認する。
②遺留分侵害をしている場合、他の子どもたちが不満を持ち、遺留分相当の財産分与を希望する可能性がある。そのことから生前贈与の有無、ご主人の相続時の財産分け、保険や信託商品の利用状況なども含めて考える必要がある。
③遺留分相当の財産を分与することを考えた場合、代償分割(※3)や負担付遺贈(※4)により、次男自身が負担することは可能か確認する。
④自宅を共有すること、もしくは売却しての財産分与を検討するか?仮に売却の場合、譲渡にかかる税金や次男の住まいの問題はどうするかも含めて考える。
⑤スムーズに進めるため、子どもたちの考えを確認した方がよい。
⑥財産承継で決めたことは、遺言を活用し自分の気持ちも含め伝える方がよい。

※2 法律上、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の相続分のこと
※3 分割することが難しい財産の場合、その財産を取得した相続人が、自ら所有している金銭(代償金)などを払うことで相続財産を分割すること
※4 遺言で財産をもらう人に対して、一定の義務を負わせる遺贈

相談の結果

相談の結果

●次男は、小規模宅地等の特例を適用することで相続税負担は支払可能な範囲であり、問題はない。
●生前贈与はなく、ご主人の相続時、ほとんどを夫人が承継。死亡保険金は、受取人である子ども全員で均等に分けた。
●次男は、代償分割や負担付遺贈による遺留分対応は難しく、次男家族との相談が必要。
●自宅の売却や共有については、子どもたちと相談して判断する。

Bさんの結論

Bさんの結論

●まず、長男と長女に相談した結果、長男から教育費や住宅ローン負担もあり、遺留分に近い金額はできれば欲しいとの話があった。長女も同意見であった。
●その話を次男にしたところ、次男夫婦はこの家にどうしても住みたいとは思っていないことが判明する。
●改めて家族で相談し、相続後は自宅を売却し、長男・長女には遺留分相当額を渡し、次男には自宅費用のため多めに分割する遺言を書くことで、話が落ち着いた。
●専門家の意見を聞きながら不動産売却も見据えた遺言の書き方を確認し、作成した。

この結論にBさんとしては同居する次男には少し申し訳ない気持ちもありました。ただ一方で、次男夫婦の考えはBさんの当初の考えとは異なるものでした。そのことを確認でき、そして家族みんなで決めることができたことにBさんは一安心しました。また遺言は、付言を活用することで自分の気持ちを伝えると同時に、家族の話し合いの記録としても有効なものだと感じました。

もし、Bさんの気持ちだけを伝える遺言を書いた場合、たとえ従前に子どもたちに自分の想いを伝えていても、子どもたちの間に争いが起きていたかもしれません。自分の考え方を整理する意味でも、子どもたちとのコミュニケーションや専門家への相談、そして遺言の活用は重要となります。

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