退職金制度は4種類!各制度の特徴や金額・受け取り方・税金を解説

退職金制度は、大きく分けて以下の4種類があります。退職一時金制度のように、一括で受け取るものや、確定給付企業年金制度(DB)、企業型確定拠出年金制度(DC)、中小企業退職金共済のように年金形式で受け取るものもあります。退職金の相場や受け取り時の税金、活用方法を解説します。

退職金制度は4種類!各制度の特徴や金額・受け取り方・税金を解説

退職金制度とは?

退職金制度とは?

退職金制度は、会社を退職する人に対して一定の金額を支給する制度です。
退職金制度の目的は、従業員の働くモチベーションの向上や採用の際の企業としての魅力づけ、これまでの功労の労いなどが挙げられます。また、定年退職にともなって受け取る退職金は、老後の資金として重要な役割を果たすでしょう。

退職金制度は、全ての企業にあるわけではなく、退職金制度がない企業もあります。退職金制度の細かい内容は、それぞれの企業が退職金規程として、独自に設定することができます。
一般的に退職金の金額は、勤続年数や役職などをもとに決定されるものの、企業がそれらを算定する基準は退職金規程の内容によって異なります。

退職金は4種類存在する

退職金は4種類存在する

退職金制度は、大きく分けて以下の4種類があります。

・退職一時金制度
・確定給付企業年金制度(DB)
・企業型確定拠出年金制度(DC)
・中小企業退職金共済

出典 

退職一時金制度

退職一時金制度は、退職時に退職金の全てを一括で受け取れる制度です。
退職一時金の額は、一般的には従業員の勤務年数や最終給与、定年までの残りの勤務年数などに基づいて計算されます。企業は従業員の退職金を積み立てるための予算を計上する必要があります。この積立は、一般的には退職金共済組合や企業年金などの制度を利用して行われます。

退職一時金は、一定の条件下で税制上の優遇措置を受けることができます。
受け取った退職金には、所得税・住民税が課税されますが、退職金所得控除の対象となります。

確定給付企業年金制度(DB)

確定給付企業年金制度は「Defined Benefit Plan」の略から「DB」とも呼ばれます。
確定給付企業年金制度は、企業と従業員が将来受け取る年金給付額を決めたうえで、それに必要な掛金を拠出していくものです。そのため、運用成果に関わらず従業員は決められた額の年金給付を受け取ることができます。

確定給付企業年金制度には「基金型」と「規約型」の2種類があります。
基金型は、別の法人格をもつ企業年金基金を設立して、年金資金の管理・運用・給付を行います。
規約型は、信託会社や生命保険会社などと契約して、管理・運営・年金給付を行います。

退職金は一時金として一括で受け取ることもでき、その場合は退職金所得控除の対象となります。年金のように一定額を一定期間に渡って定期的に受け取ることもでき、公的年金等控除の対象となります。

企業型確定拠出年金制度(DC)

企業型確定拠出年金制度は「Defined Contribution Plan」から「DC」と呼ばれます。従業員や企業が積み立てる金額(拠出額)があらかじめ「確定」されています。
しかし、将来受け取る年金の額は、積立資産の運用結果に依存するため、その額は確定していません。企業型確定拠出年金制度では、運用成績やリスクは従業員側が負担します。従業員は、提供される運用メニューから自らのリスク許容度や運用目的に合わせて選択することができます。

企業型確定拠出年金制度の退職金は原則として、60歳になるまでは引き出すことができません。
退職金は、一時金として一括で受け取ることもでき、その場合は退職金所得控除の対象となります。年金のように一定額を一定期間に渡って定期的に受け取ることもでき、公的年金等控除の対象となります。
一時金と年金を併用して受け取ることも可能です。現在は特別法人税が凍結されているので、運用益は非課税です。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済は、中小企業における従業員の退職金の積立てや支払いをサポートする制度の1つであり、日本の中小企業基盤整備機構が主催しています。加入者は、月額5,000円〜3万円までの16種類から掛金を選び納付します。

退職する際には、これまでの掛金から算出する「基本退職金」と、運用利回りが予定を上回った場合は「付加退職金」を受け取ることができます。

退職金は、一時金として一括で受け取ることもでき、その場合は退職金所得控除の対象となります。年金のように、一定額を一定期間に渡って定期的に受け取ることもできますが、その場合は雑所得の対象となる点に注意が必要です。

退職金がない企業も存在する?

退職金がない企業も存在する?

企業のなかには、そもそも退職金制度を採用していない企業もあります。ここでは、厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」より、退職給付(一時金・年金)の支給状況を下表にまとめてみました。

従業員数と退職金制度の有無

従業員数 退職金制度あり 退職金制度なし
全企業平均 80.50% 19.50%
1,000人以上 92.30% 7.70%
300~999人 91.80% 8.20%
100~299人 84.90% 15.1%
30~99人 77.60% 22.40%

※厚生労働省:平成30年就労条件総合調査より筆者作成

表からわかるように、退職金制度があるのは全企業のうち80.5%となっています。言い換えると、約20%の企業では退職金制度がありません。

また、企業規模によっても違いがあり、従業員数が300人以上の大企業のうち退職金制度がない企業は10%未満ですが、299人以下では15.1%、99人以下では22.4%の企業に退職金制度がありません。

退職金のない企業のなかには、退職金を前払いする目的で給与に上乗せしているケースも存在します。しかし、退職金制度のない企業に勤めている場合は、退職時にまとまった金額を受け取れないため、老後の生活資金などを自助努力で準備していく必要があるでしょう。

準備方法として、個人年金保険や個人型確定拠出年金(iDeCo)などに加入し、将来受け取る年金額を増やすほか、副業などを視野に入れて資産を増やすことなどが挙げられます。

退職金の相場はいくらくらい?

退職金の金額の算出方法は、企業によってさまざまです。その多くは勤続年数や退職時の基本給与、退職理由によって算出されます。前述した厚生労働省の同調査によれば、大学卒や大学院卒の人の定年退職時の退職金の相場は、1,983万円であるのに対し、高校卒では同じ退職理由であっても1,618万円と、最終学歴によって300万円以上の差があることがわかるでしょう。

平均退職金給付額

大学・大学院卒 高卒
定年退職 1,983万円 1,618万円
会社都合 2,156万円 1,969万円
自己都合 1,519万円 1,079万円
早期優遇 2,326万円 2,094万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の場合
【参考】厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」詳しくはこちら

また、大学・大学院卒かつ会社都合で退職の場合は2,156万円、自己都合で退職した場合は1,519万円と退職理由によっても大きく支給額が異なります。

退職金はどうやって受け取る?

退職金の受け取り方法として、会社の規定によって一時金だけではなく年金として受け取れるパターンがあります。先に紹介した退職金制度ごとの受け取り方は、以下の通りです。

退職金制度 受け取り方
退職一時金制度 一時金
確定給付企業年金制度
企業型確定拠出年金制度
中小企業退職金共済
一時金 or 年金

受け取り方法に関して、一時金か年金かで迷われる方もいるでしょう。受取時の状況によって、どちらの方法が適しているかは異なり、一概にどちらがよいとはいえません。
しかし、退職のタイミングでリフォームや旅行など大きな出費を計画している場合は、一時金で受け取る方が適しているでしょう。

また、退職金を少しでも多く受け取りたいと考えている場合、年金受給中も一定の利回りが付与されるので、年金として受け取った方が金額は多くなります。一時金と年金を併用して受け取ることもできるため、退職時に使う必要な額は一時金で受け取り、残りは年金で受け取ることで、退職後の生活費としても活用できるでしょう。

退職金に税金はかかる?

退職金に税金はかかる?

退職金は「退職所得」に該当し、一時金で受け取った場合は分離課税となります。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出することで、退職金所得控除が適用され、勤続年数に応じた控除額が適用されます。

控除額は下記のとおりです。

・勤続20年以下の場合
 40万円×勤続年数(80万円以下の場合は80万円)

・勤続20年超えの場合
 70万円×(勤続年数−20年)+800万円

出典 

基本的に、勤続年数が長くなるほど控除額が増える仕組みです。

年金で受け取る場合には、確定拠出年金や確定給付年金は公的年金等控除の対象となり、ほかの公的年金と合算されて計算されます。中小企業退職金共済を年金で受け取る場合には、雑所得としてほかの所得と合算して計算されることになります。

退職金の活用方法

退職金の活用方法

受け取った退職金をどう活用しようか悩んでいる方も多いかもしれません。ここでは、退職金の活用方法を3つ紹介します。

老後の生活資金に充てる

定年退職後は、現役世代と同じ収入を得続けることは難しく、公的年金などの収入に頼ることになります。しかし、年金収入だけでは支出を賄うことは難しいため、預貯金などの資金から取り崩していくケースも多いでしょう。

そうした中、退職金を老後の生活資金に充てることで、安心感を得られます。また、老後においては病気やケガ、また介護や葬儀など、自分の終活に関するお金も考えておかなければいけません。退職金を老後の生活資金に充てる場合、用途別にどの程度のお金を残しておくのか、今一度整理するようにしましょう。

セカンドライフで夢を叶えるための資金にする

退職後の60代から70代前半までは、思いのほかライフイベントが多い時期でもあります。子供が巣立ったあとに自宅のリフォームを検討したり、車を買い換えたりと、やりたいことや叶えたいことがある方もいるのではないでしょうか。

すべての退職金をそれら資金に充てることは難しいかもしれませんが、現役世代に叶えられなかった夢を叶えるために、退職金を一部使うのもよいでしょう。

退職金を運用して増やす

人生100年時代ともいわれる昨今、65歳で退職したと仮定しても20年前後の老後期間を過ごす可能性が高いでしょう。老後の生活費に困らずに済むよう、退職金を運用して増やすのも1つの手です。

おすすめの運用方法として、退職金専用の定期預金を利用するほか、NISAやIDeCoを活用した資産形成法が挙げられます。ただし、NISAやiDeCoは元本の保証がないため、自身のリスク許容度を加味したうえで運用商品を選ぶことが大切です。

まとめ

退職金制度は、会社を退職する人に対して一定の金額を支給する制度です。大きく分けて「退職一時金制度」「確定給付企業年金制度(DB)」「企業型確定拠出年金制度(DC)」「中小企業退職金共済」の4種類があります。

退職金制度がない企業もあり、制度がある企業もそれぞれの企業が制度設計しています。
勤めている会社の退職金制度を確認し、退職するとどれくらいのお金が支給されるのか把握しておいた方がよいでしょう。老後の生活資金が不足するようであれば、老後資金の準備についても一考してみてください。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ