家を売る方法と手順|不動産売却の流れとタイミング・高く売るためのコツ

ニューノーマル時代を迎え、マイホームを取り巻く取引環境や住まいに求める条件にも変化が生じています。どうすれば短期かつ高値で自宅を売却できるのでしょうか?そこで、本稿では未経験者でも一通りのノウハウが習得できるよう、売却の基礎知識から高く売るためのコツまで分かりやすく解説します。

家を売る方法と手順|不動産売却の流れとタイミング・高く売るためのコツ

家を売るには?手順を解説

家を売るには?手順を解説

家を売るために必要な手順は以下で紹介している、5つの方法です。

家を売るときに必要な手続きの手順
1. 売却価格の相場を調べる
2. 売却価格の査定を受ける
3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
4. 売却活動を行う
5. 購入希望者と売買契約を結び、引き渡す

上記の手順を踏めば、家を売ることができますが、私は最初に“心の棚卸し”をするよう促しています。

家を売る理由を明確にする

まずは、なぜマイホームを売ろうと思ったのか、どうして今、売却活動する必要があるのか、決断に至った動機や理由を自問自答してみましょう。人間の行動には、すべて目的があります。その目的が明確になれば、おのずと実現のためのロードマップが描けるようになります。

よくある理由として、相続や出産・就職(独立)といった家族構成の変化が挙げられます。また、夫の転勤や子供の進学など、通勤や通学を考慮した住み替えも珍しくありません。

半面、ネガティブな理由として離婚や借金苦、現金の必要性(お金がない)など、仕方なく売却するケースも耳にします。後ろ向きな売却理由は寂しい限りですが、とはいえ、住み替えが成就すれば寂しい気持ちも晴れることでしょう。

誰しも、人生には様々なシーンやイベントがあります。楽しい時があれば、悲しい時もあるのが世の常です。皆さんの理想のライフプラン実現に向けて、なぜマイホームを売ろうと思ったのか、自らを振り返ってみてください。気持ちの切り替えは大変かもしれませんが、目的を明確化することで、その実現性は格段に高まります。

コロナ禍で不要不急の外出が自制されるなか、家族で会話する時間も増えているでしょう。まずは売却活動を始める前に“心の棚卸し”を実践してみてください。家族の間で目的が共有できたところで、ようやく家を売るために必要な手続きへと進むことができます。

①売却価格の相場を調べる

売却手続きの第一歩として、まずは不動産価格の相場を調べる作業から始めましょう。

家を売るには大きく2つの方法があり、不動産仲介業者を通じて中古市場で取引相手を見つける「仲介」と、不動産業者に直接、即金で買い取ってもらう「買取」があります。通常、何の注釈もなく「相場」といった場合、前者の仲介による売却価格を指します。そして、買取価格は仲介による売却価格より大幅に安くなるのが通例です。

なぜ、相場を調べる必要があるかというと、相場を知ることで不動産会社から提示された査定価格(後述)が適正かどうか、その多寡を判断するのに役立つからです。また、相場と違った査定結果になった場合、その理由を仲介業者に質問することもできます。自宅の市場価値(マーケットバリュー)を知るきっかけにもなり、結果として、高値での売却可能性が高まります。

売却価格の相場は不動産サイトを活用すると、似た条件の物件がいくらで販売されているか調べられます。

<相場を調べるのに役立つサイト>

SUUMOなどの不動産仲介サイト
●国土交通省の「不動産取引価格情報検索
●国税局の「路線価図

出典 

閲覧時には以下の項目を忘れずに確認しましょう。
不動産価格は同じ敷地内に複数の物件があったとしても、様々な要素や条件によって全く異なります。例えば、同じマンション内で同時期に売り出された物件でも、床面積や階数、日当たりなどが異なれば、おのずと売出し価格にも価格差が生じます。こうした個別性の高さが不動産の特性なのです。

<サイトを見たときに確認したい項目>

●敷地面積、建物面積
●階数
●坪単価
●地域
●築年数
●方角
●経年劣化
●日当たり
●周辺環境 など

出典 

売却価格の相場を調べるには、たとえば国土交通省の不動産取引価格情報検索で同じ町内の坪単価を調べたのち、他の不動産サイトをチェックすることで、より実情に即した高精度の価格情報を入手できるようになります。

一括価格査定サイトを活用すれば、すき間時間にネットで簡単に申し込みでき、まとめて価格を比較できるので相場観を養うのにも役立ちます。すべての手続きがオンラインで完結し、しかも費用は一切かかりません。

ただ、一括価格査定サイトは簡易査定であり、机上での推定価格に過ぎません。正式査定を依頼する仲介業者選びのためのポータルサイトと考えてください。

②査定を受ける

自宅がいくらで売れるか、おおよその目安が分かったところで、続いては不動産会社に査定を依頼しましょう。

査定の方法には次の2種類があります。

      査定方法 メリット デメリット
机上査定         図面や過去の取引事例などをもとに査定する 短時間で査定結果を知ることができる どうしても価格の精度には限界がある
訪問査定         図面やデータに加え、担当者が自宅を訪問し現地調査した後、査定価格を算出する より成約価格に近い金額の提示が期待できる 室内の状態を確認するため、部屋の隅々までのぞかれる

手軽に相場を知りたいときは机上査定を依頼し、すでに相場は把握しており、より正確な価格を知りたいときは訪問査定を依頼するといいでしょう。

その際、査定の見積もりは1社に限定せず、複数社に依頼したほうが信頼できる不動産会社に巡り合える確率が高まります。不動産は唯一無二(同じものは1つとしてない)という強い個別性を有しているため、素人には査定額が適正かどうか容易に判断できない悩ましさがあります。そこで、忙しくて十分な時間が取れない人は、一括査定サイトを活用するのも一案です。費用は一切かかりません。複数社の査定額をまとめて入手できます。

改めて、不動産は他の取引に比べて価格が高額であり、いかなる理由があれ失敗は許されません。それだけに、査定額は不動産会社に算出してもらったほうが、自身で調べるより高精度の結果が期待できます。餅(もち)は餅屋ということわざがあるように、プロに任せるのが安心です。類似物件の取引事例や市場動向が加味されたマーケット予測を活用することで、売却の失敗リスクは格段に低減させられます。

③売却活動を行う

売却活動とは、不動産を売却するすべての方法を指します。
具体的に、売却方法には次の2種類があります。

●仲介
●買取

「仲介」と「買取」は、最終的な売却先がどこになるのかで分かれます。
具体的には、以下のような違いがあります。

           売却方法         メリット         デメリット       
仲介(買取保証なし)        仲介を依頼した不動産会社がインターネットに不動産情報の広告などを掲載し、中古市場で売り出す 成約価格は最も高くなる可能性が高い。 仲介手数料が必要/いつ買い主が見つかるのか先行きに不透明感あり(早期の売却には不向き)
仲介(買取保証あり) 上記の仲介と同じ方法で売り出し、買い手が見つからなかった場合は事前に決めた買取価格で不動産屋が買い取る 一定期間後には買い取ってくれるので、時間的なスケジューリングがしやすい。/買取り保証されているため、売れないという心配がない。 仲介手数料が必要/買取り価格は、当初の査定価格を下回る金額になる。
買取 不動産会社に即金で買取ってもらう 仲介手数料が不要/リフォームも不要/内見案内も不要/売買契約後、数日で売却代金が振り込まれる。 通常、売却代金は3種類の中で最も安くなる。慌てて売る必要がなく、少しでも高く売りたい場合は再考の余地あり

買取保証とは、不動産が中古市場で売れなかった場合、不動産会社がその不動産の買取を保証してくれる制度です。

売却を依頼された不動産会社はどのような売却活動をしているか、ご存じでしょうか。一般的な活動内容を列記すると、次のようになります。

<不動産仲介会社の一般的な売却活動>

●指定流通機構への物件登録
●仲介業者の自社ホームページへ掲載
●会員へダイレクトメールを発送(郵送、電子メール)
●不動産ポータルサイトへの掲載
●チラシや会員誌など、紙媒体への掲載
●ポスティング(宅配)チラシの投函
●来店客へ営業マンが紹介して物件案内する
●オープンハウス(現地内覧会)を開催して集客する

出典 

最近では新型コロナウイルスが感染再拡大するなか、販売現場では3密回避を徹底すべく、オンライン接客やリモート商談が定着しつつあります。テレビ会議システムを活用した遠隔商談や、動画でオープンルームや物件の周辺・眺望などを紹介するオンライン接客が行われています。

④不動産会社と媒介契約を結ぶ

媒介契約とは、不動産会社が宅地建物の売買を仲介する際、売買の依頼者と締結する契約を指します。
その物件を「売りたい人」と「買いたい人」を結び付ける“仲人(なこうど)役”として、不動産会社は媒介契約に基づき、その範囲内で仲介人としての責務を全うします。

自宅の調査・査定を行い、より正確な相場観を把握・売却の決断ができたら、次は売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。

この媒介契約には以下の3つの種類があり、その選択は依頼者に委ねられています。
売り主が自身の判断で自由に選択でき、「いかに短期間で」「どれだけ高く」売却できるかを判断基準に1種類に絞り込みます。

●一般媒介契約
●専属専任媒介契約
●専任媒介契約

出典 

それぞれの特徴を確認しておきましょう。最大の特徴は、複数の不動産会社に重ねて依頼できるか・できないかの違いです。

         複数業者との契約 売り主自らが発見した相手との契約 販売状況報告 指定流通機構への登録義務 契約期間
一般媒介契約 可能 可能 なし 任意 3ヶ月
専任媒介契約 不可能 可能 2週に1度以上 売却から7日以内の登録義務 3ヶ月
専属専任媒介契約 不可能 不可能 1週に1度以上 売却から5日以内の登録義務 3ヶ月

一般媒介契約では2社でも3社でも、異なる不動産会社に同時に売却を依頼できます。

⑤購入希望者と売買契約を結ぶ

購入希望者が見つかったら、いよいよ売買契約の締結です。購入希望者から購入申込書が提出された後、不動産会社は売買代金の支払い方法や引き渡し日時などの契約条件を交渉・整理し、契約のための必要書類を作成します。同時に、売り主には後々トラブルにならないよう、自宅に付帯する設備の状況を書面で報告してもらいます。不具合のあるエアコンや給湯器などを、そのままの状態で買い主に譲り渡さないためです。

同時に、売り主は残代金の受領日までに物件を引き渡せる状態にしておいてください。引っ越しの準備とともに、電気やガス・水道といった公共料金の精算も引き渡し前までに済ませておきましょう。忘れがちですが、管理規約やパンフレット(マンションの場合)、付帯設備の取扱説明書や保証書なども前もって用意しておく必要があります。すべて引き渡し時に買い主に引き渡すためです。こうしたスケジュールや売買契約時に用意すべき必要書類は、すべて不動産会社が事前に案内・説明してくれます。

家を売るタイミングはいつがいい?

家を売るタイミングはいつがいい?

いざ、家を売ろうとした場合、どうしても「価格」ばかりに目が向きがちですが、売却を成功させるには「タイミング」も重要です。なぜなら株式の売買と同様、住宅価格も需給バランスで決まるからです。「売りたい人」より「買いたい人」が多ければ価格は上昇し、逆に「売りたい人」より「買いたい人」が少なければ成約価格は弱含みます。いかに「売り手市場」のタイミングで売却できるかで、損するか得するかの成否を二分するのです。誰だって損したくありません。売却活動を始める時期が極めて重要となります。

では、どの時期(タイミング)で売り出せば高値で売却できるのか?そのヒントとなるのが「築年数」です。以下、マーケットデータを用いて「売却価格」と「築年数」の関係を解説します。

高く売りたいときは築年数の浅いうちがいい

われわれ日本人は「新しいもの好き」と言われます。こうした傾向は住宅選びにも当てはまり、国内で取り引きされている住宅の流通量を「新築」と「中古」に区分けして比較した場合、その比率はおおよそ新築:中古=85:15となります(2018年)。つまり、日本では新築志向が極めて根強いのです。

今般、空き家が社会問題になっていますが、その一因は子ども世帯が親の家を相続したがらないからと言われています。古いうえに汚く、エアコンも効かないような断熱性に乏しい親の家を誰も譲り受けようとは思いません。冒頭、マーケットの需給バランスに言及しましたが、誰も住みたいと思わない(需要のない)家に市場価値は見い出しにくいのが現状です。毎年、90万件近くの新設住宅が着工されている中で、いくらハウスクリーニングやリフォームを施したところで、一等地の優良物件を除き、売り主の希望価格で成約させるのは困難を極めます。結果、古い空き家が増え続けるのです。

その裏返しとして、築浅の物件には人気が集まっています。東日本レインズが公表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」によると、中古マンションの対新規登録成約率(※)は「築6~10年」の物件が最も高くなっていました。築浅の中古マンションが売れているのです。

同じく、築年帯別の1平方メートルあたりの成約単価を見てみると、下表のようになりました。築年帯ごとの成約単価の差を計算してみると12万円5000円前後でした。つまり、築年数が5年経過(築古)するたびに、成約単価も12万5000円程度下落していくのです。

これを平均成約面積およそ68平方メートルに引き直すと、その差は850万円(12万5000円×68㎡)になります。たとえば「築10年」で売却するのと「築15年」で売却するのとでは、成約価格に850万円の差が生じるという意味です。築年数が経過すれば経過するほど、成約価格も下落していくわけです。表現を変えれば、築浅であれば・あるほど、高値での売却が期待できるという理屈です。高く売りたいときは築年数の浅いうちがいいのです。

築年帯別の成約単価と成約価格

築年帯 築0~5年   築6~10年   築11~15年  
成約単価(㎡) 88万1,600円 75万2,800円 62万8,600円
成約価格 5,883万円 5,071万円 4,484万円

(※)中古マンションの対新規登録成約率:東日本レインズに新規登録された中古マンションのうち、実際に成約に至った物件の成約率を5年刻みの築年帯ごとに算出した値のこと

【参考】東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」詳しくはこちら

いま住んでいる家を売る場合

持ち家を売却する場合、いつ引っ越すべきか、そのタイミングは重要です。たとえば、買い替えを伴う場合、「売り先行」か「買い先行」かの議論がなされ、その損得が比較考量されます。同様に、住み続けながら売却するのか、それとも引っ越してから売却するのか?こちらも一長一短があり、住み続けながら売却活動した場合のメリットとデメリットを整理すると、次のようになります。

■住み続けながら売却活動する場合の売り主にとってのメリット・デメリット

メリット デメリット
仮住まいの必要がない 内覧者に部屋の隅々まで見せなければならない
ホームステージングしなくて済む 内覧日には誰が立ち会うのか、それとも業者にすべて任せるのかなど、毎回、家族全員で段取りする必要がある
生活しているため、カビが発生したり畳が日焼けするなど、室内が痛む心配がない いつでも内覧できるよう、常に部屋の整理整頓を強いられるため、売却期間中、精神的な緊張状態が続く
じっくりと希望条件にあった物件を探すことができる(売り急がなくていい) 室内に生活感が残っていると、悪い印象を与える恐れがある

ホームステージングとは、ここに住みたいと思うような感性を刺激する空間をコーディネートし、短期かつ高値での売却を後押しするサービスです。ホームステージャーと呼ばれる専門スタッフが各室に高級家具や小物を配置し、第一印象を向上させることで内覧者の購入意欲を刺激します。

ただ、住み続けているわけですから、仮住まいもホームステージングも必要なく、売却コストの負担軽減が図れます。仮住まいは家計にかなりの負担となり、もし、住宅ローンとのダブル返済となれば、家計へのダメージは深刻です。マンスリーマンションやロングステイできる格安ホテルを利用する手はありますが、その点、住み続けながら売却活動すれば無駄な支出を抑えられます。自宅を住み替える場合、住み続けながら売却活動したほうがコスト面でのメリットは大きいといえます。

いずれにせよ避けたいのが仮住まいによる新たな家賃負担です。もし住宅ローンとの“W負担“になれば、家計へのダメージは深刻です。そのうえ敷金や礼金、手数料まで請求されたら目も当てられません。マンスリーマンションやロングステイできる格安ホテルを利用する手はありますが、住みながら売却活動をすれば無駄な支出は抑えられます。一旦、売ろうと決めたら、早々にアクション(売却活動)を起こすのが成功への第一歩です。

住宅ローンが残っている場合

前段で、築年数6年~10年の中古マンションが最も成約率が高いと紹介しました。このタイミングで売却する人が多いという証拠です。

ただ、築10年未満で売却しても、その時点で住宅ローンを完済している人は多くないと想像します。住宅ローン減税の控除期間も残っています。実際、この時点(築10年未満)で完済するには相当の大金を繰り上げ返済に充当しなければなりません。そのため、大方の人は住宅ローンが残ったまま自宅を売却するわけです。

その際、注意したいのが抵当権の存在です。現在の取引実務では、抵当権を抹消しなければ自宅を売却できません。貸し手である金融機関が認めないうえ、抵当権を売り主から買い主へ円滑にスライド(権利移転)させる法的な仕組みが日本は未整備の状態だからです。

ここで、改めて抵当権について復習しておきましょう。

抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンの借り手が返済を長期滞納、あるいは不能になった際、金融機関(貸し手)が不動産を換価処分(売却)して優先的に弁済を受けるために物件を担保とする権利のことです。

かみ砕いていえば、貸した住宅ローンの回収が見込めなくなった際、銀行が強制的に不動産を売却(競売)し、その売却代金をローンの返済資金に充当することで、金融機関が融資金を回収するための強い権利です。各行は貸した住宅ローンを取りっぱくれないよう、契約時に土地・建物に抵当権を設定します。自行が損害を被らないよう、予防線を張るのです。

では、どうすれば抵当権を抹消できるのか? 自宅の売却資金で残債を一括返済するのが本筋です。ただ、築浅での売却は残債も多くなりやすいため、オーバーローンとなる心配があります。オーバーローンとは、住宅ローンの残債が自宅の売却価格を上回る状態を指し、「担保割れ」「債務超過」とも言われます。要は、自宅を売却しても住宅ローンが完済できない状態です。債務の超過分は売り主が自己資金(現金)で補わなければ抵当権は抹消できません。

考えてみてください。買った家に住宅ローン(抵当権)が残っていたら、どうしますか。その残債を買い主が支払わなければならないのです。借りたものはいかなる理由があれ、全額返さなければなりません。それほど抵当権は恐ろしい存在なのです。ここでお伝えしたいことは次の2点です。住宅ローンが残った家を売るタイミングは、抵当権の抹消手続きをした後であることを忘れないでください。

1.住宅ローンを長期滞納すると抵当権が実行され、自宅を競売される恐れがある
2.残債のある自宅を売却するには抵当権を抹消しなければ売れない

出典 

【関連ページ】保証会社から抵当権抹消書類が送付されてきましたが、どうすればいいですか?
【関連ページ】必ず抵当権を抹消しなければいけませんか?
【関連ページ】抵当権抹消登記はいつまでにしなければいけませんか?

家を売るときの注意点①税金

家を売るときの注意点①税金

自宅を売却すると税金が発生します。しかも、その金額は決して安くありません。「そんなに掛かるの……」「知らなかった」と慌てなく済むよう、家を売る際に支払わなければいけない税金を把握しておいてください。

税金の計算方法とシミュレーション

ひと口に税金といっても、とりわけ不動産に関する税金は複雑で、大きく「取得時」「保有時」「売却時」とタイミングによって税目が異なります。以下、売却時にかかる税金と税率・税額です。

税金の種類      税率・税額           支払いのタイミング     
譲渡所得税
(住民税・所得税)
所有期間5年以下の土地・建物:39.63%
(所得税 30.63% ・住民税 9%)
所有期間5年を超える土地・建物:20.315%
(所得税 15.315% ・住民税 5%)
【例】
不動産の購入金額:3,000万円
売却金額:3,500万円
取得(譲渡)費用:250万円支出
所有期間:3年(短期譲渡所得)の場合、99万750円の課税
売却(取得)の翌年
印紙税 文書の種類と記載金額(税抜き価格)に応じて決まる
【例】
売買契約書の記載金額が3000万円の場合、軽減税率が適用されて印紙税は1万円
※2022年(令和4年)3月31日までは軽減税率が適用されます。
売却時
※契約書1通ごとに記載金額(税抜き価格)に従った印紙税額の収入印紙を貼付・消印して納税
登録免許税
(抵当権設定登記)
土地・建物一つあたり1,000円
【例】
一軒家の場合、土地ひとつ建物ひとつで登録免許税は合計2000円
※住宅ローンを完済済または利用のない場合は不要
売却時
消費税 10%
※仲介手数料や司法書士への報酬のほか、測量費用や引っ越し代金に課税
保有時

それぞれの税率・税額がわかれば、支払うべき税額を計算することができます。実際に、売却時の手取り金額をシミュレーションしてみましょう。税金やその他費用を差し引いた、おおよその手取り金額がわかりますよ。

気をつけるべきこと

なお、同じ不動産でも個人が自宅(=居住用不動産)を売却した場合には特例が用意されています。居住用不動産を譲渡した場合、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円が控除できます。つまり、売却益が出ていても、その金額が3,000万円以下なら税金は掛からないわけです。たとえ売却益が3,000万円を超えていても、課税されるのは3,000万円を超えた“超過部分のみ”で済みます。上段でシミュレーションした3,000万円の不動産を売却した場合の税金の例では、その不動産が「居住用」であれば納税額はゼロになります。

ただ、注意点として居住用不動産の譲渡の特例は3年に1回しか使えません。また、たとえ納税額がゼロでも必ず確定申告する必要があります。うっかり申告し忘れると、この特例は適用されないのです。税制は知っているか知らないかで納税額に大きな違いが生じます。詳しくは国税庁「マイホームを売ったときの特例」を確認してみましょう。

家を売るときの注意点②費用

かつて自宅の購入経験がある人なら分かると思いますが、同じく、自宅を売却する時にも諸費用が掛かります。すでに税金については前段で説明しましたが、続いて仲介手数料とその他の費用について詳しく解説します。

とりわけ、注文建築で自宅を新築した人、あるいは新築住宅を購入した人は仲介手数料を支払った経験がありません。そのため、売却時に初めて経験することとなります。仲介手数料は取り扱う対象が住宅という高額商品になる分、その金額も安くはありません。計算方法もきちんと決められています。はたして家を売る際、どのような費用がいくらかかるのか、しっかりと頭に入れておきましょう。

仲介手数料

仲介手数料とは、自宅の売却を依頼した不動産会社への報酬です。不動産会社は短期間で少しでも高く自宅が売れるよう、広告やネットワークを駆使して売却活動に励みます。その労務に対する対価が仲介手数料です。

仲介手数料の金額は宅建業法によって厳格に請求できる金額が規定されており、法外な手数料を請求される心配はありません。
では、具体的にどう規定されているかというと、成約価格の区分に応じて下表のような利率で算出されます。自宅が3,000万円で売却(成約)できた場合を例に見ていきましょう。

売買価格   報酬額
200万円以下 取引額の5%以内
200万円以上400万円以下 取引額の4%以内
400万円以上 取引額の3%以内
仲介手数料の計算式

考え方は、成約価格3,000万円を(A)(B)(C)の各区分に分解し、その金額ごとに上表の利率を乗じた金額の総和が仲介手数料となります。この仲介手数料には別途消費税(10%)が課されるため、区分ごとに消費税額も加算して手数料を計算する必要があります。消費税額については、次の項で説明します。

3000万円で家を売却した際の仲介手数料(上限)の計算例

実際に速算法で計算してみましょう。成約価格が400万円を超えている場合、下記の算式で仲介手数料を計算できます。

仲介手数料の計算『速算法』

たとえば、自宅を3,000万円で売却した際の計算プロセスは次のようになります。「成約価格×3%+6万円(別途消費税)」と覚えておいてください。

『速算法』での,3000万円で家を売却した際の仲介手数料(上限)の計算例

なお、この金額は不動産会社が依頼者の一方から受領できる報酬額の上限となります。
成約価格3,000万円で売買契約が成立したからといって、当然に不動産会社が105万6,000円を請求できるわけではありません。
あくまで「上限」であり、その意味は「金額交渉の余地がある」と解釈できます。媒介契約を締結する前に、仲介手数料の金額についても確認しておくと安心です。

余談ですが、取引実務では契約締結時に仲介手数料の50%を支払い、引き渡し時に残りの50%を支払うのが慣行となっています。

諸経費

そのほか、家を売る際に必要となる費用を列記すると、主に次のようになります。ひとつずつ見ていきましょう。

・登記に関わる司法書士への報酬
・住宅ローンの完済手数料(残債がある場合)
・測量費用(一軒家の場合)
・引っ越しや家具・家電の新調費用

出典 

登記に関わる司法書士への報酬

登記費用の内訳は「登録免許税」と「司法書士への報酬」から成ります。先述した登録免許税とは別に、司法書士への報酬は登記手続きを代行してもらった際の手数料です。「代行」と表記しましたが、売り主が自分で登記することもできます。その場合、当然ながら報酬は発生しません。

住宅ローンの完済手数料(残債がある場合)

自宅の売却時に残債を一括返済する場合、手数料がかかる金融機関があります。
この手数料は行員の事務作業に対する手間賃を意味し、無料の金融機関もあります。
従って、お心当たりのある方は取扱金融機関に確認しておくと安心です。

測量費用(一軒家の場合)

一軒家を売却する場合には敷地の測量が必要になります。
地積と境界を確定させ、隣家に対しても買い主に対しても、信頼と安心を提供するために実施します。ただ、気になる測量費用には幅があり、敷地の形状が“いびつ”だったり、隣家の数が多く複雑な権利形態の場合には金額が上昇します。

引っ越しや家具・家電の新調費用

引っ越しや家具・家電の新調費用は家族構成、移動距離、ご家族の趣味・嗜好などで大きく変動します。節約すれば金額を抑えられますし、贅沢すれば簡単に100万円は超えます。お財布と相談しつつ、予算と好みで自由に選択してください。

家を売るときの注意点③マンションと戸建ての違い

家を売るときの注意点③マンションと戸建ての違い

売却手続きにおいて、分譲マンションと一戸建てではいくつかの違いがあります。そのひとつが土地測量の有無です。分譲マンションは建物(専有部分)が区分所有権、敷地が持ち分に応じた敷地利用権です。一方、一戸建ては建物も土地も所有権です。建物と土地(敷地)は別個の不動産として扱われており、それぞれが単独で売買の対象となります。しかし、分譲マンションは管理規約で建物と土地の分離処分が禁止されており、敷地の権利だけを売却することはできません。建物と敷地は一体物として取り扱われます。

そのため、専有部分に所有権移転や抵当権設定などの権利変動の登記がなされても、敷地利用権に関する登記は省略が可能となっています。売却時に売り主が自ら敷地の地積や境界を確認する必要はないので、土地の測量は不要となります。他方、敷地が所有権である一戸建てはそうはいきません。昨今、土地の境界をめぐり、隣家とトラブルになるケースをしばしば耳にします。数十万円の費用は掛かりますが、売り主の責任として早めに測量しておくと安心です。

同時に、マンションと一戸建てそれぞれの特性を理解していると、売却活動を有利に進められます。一般に、マンションは交通利便性や高度なセキュリティー、さらに高層階の眺望や充実した共用施設に魅力を感じる人が住みたがります。これに対し、一戸建ては緑に恵まれた自然環境や居住面積の広さを求める人、中には家庭菜園を始めたいという人もいるでしょう。駐車場料金が掛からないので、複数台のマイカーを保有している人にも好まれます。

このように、両者には異なったアピールポイントがあり、それぞれの特性を反映した広告展開が成否を二分します。そのうえ、マーケットの需給バランスにも配慮した戦略を立てることで、短期かつ高値での売却可能性が高まります。コロナ禍を契機に人々の住宅観は変化し、飽和状態が続く供給過多の住宅マーケットは買い手側が主導権を握りやすくなっています。物件そのものの特性(メリット・デメリット)に加え、マーケット環境も考慮した作戦の立案が高値売却の機会を創出するのです。

よく多角的な視点の重要性を唱えた表現に「虫の目」「鳥の目」「魚の目」がありますが、ある時は間近で物事を直視し(虫の目)、ある時は高いところから全体を俯瞰(ふかん)し(鳥の目)、またある時は時代の流れを見る(魚の目)ことで全体が見渡せます。3つの視点のどれが欠けても理想の売却は実現しないのです。売却活動を始めるに当たっては、直感や過去の経験則に頼らず、マーケット分析やデータ予測を駆使した戦術を心掛けてほしいと思います。

【関連ページ】一戸建ての長所と短所とは(長所・短所)
【関連ページ】マンションの長所と短所とは(長所・短所)
【関連ページ】住まいの売却のポイント(マンション売却時のポイント)

家を売るときの注意点④売れるまでの期間

売却活動を開始してから成約に至るまで、どの程度の期間を想定しておくか査定価格の算出根拠をもとに考えてみましょう。結論から言うと、売り出しから成約まで6ヶ月の期間を見ておくのがひとつの安心材料といえます。

一般的に、査定価格は「3ヶ月以内に成約できる価格」を算出します。宅建業法の規定に基づき、現地調査や取引事例、市場動向などを勘案のうえ、向こう3ヶ月のマーケット予測をもとに算出します。そのため、特殊な地域要因や個別要因がある、あるいは売り主が査定価格を無視した売出し価格を希望しない限り、大きく超過する可能性は考えにくいはずです。理屈上、3ヶ月以内で決着するのがメインシナリオとなります。

とはいえ、とりわけコロナ禍の不確実性に満ちたマーケット環境においては「想定外」を想定しておく必要があります。想定外に早く買い主が見つかれば何ら問題ないのですが、逆に4ヶ月以上経過すると売出し価格の見直しが必須になり、媒介契約の再契約あるいは別の不動産会社と新規で媒介契約を締結することになります。

家を売りに出す前に最適な時期や方法を確認しておこう

家を売りに出す前に最適な時期や方法を確認しておこう

これから自宅を売却しようとしている人の多くは、自宅の購入を経験している人達でしょう。もしかしたら購入と売却は手続きに大した違いはないと思っているかもしれません。しかし、残念ながらそれは間違いです。

売却手続きの契約では売買契約と媒介契約の2種類を締結し、引き渡し後は一定期間、売り主としての担保責任を負わされます。不良品(契約不適合品)を相手に売った場合、ペナルティーが課されるのです。それだけに、自宅の売却を成功させるには知識武装が欠かせません。

新たな潮流として、「リースバック」という売却方法にも注目が集まっています。リースバックとは住んでいる自宅を売却はするものの、売却後、買い主との間で賃貸借契約を締結し、今度は借り主となって引き続き住み続けることができる取引方法です。短期間でまとまったお金が手に入り、しかも残債がある場合、住宅ローンの返済から解放されるわけですから、利用者にとっては渡りに船といえる仕組みです。

ただ、自宅の売却価格は一般売却(媒介契約による売却)より安くなるのが一般的です。今度は貸し主(=自宅の買い主)への家賃の支払いが発生します。すべての取引条件において、常にリースバックが優れていると思ったら、それは大きな間違いです。やってはいけないこととして、「リースバックは万能」との過信は禁物です。

これまで述べてきたように、家を売り出すには最適な時期と方法があります。築6年~10年の築浅の中古マンションが売れているとお伝えしました。売却活動を始めるに当たっては、直感や過去の経験則に頼らず、マーケット分析やデータ予測を駆使した戦術を心掛けてほしいと申し上げました。

今般、不動産取引にもデジタル化の波が押し寄せています。情報の優劣が成否を分けるのです。不安なときはプロに助言を求めるのも一案です。本稿を参考に、短期かつ高値での自宅売却を目指してください。

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