家を売る方法・手順をわかりやすく解説|不動産売却の流れや高く売りたいときのコツ

2020年、コロナ禍を契機にマイホームを取り巻く取引環境は大きく変わりました。新たな日常が始まり、テレワークを起因とした住宅観や、販売業では3密回避を徹底すべく、オンライン接客やリモート商談が定着しつつあります。本稿では、こうした状況の中で自宅の売却を考えている人向けに、売却の基礎と高く売るコツをご紹介します。

家を売る方法・手順をわかりやすく解説|不動産売却の流れや高く売りたいときのコツ

家を売却する手順

家を売却する手順

家を売るために必要な手順は以下で紹介している、5つの方法です。

家を売るときに必要な手続きの手順
1. 売却価格の相場を調べる
2. 売却価格の査定を受ける
3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
4. 売却活動を行う
5. 購入希望者と売買契約を結び、引き渡す

上記の手順を踏めば、家を売ることができますが、私は最初に“心の棚卸し”をするよう促しています。
なぜマイホームを売ろうと思ったのか、どうして「今」売却活動する必要があるのか、発意に至った動機や事情を自問自答するよう推奨しています。

その理由は簡単。売却目的が明確でなければ、その先に成功も満足もないからです。新型コロナウイルスの感染拡大により、社会全体が従来の生活や働き方からの大きな転換を余儀なくされています。テレワークを起因として、住まいに求める条件にも変化が生じています。家への要望や暮らしに対する価値観は変容しています。

こうした先行きが不透明のなか、ゴールが定まらないままスタートしたところで、路頭に迷うだけです。各人が掲げる目的(ゴール)が達成されて初めて、マイホーム売却は成就するのです。

不要不急の外出が自制されるなか、家族で会話する時間も増えていることでしょう。まずは売却活動を始める前に“心の棚卸し”を実践してみてください。家族の間で価値観が共有できたところで、売却活動のスタートです。以下、家を売るときに必要な手続きをまとめました。順を追ってひとつずつご説明します。

①売却価格の相場を調べる

まずは自分で相場を調べる作業から始めましょう。
ここでいう相場とは、市場で競争売買によって決まる不動産価格を指します。駅からの距離や部屋の広さ・築年数など、自宅の地域要因や個別要因を比較して、過去、類似条件で取り引きされた売買価格を調査します。その集積値が相場を形成するのです。

相場を知ることで不動産会社から提示された査定価格(後述)が適正かどうか、その多寡を判断するのに役立ちます。なぜ、相場と違った査定結果になったのかを販売スタッフに質問できるようになります。さらに、踏み込んだ相談もできるようになるでしょう。結果として、高値売却の可能性が上昇します。

売却価格の相場は不動産サイトなどを見て、似た条件の物件がどれだけの値段で、販売されているか調べることから始めましょう。

<相場を調べるのに役立つサイト>

SUUMOなどの不動産仲介サイト
●国土交通省の「不動産取引価格情報検索
●国税局の「路線価図

閲覧時には以下の項目を忘れずに確認しましょう。
不動産価格は、同じ敷地内に複数の物件があったとしても、様々な要素や条件によって全く異なります。
例えば、同じマンション内で同時期に売り出された物件でも、床面積や階数、日当たりなどが異なれば、おのずと売出し価格にも価格差が生じます。こうした個別性の高さが不動産の特性なのです。

<サイトを見たときに確認したい項目>

●敷地面積、建物面積
●階数
●坪単価
●地域
●築年数
●方角
●経年劣化
●日当たり
●周辺環境 など

売却価格の相場を調べるには、複数の価格サイトを横断的にネットサーフィンするのが賢い方法です。
たとえば、国土交通省の不動産取引価格情報検索で同じ町内の坪単価を調べたのち、他の不動産サイトでも個々の条件について相場がどのように変動しているかをチェックすることで、より実情に即した高精度の価格情報を入手できるようになります。

新築のマンションや一軒家の分譲価格は不動産会社が独自に決定します。これに対し、中古住宅の売出し価格は売り主個人で決められます。つまり、売り主本人が決定権を握れる半面、売却にかかるリスクも売り主が負わなければならないのです。
もし、マーケットの需給バランス(類似物件の取引実例)を加味しない売出し価格で売り出した場合、高値売却の機会損失が懸念されます。こうしたリスクを回避するためにも、相場を知る必要があるのです。

②査定を受ける

自宅がいくらで売れるか、おおよその目安が分かったところで、続いては不動産会社に査定を依頼しましょう。

査定の方法には次の2種類があります。

     査定方法メリットデメリット
机上査定        図面や過去の取引事例などをもとに査定する短時間で査定結果を知ることができるどうしても価格の精度には限界がある
訪問査定        図面やデータに加え、担当者が自宅を訪問し現地調査した後、査定価格を算出するより成約価格に近い金額の提示が期待できる室内の状態を確認するため、部屋の隅々までのぞかれる

ひと口に査定といっても「机上査定」と「訪問査定」があります。
手軽に相場を知りたいときは机上査定を依頼し、すでに相場は把握しており、より正確な価格を知りたいときは訪問査定を依頼するといいでしょう。

その際、依頼先は1社に限定せず、複数社に依頼したほうが信頼できる不動産会社に巡り合える確率が高まります。
不動産は唯一無二(同じものはひとつとしてない)という強い個別性を有しているため、素人には適正価格の評価が容易でないという側面があります。
いうまでもなく不動産取引は他の取引に比べて価格が高額であり、いかなる理由があれ失敗は許されません。
複数の視点(=査定)を経由することで、大数の法則(数多くの試行を重ねることで、理論上の値に近づくという考え方)と同等の効果が見込めるのです。
一括査定サイト(後述)も増えていますので、忙しくて十分な時間が取れない人は活用するといいでしょう。

ちなみに、プロである不動産会社は宅地建物取引業法の規定に基づき、類似物件の取引事例や市場動向を勘案のうえ、向こう3ヶ月のマーケット予測を加味して査定価格を算出します。

やや専門的な話にはなりますが、この「3ヶ月」という数字には重要な意味があります。なぜなら、媒介契約(後述)は契約期間が3ヶ月のため、この期間内に成約できる前提で不動産会社は意見価格を提示します。査定業務はマニュアル化されており、景気や金利動向、不動産市況、さらに周辺エリアにおける需給バランスなども考慮して意見価格を算出します。ネットを活用して自身で調べた相場価格よりは高精度の結果が期待できるのです。餅(もち)は餅屋ということわざがあるように、プロに任せるのが安心です。費用は一切かかりません。

③売却活動を行う

売却活動とは、不動産を売却するすべての方法を指します。
具体的に、売却方法には次の2種類があります。

●仲介
●買取

「仲介」と「買取」は、最終的な売却先がどこになるのか?で分かれます。
具体的には、以下のような違いがあります。

          売却方法        メリット        デメリット       
仲介(買取保証なし)       仲介を依頼した不動産会社がインターネットに不動産情報の広告などを掲載し、中古市場で売り出す成約価格は最も高くなる可能性が高い。仲介手数料が必要/いつ買い主が見つかるのか先行きに不透明感あり(早期の売却には不向き)
仲介(買取保証あり)上記の仲介と同じ方法で売り出し、買い手が見つからなかった場合は事前に決めた買取価格で不動産屋が買い取る一定期間後には買い取ってくれるので、時間的なスケジューリングがしやすい。/買取り保証されているため、売れないという心配がない。仲介手数料が必要/買取り価格は、当初の査定価格を下回る金額になる。
買取不動産会社に即金で買取ってもらう仲介手数料が不要/リフォームも不要/内見案内も不要/売買契約後、数日で売却代金が振り込まれる。通常、売却代金は3種類の中で最も安くなる。慌てて売る必要がなく、少しでも高く売りたい場合は再考の余地あり

買取保証とは、不動産が中古市場で売れなかった場合、不動産会社がその不動産の買取を保証してくれる制度です。

2018年、首都圏で取り引きされた中古マンション、中古一戸建て、そして土地の成約件数は合計5万5897件(東日本レインズ)でした。
当然、この中には売りやすい物件もあれば売りにくい物件もありました。売却難易度は様々で、売却依頼(新規登録)された物件のすべてが成約に至ったわけではありません。

そこで、事前に「買取り保証」を付保しておき、契約期間内に買い主が見つからなかった場合、不動産会社に買い取ってもらう方法が買取保証制度です。

ところで、売却を依頼された不動産会社はどのような売却活動をしているか、ご存じでしょうか。一般的な活動内容を列記すると、次のようになります。

<不動産仲介会社の一般的な売却活動>

●指定流通機構への物件登録
●仲介業者の自社ホームページへ掲載
●会員へダイレクトメールを発送(郵送、電子メール)
●不動産ポータルサイトへの掲載
●チラシや会員誌など、紙媒体への掲載
●ポスティング(宅配)チラシの投函
●来店客へ営業マンが紹介して物件案内する
●オープンハウス(現地内覧会)を開催して集客する

冒頭でも触れましたが、新型コロナウイルスが感染再拡大するなか、販売現場では3密回避を徹底すべく、オンライン接客やリモート商談が定着しつつあります。テレビ会議システムを活用した遠隔商談や、動画でオープンルームや物件の周辺・眺望などを紹介するオンライン接客が行われています。顧客との接触機会を減らしながら、対面営業と同等の効果を維持しようと、各社知恵を絞っています。2021年、こうした光景がコロナ後の新たな日常となるのでしょう。ニューノーマル時代に適応すべく、ポストコロナを見据えた営業スタイルへの変容が求められています。

④不動産会社と媒介契約を結ぶ

媒介契約とは、不動産会社が宅地建物の売買を仲介する際、売買の依頼者と締結する契約を指します。
その物件を「売りたい人」と「買いたい人」を結び付ける“仲人(なこうど)役”として、不動産会社は媒介契約に基づき、その範囲内で仲介人としての責務を全うします。

自宅の調査・査定を行い、より正確な相場観を把握・売却の決断ができたら、次は売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。

この媒介契約には以下の3つの種類があり、その選択は依頼者に委ねられています。
売り主が自身の判断で自由に選択でき、「いかに短期間で」「どれだけ高く」売却できるかを判断基準に1種類に絞り込みます。

●一般媒介契約
●専属専任媒介契約
●専任媒介契約

それぞれの特徴を確認しておきましょう。最大の特徴は、複数の不動産会社に重ねて依頼できるか・できないかの違いです。

        複数業者との契約売り主自らが発見した相手との契約販売状況報告指定流通機構への登録義務契約期間
一般媒介契約可能可能1週に1度以上任意3ヶ月
専任媒介契約不可能可能2週に1度以上売却から7日以内の登録義務3ヶ月
専属専任媒介契約不可能不可能なし売却から5日以内の登録義務3ヶ月

一般媒介契約では2社でも3社でも、異なる不動産会社に同時に売却を依頼できます。

「売り主自らが発見した相手との契約」

これは、売却活動中に売り主が自分で買い主を見つけた場合の取り決めです。3種類のうち専属専任媒介契約のみ禁止されており、当然、不動産会社に内緒で自己発見した買い主と売買契約を締結することも認められません。

「指定流通機構」

こちらは、国内で流通する不動産情報のデータベースになります。売り主が自宅の売却を依頼すると、不動産会社はこの指定流通機構に物件情報を登録します。そして、登録された情報は他のすべての不動産会社が閲覧できるようになっており、このデータベースを介して最適な買い主探しができる仕組みです。ただ、指定流通機構の不動産情報は不動産会社が法的に負っている守秘義務を前提として交換されているため、残念ながら一般には公開されていません。

なお、わが国には国土交通大臣または都道府県知事から免許を取得し、不動産業を営んでいる会社が12万4451業者います(2019年3月末現在)。売り主はこの中から信頼できる業者を選び、さらに3種類ある媒介契約の中から1種類を選ばなければなりません。当然ながら「なんとなく」「不動産会社に勧められたから」では、決断理由として合理的とはいえないのです。明確な根拠ある理由に基づき、自らの意思で選択する必要があります。

⑤購入希望者と売買契約を結び引き渡す

購入希望者が見つかったら、いよいよ売買契約の締結です。購入希望者から購入申込書が提出された後、不動産会社は売買代金の支払い方法や引き渡し時期などの契約条件を交渉・整理し、契約関係書類を作成します。同時に、売り主には後々トラブルにならないよう、自宅に付帯する設備の状況を書面で報告してもらいます。

また、残代金の受領日までに売り主は物件を引き渡せる状態にしておいてください。引っ越しの準備とともに、公共料金の精算も済ませておく必要があります。忘れがちですが、管理規約やパンフレット(マンションの場合)、付帯設備の取扱説明書や保証書なども前もって用意しておく必要があります。すべて引き渡し時に買い主に引き渡すためです。こうしたスケジュールや売買契約時に必要となる提出書類の案内は、不動産会社が事前に説明してくれます。

民法改正による最新状況

2020年4月に民法が改正され、担保責任の帰責性が再定義されました。これまでの「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」という文言に置き換えられ、判断基準が「売買契約の目的物が通常、有すべき品質や性能を欠いているかどうか」ではなく「引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して、契約の内容に適合しているかどうか」へと改められました。つまり、債務不履行の判断が「隠れた瑕疵」ではなく「契約内容の適合性」に変わりました。法改正によって売り主には不適合の程度に応じ、買い主から修補請求や代金減額請求される恐れがあるのです。詳しくは、担当営業の方にお尋ねください。

家を売却する手順

売却手続きにおいて、分譲マンションと一軒家ではいくつかの違いがあります。そのひとつが土地測量の有無です。

ここで両者の権利関係を再確認しておきましょう。分譲マンションは建物(専有部分)が区分所有権、敷地が持ち分に応じた敷地利用権です。一方、一軒家は建物も土地も所有権です。ご存じの通り、わが国では建物と土地(敷地)は別個の不動産として扱われており、それぞれが単独で売買の対象となります。しかし、分譲マンションは管理規約で建物と土地の分離処分が禁止されており、敷地の権利だけを売却することはできません。建物と敷地は一体物として取り扱われます。

そのため、専有部分に所有権移転や抵当権設定などの権利変動の登記がなされても、敷地利用権に関する登記は省略が可能となっています。要するに、売却時に売り主が自ら敷地の地積や境界を確認する必要はないのです。従って、土地の測量は不要となります。

他方、敷地が所有権である一軒家はそうはいきません。昨今、土地の境界をめぐり、隣家とトラブルになるケースをしばしば耳にします。禍根を残すのは避けたいものです。数十万円の費用は掛かりますが、売り主の責任として早めに測量しておくと安心です。

家を売る際に必要になる費用

民法改正による最新状況

自宅を売却すると様々な支出があります。しかも、その金額は決して安くありません。
その代表格となるのは以下の3つです。

●仲介手数料
●税金類
●諸経費

「そんなに掛かるの……」「知らなかった」と慌てなく済むよう、家を売る際に必要となる費用を把握しておいてください。

仲介手数料

仲介手数料とは、自宅の売却を依頼した不動産会社への報酬です。不動産会社は短期間で少しでも高く自宅が売れるよう、広告やネットワークを駆使して売却活動に励みます。その労務に対する対価が仲介手数料です。

仲介手数料の金額は宅建業法によって厳格に請求できる金額が規定されており、法外な手数料を請求される心配はありません。
では、具体的にどう規定されているかというと、成約価格の区分に応じて下表のような利率で算出されます。自宅が3000万円で売却(成約)できた場合を例に見ていきましょう。

売買価格  報酬額
200万円以下取引額の5%以内
200万円以上400万円以下取引額の4%以内
400万円以上取引額の3%以内
家を売却する手順

考え方は、成約価格3000万円を(A)(B)(C)の各区分に分解し、その金額ごとに上表の利率を乗じた金額の総和が仲介手数料となります。この仲介手数料には別途消費税(10%)が課されるため、区分ごとに消費税額も加算して手数料を計算する必要があります。消費税額については、次の項で説明します。

家を売却する手順

実際に速算法で計算してみましょう。自宅を3000万円で売却した際の計算プロセスは次のようになります。当然ながら、結果はどちらも105万6000円で同額です。難しく感じるかもしれませんが、「成約価格×3%+6万円(別途消費税)」と覚えておいてください。

家を売却する手順

なお、この金額は不動産会社が依頼者の一方から受領できる報酬額の上限となります。
成約価格3000万円で売買契約が成立したからといって、当然に不動産会社が105万6000円を請求できるわけではありません。
あくまで「上限」であり、その意味は「金額交渉の余地がある」と解釈できます。媒介契約を締結する前に、仲介手数料の金額についても確認しておくと安心です。

余談ですが、取引実務では契約締結時に仲介手数料の50%を支払い、引き渡し時に残りの50%を支払うのが慣行となっています。

税金

ひと口に税金といっても、とりわけ不動産に関する税金は複雑で、大きく「取得時」「保有時」「売却時」によって税目が異なります。

税金は苦手という人も少なくないと思いますが、避けては通れません。苦手意識を捨て、必要最低限の知識は身に付けておきましょう。
以下、売却時にかかる税金を、図表を交えて分かりやすく解説します。

<売却時にかかる税金>

●譲渡所得税(住民税・所得税)
●印紙税
●登録免許税
●消費税

先述の例でいうと、売却時に発生する不動産会社への仲介手数料には別途消費税(10%)が課されるため、区分ごとに消費税額も加算して手数料を計算します。
この計算方法には速算法があり、成約価格が400万円を超えている場合、下記の算式で仲介手数料を計算できます。

また、不動産を売却し売却益が出た場合、その売り主には譲渡所得税が課されます。「譲渡」は「売却」と同義語です。
土地や建物を売ったときの売却益は「譲渡所得」となり、次の計算式によって税額を算出します。やや専門的な話になりますが、譲渡所得は事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して計算する決まりになっており、繰り返しになりますが売却益が出た場合のみ課税される国税です。

<譲渡所得税(住民税・所得税)>

家を売却する手順

上図の言葉を具体的に説明していきます。

「取得費用とは」

土地や建物を取得したときの購入代金(建物は減価償却費相当額を控除します)や仲介手数料などの合計額です。単純に不動産を購入した費用ではなく、購入時に要した必要経費や購入後のメンテナンス費用(改良費や設備費など)も加算されます。なお、いくらで取得したか購入価格が不明の場合は、実際に売った値段(譲渡価格)の5%相当額を取得費とみなして計算することができます。これを「概算取得費」といい、納税者の便宜と取得計算の簡便さを求めた特例措置となります。

「譲渡費用」とは

土地や建物を売るために支出した費用を指します。具体的には、仲介手数料や測量費、売買契約書に貼付した印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料や、建物を取り壊して土地を売るときの取り壊し費用なども含まれます。要は、売却するための必要経費というわけです。

不動産を売却した場合の譲渡所得税額の計算に当たっては、売った土地や建物の所有期間が売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかで適用される税率が異なってきます(下表参照)。1月1日時点で所有期間が5年以下だと「短期譲渡所得」となり、同じく5年を超えて所有している場合は「長期譲渡所得」となります。起算日が「1月1日時点」である点に注意してください。

<不動産の所有期間で変わる税率>

種類    期間税率
短期譲渡所得所有期間5年以下の土地・建物39.63%(所得税 30.63% ・住民税 9%)
長期譲渡所得所有期間5年を超える土地・建物20.315%(所得税 15.315% ・住民税 5%)

例えば、不動産を3,500万円で売却した場合の譲渡所得税額を実際に計算してみましょう。
設定条件は購入金額が3,000万円、売却金額が3,500万円です。また、取得あるいは譲渡に要した費用として250万円の支出があり、所有期間は3年でした。これを計算式に当てはめると、以下のようになります。短期譲渡所得のため39.63%の税率が適用され、売り主には99万750円の税金が課されます。これを自ら確定申告して納税しなければなりません。

家を売却する手順

なお、同じ不動産でも個人が自宅(=居住用不動産)を売却した場合には特例が用意されています。居住用不動産を譲渡した場合、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円が控除できます。つまり、売却益が出ていても、その金額が3,000万円以下なら税金は掛からないわけです。たとえ売却益が3,000万円を超えていても、課税されるのは3,000万円を超えた“超過部分のみ”で済みます。上段でシミュレーションした3,000万円の不動産を売却した場合の税金の例では、その不動産が「居住用」であれば納税額はゼロになります。

注意すべき点

ただ、注意点として居住用不動産の譲渡の特例は3年に1回しか使えません。また、たとえ納税額がゼロでも必ず確定申告する必要があります。うっかり申告し忘れると、この特例は適用されないのです。税制は知っているか知らないかで納税額に大きな違いが生じます。くれぐれもご注意ください。

続いて、今度は印紙税に話を進めましょう。印紙税とは、売買契約書や工事請負契約書、住宅ローンを組む際の金銭消費貸借契約書などを作成した場合、その文書に対して課税される国税です。契約書1通ごとに記載金額(税抜き価格)に従った印紙税額の収入印紙を貼付・消印して納税します。印紙税額は文書の種類と記載金額に応じて決まっており、売買契約書の場合の印紙税額は下表のようになります。たとえば、売買契約書の記載金額が3000万円の場合、軽減税率が適用されて印紙税は1万円になります。

注意点として、印紙税額は「税抜き価格」で判定します。消費税を含まない本体価格で決まります。中古住宅を個人間売買した場合、消費税は課されませんが、予備知識として覚えておいてください。

印紙税の金額

金額      本則税率軽減税率
100万円を超え500万円以下2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下6万円3万円
1億円を超え5億円以下10万円6万円

※2022年(令和4年)3月31日までは軽減税率が適用されます。

不動産の売却時にかかる税金として、3番目は登録免許税です。登録免許税とは不動産登記にかかる国税を指します。不動産の登記は建物の新築時に行う表示登記に始まり、所有権を初めて登記する際に行う所有権保存登記、所有権を売買などで移転した際に行う所有権移転登記、さらに住宅ローンの融資時に担保となる抵当権の設定登記などがあります。

ここで確認しておきたいのは、売り主と買い主のどちらが登記費用を負担するか?
全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)が例示している売買契約書の雛形には

「売り主は、売買代金全額の受領と同時に、買い主の名義にするために、本物件の所有権移転登記申請手続きをしなければならない(第8条1項)」
「所有権移転登記の申請手続きに要する費用は、買い主の負担とする(同条2項)」

と記載されています。

私事ではありますが、2016年の春に都内の中古マンションを売却した際、所有権の移転登記費用は負担しませんでした。全額、買い主が支払っており、当時の明細を見てみると「登記名義人表示変更」にかかる登録免許税と、依頼した司法書士への報酬を合わせて登記費用は2万9600円(税込み)でした。すでに住宅ローンは完済しており、抵当権の抹消登記も必要なかったため、住所変更登記のみで済みました。

下表に、抵当権抹消登記にかかる登録免許税を記載しましたが、土地・建物ひとつあたり、わずか1000円です。たとえば一軒家の場合、土地ひとつと建物ひとつで登録免許税は合計2000円というわけです。登記費用は高いと思われがちですが、そのイメージが変わったのではないでしょうか。正確な知識を持つことで、些細な不安は解消されていくのです。

登録免許税の金額

抵当権の抹消登記  登録免許税額
土地・建物一つあたり1,000円

消費税

消費税については、いくつかの例外があり、土地には一切課税されません。
土地は、使用や時間の経過によって消費(減価償却)しないという理屈からです。
さらに、商売を目的としない一般個人間で売買する不動産(建物)も非課税扱いになります。
また、そもそも消費税の最終負担者は買い主ですので、売り主は心配する必要はありません。

むしろ、売り主に心配してほしいのは、先述した仲介手数料や司法書士への報酬のほか、測量費用や引っ越し代金には課税されるという点です。消費税は商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税されます。残念ながら、不動産の売買に軽減税率(税率8%)は適用されません。

諸経費

そのほか、家を売る際に必要となる費用を列記すると、主に次のようになります。

●登記に関わる司法書士への報酬
●住宅ローンの完済手数料(残債がある場合)
●測量費用(一軒家の場合)
●引っ越しや家具・家電の新調費用

ひとつずつ見ていきましょう。

登記に関わる司法書士への報酬

登記費用の内訳は「登録免許税」と「司法書士への報酬」から成ります。
先述した登録免許税とは別に、司法書士への報酬は登記手続きを代行してもらった際の手数料です。「代行」と表記しましたが、売り主が自分で登記することもできます。その場合、当然ながら報酬は発生しません。やる気のある人はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

住宅ローンの完済手数料(残債がある場合)

自宅の売却時に残債を一括返済する場合、手数料がかかる金融機関があります。
この手数料は行員の事務作業に対する手間賃を意味し、無料の金融機関もあります。
従って、お心当たりのある方は取扱金融機関に確認しておくと安心です。

測量費用(一軒家の場合)

一軒家を売却する場合には敷地の測量が必要になります。
地積と境界を確定させ、隣家に対しても買い主に対しても、信頼と安心を提供するために実施します。ただ、気になる測量費用には幅があり、敷地の形状が“いびつ”だったり、隣家の数が多く複雑な権利形態の場合には金額が上昇します。

引っ越しや家具・家電の新調費用

引っ越しや家具・家電の新調費用は家族構成、移動距離、ご家族の趣味・嗜好などで大きく変動します。節約すれば金額を抑えられますし、贅沢すれば簡単に100万円は超えます。お財布と相談しつつ、予算と好みで自由に選択してください。

家をできるだけ高く売る方法

家をできるだけ高く売る方法

ここからは本稿の核心部分である「自宅をできるだけ高く売る方法」について議論を深めます。

ひとつ、今注目したいのがのがホームステージングです。ホームステージングとは、ここに住みたいと思うような感性を刺激する空間をコーディネートし、短期かつ高値での売却を後押しするサービスです。
ホームステージャーと呼ばれる専門スタッフが各室に高級家具や小物を配置し、第一印象を向上させることで見学者の購入意欲を刺激します。それなりの費用は掛かりますが、“お値段以上”の効果が期待できるはずです。
事実、成約日数の短縮に貢献したという話も耳にしています。マイホームは「見た目」が勝敗を二分するのです。ぜひとも実践してみてください。

売るタイミングはできるだけ築浅が理想

われわれ日本人は「新しいもの好き」と言われます。こうした傾向は住宅選びにも当てはまり、国内で取り引きされている住宅の流通量を「新築」と「中古」に区分けして比較した場合、その比率は「新築:中古=85:15(2018年)」となります。
日本では「築浅」が優先されるのです。

東日本レインズが公表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」によると、中古マンションの対新規登録成約率がもっとも高いのは、「築6~10年の物件」というデータがあります。


中古マンションの対新規登録成約率は「築6~10年」の物件がもっとも成約率が高くなっています。
築年帯別の平均㎡単価を見てみると、

築年数による成約単価の違い

    築0~5年築6~10年築11~15年
成約単価84万3,900円73万3,800円62万5,300円

でした。差し引き5年間で平均成約単価は約11万円(約13%)下落した計算です。

これを平均成約面積である約66.5平方メートルに引き直すと、その差は約731万円(=11万円×66.5㎡)となります。
つまり、マンションの性能や設備は新築と築5年で大差ないにもかかわらず、取得価格は5年の経過(築5年)で731万円安くなるわけです。
売り手側の視点からすると、このタイミングが自宅を高く売るチャンスとなるのです。

一括価格査定サイトで見積りを依頼する

今度はインターネットを多用して高値売却を目指す方法の紹介です。一括価格査定サイトを活用し、自宅で手軽に複数社の査定価格を一括で取り寄せてはいかがでしょうか。すき間時間にネットで簡単に申し込みでき、まとめて価格を比較できるので相場観を養うのにも役立ちます。コロナ禍で非対面が求められる中にあって、営業マンに自宅まで押しかけられる煩わしさもありません。すべての手続きがオンラインで完結し、しかも費用は一切かかりません。

どういう仕組みかというと、価格査定サイトの運営会社は多くの不動産会社と提携しており、各提携会社は一括査定サイトを経由して査定依頼を受けます。その際、手元に届いた査定情報は見込み客としての情報となるため、不動産各社は集客活動を担ってくれた対価として一括査定サイトに紹介料を支払います。利用者が無料で一括査定できるのは、こうした仕組みのおかげです。

ただ、一括価格査定サイトは簡易査定であり、机上での推定価格に過ぎません。そこで、その中から信頼に足る1社を選ぶための入り口として役立ててほしいと思います。正式査定を依頼する仲介業者探しのためのポータルサイトと考えてください。もはや不動産とデジタルは切っても切れない関係にあります。一括査定はニューノーマル時代の新常識となるでしょう。使える手段はフル活用し、短期かつ高値での自宅売却を目指してください。

家を売る際の注意点

家を売る際の注意点

家を売る際の注意点について解説します。具体的には以下の4点を掘り下げます。

●期間と価格、どちらを優先するか決めておく
●持ち家の自宅の場合、引っ越しよりも売却を優先する
●住宅ローンが残っている場合は抵当権の抹消手続きが必要
●売り出しから売却まで6ヶ月の期間を見ておく

期間と価格、どちらを優先するか決めておく

自宅を売ろうとしても、売却代金が住宅ローンの残債を下回ってしまった場合、不足分の住宅ローンを新たに借りるのは極めて困難です。

その場合は差額分を全額、自己資金で工面する必要があります。

差額分を自己資金で補填できない場合は、「早く売る」よりも「高く売る」を最優先するのが得策となります。たとえ時間が掛かっても、希望する売出し価格で成約できるまで活動を続ける、辛抱強さが求められます。

また、今般、日本経済が再びデフレへと逆戻りするのではないか懸念されています。
というのも、コロナ禍による経済活動の停滞に伴い、これまでの需要が一気に蒸発し、モノやサービスの価格が下落し始めているからです。

2020年の基準地価(7月1日時点)は、全国の全用途平均で3年ぶりの下落となりました。
都市部の開発をけん引したインバウンド需要が消失し、都心経済の減速感は強まっています。
全国およそ2万ヶ所の調査地点のうち、下落地点数の割合が48.0%から60.1%へと増加し、5年ぶりに6割を超えました。
今後、さらに感染再拡大が長引くと、わが国経済は“コロナデフレ”に陥るリスクがあるのです。

持ち家の自宅の場合、引っ越しよりも売却を優先する

自宅を売却する場合、いつ引っ越すべきか、そのタイミングについての考察です。
たとえば、買い替えを伴う場合、「売り先行」か「買い先行」かの議論がなされ、その損得が比較考量されます。どちらも一長一短があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

ただ、いずれにせよ避けたいのが仮住まいによる新たな家賃負担です。
もし住宅ローンとの“W負担“になれば、家計へのダメージは深刻です。
そのうえ敷金や礼金、手数料まで請求されたら目も当てられません。
マンスリーマンションやロングステイできる格安ホテルを利用する手はありますが、住みながら売却活動をすれば無駄な支出は抑えられます。
一旦売ろうと決めたら、早々にアクション(売却活動)を起こすのが成功への第一歩です。

住宅ローンが残っている場合は抵当権の抹消手続きが必要

自宅を売却する理由は人それぞれ。様々な事情があるでしょう。上段では築年数「6年~10年」の物件が、もっとも成約率が高いと紹介しました。このタイミングで売却を希望する人が多いという証拠です。

ただ、築10年未満で住宅ローンを完済している人は限られると想像します。住宅ローン減税の控除期間も残っているわけです。にもかかわらず、残債がある段階で自宅を売却すると、抵当権を抹消しなければなりません。売買契約締結後、引き渡し日に売却代金の決済資金をそのまま住宅ローンの残債に充当し、抵当権を抹消する必要があります。

改めて抵当権について復習しておきましょう。

【抵当権とは】
住宅ローンの借り手が返済を長期滞納あるいは不能になった際、金融機関(貸し手)が不動産を換価処分(売却)して優先的に弁済を受けるための担保物権のこと。

かみ砕いていえば、貸した住宅ローンの回収が見込めなくなった際、銀行が強制的に不動産を売却(競売)し、その売却代金をローンの返済資金に充当することで、金融機関が融資金を回収するための強い権利です。

ここでお伝えしたいことは、
・住宅ローンを長期滞納すると抵当権が実行され、自宅を競売される恐れがある
・残債のある自宅を売却するには抵当権を抹消しなければ売れない
という点です。
想像してみてください。住宅ローンの返済義務(=抵当権)が残っている住宅を買いたいという人はいないでしょう。当然ながら、借りたものは全額返さなければなりません。上述したように「担保割れ」を常に意識した売却行動が欠かせません。

売り出しから売却まで6ヶ月の期間を見ておく<

最後は売却活動を開始してから成約に至るまで、どの程度の期間を想定しておくかについての一考です。ここでは査定価格の算出根拠をもとに考えてみましょう。

一般的に査定価格は「3ヶ月以内に成約できる価格」を算出します。宅建業法の規定に基づき、現地調査や取引事例、市場動向などを勘案のうえ、向こう3ヶ月のマーケット予測をもとに算出します。
そのため、特殊な地域要因や個別要因があったり、あるいは売り主が査定価格を無視した売出し価格を希望しない限り、大きく超過する可能性は考えにくいはずです。
理屈上、3ヶ月以内で決着するのがメインシナリオとなります。

とはいえ、とりわけコロナ禍の不確実性に満ちたマーケット環境においては「想定外」を想定しておく必要があります。想定外に早く買い主が見つかれば何ら問題ないのですが、逆に4ヶ月以上経過すると売出し価格の見直しが必須になります。仕切り直し、媒介契約の再契約あるいは別の不動産会社と新規で媒介契約を締結することになります。不透明感が漂う視界不良な中にあっては、売り出しから成約まで6ヶ月の期間を見ておくのがひとつの安心材料といえます。

まとめ

これから自宅を売却しようとしている人の多くは、自宅の購入を経験している人達でしょう。
もしかしたら購入と売却は手続きに大した違いはないと思っているかもしれません。
しかし、残念ながらそれは間違いです。
売却手続きの契約では売買契約と媒介契約の2種類を締結し、引き渡し後は一定期間、売り主としての担保責任を負わされます。不良品(契約不適合品)を相手に売った場合、ペナルティーが課されるのです。

それだけに、自宅の売却を成功させるには知識武装が欠かせません。情報の優劣が成否を分けます。不安なときはプロに助言を求めるのも一法です。本稿を参考に、思い描いたゴールの実現を目指しましょう。

ご留意事項
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