国民年金の第1号・2号・3号被保険者の違いは?介護保険・厚生年金とは違う?
国民年金は、フリーランスや学生に当てはまる第1号被保険者と正社員などの第2号被保険者、そして第2号被保険者の配偶者であり一定の条件を満たした第3号被保険者の3種類に分けられます。ここではそれぞれの概要と、介護保険における第1号・2号被保険者との定義の違いなどを解説します。

国民年金の被保険者の種類

日本では公的年金制度が敷かれており、20歳以上60歳未満の国内に住所を置くすべての人に加入が義務づけられています。きちんと保険料を納めることで老齢基礎年金をはじめ、障害年金や遺族年金が受け取れます。国民年金においては、雇用形態によって第1号・2号・3号被保険者に分類され、納付方法などが異なるので違いを把握しておくことが大切です。まずは、それぞれの被保険者の違いについて理解しておきましょう。
第1号被保険者は自営業者や学生など
第1号被保険者には、自営業者、農業に従事する者や正社員ではない働き方のフリーターやフリーランス、学生、無職の方が該当します。現在の保険料は1万6,610円(令和3年度)で、納付するには納付書で直接納付するか、口座振替、クレジットカード納付を設定します。
転職するために退職し、無職である期間が1ヶ月でも発生する場合、その期間は第1号被保険者となるためご自身で保険料を納めなければならない点に注意が必要です。
第2号被保険者は「厚生年金」の被保険者
第2号被保険者は、厚生年金の被保険者です。会社員として勤め、月々の給与から社会保険料が天引きされている場合、自動的に厚生年金と国民年金の両方を支払っていることになります。いわゆる「2階建て年金」と呼ばれる仕組みです。
第3号被保険者は第2号被保険者の配偶者
第3号被保険者は第2号被保険者の配偶者で、一般的には専業主婦であるかパートタイムなどで一定の基準以下の収入しかない場合に該当します。保険料は、第2号被保険者の会社が負担している形となるため、ご自身で納付する必要はありません。
第1号と第2号被保険者は何が違う?

第1号・2号被保険者は、どのような点が異なるのでしょうか。ここでは大きく2つの点について着目して説明します。
保険料の違い
国民年金にのみ加入する第1号被保険者の保険料負担は、1万6,610円(令和3年度)のみです。一方、第2号被保険者は国民年金保険料を含む厚生年金を支払います。保険料は月給に対する「標準報酬額×保険料率」と賞与に対する「標準賞与額×保険料率」から算出し、事業主と折半した金額を自動的に納めます。給与によっても異なってきますが、一般的には第2号被保険者のほうが支払う額が大きくなるのが特徴です。
ちなみに第1号被保険者が受け取る年金額を満額よりさらに増やすためには、付加年金制度や国民年金基金に加入する方法があります。
もらえる年金額の違い
第1号被保険者は、通常65歳になると「老齢基礎年金」が受け取れます。2021年度の月額(満額)は65,075円です。第2号被保険者だった者が受け取るのは、前述のように2階建てであるため、「老齢基礎年金」に「老齢厚生年金」が加わります。厚生年金の月額(満額)は、220,496円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)です。
【参照】日本年金機構「令和3年4月分からの年金額等について」 詳しくはこちら

【最新】国民年金の満額は78万円!満額の条件と今から受給額を増やす方法
第3号被保険者の条件

「結婚を機に退職し、パートナーの扶養に入りたい」といったように、ライフイベントがきっかけで第2号被保険者から第3号被保険者になることがあります。また、「パートを始めるが、第3号被保険者から外れてしまうのではないか」といった心配をする場合もあるでしょう。ここでは「第3号被保険者」であるための条件について説明します。
必須条件として「20歳以上60歳未満」であることに加え、「主に第2号被保険者と生計をともにしている」が挙げられます。その上で俗に言う「130万円の壁」があります。これは年間収入が130万円を超え、月収が10万8,000円を超えている場合は社会保険の扶養から外れます。この場合、第1号被保険者となりご自身で保険料を納めなければなりません。
また、130万円と同じように「106万円の壁」も存在します。130万円に届かなくとも、下記のような条件に該当すれば第3号被保険者ではなくなってしまいます。特にこれから働きたいが第3号被保険者のままでいたいと考えている方は、収入面で注意が必要です。
・週に20時間以上勤務する
・その会社で1年以上働く予定がある(令和4年10月からは「2ヶ月を超えて働く予定」で可)
・毎月の収入が8.8万円以上
・学生ではない
・勤め先の従業員が、常時501人以上(令和4年10月からは101人以上、令和6年10月からは51人以上)
【参考】日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 詳しくはこちら
加えて、夫が離職し第2号被保険者から第1号に切り替わった場合、配偶者である妻も第3号には該当しなくなるため、第1号被保険者となります。

103万の壁? 130万円の壁? 扶養控除にまつわるさまざまな「壁」と税金の話
介護保険の第1号・第2号の違いは年齢

公的年金には40歳から自動的に加入となる「介護保険」もあります。これにも第1号被保険者と第2号被保険者という分類がありますが、国民年金とは異なり、年齢によって自動的に分けられるものです。分類の名称は同じですが、国民年金と定義が異なるため混同しないようにしましょう。
介護保険の第1号保険者は65歳以上の方
介護保険における第1号被保険者は、「65歳以上の方」です。要介護・要支援状態になった際に各種介護サービスが受けられます。介護保険料は、市区町村が徴収する仕組みで、通常は年金から天引きされる形で納めます。
介護保険の第2号保険者は40歳以上65歳未満の方
第2号被保険者は、「40歳以上65歳未満の医療保険加入者」です。この年齢に該当し、かつ老化に起因する関節リウマチや初老期における認知症などの疾病に罹患した場合は、介護サービスが受けられます。
介護保険料は、国民健康保険に加入しているなら、健康保険料とともに徴収されます。会社員で全国健康保険協会(けんぽ)や組合健保に加入しているなら、その保険料とともに差し引かれる仕組みです。被扶養者は被保険者(国民年金の第2号被保険者)の保険料でまかなわれるため、別途保険料が加算されることはありません。
まとめ
日本に住所を置く20歳以上60歳未満の国民は、自営業者、フリーターや学生、農業従事者なら第1号被保険者、企業で働いている社員は第2号被保険者、そして第2号被保険者の配偶者であり収入が一定の額を超えていなければ第3号被保険者と、いずれかの形で国民年金制度に加入しています。
ライフイベントや仕事や収入の変化で該当する種類が変わる可能性もあり、それに伴い保険料の納付方法も天引きから自らで納める形へ変更になることがあります。未納期間が発生してしまうと、将来老齢基礎年金が満額で受け取れなくなるため、仕組みをきちんと理解し必要な手続きを行うようにしましょう。
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