専業主婦・主夫が国民年金に加入しなければならない場合とは?
結婚後に専業主婦・主夫として家庭に入り、配偶者である会社員や公務員の被扶養家族となった場合、国民年金に加入する必要はあるのでしょうか?今回は専業主婦・主夫が国民年金に加入すべき理由や専業主婦・主夫が年金受給額を増やす方法をご紹介します。

主婦・主夫が加入する年金の種類は?

現在の日本の年金制度には、以下の3種類があり、その人の働き方によって加入すべき年金制度が決まっています。
したがって、専業主婦・主夫が加入する年金は国民年金ということになります。
年金の種類
年金の種類 | 加入する人 |
---|---|
国民年金 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人 |
厚生年金 | 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人 |
共済年金 | 公務員、私立学校の教員など |
国民年金は原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入することになっており、20歳から60歳までの40年間の全期間にわたって保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。2020年4月からの年金受給額(満額、1年分)は、78万1,700円です。
専業主婦・主夫は原則「第3号被保険者」
なお、国民年金の被保険者は職業や所得などにより以下の3種類に分けらており、専業主婦・主夫は原則として第3号被保険者に該当しますが、年間収入が130万円を超えると第1号被保険者となります。第3号被保険者の国民年金保険料は、配偶者が加入する年金制度で負担することになるため、第3号被保険者本人が払う必要はありません。しかし、専業主婦・主夫でも第1号被保険者になった場合は、自ら保険料を納付しなくてはならなくなることに注意してください。
被保険者の種類
被保険者の種類 | 加入する人 | 保険料の納付方法 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業の人、学生、フリーター、年間収入が130万円以上の専業主婦・主夫など。 | 加入者本人が口座振替等によって納付します |
第2号被保険者 | 厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する人。 | 厚生年金加入者は自動的に国民年金にも加入することになり、国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれています。 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人。ただし、年間収入が130万円以上で健康保険の扶養となれない人は第3号被保険者ではなく、第1号被保険者となります。 | 配偶者が加入する年金制度が配偶者の分とともに保険料を一括負担します。 |
※配偶者の保険に関する「壁」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
年下の専業主婦・主夫にもらえる「配偶者加給年金」とは?

ここまで見てきたとおり、専業主婦・主夫は第1号被保険者は自身の負担で、もしくは第3号被保険者は配偶者の負担で、国民年金の保険料を納めていれば、原則として65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。しかし、配偶者のどちらかが年上の場合、2人ともに65歳に達するまでは、どちらか一方の年金だけで生計を立てていかねばならないことになり、生活が苦しくなってしまうおそれがあります。そこで設けられたのが「配偶者加給年金」制度です。
配偶者加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年(※)以上ある人が、65歳になった時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、以下の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に加算されるもので、たとえば妻が年下の夫婦の場合は、妻が65歳になるまでの間、それぞれ以下の額が夫の年金に上乗せして支給されることになります。
※ または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15~19年
対象者や加入給付額
対象者 | 加給年金額 | 年齢制限 |
---|---|---|
配偶者 | 22万4,900円 | 65歳未満(大正15年4月1日以前に生まれた者に関しては年齢制限はなし) |
1人目・2人目の子 | 各22万4,900円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
3人目以降の子 | 各7万5,000円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
さらに、老齢厚生年金を受給している人の生年月日に応じて、上表で示した配偶者の加給年金額に33,200円~166,000円が特別加算されます。2020年4月以降の特別加算額はそれぞれ次のとおりです。
特別加算額と加給年金額の合計
受給権者の生年月日 | 特別加算額 | 加給年金額の合計 |
---|---|---|
1934年4月2日~ 1940年4月1日 | 3万3,200円 | 25万8,100円 |
1940年4月2日~ 1941年4月1日 | 6万6,400円 | 29万1,300円 |
1941年4月2日~ 1942年4月1日 | 9万9,600円 | 32万4,500円 |
1942年4月2日~ 1943年4月1日 | 13万2,700円 | 35万7,600円 |
1943年4月2日以後 | 16万6,000円 | 39万0,900円 |
たとえば老齢厚生年金を受給している夫が1945年生まれで、かつ65歳未満の妻がいる場合は、加給年金22万4,900円+特別加算額16万6,000円=39万900円が年金に上乗せして支給されることになります。
加給年金は届け出制で、加算を希望する場合は日本年金機構もしくは年金事務所に届け出る必要があります。また、当然ながら加算は終身ではなく、加算されるのは配偶者が65歳に達した月までです。
※加給年金について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
年の差夫婦は注意!夫が65歳になると家計負担増も!?

ここまでの話から、「配偶者加給年金が受けられるのだから、年の差のある夫婦のほうが得だ」と思った方も多いかも知れませんが、実は、必ずしもそうとは限りません。注意しなければならないのは、配偶者が60歳未満で、国民年金保険の第3号被保険者である場合。先述したとおり、第3号被保険者は、第2号被保険者(厚生年金加入者)の配偶者(20歳以上60歳未満)であり、その国民年金保険料は第2号被保険者が加入する年金制度経由で納められることになっています。
しかし、例えば、これまで第2号被保険者だった夫が65歳で定年退職して老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給し始めると、専業主婦の妻は第3号被保険者の資格を失い、第1号被保険者へと移行します。そうすると60歳になる月の前月までの間は自分自身で、月々の国民年金保険料金(2020年現在1万6,540円)を納めなくてはならないことになります。
解説したとおり、配偶者加給年金の加算額は最大年額39万900円です。一方、国民年金の1年分の保険料は19万8,480円。60歳未満の専業主婦・主夫の配偶者がいる場合は、加給年金をもらって家計が潤う反面、配偶者の国民年金保険料という新たな支出が生まれるということに注意が必要です。
専業主婦・主夫が年金を増やすには?

では、専業主婦・主夫が将来の年金受給額を増やすには、どうすればよいのでしょうか?国民年金の第1号被保険者の場合と、第3号被保険者の場合とに分けて見ていきましょう。
1.第1号被保険者の場合
① 国民年金基金に加入する
国民年金基金は、自営業・フリーランスなどの国民年金の第1号被保険者が国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度のことで、専業主婦・主夫のうち第1号被保険者に該当するに人(自営業者の配偶者など)も利用することができます。掛金の額を自分で選べる上、掛金全額が所得控除の対象になるため、所得税や住民税の負担を減らせるというメリットもあります。国民年金基金に加入するには、全国国民年金基金に加入申出書を提出しなくてはなりません。詳しくはこちらを御覧ください。
※全国国民年金基金ホームページ 詳しくはこちら
② 付加年金制度に申し込む
付加年金制度は、国民年金第1号被保険者と任意加入被保険者(65歳以上を除く)を対象とした制度で、定額保険料に付加保険料(400円/月)を上乗せして納めると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」にあたる額が上乗せして支給されます。たとえば、20歳~60歳までの40年間、付加保険料を納めていた場合は「200円×480か月(40年)= 96,000円」が支給されることになります。付加保険料の納付は任意で、希望する場合は市町村役場か年金事務所で申し込むことができます。
2.第3号被保険者の場合
第3号被保険者には、年金受給額を加算するための公的な制度は設けられていません。受給額を増やしたいのであれば、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)への加入や各金融機関が提供する個人年金の利用を検討してみましょう。
まとめ
専業主婦・主夫も国民年金の保険料を納めていれば、65歳から国民年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。第2号被保険者(厚生年金を20年以上納めている者)が65歳になった時点で、配偶者が65歳未満の専業主婦・主夫の場合は、「配偶者加給年金」が厚生基礎年金に上乗せされますが、専業主婦・主夫の年齢が60歳未満の場合は月々の国民保険料を自己負担しなくてはならなくなることに注意が必要です。専業主婦・主夫で将来受け取れる年金額を増やしたいと考えている場合は、第1号被保険者は国民年金基金や付加年金制度が利用できます。また、第3号保険者は個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)への加入や各金融機関が提供する個人年金の利用を検討してもよいでしょう。
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