年金受給者も確定申告すべき?意外と知らない「年金受給者の確定申告不要制度」とは

年金受給者にとって、細かい計算が必要になる確定申告は大きな負担となります。そんな負担を減らすため、所得税及び復興特別所得税については「公的年金等の確定申告不要制度」が設けられています。この記事では、「どんな人が確定申告不要になるのか」「原則は確定申告不要だが、確定申告をしたほうがおトクなケース」を紹介します。

年金受給者も確定申告すべき?意外と知らない「年金受給者の確定申告不要制度」とは

年金受給者が確定申告不要になる場合とは?

年金受給者が確定申告不要になる場合とは?

年金収入は、所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)・住民税の計算上は「雑所得」となり、原則としては確定申告が必要です。しかし年金受給者の確定申告の負担を減らすために、公的年金等については、次のふたつの要件に当てはまる場合、所得税等の確定申告をしなくてもいい、という制度があります。
確定申告が不要になるのは、次のいずれにも該当する場合です。

①公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合
②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合

なお、公的年金等とは、次の年金などです。
・国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法などの法律の規定に基づく年金
・恩給(一時恩給を除く)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金
・確定給付企業年金契約に基づいて支給される年金

源泉徴収票で不要かどうかをチェックする

自分の年金が確定申告不要かどうかは、翌年の1~2月に日本年金機構などから送られてくる「公的年金等の源泉徴収票」で確認します。

【参考】日本年金機構「令和2年1月11日から順次「令和元年分公的年金等の源泉徴収票」の発送を行います」詳しくはこちら

チェックするのは、この票の(1)の「支払金額」です。この金額が400万円以下であれば確定申告をする必要がありません。複数の公的年金等を受け取っている場合には、各源泉徴収票の支払金額の合計が400万円以下であるかどうかで判定します。

ただし、公的年金等の支払金額が400万円以下であっても、例えば給与所得や家賃収入があるなど、公的年金等以外の所得金額が20万円を超えている場合には確定申告が必要になります。

申告不要でも確定申告をしたほうがお得なケースもある

申告不要でも確定申告をしたほうがお得なケースもある

確定申告不要の場合に該当しても、確定申告をしたほうがお得なケースもあります。上の「公的年金等の源泉徴収票」の(2)「源泉徴収税額」に金額の記載がある場合は、年金からすでに所得税等が天引きされています。

年金受給者のうち年金額108万円(65歳以上は158万円)以上の方は、「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を日本年金機構へ提出することで配偶者控除、扶養控除、寡婦(夫)控除、障害者控除を適用して源泉徴収税額が計算されています。

また、年金から天引きされる社会保険料については、扶養控除等申告書の提出の有無にかかわらず社会保険料控除が適用されます。

上記以外の所得控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。確定申告をすると源泉徴収税額の還付を受けることができる主なケースは次のとおりです。

1. 医療費を多く支払った場合

1年間に支払った医療費の合計額が、

・10万円
・総所得金額等×5%


のいずれか低いほうの金額を超える場合には、確定申告をすることで医療費控除を受けることができます。

2. 年の途中で扶養の人数が変わったり、配偶者が亡くなったりした場合

2. 年の途中で扶養の人数が変わったり、配偶者が亡くなったりした場合

配偶者控除や扶養控除、寡婦(夫)控除は「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出していれば適用されますが、年の途中で変更があり扶養控除等申告書に反映されていない場合には、確定申告をすることで還付を受けることができます。

3. 社会保険料を支払った場合

年金から天引きされる社会保険料のほかに、ご自身や配偶者、生計を一にする子や孫の介護保険料、後期高齢者医療保険料、国民健康保険料、国民年金保険料などを支払った場合には、確定申告をして社会保険料控除を受けることができます。

4. 生命保険料や損害保険料を支払った場合

生命保険料や損害保険料を支払った場合には、確定申告をすることで生命保険料控除や損害保険料控除の適用を受けることができます。

5. ふるさと納税や寄付をした場合

ふるさと納税や一定の寄付をした場合には、確定申告をすることで寄付金控除を受けることができます。

6.ローンを組んで自宅を購入・リフォームした場合

住宅ローンを組んで自宅を買ったりリフォームをしたりした場合には、確定申告をすることで、10年にわたり年末ローン残高の1%の住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます(※)。

※詳しくは「住宅ローン控除で住民税が戻ってくる「住宅ローン控除」とは?」の記事をご覧ください。

7. 災害や盗難にあった場合

災害や盗難により損害を受けた場合には、確定申告をすることで雑損控除の適用を受けることができます。修繕などの領収書や被害届の証明書は必ず取っておきましょう。

8. 「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出していない場合

「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出していない場合には、源泉徴収税額に配偶者控除などの所得控除が反映されていないため、税金が多く天引きされています。
確定申告をすることで、引かれすぎた税金の還付を受けることができます。

住民税の申告が必要な場合もある

住民税の申告が必要な場合もある

住民税には「公的年金等の確定申告不要制度」がありません。したがって、所得税等の確定申告不要な場合に該当しても、住民税のみ確定申告が必要な場合があります。住民税の確定申告が必要かどうかは、公的年金等の支払金額や年齢、扶養人数などによって異なります。また雑所得以外の所得があれば20万円以下であっても住民税の申告が必要になりますので、詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。

なお、所得税等の確定申告は住民税の確定申告を兼ねているため、所得税等の確定申告をしていれば改めて住民税の確定申告をする必要はありません。

まとめ

まとめ

公的年金等の受給者は、①公的年金等の収入金額が400万円以下、②公的年金以外の所得金額が20万円以下、というふたつの要件を満たせば、所得税等の確定申告の必要がありません。しかし確定申告をするとおトクなケースもいろいろあります。
公的年金等の源泉徴収票のハガキが届いたら、内容を確認してみましょう。わからないことがあれば税務署に相談することができます。

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