iDeCo(イデコ)の確定申告や年末調整の方法・手順を全解説!メリットや実際の控除額も

iDeCoで税金の優遇を受けるためには、年末調整や確定申告等の手続きが必要な場合があります。今回は、iDeCoの仕組みを解説した上で年末調整や確定申告等の正しい手続き方法を解説します。iDeCoによる税金の優遇シミュレーションも行っているので参考にしてみてください。

iDeCo(イデコ)の確定申告や年末調整の方法・手順を全解説!メリットや実際の控除額も

iDeCo(個人型確定拠出年金)で税制優遇が受けられる仕組み

iDeCo(個人型確定拠出年金)で税制優遇が受けられる仕組み

iDeCoは自分で拠出した掛金を自分で運用し、資産形成する私的年金制度のことです。20歳以上65歳未満の国民年金加入者であれば、原則として誰でも加入できます。ここではiDeCoが税制優遇を受けられる仕組みについてみていきましょう。

掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となる

iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象です。年末調整や確定申告で手続きをすることで、その年に拠出した掛金の総額を所得から差し引けます。「所得控除」「給与所得控除」「生命保険料控除」といったほかの所得控除と合わせることで、支払う税金額を抑えられるでしょう。

所得税だけでなく住民税の負担も軽減できる

iDeCoでは所得税だけでなく、住民税の負担も軽減できます。先述したようにiDeCoでは掛金の全額が所得控除となるため、それに伴い所得割額も減額の対象となります。個人住民税は定額で課税される「均等割」と所得に応じて課税される「所得割」から構成されており、iDeCoによって「所得割」の部分が減額されることから、結果として住民税の節税が可能です。

運用益には税金がかからない

iDeCoでは、運用して得られた利益・運用益に対して税金がかかりません。通常、投資信託や株、預金等で運用した利益や運用益には20.315%の税金が課されるようになっています。本来ならば税金として引かれる分を再び運用に回すことができるため、より効率的な運用ができるでしょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整が必要な人

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整が必要な人

年末調整とは、ある人が1年間に納める所得税と復興特別所得税額の過不足を精算する手続きのことです。iDeCoをしていて年末調整の手続きが必要となるのは、1カ所からお給料をもらっている会社員と公務員であり、必要書類は勤め先にてもらうことができます。

なお、会社員と公務員であってもiDeCoの掛金を給与から天引いている場合(事業主払込を選んでいる場合)、事業主である勤め先が毎月の税額算出時にiDeCoの掛金を控除する手続きもあわせて行っています。そのため、年末調整の手続きを自分でする必要はありません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整をする方法

ここではiDeCoで年末調整をする方法について、流れを追って解説します。

「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管しておく

iDeCoの掛金を全額所得控除とし、税制優遇の適用対象とするには年末調整で所定の手続きを踏まなければなりません。まずは、年末調整で提出が必要な書類である「小規模企業共済等掛金払込証明書」を手元で大切に保管しておきましょう。小規模企業共済等掛金払込証明書は、毎年10月頃に国民年金基金連合会から届く書類で、1年間の掛金総額が記載されています。

万が一、紛失してしまった場合は再発行も可能ですが、手続きが必要なほか時間もかかる点に注意が必要です。

「給与所得者の保険料控除申告書」を記入する

11月頃、年末調整資料として会社から「給与所得者の保険料控除申告書」といった所定の用紙が配付されます。その用紙の右下に「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」という欄があるので、そこにiDeCoで拠出したその年の掛金総額(年額)を記入しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整をする方法

※年末調整資料例の一部を抜粋

勤務先の期限以内に必要書類を提出する

記入した「給与所得者の保険料控除申告書」と「小規模企業共済等掛金払込証明書」を会社に提出し、すべての手続きが完了します。勤め先によって年末調整の期限等、スケジュールが異なることから、時期が近づいてきたら前もって確認しておくことが大切です。

iDeCoの活用によって軽減できた所得税は、あわせて申告したほかの所得控除とあわせて12月の給与支払時に還付されます。また、住民税は翌年度の金額が軽減される形で反映されることも覚えておきましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告が必要な人

iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告が必要な人

iDeCoで確定申告が必要となるのは、個人事業主やフリーランスを含む自営業、無職の人です。また、会社員や公務員であっても年末調整での手続きを失念した、間に合わなかったという場合は確定申告を行う必要があります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告をする方法

ここでは、iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告をする方法について、職種別に紹介します。なお、確定申告は申請期限内(原則2月16日から3月15日)の間に済ませる必要があるので注意しましょう。

会社員と公務員は「確定申告書A」

会社員と公務員が確定申告を行う場合、「確定申告書A」に必要事項を記入し、所轄の税務署に提出します。

書き方は、確定申告書A・第一表の左中央の「小規模企業共済等掛金控除⑩」の欄に、iDeCoの掛金総額を記入します。続いて、確定申告書A・第二表の右上の「⑩小規模企業共済等掛金控除」欄の「保険料等の種類」に「個人型確定拠出年金」と記入し、その横の支払掛金の欄には第一表に書いたiDeCoの総額掛金を記載してください。

ダウンロードしたものを印刷して記入することもできますが、国税庁ホームページ内にある「確定申告書作成コーナー」を利用すると用紙の選択や計算を自動で行ってくれるため、手間をかけずに簡単に作成できおすすめです。確定申告書Aの記入が終わったら、源泉徴収票を添付したうえで「小規模企業共済等掛金払込証明書」とあわせて税務署に提出することで一連の手続きは完了です。

■確定申告書Aの記入例

iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告をする方法

※確定申告書A 第一表より抜粋

iDeCo(個人型確定拠出年金)で確定申告をする方法

※確定申告書A 第二表より抜粋

自営業と無職は「確定申告書B」

自営業・フリーランスの方は、確定申告でiDeCoの所得控除を申請します。事業所得などを申告する場合は、「確定申告書B」を用意しましょう。記載の方法は、「確定申告書A」とほぼ同じです。

確定申告書B・第一表の左中央の「小規模企業共済等掛金控除⑪」の欄に、iDeCoの掛金総額を記入します。続いて、確定申告書B・第二表の右上の「⑪小規模企業共済等掛金控除」欄の「掛金の種類」に「個人型確定拠出年金」と記入し、その横の支払掛金の欄には第一表に書いたiDeCoの掛金総額を記載してください。

税務署に提出する際には、「小規模企業共済等掛金払込証明書」の添付が必要です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整するといくら戻ってくる?

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整するといくら戻ってくる?

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整をした場合、いくら戻ってくるのでしょうか。ここでは各ケース別にシミュレーションをしてみました。

【前提条件】
・年収および掛金等が60歳まで変わらないものとして試算
・給与所得控除、社会保険料控除(年収の15%として計算)、基礎控除で試算
・自営業の方は、人によって控除額に差があるため控除後の課税所得で試算
・復興特別所得税は考慮せず

出典 

35歳・会社員・年収700万円・毎月掛金:23,000円

35歳で年収700万円の会社員が毎月23,000円を積み立てた場合に戻ってくる金額は、以下の通りです。

<節税効果>
1年・・ 82,800円 60歳まで(25年)・・ 2,070,000円

45歳・自営業・課税所得500万円・毎月掛金:68,000円

45歳で課税所得500万円の自営業者が毎月68,000円を積み立てた場合に戻ってくる金額は、以下の通りです。

<節税効果>
1年・・ 244,800円 60歳まで(15年)・・ 3,672,000円

28歳・公務員・年収:400万円・毎月掛金:12,000円

28歳で年収400万円の公務員が毎月12,000円を積み立てた場合に戻ってくる金額は、以下の通りです。

<節税効果> 
1年・・ 21,600円 60歳まで(32年)・・ 691,200円

上記の例でみてもわかるとおり、1年間でも十分節税効果がありますが、60歳まで時間をかけるとより大きな節税効果が見込めることがわかります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整する時の注意点

iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整する時の注意点

ここでは、iDeCo(個人型確定拠出年金)で年末調整を行う際の注意点をご紹介します。

個人振込なら会社に申請が必要

会社に勤めている場合、iDeCoの掛金の積立方法を以下の2つから選ぶことになります。

・事業主払込:事業主である会社の口座から引き落としで毎月の掛金を支払う
・個人払込:個人口座からの引き落としで毎月の掛金を支払う

出典 

どちらを選んでも問題はありませんが、個人振込とする場合は会社に対して申請が必要です。

「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要

年末調整では「小規模企業共済等掛金払込証明書」の原本を提出しなければなりません。原本は毎年10月頃に届くため、忘れないように原本をきちんと保管しておくことが大切です。なお、原本を無くしてしまった場合でも再発行は可能ですが、手元に時間がかかるまでに一定の時間がかかる点に注意しましょう。

会社によって申請の期限が異なる

年末調整で必要となる手続きは、会社によって期限が異なります。なかには一週間程度で申請を済ませなければならないケースもあるため、事前にできる準備はしておくとよいでしょう。

まとめ

まとめ

今回の記事ではiDeCo(イデコ)の確定申告や年末調整の方法・手順、実際の控除額等について解説しました。iDeCoでは、運用益が非課税のメリットを受けられる一方、所得控除を受けるためには年末調整か確定申告での手続きが必要です。所定の申告期限内に忘れずに手続きを済ませるようにしましょう。
iDeCoを正しく活用して運用効率をあげながら、将来の老後資金のために資産形成をしてください。

ご留意事項
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