株式を相続する方法や税金の計算方法を解説!非上場株式との違いとは

相続財産に株式が含まれているとき、現金を相続する場合とは異なり、価値の評価や名義変更の方法、税金などの注意しておくべきポイントがいくつかあります。今回は、株式を相続する場合に知っておくべき知識や手続きの流れなどを解説します。上場株式か非上場株式かの違いも参考にしてください。

株式を相続する方法や税金の計算方法を解説!非上場株式との違いとは

相続する株が上場株式か非上場株式か

相続する株が上場株式か非上場株式か

株式を相続する際は、まず相続する株が上場株式か非上場株式かを確認する必要があります。上場株式と非上場株式では、相続税を計算する際の株式の評価方法と手続きに違いが生じるためです。

上場株式とは、金融商品取引所に上場している企業が発行する株式です。一般的に企業に勤めている方の場合、相続する株はこちらの上場株式である場合が多いでしょう。上場株式は証券会社で口座を開設すれば、証券会社との取引を通じて誰でも株式を入手できるからです。

それに対して非上場株式は、中小企業など金融商品取引所に上場していない企業が発行する株式です。非上場株式は企業の役員やその親族によって保有・管理されているケースが多いです。証券会社との取引では取得ができないため、一般の人が入手することは稀でしょう。ただし、被相続人がそれらの企業の関係者に当たる場合は、相続する株式の中に非上場株式が含まれている可能性があります。

まずは、一般的な事例である上場株式の相続方法と手続きの流れについて解説します。記事の終わりで非上場株式の流れについても紹介するので参考にしてください。

上場株式を相続する場合の流れ

上場株式を相続する場合の流れ

上場株式を相続する場合は、「相続の開始があったことを知った日」から10ヶ月以内に手続きを行った上で、税務署に納税申告書を提出し、相続税を納める必要があります。
「相続の開始があったことを知った日」とは、基本的には被相続人が亡くなった日を指します。何らかの事情で相続人が被相続人の死を知るのが遅れた場合は、その死を知った日が「相続の開始があったことを知った日」となります。

①証券会社に連絡する

まずは、被相続人が口座を開設している証券会社を確認します。証券会社が不明な場合は、保存してある郵便物から「取引残高報告書」などの書類を探してください。
手掛かりがない場合は、所定の費用は掛かりますが、証券保管振替機構に申請することで被相続人が開設していた口座を知ることができます。

証券会社が分かれば連絡をし、口座の名義人が死亡したことと、保有していた株式の名義を相続人に変更する旨を伝えましょう。

②必要な書類をそろえる

遺産分割協議前の株式は全ての相続人の共有状態となっています。そこで、相続人への名義変更の前に、相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
被相続人が所有していた株式の銘柄と保有数を確認し、遺産分割協議で株式の分割方法が決まった後、実際に相続の手続きを進めるために、以下の書類を用意する必要があります。

【被相続人・相続人らの地位などを証明する書類】
・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
・相続人全員分の戸籍謄本
・相続人全員分の住民票

【遺産の分け方を示す書類】
・相続人全員分の印鑑証明書
・遺産分割協議書(原本)
・遺言書(自宅などに保管されていた自筆証書遺言は検認手続きが必要なので、検認調書も必要になります)

【証券会社が指定する書類】
・口座開設者死亡届出書
・相続手続依頼書
・相続上場株式等移管依頼書
 など

出典 

③書類を提出する

証券会社に書類を提出して所定の手続きを行い、株式の名義変更を行います。なお、証券口座の名義変更はできないため、上場株式を相続する場合は、相続人もあらかじめ証券口座を開設しておく必要があります。

④相続税の申告・納税をする

④相続税の申告・納税をする

被相続人から遺産を相続した場合、相続人に相続税の申告・納税義務が発生する場合があります。
相続税の申告先は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。この相続税については10ヶ月以内に申告、納付をしなければなりません。もしこの期限を超過してしまうと、延滞税や加算税を支払わなければならないこともあるので注意しましょう。

相続税は、相続財産の全体価額から基礎控除額等を差し引いた金額(課税遺産総額)に対して課税される税金です。基礎控除額とは、「法定相続人の数×600万円に3,000万円を足し合わせた額」です。相続人が1人なら基礎控除額は3,600万円、2人なら4,200万円となります。課税遺産総額を各法定相続人が法定相続分に従って相続したと仮定して、各人の取得金額を出し、それに税率を乗じたものを全員分足し合わせれば、相続税の総額が算出されます。この総額を各相続人が実際に取得した財産の価格に応じて割り振り、各種控除額を差し引くことで、各人の相続税が計算できます。
なお、相続税の計算では、基礎控除のほかにも他の控除や非課税枠を利用することができるケースがありますので、一定金額以上の相続財産がある場合には、税理士に相談するのがよいでしょう。

上場株式を相続した場合の、その株式の評価方法については後述します。

⑤準確定申告をする

準確定申告とは、亡くなった被相続人に代わって相続人らが被相続人の生前の所得について行う確定申告です。
株式の場合、被相続人が亡くなった年に株式売買で20万円以上の利益を出していた場合、相続人がこの準確定申告を行う義務が発生します。
準確定申告が必要な場合、相続人は相続が開始された日(死亡日)の翌日から4ヶ月以内に税務署へ被相続人に代わって確定申告書を提出し、所得税を納付しなければなりません。

上場株式の相続税評価額

上場株式の相続税評価額

相続税を計算して適正な金額を納付するには、相続税法における上場株式の評価方法を把握しておく必要があります。
また、遺産分割協議を進める際も、相続人同士で公平に全ての株式を分割するために、相続時点でそれぞれの銘柄がどれだけ価値があるのかを適正に算定しておかなくてはいけません。

相続税において上場株式は、以下の四つの時点を基準とした価額のうち、最も低い価額で評価されます。

・課税時期の終値
・課税時期の月の終値の平均
・課税時期の前の月の終値の平均
・課税時期の前々月の終値の平均
※「課税時期」とは、相続又は遺贈の場合は「相続の開始があった日」、贈与の場合は「贈与により財産を取得した日」のことをいいます。

相続人が相続する銘柄が複数ある場合、それぞれの株式について、最も低い価額となるタイミングでの評価を行います。

なお、新株割当てや配当支払いがあるケースでは、権利落ちや配当落ちなどの関係で、株式の価格変動が激しくなるため、権利落ちや配当落ちなど以前の下落前の株価を用いるという例外もあります。また、換価分割で売却益が出た場合、譲渡所得があったものとして所得税が発生し、確定申告が必要となることもあるので注意しましょう。

複数人で株式を相続する方法

複数人で株式を相続する方法

相続人が1人の場合は、シンプルに相続人がそのまま全ての株式を相続することになります。一方、相続人が複数の場合は分け方にもいくつかの方法があります。それぞれの方法について確認しておきましょう。

現物分割:株式のまま分ける

現物分割とは、相続人たちが株式を株式のまま分割する方法です。
被相続人が所有する株式を相続を希望する人数分で等分したり、相続人の1人が全ての株式を相続したりするなど、分割方法はさまざまです。
いずれの場合においても、株式を元の株式形態のまま相続人同士で分割していた場合は、現物分割となります。

換価分割:株式を現金化して分ける

被相続人の保有していた株式を売却して得た売却代金を、相続人で分割する相続方法です。被相続人が複数の銘柄の株式を所有していた場合も、全て現金に換金してから遺産の分割を行えるため、株式の分配で揉めずに遺産を公平に分配できるというメリットがあります。

代償分割:株式で相続する人と代償金を受け取る人と分ける

相続人の1人が株式を全て相続し、その相続人が他の相続人に代償として株式の評価額に相当する代償金を支払う分割方法です。

非上場株式を相続する場合

非上場株式を相続する場合

非上場株式は、株式の売買や評価について証券会社が関与していません。そのため、名義変更の手続きや評価額の計算を自身で行わなければなりません。
非上場株式には譲渡制限付きの場合があるので、注意点も踏まえて解説します。

非上場株式の手続きの流れ

まず、株式の発行会社に問い合わせ、手続きの方法やその際に必要な書類などを確認します。書類を用意して株式発行会社に対して手続きを行うことで、名義変更が完了します。

非上場株式の相続税評価額

非上場株式の評価額の計算方法は、株式の発行会社の規模によって異なります。原則として、次の様な方式に区分して計算して、相続税評価額を出します。

発行会社が大会社の場合:類似業種比準方式

所有する株式の発行会社と同種、または類似する業種の企業の株価を参考にして、発行会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」および「純資産価額(簿価)」の三つに基づいて評価額を算定する方法です。
業種の区分や業種別の評価方法については国税庁のホームページを参照してください。

発行会社が小会社の場合:純資産価額方式

会社を廃業(清算)するとした場合の会社の価値(会社の総資産から負債を差し引くなど、一定の計算方法で価値を算出した金額)を求め、被相続人の株式の所有割合からどれだけの金額を引き継ぐかにより、株式を評価する方式です。

発行会社が中会社の場合:併用方式

類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して、価値を求める方式です。

【参照】国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」詳細はこちら

非上場株式は譲渡制限付きの場合がある

非上場株式は、企業の関係者以外に株式が譲渡されるのを防ぐため、発行会社によって譲渡制限が設けられているケースがほとんどです。ただし、相続については、基本的に譲渡制限の対象となっておらず、譲渡制限が設けられている株式についても相続人が相続することになります。なお、この際の相続人同士の株式分配の取り決めについては自由に行えます。

しかし、被相続人の死亡時に所有していた株式を会社に売り渡すことを請求できる旨の定款が定められている場合には(会社法第174条)、相続人は当該株式を発行会社に売り渡す必要があります。

以上のように、非上場株式は株式の価額の評価や手続きが難しい場合もあるので、まずは税理士や弁護士などへ相談検討するとよいでしょう。

相続の株式が眠っていた…相続税の時効

相続の株式が眠っていた…相続税の時効

被相続人の財産の分配が完了し、相続税の申告・納付も完了した後、思わぬ形で眠っていた被相続人の株式を発見することがあるかもしれません。その様なケースでは相続税をあらためて申告する必要があるのか、また、このとき相続税に時効はあるのかについて解説します。

相続税の申告の時効は「相続開始を知った日の翌日」から起算して通常5年です。納付の義務があると知りつつ故意に納税逃れをしていた場合、その時効は7年となります。
これらの期間を過ぎた場合は、あらためて相続税を納める必要はないでしょう。

ただし、税務署は個人の財産の状況を把握しています。亡くなったときや株式の存在が発覚したときに、督促状が届く場合があります。
この場合、相続税の消滅時効は完成しません。そして、脱税が発覚した場合、通常の納付額に加算税や延滞税を加えた金額を納めなければなりません。税金の申告を逃れようとする行為は絶対にやめましょう。

その様な状況を避けるためにも、相続時には故人の財産について漏れがないかを慎重に確認することをおすすめします。

まとめ

株式の相続は、他の財産の相続と共通する部分もある反面、株式の種類によって手続きや評価方法が異なるなど、注意が必要な点があります。また、複数人で相続する場合、株式相場の変動などの要因で相続人同士での公平な分配の進め方に悩むこともあでしょう。
手続きが難しいときや判断に迷うときは、相続の知識を持った専門家の手を借りるなどして、適切な方法で相続を進めることをおすすめします。

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