専業主婦(夫)でもiDeCoを始めるべき人・そうでない人は?
人生100年時代、老後資金作りが必要なのは専業主婦(夫)や配偶者の扶養の範囲で働くパート主婦(夫)も同じです。老後資金作りの方法のひとつに「iDeCo」がありますが、専業主婦(夫)にとっても始めるメリットはあるのでしょうか。始めるべきでないケースなどについても整理をしてみましょう。

目次
そもそもiDeCoとは?

個人型確定拠出年金「iDeCo」は、積立投資を基本とする老後資金作りの制度です。日本在住の20歳以上60歳未満であれば、会社員・公務員、自営業、専業主婦(夫)など、原則、全ての人が加入できます(2022年5月1日以降は60歳以上65歳未満の国民年金加入者※も加入できるようになります)。
※国民年金第2号被保険者や任意加入被保険者
掛金は月5,000円以上(1,000円単位)で、「拠出限度額」の範囲で設定します。運用商品は、定期預金や保険など「元本確保型」と呼ばれる安全性の高いもののほか、価格変動のある投資信託が選択肢となります。「iDeCo」の運用責任者は加入者本人で、運用対象を決めるのも、すでに積立てた資産を別の商品に変更する「スイッチング」を行うのも加入者です。

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■iDeCoの拠出限度額

原則、中途解約はできませんが、年1回、掛金を見直せるため、減額や積立の中断も可能です。60歳以上70歳までの間に老齢給付を受け取りますが、一時金か年金か、併用かを選べます(2022年4月1日からは「60歳以上75歳まで」に拡大されます)。
iDeCoにかかるコストは、加入時の初期費用(2,829円程度)、運用中の口座管理手数料(月数百円。金融機関で異なる)などのほか、投資信託で運用する場合は保有中に信託報酬が発生します。金額はiDeCo口座を開いた金融機関や運用する投資信託によって異なりますが、毎月のコストは金融機関からまとめて引かれます。ただし、投資信託の信託報酬は「目論見書」「投資信託説明書」に記載の年率が日割りされ、毎営業日公表される基準価額から既に費用として差し引かれています。
実際に運用する際には、各金融機関が用意している商品から毎月の拠出限度額の範囲で組合せを指定します。リスクを取りたくなければ、元本確保型の割合を高めることも可能です。

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所得控除の恩恵のない専業主婦(夫)でもiDeCoを加入するメリットは?

専業主婦(夫)でもiDeCoを始められることはわかりましたが、では実際に専業主婦(夫)がiDeCoを活用することにはメリットがあるのでしょうか。
答えは「専業主婦(夫)でもメリットあり」です。
働いている方がiDeCoに加入するメリットのひとつである「掛金が所得控除の対象となる」については、所得税や住民税を納めていない専業主婦(夫)は享受できません。
それでもメリットがあるのは、所得控除以外に次のようなメリットがあるからです。
所得のない専業主婦(夫)でも「運用益が非課税」になるのは大きなメリット!
通常、売却で増えた運用益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoにはかかりません。長期で考えると大きなメリットです。
受給時の控除があるため、二重課税の可能性が低い
一時金で受け取れば退職所得控除の適用となり、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用され、税金が軽減されます。中には非課税で受け取れる場合もあります。
専業主婦の場合はそもそもの掛け金は、世帯主の課税済みの所得から積み立てる場合がほとんどでしょう。iDeCo受給時には控除があり、二重に課税される可能性は非常に低いのでご安心ください。
上記「運用益が非課税」、「受給時にも税金が軽減」については所得のない専業主婦(夫)でも享受できます。もちろん、扶養の範囲を超えて働き始めたときには、掛金の所得控除を受けることもできます。
運用益はどれくらいお得?

専業主婦(夫)がiDeCoで運用を行った場合、どれくらい節税になるでしょうか。試算してみましょう。
【条件】
主婦(夫)が、iDeCo口座で30歳から60歳まで、月1万円を株式型投資信託で積立投資(掛金合計360万円)をしたケース。
コストは、国民年金基金連合会、信託銀行、金融機関の合計手数料を月431円として試算(加入時コスト含まず)。
【試算結果】
想定利回りを3%で試算すると、運用益は約222.7万円となり、iDeCoのコストを引いた運用益の節税額が、元金を含まず30年間で約29.7万円となります。
退職所得は、30年だと1500万円まで非課税[800万円+70万円 × (30年-20年)〕のため、このケースも非課税で受け取れることから約29.7万円がiDeCoによる運用益の節税効果です。
iDeCoの節税額(月1万円・30年)
項目 | 金額・% |
---|---|
積立額累計 | 3,600,000 円 |
想定利回り | 3% |
運用益 ※1 | 2,227,369円 |
運用益の節税額 (a) | 452,490 円 |
コスト累計(b)※2 | 155,160 円 |
(a)―(b) | 297,330円 |
※1 運用益は金融庁サイトで試算。
※2 加入時コストは含まず
iDeCoの注意点も押さえておこう

節税効果が大きいiDeCoですが、始めるにあたっていくつか注意点があります。これらの注意点は専業主婦(夫)に限らず、iDeCoで運用を行う人全員に関わるものです。
60歳まで引き出せない
iDeCoは原則60歳まで中途解約ができません。住宅購入や子供の教育費など、ほかの資金に回すことはできません。
毎月のコストがかかる
一般の投資信託の積立と異なるコストがかかります。コストは定額のため、掛金が小さい場合や、安全度の高い運用を行い利回りが低い場合は、元本割れのリスクもあります。
運用リスク
運用対象は元本確保型と投資信託がありますが、投信信託は元本保証商品ではなく、価格変動による元本割れのリスクがあります。
iDeCoが向かない専業主婦(夫)は?

専業主婦(夫)にもiDeCoを行うメリットがあるものの、中には向かない方もいますので整理しておきましょう。
少額しか積立投資ができない
専業主婦(夫)は所得控除によるメリットを受けられないため、積立投資額が小さいとiDeCo独自のコストによって元本割れを起こすこともあります。最低でも月1万円以上の積立投資が好ましいと思われます。
より小額で積立投資をしたい方には、つみたてNISAがおすすめです。つみたてNISAは、節税効果が高いという税制面でのメリットだけでなく、購入時手数料が0円(ノーロードファンド)、運用管理費用が低水準となっているためコストを低く抑えることができます。
投資に恐怖心があり、元本確保型で運用を考えたい
安全度の高い運用を目指すほど利回りは下がります。利回りが低いとコストによる元本割れが起こる可能性もあります。どうしても恐怖心が抜けない場合は、ほかの方法で老後資金の準備をするとよいでしょう。
配偶者がiDeCoを行った方が効果的な場合
安定収入のある配偶者に所得控除の余地がある場合は、専業主婦(夫)より配偶者が行うことで世帯としての節税効果が大きくなる場合もあります。あらかじめ確認をしましょう。
まとめ

専業主婦(夫)がiDeCoを利用して、自分名義の老後資金作りをするメリットがあることをご理解いただけたでしょうか。特に、将来フルタイムで働いて、所得控除を活用できる可能性がある方は検討の余地ありです。ただし、iDeCo独自のコストがかかるため、投資額は月1万円以上を目安に設定し、運用も株式型投資信託で3%以上の利回りを目指すことを心がけてください。

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