みんなで考える認知症とお金の話

もしも自分の家族や身近な人が認知症になってしまっても、ご本人も、周りの人も、できるだけ穏やかに日々を過ごすために。知っておきたいポイントについて、ふたりの専門家に聞きました。

みんなで考える認知症とお金の話

― 自分の親や家族が少しずつ歳を重ねていく中、気を付けておくべきことは何でしょうか。

― 自分の親や家族が少しずつ歳を重ねていく中、気を付けておくべきことは何でしょうか。

【井戸】認知機能の低下は、怪我などと違って緩やかに症状が進むため、周囲も気付きにくくなります。しかし、早めに気付き対処することで、症状の進行が抑制されるケースもあるんです。

【小谷】日頃のコミュニケーションが大切ですね。例えば家を訪ねたとき、通販の注文が増えていれば「健康に不安があるのかな?」、一緒に買い物に行ったとき、小銭でなくお札ばかりを使っていれば「細かい計算が苦手になってきたのかな?」など、気付けることも多くなります。

【井戸】歳を重ねたご本人は、つい我慢したりと無理したりと、黙ってストレスを溜めてしまうことも。周囲がしっかり注意して認知症の兆しに気付ければ、ご本人やご家族の負担を減らすための、様々な対処ができると思います。

―負担を減らすためには、どんな対処をとればいいですか。

【井戸】長寿時代には、互助、共助、公助といった、周囲のコミュニティや国の制度を活用することが大切。
自分たちだけで背負いこまないようにしてほしいです。
まず頼りたいのは、介護保険。市区町村役場に電話すれば、申請の方法や仕組みを教えてもらえます。
2017年に、厚生労働省から「医療と介護の一体的な改革」の政策が公表されました。
老後、大きな病院や施設に入居するよりも、住み慣れた家の周りで生活を続けることを支援する方針です。
この政策を受けて医療と介護は連帯を強め、住環境を良くするための仕組みや、その選択肢も増えていっています。

―本人が元気なうちに備えられることはありますか。

―本人が元気なうちに備えられることはありますか。

【井戸】ご家族はご本人と一緒に、取引のある銀行や、加入している保険の整理をしておくといいと思います。特に保険の内容が把握できていれば、入院や手術などが必要になる場合でも、適切なサービス等を選ぶことができますよね。

【小谷】認知機能が低下した場合の、お金の管理についても考えておきましょう。例えば、本人が自分の代わりに親族に管理をお願いするとなると、頼まれる側でも、他の親族に説明できるように入出金の記録をつけたり、領収書を保管して共有したりと、かなりの負担をかけてしまうことが多いです。家族が困らないような仕組みを、あらかじめ全員で決めておけるといいですね。

【井戸】最近は、高齢化に合わせた様々な仕組みやサービス、商品も増えてきています。助けてもらえる選択肢を知らずに、誰かに負担が集中してしまうのが一番よくないこと。専門家への相談も視野に入れ、上手に頼れるものは頼ってみてほしいと思います。

認知症、うちの家族は大丈夫?

日常生活チェックリスト【井戸先生監修】

□ バスや電車で一人で外出できる
□ 友人の家を訪ねている
□ 日用品の買い物ができる
□ 家族や友人の相談に乗っている
□ 自分で番号を調べて電話をかけられる
□ 自分で預貯金の出し入れができる
□ 週に一回以上は外出している
□ 今日が何月何日か答えられる

チェックの数が減ってきたら要注意。定期的に確認して、小さな変化に気付けるようにしてみましょう。

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