贈与税は親子でも適応?課税方法や贈与税の対象にならない場合を解説
教育費用や結婚資金、住宅の購入資金など、親子間での贈与に贈与税はかかるのでしょうか。本記事では、親子間の贈与に際して課税対象となるケース、非課税となるケースについてそれぞれ解説します。親子間の贈与を非課税にする制度も参考にしてみてください。

そもそも「贈与税」とはどんな税金?

贈与税とは、個人から価値がある財産を受け取った際にかけられる税金のことです。贈与税の申告義務や支払い義務は、財産を受け取った側(受贈者)に課せられます。贈与税の対象となる代表的な財産としては、現金をはじめ、株式や不動産、又は高価な芸術作品なども挙げられます。
贈与と混同されやすいものに相続があります。贈与は、財産を贈る側(贈与者)が生きている間に財産を授受することです。このことから、贈与は「生前贈与」と呼ばれる場合もあります。
これに対して相続は、贈与者の没後に遺産を授受することです。税制の面でも贈与は贈与税、相続は相続税と、別々の税金が課せられます。
以下で解説するように、相続税と比べて贈与税には税制的に多くの優遇措置があることから、節税対策として贈与を活用する人が多いでしょう。ただし、近年は贈与税やそれに伴う優遇措置を廃止して相続税に一本化する政治的な動きも見受けられます。
なお、贈与税には以下の2種類の課税方法があります。
1.暦年課税
暦年課税は、1月1日から12月末日までの1年間に発生した贈与にかかる通常の贈与税です。受け取った財産の合計額から、基礎控除の対象となる110万円を差し引いた残額に対して、一定の課税がなされます。贈与額が110万円以上の場合は、申告をして所在のある税務署に納税します。

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2.相続時精算課税
相続時精算課税は、以下の複数の条件を満たして手続きをした場合にのみ利用できる課税方式です。最大2,500万円までの財産を特別控除して贈与を行えます。
【相続時精算課税の適用条件】
・贈与者が60歳以上の父母または祖父母
・受贈者が20歳以上の子または孫
・贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日の間に贈与税の申告書を提出すること

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親子間で贈与税の対象にならないもの

最も多く財産の贈与が行われているのは、やはり親子間です。以下では、親子間の贈与のうち、贈与税の課税対象にならない代表的なものを紹介します。
生活費や教育費の場合
通常の扶養範囲内で、必要な場合に贈る生活費や教育費は贈与税の対象外です。例えば、大学の入学費や留学費用など、親が子どもに多額の教育費を出費したとしても贈与税の対象にはなりません。これは独立した子どもが別居している親へ生活費を仕送りしたりする場合も同様です。

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年間110万円以下の贈与の場合
親子間における年間110万円以下の贈与についても贈与税の対象にはなりません。これは、上述のように、贈与税の暦年課税には110万円の基礎控除が設定されているからです。
また、この110万円の中に生活費や教育費は含まれないので、親が一人暮らしをしている大学生の子どもに学費と生活費以外に贈与したものが110万円以下であれば、贈与税は発生しません。申告も不要です。
親子間で贈与税の対象になるもの

親子間の贈与でも、以下の場合は課税対象になります。
貯金していた場合
親が生活費や教育費として贈ったとしても、子どもが受け取った金銭を貯金していた場合は、課税対象になります。貯金に充てているということは、必要な場合に贈った生活費や教育費としてみなされなくなってしまうからです。
また、生活費として使うためであっても、必要な場合ではなく、数年分を一括で贈与するなどすれば贈与税がかかります。
生命保険を受け取る場合
親が負担していた子ども名義の生命保険を、満期や解約などによって子どもが受け取った場合も贈与税が発生します。ただし、傷病などの事由で保険金を受け取った場合、贈与税は発生しません。
土地・マンション等不動産を受け取る場合
親から土地やマンション等の不動産を受け取る場合も贈与税が発生します。不動産は概して高い財産価値を持つので、贈与税も高くなりがちです。
書面による贈与の場合には「その契約の効力が発生したとき」を贈与日とします。書面によらない贈与の場合には「履行のとき」が贈与日になるでしょう。
もっとも、財産の贈与の時期が明確でないときなどは、所有権の移転登記をした日をもって贈与がなされたと判断されます。
親子間で贈与税を非課税にするには

親子間で生じる贈与税をなるべく抑えたいと考える方が多いでしょう。とはいえ、申告しなかったり、まとまった現金を手渡ししたりすることは、どこかのタイミングで税務署などに発覚する可能性があるため、控えるべきです。
生活費や教育費以外での資金の授受や、贈与額が110万円を超える場合でも、親子間の贈与を非課税にするための具体的な方法をご紹介します。

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相続時精算課税制度
第一に挙げられるのは、先にご紹介した相続時精算課税制度を利用することです。贈与者側は60歳以上、受贈者側は20歳以上と一定の年齢制限がありますが、最大2,500万円まで控除できます。
ただし、相続時精算課税制度を一度利用すると、暦年課税における110万円の基礎控除がその後利用できなくなります。それゆえ、いきなり相続時精算課税を利用するのではなく、複数年かけて計画的に贈与していった方がベターな場合も考えられるでしょう。
結婚・子育て資金の一括贈与制度
次に挙げられるのは、結婚・子育て資金の一括贈与制度の利用です。
この制度を利用することで、受贈者の直系尊属から20歳以上50歳未満の受贈者に対して、最高1,000万円まで非課税で贈与できます。
ただし、この制度は平成27年4月1日から令和5年3月31日までの贈与が対象の時限的な特例措置です。今後、延長される可能性も考えられますが、利用したい人は適用期間を過ぎないうちに手続きをするようご注意ください。

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住宅取得資金贈与の非課税特例
住宅取得資金贈与の非課税特例を利用することもおすすめです。これは18歳以上(※)の子どもがマイホームを購入する際に、そのための必要費用として最大1,000万円までを非課税で贈与できるというものです。なお、これには基礎控除の110万円も上乗せできるので、合算すると1,110万円もの援助が非課税で可能になります。ただし、この特例措置は令和5年12月31日までが期限となっており、同特例について改正や延長が行われることがあります。
※ただし、令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上であること。

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まとめ
親子間の贈与において生活費や教育費に必要な資金や110万円以下の金額であれば贈与税がかかりません。何が課税対象なり、何が課税対象にならないのかを把握しておきましょう。
年間110万円以上の金銭の授受を始めとして、贈与額やその種類に応じて、親子間でも贈与税が発生する場合があります。非課税にする制度もあるので、親子間で贈与をする際にはそうした制度を活用するのがおすすめです。
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