「暦年贈与」の3つのポイント~「連年贈与」との違い~

生前贈与の方法としてポピュラーなのが「暦年贈与」です。金銭などを贈与される場合、1年間で受け取った合計額が110万円(=贈与税の基礎控除)以内であれば、贈与税はかかりません。暦年贈与は、この非課税枠を活用して子供や孫などに財産を移転することです。今回、暦年贈与の具体的な方法や注意点についてご説明していきましょう。

「暦年贈与」の3つのポイント~「連年贈与」との違い~

暦年贈与が愛される理由

暦年贈与が愛される理由

暦年贈与がよく利用される理由として、第一に、その「手軽さ」が挙げられます。基本的には、年間で贈与を受けた価額が基礎控除額の110万円を超えなければ無税となり、申告の必要もありません。
また、子供や孫が数人であっても、5年、10年と時間をかけて贈与していけば、相続財産をかなり圧縮することができます。贈る相手に制限がなく、お世話になった人への贈与などに使えるのもメリットと言えるでしょう。

暦年贈与の注意点~せっかく贈与したのに認められないことも~

暦年贈与の注意点~せっかく贈与したのに認められないことも~

気を付けたいのは、暦年贈与をしたつもりが認められず、後から贈与税を徴収されてしまうケースもあることです。
例えば、ある人が10年かけて子供に1000万円を贈与したとしましょう。国税庁ウェブサイトのタックスアンサー(よくある税の質問)には、以下のような助言が掲載されています。
「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約(約束)をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります」

【参考】国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」 詳しくはこちら


この国税庁の指摘が「連年贈与」で、先のケースだと「10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける権利を贈与された」と解釈され、贈与税が課税される形です。連年贈与と見なされないためには、贈与の際に以下のような「ひと手間」をかけることがポイントになります。

ポイント①贈与の都度、契約書を作成する

毎年贈与を行うのであれば、その度に契約の内容を明記した「贈与契約書」を作成しておくといいでしょう。贈与契約書には、いつ(日付)、誰が(贈与者)、誰に(受贈者)、どのような財産を(現金額)渡したかを記載する必要があります。

生前贈与の契約は口頭の約束でも成立しますが、契約書を残すことによって、相続税の税務調査の際などに贈与者・受贈者双方合意のうえで贈与が行われていたことが証明しやすくなります。

ポイント②贈与する相手の銀行口座に振り込む

お金は手渡しでなく受贈者名義の銀行口座に振り込んで、贈与の証拠を残すことも大切です。といっても、贈与者が受贈者名義の通帳やキャッシュカードを保管したままだと「名義預金」と見なされ、贈与が認められない可能性があります。振込先の口座は受贈者自身の管理下に置かれ、受贈者が自由にお金を引き出せる状態にある必要があります。
受贈者の給与振込口座など、完全に受贈者のものと分かる口座に振り込むのも一つの方法です。

ポイント③贈与の時期や金額を毎年変える

毎年同じ日付で同じ金額の贈与を続けていると、連年贈与を疑われる可能性があります。贈与が計画的なものではないことを示すために、年ごとに贈与する時期や金額を変えましょう。今年12月1日に100万円を贈与したのであれば、来年は11月11日に105万円を贈与する、といった具合です。時期をずらしたり金額を上下したりすることで、「単発の贈与を行っている」証明ができます。

手続きが面倒な人は信託銀行に任せる手も

手続きが面倒な人は信託銀行に任せる手も

一部の信託銀行には「暦年贈与信託」という商品があり、信託銀行が贈与者と受贈者の間に入って暦年贈与の手続きを代行してくれます。具体的には、毎年、贈与者と受贈者双方に贈与の意思確認を行い、「贈与の依頼書」と「受贈の確認書」などをやり取りしたうえで、贈与者の口座から受贈者の口座へとお金を移す仕組みです。

結果としてどちらかの意思が曖昧な状態で贈与が行われることはなく、なおかつ、取引の記録もしっかり残ります。

亡くなる前3年分には相続税がかかる

亡くなる前3年分には相続税がかかる

暦年贈与の贈与者が亡くなった場合、その直前の3年以内の贈与は相続税の課税対象になることがあるので注意が必要です。相続税には「3年内加算(生前贈与加算)」という制度があり、これに該当すると、既に贈与された財産であっても持ち戻して相続財産とする決まりになっているからです。
ただし、3年内加算の対象になるのは「相続または遺贈等により財産を取得した者」で、相続人にならない孫や子供の配偶者が遺贈等を受けていない場合は、この限りではありません。

まとめ

まとめ

暦年贈与は正しく使えば相続財産を大きく減らすことができる、非常に効果的な相続税対策のひとつです。しかし、あやふやな知識で贈与を行っていると、想定外のトラブルが発生する可能性があります。贈与する子供や孫を面倒なことに巻き込まないためには、税理士への相談や暦年贈与信託の利用など、専門家の力をうまく活用するといいでしょう。

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