教育資金贈与の非課税制度の改正内容とは?特例の注意点もご紹介

教育資金一括贈与には、非課税になる特例があり、度々改正が行われています。今回は、2021年(令和3年)や2023年(令和5年)の税制改正に伴う変更点を解説します。子供や孫へ教育資金を贈与したいと考えている方は、贈与税・相続税について理解を深めましょう。

教育資金贈与の非課税制度の改正内容とは?特例の注意点もご紹介

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例とは?

教育資金の贈与とは、祖父母や親といった直系尊属が、30歳に満たない孫や子供へ教育のために使う資金を贈ることです。
贈与を行うと一般的には贈与税がかかりますが、教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例を利用することで、教育資金に関わる贈与が一定額まで非課税になります。
本特例を利用して孫や子供へ教育資金を渡すことで、教育のサポートをすると共に相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。

しかし、教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例には注意すべきポイントがあります。令和5年度税制改正で変更された点もあるので、変更点も別途まとめて解説します。

教育資金の贈与の非課税制度のポイント

教育資金の贈与の非課税制度のポイント

それでは、教育資金贈与の非課税制度を利用するには「どのような条件があるのか」「いくらまで非課税枠があるのか」などのポイントを説明します。

教育資金として1,500万円までなら贈与税が非課税

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例を利用することで、最大1,500万円の教育資金に関する贈与を非課税にすることができます。一般的な暦年贈与では、年間110万円までが非課税になるのに対して、本特例を利用することでより大きな贈与額が非課税になります。
1,500万円の非課税枠を一度に使い切る必要はなく、限度額に達するまで何回でも贈与をすることができます。

贈与税が非課税となる教育資金の受贈者

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例を受けるにあたり、教育資金を受ける側(受贈者)には「年齢が30歳未満であること」「受贈者の前年度の合計所得金額が1,000万円を超えていないこと」の2つの条件があります。

また、受贈者が30歳に達するなどにより教育資金口座に関わる契約が終了した際に、贈与された教育資金を使い切っていない場合は、その残りの額に贈与税がかかるので注意が必要です。1,500万円までは贈与しても課税はされませんが、30歳までに使い切れる金額を贈与することを心掛けましょう。

贈与税が非課税となる教育資金の贈与者

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例では、教育資金を与える側(贈与者)は、受贈者の直系尊属であることが条件となり、年齢などは問われていません。すなわち、父母、祖父母、曾祖父母などから子、孫、ひ孫などに本特定を利用して教育資金を贈与することができます。
万が一、受贈者が教育資金を使い切るまでに贈与者が亡くなった場合には、原則、相続財産に加算されてしまいますので、注意をしましょう。

贈与税が非課税となる教育資金の利用期限

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例によって贈与された教育資金は、基本的に受贈者が30歳に達するまで教育資金口座の残額を使用することができます。また、30歳を過ぎた後も在学しているなどの場合は、金融機関にその旨を届け出ることで40歳まで契約を続けることができます。

また、贈与者が亡くなった場合は、受贈者が「23歳未満」「学校等に在籍をしている」「教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けている」の3つのいずれかの条件に当てはまらない場合は、契約が終了し教育資金の利用ができなくなります。

贈与税が非課税となる教育資金の用途

教育資金の用途は「学校等に対して直接支払われるもの」「学校以外の教育活動に必要なもの」と「その他の教育資金」に分けられます。
「学校に直接支払われるもの」以外にも幅広く資金を使用することできますが、その場合は500万円が利用限度になります。

以下は、教育資金の代表例になります。
学校に直接支払うもの:入学に係る費用、教科書代、給食費、修学旅行の旅費など
学校以外の教育活動に必要なもの:学習塾、スポーツ、文化・芸術活動などの習い事に関する費用
その他:通学のための定期券代や留学する際の渡航費など

令和5年度税制改正による変更点

令和5年度税制改正による変更点

令和5年度税制改正では、贈与税に関してもいくつか変更点がありますが、ここでは「教育資金の一括贈与の非課税制度」に関わる3つの変更内容について、それぞれ説明していきます。

令和8年3月31日まで延長になった

令和5年度税制改正により、教育資金贈与の制度は、2026年(令和8年)3月31日までと適用期間が3年間延長されます。

相続財産が5億円を超えると管理残高へ相続税が2割加算

「贈与税が非課税となる教育資金の利用期限」の文章内で、受贈者がある条件では贈与された教育資金の残高があっても、残高は相続税の対象にはならないと説明をしました。しかし、贈与者の相続財産が5億円を超える場合は、受贈者の条件に関係なく、教育資金残高に相続税がかかるようになります。

また改正前までは、代襲相続人ではない孫など贈与者の子供以外の直系卑属の教育資金残高が相続財産に合算されたとしても、相続税の2割加算の対象にはなりませんでした。今回の改正により、贈与者の相続財産が5億円を超える場合は、教育資金残高が相続税の2割加算の対象になりました。

残った贈与資金には一般税率で贈与税がかかる

以前までは、直系尊属から贈与により財産を取得した場合には、その財産にかかる贈与税には特別税率が適用され、一般の贈与税率よりも優遇された税率で計算をされていました。
しかし、今回の改正により受贈者の年齢が30歳になるなどして契約が終了した場合に、教育資金残高の贈与税の計算方法は一般税率が適用されることになり、税制面の優遇がなくなりました。

改正された非課税制度のポイント

改正された非課税制度のポイント

今回の改正では、令和8年まで適用期間が延長され、引き続き同じ非課税枠で教育資金の贈与ができます。一方、相続時や契約終了時の教育資金残高への税制優遇がなくなり、相続税や贈与税の強化が図られました。
ただ、1,500万円に対しては非課税となる点は変わっていないので、教育資金の贈与をする場合には、メリットの大きい制度だと考えられます。

大きな財産を子や孫に有効に渡すことで、相続時の遺産も減らすことができます。税の負担も軽減できるので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

教育資金の贈与の非課税制度の手続き

教育資金の贈与の非課税制度の手続き

教育資金の贈与の非課税制度の適用を受けるには、信託銀行などの取扱金融機関に申し込みをする必要があります。

申し込み時には、主に以下の書類が必要になります。

・各種書類原本(贈与契約書等の原本、戸籍謄本等の原本)
・本人確認書類の原本
・印章

出典 

申し込みからの流れは以下のようになります。
⑴贈与者や受贈者の同席のもとでお申し込み
⑵贈与者は教育資金用の口座へ資金を預け入れる
⑶受贈者が教育資金の支払いに充てた領収書等を期間内に提出する
⑷金融機関が領収書等で支払い確認ができた分を受贈者に支払う

⑶の領収書につきましては「支払日付」「金額」「支払内容」「支払者」「支払者の名前」「支払者の住所」などの条件があり、ただ領収書を出せばいいだけではありませんので、注意をしましょう。

今回ご紹介したお申し込みの流れは、一例なので詳しくは取扱金融機関にお問い合わせください。

まとめ

教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例は、令和5年度税制改正によって、適用期間の延長や税制優遇の要件が変わりました。しかし、最大1,500万円の教育資金に関する贈与を非課税にすることができ、贈与税の負担を軽減できます。また、生前贈与として財産を渡しておくことで、相続税の負担も軽減することにつながる可能性があります。

教育資金一括贈与による非課税制度を利用したいと考えている場合は、法改正の内容や起こり得る税金の負担の可能性も考慮しながら、なるべく受贈者が低年齢のうちに進めておいた方がよいでしょう。

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