住宅取得資金の贈与は課税される?非課税になるケースや注意点を解説

住宅購入のために親や祖父母から資金を援助してもらった場合、贈与税はどのくらいかかるのでしょうか。本記事では住宅取得資金の贈与が非課税になるケースや、契約のタイミングなどの注意点について解説します。マイホームという人生の節目となる買い物の節税対策を行いましょう。

住宅取得資金の贈与は課税される?非課税になるケースや注意点を解説

「住宅取得資金」とは?

「住宅取得資金」とは?

住宅取得資金とは、住宅を購入するための資金のことです。より具体的には、居住用の家屋を新しく建てたり、マンションを購入したり、増改築したりするときに用いる資金を指します。

住宅取得資金は非常に高額になる傾向があるため、両親や祖父母等から資金援助を受ける場合も多いでしょう。親や祖父母の直系卑属(子、孫)であれば、住宅取得を援助する目的で贈与するお金を「住宅取得資金の贈与」として受け取ることができます。住宅取得資金の贈与は、大幅な税控除を得られることから、節税対策として多くの人が利用しています。

住宅取得資金贈与の非課税特例について

住宅取得資金贈与の非課税特例について

住宅取得資金贈与の非課税特例とは、直系の親や祖父母から贈与された住宅取得資金が一定の金額内であれば贈与税がかからない制度のことです。通常、贈与額が年間110万円を超過すると、贈与を受けた側(受贈者)は規定の贈与税を納税しなければなりません。しかし、住宅取得資金贈与の場合は、一定の条件を満たしていれば年間110万円以上の資金を非課税で受け取ることができます。

住宅取得資金贈与の非課税特例は、年単位で決められた期限のある税制度ですが、改正や延長が行われることがあります。例えば、令和5年12月31日を期限とした住宅取得資金贈与の控除額は、最大1,000万円と設定されています。

1,000万円を超えても贈与税の基礎控除である110万円は非課税なので、現状の制度においては、最大1,110万円まで非課税で子どもや孫の住宅取得を援助することが可能です。

この制度は、直系尊属(親や祖父母)からの贈与が対象であるため、例えば夫名義で住宅を取得する際に、妻側の両親から住宅取得資金贈与を受ける場合は控除を受けることができません。この場合、夫と妻との共有名義で住宅を取得することで、夫側・妻側の両親それぞれから非課税特例を利用して贈与を受けることが可能になるでしょう。

住宅取得資金で非課税を受ける条件とは

住宅取得資金で非課税を受ける条件とは

では、住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるための条件について解説していきます。受贈者自身の条件だけでなく住宅の条件や住宅に住むという証拠も必要です。

【住宅の取得または居住の事実に関する条件】

まず重要なのは、住宅取得資金の受贈者が住宅を取得し、居住したという事実を証明する必要があるでしょう。この特例制度は住宅取得の援助目的で行う贈与を対象としているためです。具体的には、以下が住宅の取得または居住の事実に関する条件です。

(1)受贈した年の翌年3月15日までに、受贈した資金の全額を用いて、住宅の取得をすること。
(2)同期日までに当住宅に居住すること。またはその後遅滞なく確実に入居予定であること。

もしこれらの条件に反して、翌年の年末までに受贈者が入居していなかった場合、非課税特例は適用されず、修正申告が必要になります。

【受贈者自身に関する条件】

また、受贈者自身についても以下の要件を満たしていなければなりません。十分な所得がある場合は、住宅取得資金贈与の非課税の優遇を受けることはできないので注意しましょう。

(1)受贈した年の1月1日時点で18歳以上であること。
※ただし、令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上であること。
(2)受贈した年の合計所得金額が、2,000万円以下(住宅の床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下)であること。

【取得する住宅に関する条件】

さらに、取得する住宅についても下記の条件を満たす必要があります。

・住宅の床面積(登記簿面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下。
・中古住宅の場合は下記3条件のいずれかに該当すること。
(1)昭和57年1月1日以後に建築された
(2)地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明された
(3)購入後に耐震改修工事を実施し、受贈した年の翌年3月15日までに建築士などが一定の耐震強度を証明された

なお、取得する住宅が省エネ住宅の場合、非課税枠は大きくなります。具体的には令和5年12月31日を期限とする非課税特例では、省エネ住宅の場合は最大1,000万円、通常の住宅の場合は最大500万円が控除の上限です。

住宅取得資金贈与のメリットとは

住宅取得資金贈与のメリットとは

続いては、住宅取得資金贈与の非課税特例を活用することで得られるメリットについて解説します。上手く活用して節税対策を行いましょう。

非課税特例を夫婦2名で利用できる

住宅取得資金贈与の非課税特例は、住宅を夫と妻2人の共有名義にすることで夫婦2名ともが利用できます。つまり、取得予定の住宅が最大1,000万円の非課税特例の対象であれば、夫側・妻側双方の両親からの贈与を合わせて、最大2,000万円の贈与資金を非課税で受け取ることが可能です。これは新居を取得する上で大変大きな助けとなるでしょう。

住宅ローン控除も可能

住宅取得資金贈与の非課税特例は、住宅ローン控除と併用することが可能です。本制度と住宅ローン控除とを併用することで、住宅購入の経済的負担を大きく下げることができるでしょう。

住宅取得資金贈与でタイミングが重要になる理由

住宅取得資金贈与の非課税特例は、これまで何度も延長や改正がされており、時期によって控除の上限額が変わってきました。そして、制度の利用者がどの程度の控除を受けられるかは、契約締結の時期によって以下のように異なります。

契約日ごとの控除額

住宅新築等の契約締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
2019年(平成31年)4月1日~2020年(令和2年)3月31日3,000万円2,500万円
2020年(令和2年)4月1日~2021年(令和3年)12月31日1,500万円1,000万円
2022年(令和4年)4月1日~2023年(令和5年)12月31日1,000万円500万円

本制度を利用する際には、タイミング次第で控除額が変わる可能性を考慮しておくことが大切です。

【参照】国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」 詳しくはこちら

まとめ

住宅取得資金贈与の非課税特例とは、住宅を取得するための資金を直系尊属(親や祖父母)から受け取った場合、条件によって贈与税が非課税になる制度です。

本記事で解説した適用条件やタイミングを注意してこの制度を利用することで、住宅取得の経済的負担を大きく軽減できるでしょう。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ