贈与税申告が必要な場合は?申告不要な非課税制度や手続き方法の解説

個人から財産を受け取った時に申請と納税が必要な贈与税。贈与税の申告が必要な場合と不要な場合をご存知でしょうか。利用したい制度によっては、贈与税非課税でも申告が必要な場合があります。正しい知識のもと申告を行うことや最新の税金制度の情報を得ることを意識しましょう。

贈与税申告が必要な場合は?申告不要な非課税制度や手続き方法の解説

いまさら聞けない「贈与税」とは?

いまさら聞けない「贈与税」とは?

贈与税とは、個人が個人から財産を受け取った時に、支払わなければならない税金です。財産を受け取った人(以降、受贈者)が所在地を管轄する税務署に申告書を提出して、納税します。
また、自分で保険料を支払っていなかった生命保険金を受け取った場合などでも、贈与税の対象になります。保険料を負担していた人から生命保険金の受取人に対して贈与があったものとみなされるためです。
ただし「亡くなった人」が保険料を払っていた生命保険の場合には、相続税の対象になります。

贈与税の税率は贈与額によって違いがあり、10~55%です。もし贈与税の申告が遅れたり、忘れていたりして税金の納付漏れが生じた場合には、無申告加算税や重加算税が15~50%の割合で加算されるため注意が必要です。

贈与税がかからないケース

財産を1円でも受け取ると贈与税がかかるわけではありません。1年間(1月1日から12月31日の間)に受け取った財産が110万円以下であれば贈与税はかかりません。

また、1年間で110万円を超えても贈与税がかからないケースがあります。例えば、家族や親族などの扶養義務者から、生活費や教育費など通常必要と認められる範囲の財産を受け取ったケース。また、遺産相続により故人の財産を受け取った場合は、贈与税ではなく相続税の対象になります。
さらに、個人が法人から財産を受け取った際には、贈与税ではなく所得税の対象です。

なお、贈与税には非課税制度と呼ばれる税金がかからない制度もあります。例えば、両親や祖父母から教育費や住居費のサポートを受けた場合です。非課税制度につきましては、後ほど詳しく説明いたします。

【参考】国税庁「財産をもらったとき」詳しくはこちら

【申告必須】贈与税の対象となる場合

【申告必須】贈与税の対象となる場合

贈与税は、受贈者が申告をして税金を納めます。ここでは、贈与税がかかる場合についてケース別に「暦年贈与(暦年課税を利用した贈与)」と「相続時精算課税制度」の2つを説明します。

暦年課税

1年間の贈与額をもとに納税額を求める方法を「暦年課税」といいます。1年間で贈与された財産が110万円を超えた場合に贈与税を申告します。贈与税のかからない上限額の110万円を基礎控除といい、1年間で贈与された財産が基礎控除額の範囲内に収まっていれば申告の必要はありません。

注意点として、基礎控除額110万円以内というのは、財産を送る側(以降、贈与者)一人あたりの贈与額ではなく、受贈者一人あたりの金額です。複数人から贈与を受けた場合は合計額で考えます。例えば、父親から100万円、祖父から20万円受け取ったなら、合計110万円を超えているので、受贈者は贈与税の申告をしなければなりません。

また、贈与者が亡くなった場合は、亡くなった時点から3年前(2024年1月1日以降の贈与は7年前)までの贈与は相続税対象になります。

相続時精算課税

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の親や祖父母などの贈与者から、18歳以上子供や孫に贈与した時に利用できる制度です。なお、受贈者は贈与者の推定相続人(贈与時に贈与者が亡くなった場合に、相続人になる人)という条件もあります。

相続時精算課税制度には、非課税枠が2,500万円あります。この制度を利用すると一人の贈与者から総額2,500万円まで贈与税非課税で受け取ることができます。贈与税を納めるのは総額2,500万円を超えた場合で、超過分に一律20%の贈与税が課されます。また、贈与者が亡くなった場合は、この制度を利用して贈与した分は全て相続対象になります。

この制度を利用する時の注意点は、利用開始する年に申請が必要なことです。また、贈与税が非課税の時にも注意点があります。

贈与税が非課税の時の注意点

相続時精算課税制度は、前述の通り一人の贈与者から贈与総額2,500万円まで非課税で財産を受け取れる制度です。2,500万円は一回の贈与で渡すことも、数年に分けて渡すこともできます。ただし、この制度を利用するには、制度利用を始める時の申請と、贈与を受けた年に贈与税の申告が必要です。

2023年までは1円でも贈与があった年は、贈与税が非課税であっても贈与税申告をしなければなりません。

しかし、2023年度の税制改正で相続時精算課税制度にも1年間で110万円の基礎控除が設けられることになりました。2024年1月1日以降にこの制度を利用した場合は、贈与額が基礎控除以上になった年に申告を行います。

【参考】国税庁「財産をもらったとき」詳しくはこちら

贈与税の申告が必要な非課税制度

贈与税の申告が必要な非課税制度

贈与税の非課税措置を活用した場合には、贈与税の納付が必要なければ贈与税申告も不要だと思うかもしれません。ところが、納付が不要でも申告しなければならないケースもあるので注意が必要です。

配偶者控除の特例

「贈与税の配偶者控除」は、婚姻期間が20年以上ある配偶者から、住むための家やその購入のための資金を贈与された際に利用できる制度です(ただし、同じ配偶者からの贈与につき一回限り)。

この特例は、暦年贈与の基礎控除110万円と別枠で2,000万円の控除が適用されます。2,000万円+基礎控除110万円が控除されるので、2,110万円以下の贈与(評価)額であれば、贈与税は非課税になります。
ただし、贈与税の申告は必要です。贈与税の申告と共に贈与された住居用の不動産を取得した証明書などを提出します。

住宅取得等資金の贈与税非課税の制度

「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」を活用すると、両親や祖父母から住宅用の資金を一定の金額まで贈与税非課税で受け取ることが可能です。2023年12月末までの措置ですが、条件に合った住宅の取得や改装費用の援助を受けることができます。

ただし、この制度を利用するには住居の条件に加え、受贈者にも年収や年齢、贈与者との関係などに条件があります。また、贈与税はかかりませんが、贈与税の申告は必要です。贈与税の申告時に、戸籍謄本や住居に関わる契約書などを提出します。

【参考】国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」詳しくはこちら

贈与税の申告が不要な非課税措置

贈与税の申告が不要な非課税措置

贈与税が非課税で申告も不要になるケースがあります。なお、税金の申告は必要ありませんが、金融機関との契約が必要になります。

結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度

「結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度」は、父母や祖父母から結婚や子育て資金を一括で受けた場合に利用できる制度です。2025年3月31日まで利用できます。贈与上限額は1,000万円(結婚式はその中で300万円)で、受贈者の年収や年齢、資金の使い方に条件があります。

この制度は、銀行などの金融機関と契約を結んで利用します。贈与税の申告は必要ありませんが、契約時に専用の口座開設し、指定の申告書を提出します。また、結婚や子育て費用として支払いがあった場合には、領収書などを金融機関に提出します。

なお、受贈者が50歳になった場合や、贈与者が亡くなった時点で金融機関との契約は修了します。その時に口座に資金が残っていると、前者の場合は贈与税、後者の場合は相続税の対象になります。贈与税や相続税のルールによって税金の申告が必要になる場合がありますので注意が必要です。

教育資金の一括贈与税非課税制度

「教育資金の一括贈与税非課税制度」は、父母や祖父母から教育資金の一括贈与を受ける時に利用できる制度です。2026年8月31日まで利用可能です。贈与額は上限1,500万円で、受贈者の年収や年齢に条件があります。

この制度を利用するために贈与税の申告は必要ありませんが、銀行などの金融機関との契約は必要です。契約時に専用の口座開設・指定の申告書を提出します。また、贈与は総額1,500万円までであれば複数回に分けて行うことも可能で、口座に入金する時に追加の申告書を提出します。

なお、受贈者が学校を卒業し、なおかつ30歳になった場合や、40歳になった場合はこの制度を利用した金融機関との契約は修了します。その時に口座に資金が残っている場合は、贈与税の対象です。残金によっては贈与税の申告が必要になる場合があります。

贈与税申告の手続きの手順

贈与税申告の手続きの手順

贈与税申告の手続きは、受贈者が行います。申請は贈与税の申告書の提出をするか、インターネットを経由してe-Taxを利用して行います。
「暦年課税」は、基礎控除の110万円を超えた場合に申告が必要です。「相続時精算課税制度」は、制度利用開始時と制度を利用して贈与を受けた年(2024年以降は制度を利用し、110万円以上の贈与を受けた年)に納税のための申告を行う必要があります。

また、非課税でも申告が必要な特例を利用する場合は、申告を忘れると特例を適用できなくなってしまうので、忘れずに申告しましょう。

以下に贈与税の申告の仕方を詳しく説明します。

1.財産の時価を計算し、税額を算出

暦年贈与の贈与税額は次の式で求めます。

課税価格=贈与財産の合計-110万円(基礎控除額)
贈与税額=課税価格×税率-控除額

出典 

まず贈与を受けたものの時価を調べてから贈与総額を算出し、基礎控除額110万円を引きます。なお、財産の種類によって価額の計算方法が異なるので、財産ごとの計算方法を調べておきましょう。

次に、税率や税額控除額を求めます。贈与を受けた額から110万円を引いた額を「課税価格」といい、課税価格をもとに贈与税率や税額控除を調べます。贈与者と受贈者との関係によって「特例贈与財産」と「一般贈与財産」の2種類の税率があります。税率と控除額を表にまとめたものを後ほど記載するので、そちらもご覧ください。

なお、申告書で申告する場合は納税額を計算するために「贈与税(暦年贈与)の税額の計算明細書」を利用することもできます。e-Taxの場合は、必要事項を入力すると納税額が自動計算されます。

【特例贈与財産】:18歳以上(贈与された年の1月1日時点)の人が、父母・祖父母など直系尊属から贈与された場合

表1 特例贈与財産用税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

【一般贈与財産】:上記以外の関係の人から贈与された場合

表2 一般贈与財産用税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

【参照】国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」詳しくはこちら

2.申告書に記入

申請書に必要事項や納税に関わる金額を記入します。申請書は主に3つあり「第一表」「第一表の二」「第二表」です。暦年贈与のみの申告であれば、提出は第一表のみです。住宅取得等資金の非課税を適用する場合は「第一表の二」相続時精算課税の適用を受ける場合は「第二表」も提出します。

それぞれの記入する内容は次の通りです。

第一表

第一表は、申告者や贈与財産、納税額に関わる情報を記入する申告書です。
記入する内容は、申告する人の氏名・住所・マイナンバー・生年月日・職業、贈与者の氏名・住所・生年月日・続柄、贈与財産の明細・価格・贈与日などです。

第一表の二

第一表の二は、住宅取得等資金の贈与税非課税措置の適用を受ける場合に使用する申請書です。
贈与者の氏名・住所・生年月日・続柄、贈与された土地の住所・価格(資金贈与の場合は金額)・贈与日などを記入します。

第二表

第二表には、相続時精算制度に関わる情報を記入します。
記入するのは、贈与者の氏名・住所・生年月日・続柄、贈与された財産の明細・価格・贈与日などです。この制度を利用して過去に贈与を受けた場合は、過去の贈与情報も記入します。

3.申告書の種類と必要書類

贈与税の申告時には、利用する特例や財産の種類によって費用する申請書や、提出書類が決まります。申告内容ごとに必要な書類を説明します。

暦年贈与の場合

暦年贈与の申告書は、第一表を使用します。一般財産の贈与のみの場合は提出書類は申請書のみです。特例贈与を受け取り、課税価格が300万円を超えた場合は受贈者の戸籍の謄本又は抄本を一緒に提出します。

配偶者の特別控除を利用する場合

配偶者の特別控除を利用する時は、第一表を使用します。また、適用可能であることを証明するために次の書類を提出します。

・受贈者の戸籍の謄本又は抄本
・受贈者の戸籍の附票の写し
・登記事項証明書

相続時精算制度を適用する場合

相続時精算課税制度を適用する場合は、第一表と第二表を提出します。適用を申請する年は次の2種類の書類も提出します。

・受贈者や特定贈与者(この制度を適用する贈与者)の戸籍の謄本又は抄本
・相続時精算課税選択届出書

なお、届出書は贈与者ごとに一枚必要です。相続時精算課税制度を利用して複数の人から贈与を受ける場合は人数分の届出書を作成し、提出します。

住宅取得等資金の非課税を適用する場合

住宅取得資金の非課税措置を受ける場合は、第一表と第一表の二を提出します。また、添付書類として次の書類を提出します。

・受贈者の戸籍の謄本
・源泉徴収票など申請する年の所得金額を証明する書類

住居に関わる書類として次のようなものも必要です。資金の使い方によって必要書類は異なりますので、不安な方は事前に税務署や専門家に相談をしましょう。

・住宅用の家屋の新築(もしくは増改築)に係る工事の請負契約書の写しや売買契約書の写し
・入居可能な状態であれば、登記事項証明書
・住居性能証明書、省エネルギー証明書など非課税限度額を証明する書類

贈与税の申告期限とペナルティ

贈与税の申告期限とペナルティ

贈与税には申告期限があり、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告をしなければいけません。この期間に申告をしなかった場合や、申告漏れがあった場合は、ペナルティが課せられることがあります。
ペナルティが課せられるのは次の場合です。

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に行った申告が、正しい納税額より少なかった場合のペナルティです。本来払うべき納税額との差の10%(期限内納税額もしくは50万円より多い額には15%)が加算されます。

無申告加算税

無申告加算税は、期限内に申告が行われなかった場合に課されるペナルティです。納めるべき納税額によって異なりますが、加算額は本来納めるべき税金の15%以上です。

重加算税

重加算税は、故意に税金を低く申告した場合や、税金を申告しなかった場合に課せられるペナルティです。意図的に税金を低く申告した場合は、正しい税額との差の35%、意図的に申告しなかった場合は税額の40%が加算されます。

まとめ

まとめ

贈与税の申告は、個人から個人へ財産が贈与された時に財産を受け取った人が行います。贈与税は暦年贈与の非課税枠や、教育資金や住宅取得資金などを非課税で財産を渡す仕組みもあります。

しかし、贈与税はかからないものの申告は必要な制度や、制度を利用するために金融機関との契約が必要な制度もあります。意図せず申告をしなかった場合や、申告漏れがあった場合には、ペナルティが課される場合があります。制度を有効的に活用するためにも、贈与税の申告の仕組みをしっかり把握し、申告期限を守って申告するようにしましょう。

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