子供の扶養控除の条件は?所得税や住民税の控除額や注意点を解説
16歳以上の子供を扶養している場合に、扶養控除を利用することで所得税や住民税が安くなる可能性があります。ただし、誰でも控除を受けられるわけではなく、年齢や所得額など一定の条件を満たさなくてはなりません。本記事では、扶養控除の所得税と住民税の控除額、夫婦どちらの扶養にすべきかを解説しています。
子供の扶養控除とは
扶養控除とは、16歳以上の子供や親など親族を扶養している納税者が受けられる所得控除のことです。所得税は所得から控除を引いた課税所得に対して課せられるため、控除が多ければ多いほど所得税を抑えることができます。
扶養控除の目的は、扶養対象がいる納税者の金銭的な負担を軽減することであり、既に児童手当という社会的サポートを受けている0〜15歳の子供は対象外となります。
扶養控除を受けるためには、ほかにもいくつかの条件を満たさなければなりません。
所得税において子供の扶養控除を受けるための条件
子供の扶養控除を受けるための条件は、以下の通りです。
【参考】国税庁:「No.1180 扶養控除」詳しくはこちら
たとえ親元を離れて暮らしている子供でも、仕送りをしているなど同一生計であるとみなされた場合には、同居していなくても扶養控除の対象となります。
この場合、仕送りをしていることを証明するために、金融機関の領収証や通帳の写しといった書類が必要となる点に注意しましょう。
また、子供の扶養控除を受けるためには、子供の所得金額を年間で48万円以下に収めなければなりません。その理由として、誰でも受けられる基礎控除額が48万円と定められているからです。
アルバイトなどの給与所得がある場合、所得金額が103万円であれば扶養控除を受けることができます。給与所得には、給与所得控除として55万円の控除があります。基礎控除額の48万に給与所得控除の55万円を加えた103万円以下の給与所得であれば、扶養控除を受けられます。
給与所得者ではなく、株やアフィリエイトなどで収入を得ている子供の場合、収入から経費を引いた所得が48万円以下であれば問題ありません。48万円より少ない場合は基礎控除を受けることで課税所得が0円となるため、所得税も発生しなくなります。
近年では、スマホを使って収入を得ることが容易になっていることもあり、あまり税に詳しくない子供が、アフィリエイトやSNS収益などで48万円以上稼いでいるというケースも散見されます。
条件以上の所得があった場合、親が扶養控除を受けられないだけでなく子供本人も所得税を納める必要があります。万が一、気づかずに扶養控除を受けてしまうと、追徴課税が発生することもあるので注意が必要です。
なお、勤労学生(学校教育法に基づく学校の生徒であること、給与所得であることなどが条件)の場合は、別途「勤労学生控除」が適用され、子供本人の所得税は免除される可能性があります。この場合でも親側の扶養控除は受けられません。
【参考】国税庁:「No.1175 勤労学生控除」詳しくはこちら
また、青色申告者や白色申告者の事業専従者である場合はほかの控除があるため、扶養控除と重ねて控除を受けることはできません。
103万の壁?130万円の壁?扶養控除にまつわるさまざまな「壁」と税金の話
扶養控除の金額
子供の扶養控除によって住民税も軽減することができます。住民税は地方自治体に納める税金であり、所得額に応じて課税額が決定します。そのため、扶養控除で課税所得が軽減されると、住民税も安くなるのです。
条件は、所得税における扶養控除と同じで、16歳以上の子供を扶養している場合です。
ただし、所得税における扶養控除額と住民税における扶養控除額は異なるので、ここからそれぞれの控除額を解説します。
所得税における子供の扶養控除の金額
扶養されている子供の年齢によって、所得税の扶養控除額は異なります。
所得税における子供の扶養控除の金額
12月31日時点の年齢 | 控除額 |
---|---|
16歳~19歳未満 | 38万円 |
19歳~23歳未満 | 63万円 |
23歳以上~ | 38万円 |
【参考】国税庁:「No.1180 扶養控除」詳しくはこちら
大学などへの進学で、金銭負担が大きくなると予想される19~23歳未満の期間は控除額が大きく、23歳以上になると16~19歳未満の控除額に戻ります。
控除額はその年の扶養状況によって判断され、反映される仕組みとなっています。
住民税における扶養控除の金額
住民税の扶養控除額も年齢によって異なりますが、所得税の扶養控除額と異なります。
住民税における子供の扶養控除の金額
12月31日時点の年齢 | 控除額 |
---|---|
16歳~19歳未満 | 33万円 |
19歳~23歳未満 | 45万円 |
23歳以上~ | 33万円 |
【参考】財務省:「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」詳しくはこちら
所得税の扶養控除額と比べて少ないことから、所得税がかからない場合でも住民税はかかるケースも少なくありません。
住民税の控除額は前年の扶養状況によって判断され、反映される仕組みとなっています。
2020年度から基礎控除と給与所得控除が変更に
2020年度(令和2年度)に税制が変わり、基礎控除と給与所得控除の金額に変更がありました。
税制改正による変更内容は、以下の通りです。
基礎控除と給与所得控除の変更
控除の種類 | 2019年度まで | 2020年度以降 |
---|---|---|
基礎控除 | 38万円 | 48万円 |
給与所得控除 | 65万円 | 55万円 |
合計 | 103万円 | 103万円 |
【参考】国税庁:「No.1199 基礎控除」詳しくはこちら
【参考】国税庁:「No.1410 給与所得控除」こちら
上記の表からわかるように、基礎控除が上がり給与所得控除が下がっているので、合計の金額は変わりありません。このため、給与収入の場合は従来通り103万円以内であれば、問題なく扶養控除を受けられます。
扶養控除に関する注意点
子供の扶養控除を受ける際には、注意点があります。ここでは、5つの注意点を解説します。
収入と所得は異なる
扶養控除を利用する際は所得を条件としているため、収入と混同しないように気を付ける必要があります。
収入は会社からの給与や事業の売上を指す一方で、所得は収入から経費を差し引いたものです。
扶養控除の対象となる課税所得も収入とは異なる点や、子供の条件である「子供の所得が48万円以下」というのも収入と所得の違いに注意しましょう。
年少扶養親族は扶養控除の対象外
扶養控除の対象となる子供の年齢は16歳以上と定められているため、年少扶養親族(16歳未満の子供)は対象外となります。
以前は年少扶養親族に向けた扶養控除がありましたが、児童手当の導入に伴い平成24年の税制改正で廃止されました。
子供に103万円以上の給与所得があると扶養控除の対象外
子供の扶養控除の条件や収入と所得の違いでも解説しましたが、子供がアルバイトなどで給与所得があると注意が必要です。
年間103万円以上の給与所得があると、扶養控除の対象外となります。
最近は、長期のインターンシップで企業で就業体験のようなアルバイトができ、給与所得が発生する学生も多いです。
子供と別居していても生計が同じといえる
生計を一にしているとは、日常生活の財産を共にすることをいいます。 そのため、同居してるかは関係ありません。
子供が一人暮らしをしていても、生活費を親の財布でまかなっている家族は、生計が同じといえます。
扶養控除の対象になるため、所得税や住民税の負担軽減の効果を損なわないようにしましょう。
税制上の扶養と社会保険上の扶養は条件が異なる
扶養には税制上と社会保険上があり、それぞれ条件が異なります。社会保険上の扶養となるには、年収が130万円未満(平均月額10万8333円以内)でなくてはなりません。
そのため、103万円以上かつ130万未満の場合、社会保険上の扶養は該当するものの、税制上の扶養は対象外となります。社会保険上の扶養が対象外となってしまうと、子供が社会保険料を支払わなくてはならないため注意が必要です。
共働き家計はどちらの扶養に入れる?
夫婦で共働きをしている場合、夫と妻のどちらの扶養に入れるべきかは、状況によって異なります。一概に収入が高い方の扶養に入れることがよいとも限らないため、注意しましょう。
子供が16歳未満の場合は収入の低い方に入れた方がお得な場合も
16歳未満の子供は扶養控除の対象ではありませんが、住民税の非課税を判定する場合に優位になることがあります。
住民税の非課税額は、扶養者がいない場合は45万円ですが、扶養者がいる場合は以下の通りです。
※東京23区内の場合。地方自治体によって異なります。
【参考】東京都主税局:「個人住民税」詳しくはこちら
この場合の扶養者とは16歳未満の子供も含むため、収入が少ない方の扶養に入れた場合、住民税が非課税になる可能性があります。
16歳以上の場合は収入の高い方に
16歳以上の子供であれば、所得税と住民税の扶養控除を受けられるので、収入の高い方の扶養に入れる方がよいです。所得が上がれば上がるほど税率も上がるため、少しでも課税所得を抑えることで節税に繋がります。
ただし、会社員と自営業の場合は、社会保険における扶養のことも考慮して、会社員側の扶養に入れた方がよいでしょう。自営業の場合、扶養家族が増えるとその分社会保険料が増額するためです。
また、会社が独自で定めている家族手当などの制度がある場合、その内容も確認しておくことをおすすめします。
例えば、1ヶ月に1万円の扶養手当が会社から出る場合、年間で12万円を受け取ることが可能です。
これらの点を考慮しながら、どちらの扶養に入れた方がよいか検討してみるとよいでしょう。
まとめ
子供がいる際は、扶養控除を適用することで、所得税と住民税を安く抑えられます。子供といっても年齢が16歳以上であることや、同一生計、子供の所得が48万円以下などの条件を満たさなくてはなりません。
また、共働きの場合は、収入や子供の年齢、就業形態などを考慮して、どちらの扶養に入れるか判断することが大切です。なお、扶養控除は自身で申告をしなくては受けられないため、漏れなく申告するようにしましょう。
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