寄附でも税金が安くなる?!控除を受けられる寄附の種類や方法を解説

国や地方公共団体、特定の法人などに寄附をした場合、確定申告を行うことによって、所得税が還付される場合があります。今回は寄附金控除が受けられる団体や実際に控除される金額の目安、寄附金控除を受けるための確定申告の方法などを解説します。

寄附でも税金が安くなる?!控除を受けられる寄附の種類や方法を解説

寄附先で控除できるかどうかが決まる

寄附先で控除できるかどうかが決まる

寄附金控除は個人が国や地方自治体、特定の法人などに「特定寄附金」を支出した場合に、確定申告をすることによって、所得税が還付される制度です。つまり、どこに寄附をしても控除が受けられるというわけではなく、寄附金控除の対象外の企業や団体などに寄附をした場合は、控除は受けられないということです。では、具体的にどこに寄附をすれば寄附金控除が受けられるのでしょうか?

税金の控除が受けられる団体とは?

寄附金控除の対象となる「特定寄附金」とは、以下のいずれかに当てはまるものを指します。ただし、学校の入学に関わる寄附など、寄附をした特定の人に利益が及ぶと思われる寄附や、政治資金規制法で禁じられている寄附については、特定寄附金として認められません。

① 国や地方公共団体に対する寄附金
ただし、特定の人に利益が及ぶと思われる寄附は除きます。

② 指定寄付金
公益社団法人、その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金のうち、次の要件を満たすと認められるものとして、財務大臣が指定したもの。
1. 広く一般に募集されること
2. 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること

③ 特定公益増進法人(※)対する寄附金
教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など、公益の増進に著しく寄与すると認められた特定公益増進法人(独立行政法人や社会福祉法人など)に対する寄附金で、その法人の主な目的である業務に関連するもの

※特定公益増進法人一覧は、財務省ホームページで確認できます。

④ 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すると認められる一定の公益信託の信託財産とするために支出した金銭のこと。

⑤ 認定NPO法人など(※)に対する寄附金
特定非営利活動法人のうち一定の要件を満たす認定NPO法人に対する寄附金で、特定非営利活動に係る事業に関連するもの。

※「認定NPO法人等」とは、都道府県知事又は指定都市の長の認定(もしくは仮認定)を受けた認定NPO法人、または国税庁長官の認定を受けた旧認定NPO法人のことを指します。認定NPO法人等の一覧は、内閣府NPOホームページで確認できます。

⑥ 政治活動に関する寄附金
個人が支出した「政党(支部を含む)」「政治資金団体」「その他の政治団体」「公職の候補者」に対する政治活動に関する寄附金のうち、一定の要件に該当するもの。

⑦ 特定新規中小会社(※)が発行した株式の取得に要した金銭

「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社のうち、一定の条件を満たす会社が発行する株式を取得するのに要した金銭は、特定寄附金として認められます。

※特定新規中小会社について、詳しくはこちら

ふるさと納税との違い

ふるさと納税との違い

近年ますます人気が高まっている「ふるさと納税」も地方公共団体に対する寄附の一種であり、納めた寄附金の金額に応じて税控除を受けることができます。しかし、ふるさと納税の寄附金控除は、通常の寄附金控除と大きく異なる点があります。それは、通常の寄附金控除では所得税の控除に加えて、住民税も控除される特例があるということです。

また、通常の方法で地方公共団体に寄附をしても原則として返礼品などはもらえませんが、ふるさと納税制度を通じて寄附をすると、その地方の特産品やその地方で体験できるレジャーのチケットなどを返礼品として受け取れるというメリットもあります。したがって、地方公共団体に寄附をする場合は、特定寄附金を支払う通常の方法で寄附をするよりも、一般的には、ふるさと納税による寄附の方がお得だということができます。

実際どれぐらい控除されるの?

実際どれぐらい控除されるの?

2011年の法改正によって、特定の対象(政党や政治資金団体、認定NPO法人、公益社団法人など)に寄附した場合のみ、通常の寄附金控除と寄附金特別控除の、どちらか有利な方を選べるようになりました。従来の寄附金控除が「所得控除」であるのに対して、寄附金特別控除は「税額控除」です。そのため控除額を算出する際の方法が異なりますが(詳しくは後述)、一般的には、税額控除の方が減税効果は大きくなります。

では、寄附金控除(所得控除)の場合と寄附金特別控除(税額控除)の場合、それぞれの控除額の算出方法を見ていきましょう。なお、「所得控除」は所得から控除された上に税率が乗じられ、「税額控除」は、直接税額から控除されるという違いがある点に注意してください。

(1) 寄附金控除の場合(所得控除)

寄附金控除の場合は、以下の計算式で求められる金額が所得から控除されます。
ただし、特定寄附金の合計額には所得金額の40%が上限という制限が設けられています。

寄附金控除額=その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(※)-2,000円

出典 

(2) 寄附金特別控除の場合(税額控除)

寄附金特別控除の場合は、以下のとおり、寄附先の団体の種類によって控除額の計算式が異なります。先程も述べたとおり、以下の団体に寄附した場合のみ、寄附金控除の場合の控除額と寄附金特別控除の場合の控除額とを比べて、どちらか有利な方を選ぶことができます。

① 政党若しくは政治資金団体に寄附をした場合

政党等寄附金特別控除額=(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)×30%
※100円未満の端数は切り捨て

出典 

② 認定NPO法人等に寄附をした場合

認定NPO法人等寄附金控除額=(その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)×40%
※100円未満の端数は切り捨て

出典 

③ 公益社団法人等に寄附をした場合

公益社団法人等寄附金特別控除額=(その年中に支出した公益社団法人等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)×40%
※100円未満の端数切捨て

出典 

なお、上記①、②、③ともに寄附金合計額は原則として所得金額の40%相当額が上限とされています。
また、①の特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額、(2)及び(3)の特別控除額の合計額はその年分の所得税額の25%相当額が上限とされています。

控除を受けるためには確定申告が必要

控除を受けるためには確定申告が必要

寄附金控除または寄附金特別控除を受けるには、確定申告をする必要があります。確定申告をする際には、寄附先の団体等から交付される「寄附金受領証」を確定申告書に添付するか、申告書提出の際に提示しなくてはなりません。

なお、以下の団体に寄附をして寄附金特別控除(税額控除)を受ける際には、寄附金受領証の他に、以下の書類を添付しなければならないことになっています。

■政治活動に関する寄附金:
選挙管理委員会等の確認印のある「寄附金(税額)控除のための書類」を申告書に添付する必要があります。

■一定の特定公益増進法人に対する寄附または特定公益信託の信託財産とするための支出:
その法人や信託が適格であることなどの証明書の写し又は認定書の写しを申告書に添付するか、申告書提出の際に提示する必要があります。

まとめ

国や地方公共団体、公益財団法人や政党など一定の団体に寄附をした場合、確定申告をすることによって寄附金控除(所得控除)を受けることができます。なお、一部の団体については寄附金特別控除(税額)も選ぶことができます。寄附金控除は応援したい団体に寄附することによって、所得税の納税額を抑えることができるお得な制度です。

寄附を考えている場合は、その団体が寄附金控除の対象となっているかどうか、事前にしっかり確かめてから寄附をすると良いでしょう。ただし、基本的に寄附金控除は収入のある納税者に対する制度であるため、所得税や個人住民税が課税されない人が寄附をしても、当然ながら税制優遇を受けることができない点にも注意が必要です。

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