貯金と投資の割合はどうやって決める?判断ポイントや年代別の考え方を解説

貯金と投資の適切な割合は年代や収入、お金を貯める目的によって異なります。この記事では、貯金と投資の割合を決めるポイントや、年代別の具体例を紹介します。将来のライフイベントや老後資金に備えて、バランスよく投資や貯金を行っていきましょう。

貯金と投資の割合はどうやって決める?判断ポイントや年代別の考え方を解説

貯金と投資の平均金額はどのくらい?

貯金と投資の平均金額はどのくらい?

貯金と投資の割合を考える前に、一般的にどのくらい貯金や投資をしているものなのか、調査データをもとに確認してみましょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、年代別の平均貯金額と投資額は以下のとおりです。

【年代別】平均貯金額

単身世帯 二人以上世帯
全体 408万円 563万円
20代 65万円 105万円
30代 289万円 286万円
40代 275万円 361万円
50代 510万円 472万円
60代 637万円 885万円
70代 676万円 774万円

金融広報中央委員会「令和5年(2023年)家計の金融行動に関する世論調査」をもとに筆者作成。同調査の「預貯金」の額を貯金額とした。なお、同調査の「預貯金」の額は、運用または将来の備えとしている部分であり、日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は含まれない。

単身世帯、二人以上世帯ともに、20代はまだ貯金額が少ないものの、年代が上がるにつれて増えていることが分かります。特に50代、60代のあたりで大きく増えており、この年代は収入が増加するうえ、娯楽・レジャー費や子育て費用などの支出が一段落することが理由だと考えられます。退職金の受け取りがあることも影響しているかもしれません。

ただし、この金額は「平均値」であるため、実態とはズレがある可能性があります。平均値は調査対象の全データを平均化したものなので、極端に大きい(または小さい)データが入っていると、実態とはかけ離れてしまうのです。
例えば、貯金だけでなく、投資商品や保険商品も含めた金融資産全体の保有額でみると、二人以上世帯の30代の平均値は601万円であるところ、より実態を表しやすいといわれる「中央値」(データを大きい順に並べた時の中央の値)は150万円です。
ここからみるに、貯金額も、多くの世帯では上表の額より少ないのが実態だと考えられます。

【参考】金融広報中央委員会 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査] 令和5年調査結果 詳しくはこちら

【年代別】平均投資額

単身世帯 二人以上世帯
全体 372万円 427万円
20代 43万円 49万円
30代 247万円 196万円
40代 191万円 272万円
50代 649万円 306万円
60代 553万円 693万円
70代 574万円 632万円

金融広報中央委員会「令和5年(2023年)家計の金融行動に関する世論調査」をもとに筆者作成。同調査の「債券」「株式」「投資信託」の合計額を投資額とした。

投資額も、20代はまだ少ないものの、年代が上がるにつれて増えていることが分かります。特に大きく増えている年代としては、単身世帯では50代、二人以上世帯では60代であり、手元にあるまとまった資金の一部を投資に回しているものと考えられます。なお、こちらも「平均値」であることにはご留意ください。

貯金と投資の割合はどのくらい?

貯金と投資の割合はどのくらい?

それでは、貯金と投資が金融資産全体に占める割合はどのくらいなのでしょうか?
同じく「家計の金融行動に関する世論調査」のデータをもとに計算すると、下表のとおりです。

金融資産保有額 貯金 投資 保険 その他
【全体】単身世帯 941万円 43% 40% 14% 3%
【全体】二人以上世帯 1,307万円 43% 33% 20% 4%
【20代】単身世帯 121万円 53% 36% 7% 4%
【20代】二人以上世帯 249万円 42% 20% 37% 1%
【30代】単身世帯 594万円 49% 42% 5% 4%
【30代】二人以上世帯 601万円 48% 33% 15% 4%
【40代】単身世帯 559万円 49% 34% 11% 6%
【40代】二人以上世帯 889万円 41% 30% 23% 6%
【50代】単身世帯 1,391万円 37% 47% 13% 3%
【50代】二人以上世帯 1,147万円 41% 27% 24% 8%
【60代】単身世帯 1,468万円 43% 38% 15% 4%
【60代】二人以上世帯 2,026万円 44% 34% 19% 3%
【70代】単身世帯 1,529万円 44% 37% 17% 2%
【70代】二人以上世帯 1,757万円 44% 36% 17% 3%

金融広報中央委員会「令和5年(2023年)家計の金融行動に関する世論調査」をもとに筆者作成。金融資産の項目のうち、貯金は同調査の「預貯金」の額、投資は同調査の「債券」「株式」「投資信託」の合計額、保険は同調査の「生命保険」「損害保険」「個人年金保険」の合計額、その他は同調査の「金銭信託」「財形貯蓄」「その他金融商品」の合計額とした。

貯金の割合はどの世代も概ね40~50%で推移しており、単身世帯と二人以上世帯の差もあまりありません。一方で、投資の割合は、どの世代でも単身世帯の方が大きくなっており、単身世帯の方がリスクが取れるからだと考えられます。なお、二人以上世帯は投資の割合が小さい分、保険に入っていることが分かります。

貯金と投資の割合を決めるステップ

貯金と投資の割合を決めるステップ

それでは、貯金と投資の割合はどのように決めていけばよいのでしょうか。大切なのは、お金を使用用途によって整理することです。

まずは半年分の生活費を貯金しておく

まずは、自分や家族の収入や資産、生活費を確認しましょう。
収入や資産についてはある程度把握できているかもしれませんが、月々の生活費を把握するのは意外と難しいものです。
生活費とは、家賃や住宅ローンなどの住居費、水道光熱費、食費、通信費、交際費、娯楽費など、日々の生活で使っているお金のことです。家計簿アプリなども活用しながら、日々の支出を確認してみましょう。

月々の生活費を把握できたら、少なくとも半年分の生活資金は現金や貯金で持っておくようにします。これは「生活防衛資金」と呼ばれ、病気やケガ、失業など、何かトラブルがあっても当面の生活が維持できるように確保しておくお金です。
いざ必要という時に使えなかった、少なくなっていたということがないよう、流動性が高く、元本が保障される貯金で備えておきましょう。

将来使う予定のあるお金は時期と金額を把握しておく

続いて、将来使う予定のあるお金について考えてみましょう。マイホームの購入資金、子供の教育資金、大きな旅行を予定している場合はその費用などがこれにあたります。

将来使う予定のあるお金は、いつまでにどのくらい必要なのか、その時期と金額を把握します。そして、1つの目安として、5年以内など近い将来必要なお金については、生活防衛資金と同様に貯金で持っておくと安心です。
もう少し先の将来必要になるお金は、投資に回して増やすことを検討してみてもよいでしょう。

余剰資金は投資に回しても大丈夫!

収入や資産から上記の「生活防衛資金」と「将来使う予定のあるお金」を差し引いた金額(=余剰資金)が、投資に回せるお金になります。
ただし、一口に投資といっても、ローリスクのものからハイリスクのものまで、さまざまな商品があります。投資の目的や自分のリスク許容度を踏まえ、実際に投資に回す金額や投資方法を考えましょう。

貯金と投資の割合を決めるポイント

貯金と投資の割合を決めるポイント

貯金と投資の割合は、年齢や年収、お金を貯める目的などによって異なります。それぞれのポイントについて解説します。

年齢に応じて貯金と投資の割合を決める

年齢によって収支のバランスや取れるリスクの大きさが異なるため、貯金と投資の割合も変わってきます。
20代のうちはまだ収入や保有資産が少なく、貯金や投資に回せるお金も限られています。一方で、単身であったり、まだ子供がいない場合は、比較的大きなリスクが取れるので、生活防衛資金を確保したうえで、投資の割合を少し大きくするのも選択肢の1つです。

30~40代は、ある程度収入が増える一方、マイホームの購入や子供の教育費などで支出も増え、手元にお金を残すことが難しくなる時期です。近い将来必要なお金も増えてきますので、無理して投資に回す必要はありません。
ただ、少額でもコツコツと積立投資をすれば、時間を味方につけて資産を増やせる時期でもあるため、余剰資金が少しでもあれば、積極的に投資に回すことも検討しましょう。


50歳代以降は、大きな支出が一段落し、貯金や投資に回せるお金が増えます。一方で、定年退職以降は収入が少なくなりますので、それも見込んで貯金と投資の割合を考えましょう。

収入に応じて貯金と投資の割合を決める

一般的に、収入(所得)が多くなれば貯金や投資に回せるお金も多くなるため、投資の割合を少し大きくしてもよいでしょう。
しかし、収入が多い分支出も多く、思ったより手元に残っていないという方もいます。そういう場合は、まずは自分の収支を確認することから始めましょう。

また手取り収入が多く、余裕資金があっても投資初心者の方は、投資先を分散させる分散投資や少額投資など運用方法を考えることが重要です。

目的に応じて貯金と投資の割合を決める

お金を貯める目的によっても、貯金と投資の割合は異なります。

例えば、2、3年後のマイホーム購入の頭金としてお金を貯めたい場合は、投資ではお金が減ってしまう可能性があるため、貯金で準備します。
子供の教育費は、近い将来必要なものは貯金で準備しておきたいところですが、必要な時期がまだ先であれば、投資によって準備することも考えられます。必要な額と時期を考え、投資に回す割合を決めましょう。
老後資金に関しては、老後まで時間がある場合は、投資の割合を大きくして資産を増やすことを検討してみましょう。

【年代別】貯金と投資の割合の考え方・例

【年代別】貯金と投資の割合の考え方・例

ここからは、年代別の貯金と投資の割合について、具体例を挙げながら考えてみます。家族構成や金融資産の保有割合など自分の状況と合わせて、今後の貯金と投資の割合を見直してみてください。

【20代】まずは貯金の確保と少額でも早めの資産運用を

【年代別】貯金と投資の割合の考え方・例

20代は一般的に収入がまだ少なく、貯金や投資に回せる額も少ない時期です。ただ一方で、独身であったり、まだ子供がいない場合は、自由に使えるお金が比較的多いので、将来にむけてお金を貯める(増やす)大切な時期でもあります。
まずは貯金を優先して生活防衛資金を確保し、そのうえで、余剰資金を投資に振り分けていきましょう。
老後の生活が65歳からと考えた場合、現在25歳であれば、あと40年という長い期間があります。
仮に2,000万円を準備しようとすると、貯金で準備する場合は毎月約4万2,000円を積み立てていく必要があります(利子は付かないものとして計算)。一方、5%の運用利回りが期待できる投資商品で準備する場合は、毎月の積立ては約1万3,000円で済みます。

【30代】ライフイベントを考えて貯金と投資のバランスを

30代になれば収入は徐々に増えてきますが、結婚や出産、マイホームの購入など、大きなライフイベントが発生し、出費も増える時期です。すでに生活防衛資金を準備できていれば、投資の割合を増やしていきたいところですが、ライフイベントの費用は必要な時期と金額によっては、貯金で準備した方がよい場合もあります。

例えば、30代の夫婦・子供一人(5歳)の世帯で、世帯の手取り月収が40万円、生活費が月30万円、200万円の貯金があるとします。5年後にマイホームの購入を検討しており、頭金は500万円用意する予定です。また、子供の教育費として、13年後に300万円を用意したいと考えています。

生活防衛資金180万円は貯金200万円ですでに準備できています。
まずはマイホームの頭金として、500万円から残りの貯金20万円を引いた480万円を準備していきましょう。5年後に必要となるお金ですので、貯金で準備するとよいでしょう。
・480万円÷5年÷12ヶ月=毎月8万円

続いて、教育費300万円は13年後に必要になるので、投資で運用することも検討できます。
仮に利回り5%で運用できると考えると、13年後に300万円を用意するには毎月約1万4,000円の積立てが必要です。
この夫婦の場合、世帯月収40万円から生活費30万円を差し引いた月10万円が、貯金や投資に回せる金額ですから、毎月8万円を貯金して、残りを投資に回せば、教育費+αを準備することができます。

【40代】教育費の準備で投資割合が低くなることも

【年代別】貯金と投資の割合の考え方・例

40代になれば子供も大きくなり、子供関連の出費や生活費が増えます。教育費の準備や住宅ローンの支払いもあって、家計が一番苦しい時期かもしれません。
この時期は、近い将来必要なお金も増えますので、投資に回すお金を確保するのは難しい可能性があります。もし少しでも余剰資金がある場合は、投資に回して老後資金の準備にあてましょう。


例えば、40代の夫婦・子供二人(15歳と12歳)の世帯で、世帯の手取り月収が50万円、生活費が月40万円、400万円の貯金があるとします。子供の教育費として3年後に300万円、6年後に300万円を準備したいと考えています。

生活防衛資金240万円は貯金400万円ですでに準備できています。
貯金の残り160万円は、3年後に必要な教育費の一部にあてます。
・(300−160万円)÷3年÷12ヶ月=約3.9万円
・300万円÷6年÷12ヶ月=約4.2万円

教育費をすべて貯金で準備する場合、この夫婦の毎月の貯金額は8万1,000円となります。世帯月収50万円から生活費40万円を差し引いた月10万円が、貯金や投資に回せる金額ですから、残りの1万9,000円は老後資金として投資で運用しましょう。5%で運用できた場合、20年後には約780万円になります。
40代は、老後はまだ先と感じるかもしれませんが、老後の準備を始めておきたい時期ともいえます。

【50代】本格的な老後にむけてしっかりと準備を

50代になると、子供の教育費など大きな支出が一段落する世帯も増えてきます。収入もピークを迎え、貯金や投資にまとまった金額を回せるようになります。最後の貯め時ともいわれる時期なので、しっかりと老後資金を準備していきましょう。

貯金と投資の割合については、老後にかかる費用や退職金・年金制度から受給できる額を踏まえたうえで考えるとよいでしょう。老後資金がまだ十分に準備できていないという場合には、投資の割合をできるだけ増やすことも検討してみてください。ただし、老後資金を減らしてしまっては元も子もないので、低リスクの商品で運用することが望ましいでしょう。

まとめ

貯金と投資の割合に絶対的な正解はありません。年代や収入、お金を貯める目的などを考慮したうえで、自身にとって無理のないバランスで資産を増やしていきましょう。

資産形成には、銀行口座の普通預金だけでなく、定期預金や投資信託、株式投資などさまざまな運用商品があります。運用によって得られた利益を非課税にできるNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)のような制度を利用するのもおすすめです。特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、ライフプランに合わせた上手な資産形成が重要です。

ご留意事項
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