2021年からは要注意!孫へ生前贈与するメリットや相続税について

生前贈与にもいろいろな方法があり上手く活用することで相続税を抑えることができますが、2021年からは法改正の影響を受けますので注意すべき点がいくつかあります。そこでこの記事では生前贈与に関する注意点、そしてメリットなどを解説していきます。

2021年からは要注意!孫へ生前贈与するメリットや相続税について

そもそも孫に相続はできる?

そもそも孫に相続はできる?

財産は、何も対策をしないまま相続を迎えると、民法に則って法定相続人に承継されます。法定相続人とは、基本的に亡くなった方の妻や夫、子供、父母、兄弟姉妹です。そのため孫に引き継がせたいと考えても、自動的には渡りません。

しかし、孫に引き継がせる方法がないわけではないため、以下で紹介する内容を理解し、事前に準備すると良いでしょう。

遺言書

手段の1つは「遺言」です。孫に特定の財産を受け継がせたい旨を遺言書に記載しておけば、本人が亡くなった後、その内容に従った執行がなされて予定通りの承継が行われます。

遺言書を活用した場合でも孫が法定相続人になるわけではありませんが、遺贈としてこれを贈ることができるのです。具体的な手法としては「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、前者は遺産の全部又は遺贈する遺産の割合を指定し、後者は遺贈する特定の財産を指定して行います。

なお「すべてを孫に与える」といった旨の記載も可能ですが、配偶者や子には遺留分があり、遺留分侵害請求権として金銭を請求されて争いになる可能性があるので、注意が必要です。

また、遺言書は作成の方法も非常に重要であるため、専門家に相談しつつ形式的なミスがないようにしなければなりません。

養子縁組をする

遺贈では被相続人の行為に基づいて財産を与える形を取りますが、孫と養子縁組をすれば孫が法定相続人となり、当然に財産を承継できる立場になれます。しかも、養子縁組をした場合には、節税対策にもなります。基礎控除の額を大きくできますし、一世代分の課税機会を省略できるからです。ただし、孫養子は2割加算で課税されるというルールがあるため、この点を考慮しておかなければなりません。

代襲相続

場合によっては代襲相続によって孫が相続できることもあります。代襲相続とは、法定相続人(子)が相続開始時点ですでに亡くなっているときに、その法定相続人の子(孫)が一世代飛ばして相続することをいいます。

代襲相続できる状況にあるならば、遺言や養子縁組を行うことなく孫に相続する権利を与えることができるでしょう。

孫に相続させるメリット・デメリット

孫に相続させるメリット・デメリット

孫に相続させる前に、そのメリットやデメリットをしっかりと理解しておきましょう。

メリット

一番のメリットは、被相続人本人の希望を実現できるということでしょう。法定相続人という存在が法律で規定されていますが、これはあくまで遺言等がなかった場合に備えた規定であり、最も重視されるのは本人の意思です。もともと、相続の対象となる財産は被相続人のものであるため、その本人が自由に処分できるのが原則ですし、その意思は尊重されなければなりません。

もう1つのメリットとしては節税が挙げられます。特に養子縁組をした場合には、前述の通り課税機会を一度減らすことができますし、相続人の数が増えることで基礎控除額も大きくできます。ただし必ず節税効果が得られるとも限りませんので、事前のシミュレーションは欠かせません。

デメリット

デメリットとしては、財産承継が予定されていた親族と孫との間で争いが起こるおそれがあるということが挙げられます。遺言や養子縁組の事実を知らされておらず、孫との関係性が良好でない場合などには、財産をめぐってトラブルになることも考えられます。

また、課税額が2割加算されることにより、孫が納付すべき金額が増えてしまうというデメリットもあります。祖父母から親、親から子へと順に相続が行われた場合の最終的な納税額に比べると少なくなるかもしれませんが、その時点における支出は増えてしまいます。不動産など現金以外の財産を与えた場合には、換価をしなければかえって孫の生活を圧迫することになりかねません。

相続以外で孫に遺産を渡せる生前贈与

相続以外で孫に遺産を渡せる生前贈与

遺言や養子縁組では問題があるという場合でも、「生前贈与」により孫へ遺産を渡す方法もありますので、こちらも検討すると良いでしょう。

詳しくはこちらのページでも解説していますので、以下では生前贈与の種類や特例の概要を紹介していきます。

2021年からは要注意!「教育資金一括贈与」のルールが変更された

教育資金の一括贈与に関しては、一定条件を満たせば1,500万円を限度に課税がされないという制度が設けられています。受贈者は30歳未満の者でなければならず、信託銀行等に資金を信託するなど所定の手続きに則って行う必要があります。

なお、この制度は2021年3月31日までの運用とされていたものの、法改正により2023年3月31日までに延長されています。
さらに、この法改正では従来のルールに少し変更が加えられています。例えば「死亡の前3年以内に贈与された教育資金の残額には課税」とされていましたが、この「3年以内」という制限がなくなり、いつ行われた贈与であっても残額は課税対象として扱われるようになったのです。そして、その贈与先が孫の場合には2割加算の適用も受けます。こちらも従前はなかった運用です。

暦年贈与

一般的な贈与は「暦年贈与」として扱われます。暦年、つまり1年単位で贈与額に応じた課税が行われます。前項の教育資金として贈与をすれば最大1,500万円が非課税とできますが、こちらの一般的な贈与の場合には年間で110万円を超えると課税されます。

住宅の贈与

住宅を贈与する場合も課税対象となりますが、「住宅取得等資金贈与の特例」が設けられているため、要件を満たすことで住宅の性質に合わせた一定額までは非課税にできます。なお、こちらも法改正の影響を受けており、2021年4月1日の前後で非課税の条件が変わっています。

結婚および子育てに関する贈与

結婚資金や子育てに係る資金を贈与する場合に適用される特例も設けられています。こちらも法改正により2023年までの延長がされており、適用条件も少し変わっていますので要注意です。2割加算が適用されるようになったことは教育資金と同じで、こちらは孫にとっては不利な内容ですが、受贈者の年齢の下限が20歳から18歳に対象が広がりました。なお、最大の非課税額は1,000万円です。

孫に相続させる場合の注意点

孫に相続させる場合の注意点

孫に相続させるために、特に養子縁組や遺言書を活用する場合には他の相続人とのトラブルにならないよう注意が必要です。また、節税ができると期待したにもかかわらず、計算ミスによって狙い通りの効果が得られないおそれもあるため、専門家に相談してから対策を講じるようにしましょう。

生前贈与であればご本人が亡くなる前に対処するため計画的に進めやすいといえます。しかし、非課税の範囲内でできるかどうか、条件を満たしているかどうかなどをよく確認してから行わなければなりません。

まとめ

まとめ

生前贈与等の孫に財産を渡す方法のメリットなどを紹介しました。贈与する財産の種類や目的に応じて特例も設けられていますので、上手く活用すれば課税額を下げられるでしょう。ただし2021年からは法改正の影響でこれまでと異なるルールが適用されますので、注意が必要です。

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