孫へ相続する方法を解説!生前贈与によって相続税の負担を減らそう

孫が法定相続人でない場合でも相続することができます。この記事では、遺言による遺贈や生前贈与を活用して孫に財産を渡す方法を紹介します。贈与税が非課税になる特例や相続税の負担を減らす方法も参考にしてみてください。メリット・デメリット・注意点も踏まえて、計画的に財産を整理しておきましょう。

孫へ相続する方法を解説!生前贈与によって相続税の負担を減らそう

孫は法定相続人ではないが、遺産を渡せる!

孫は法定相続人ではないが、遺産を渡せる!

財産は、何も対策をしないまま相続を迎えると、民法に則って法定相続人に承継されます。法定相続人とは、基本的に亡くなった方の妻や夫、子供、父母、兄弟姉妹です。子が先に亡くなっている場合を除いて、孫は自動的には法定相続人とはなりません。
しかし、孫に遺産を引き継ぐ方法もあります。孫にも財産を相続させたい方は、以下で紹介する内容を理解し、事前に準備するとよいでしょう。

孫に財産を相続する方法

孫に財産を相続する方法には、死後に財産を渡す方法と生前に渡しておく方法の2パターンがあります。ここでは、死後に財産を渡す方法を紹介します。

遺言書によって遺贈する

孫にも相続する手段の1つは「遺言書」です。孫に特定の財産を受け継がせたい旨を遺言書に記載しておけば、本人が亡くなった後、相続人全員が参加する遺産分割協議で話し合いが行われ、その遺言書の内容に従った相続ができます。

遺言書を活用した場合でも孫が法定相続人になるわけではありませんが、遺贈として財産を贈ることができるのです。具体的な手法としては「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、前者は遺産の全部または遺贈する遺産の割合を指定し、後者は遺贈する特定の財産を指定して行います。

なお「すべてを孫に与える」といった旨の記載も可能ですが、配偶者や子などの一部の法定相続人には遺留分という最低限の相続財産の取り分があるため、遺留分侵害請求権として金銭を請求されて争いになる可能性があるので、注意が必要です。

また、遺言書は作成の方法も非常に重要であるため、専門家に相談しつつ形式的なミスがないようにしなければなりません。

養子縁組をする

遺贈では被相続人の遺言に基づいて財産を与える形を取りますが、孫と養子縁組をすれば実子と同等の第1順位の法定相続人となり、法律に基づいて相続することができます。また、孫と養子縁組をした時、一世代分の課税機会を省略することや、法定相続人の人数が増えることによって相続税の基礎控除額が増え、税金の負担が軽減できる場合があります。ただし、孫養子は2割加算で相続税を納税する義務が発生するケースがあるため、この点を考慮しておかなければなりません。

代襲相続で孫に相続権がある場合

場合によっては、代襲相続によって孫が相続できることもあります。代襲相続とは、法定相続人(子)が相続開始時点ですでに亡くなっている時に、その法定相続人の子(孫)が一世代飛ばして相続することをいいます。

代襲相続できる状況にあるならば、遺言や養子縁組を行うことなく孫に相続する権利を与えることができるでしょう。

相続以外に孫に財産を渡す方法(生前贈与)

相続以外に孫に財産を渡す方法(生前贈与)

相続が起こる前に、孫に財産を渡す方法があります。生きている間に財産を適切な方法で孫に渡す(生前贈与する)ことで、相続税を減らすことができたり、親族間の遺産に関わる揉めごとを少なくすることもできます。以下では、相続以外で孫に財産を渡す方法を説明します。

暦年贈与(暦年課税制度の活用)

一般的な贈与は、暦年贈与(暦年課税制度の基礎控除を活用する方法)として扱われ、年間110万円まで非課税で贈与することができます。暦年贈与によって、相続までに孫へ少しずつ財産を渡すことが可能になります。

ただし、相続開始前3年以内に贈与された財産は、贈与がなかったものとして相続財産に含まれます。また、令和5年度の税制改正により「3年以内」ではなく「7年以内」に段階的に拡大されることになりました。増えた4年の期間中の贈与には、別途合計100万円の非課税枠が設けられています。

教育資金の一括贈与の特例

教育資金の一括贈与に関しては、一定条件を満たせば1,500万円を限度に贈与税が課税がされないという制度が設けられています。受贈者は30歳未満との要件がありますが、孫も対象です。信託銀行などで専用の口座を作り、資金を信託するなど所定の手続きや申請の流れに則って行う必要があります。

この制度は令和5年度税制改正により、2023年3月31日までだった運用期限が2026年3月31日までに延長されています。
また、相続税の課税価格の合計額が5億円を超える贈与者が亡くなった時に、教育資金として使いきれなかった管理残高に対しては、基本的に相続税がかかります。以前までは一定の要件を満たせば管理残高には課税されませんでしたが、令和5年度税制改正により一定の要件を満たす場合でも、管理残高に対して課税されるため注意しましょう。

生命保険の受取人を孫にする

被相続人を保険の契約者および被保険者とし、受取人を孫にすることで遺産分割の争いを避け、スムーズな相続をすることができます。
孫に渡される死亡保険金は、受取人(孫)固有の財産となり、原則として遺産分割の対象外になるため、争いなくスムーズな遺産分割が可能になります。

ただし、死亡保険金には「500万円×法定相続人数」分の非課税枠がありますが、法定相続人扱いではない孫には適用されないため、相続税額増える可能性があり注意が必要になります。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

結婚資金や子育てに係る資金を贈与する場合に適用される特例も設けられています。この特例の非課税額は最大1,000万円で、受贈者の年齢の下限は18歳ですが、孫にも適用することができます。
また、贈与者が亡くなった際に贈与を受けた資金がまだ残っている場合は、相続の課税対象となります。代襲相続人ではない孫が相続人になると通常は、相続税額が2割加算された額になります。しかし、令和3年の法改正により本特例を利用中に贈与者が亡くなった場合に生じた孫への贈与による相続財産は、2割加算の対象にはならず、相続において税の優遇があります。こちらも今回の法改正で2025年3月31日までの延長がされています。

住宅取得等資金贈与の特例

住宅を贈与する場合も課税対象となりますが「住宅取得等資金贈与の特例」が設けられているため、要件を満たすことで住宅の性質に合わせた一定額までは、住宅取得等資金贈与に係る贈与税を非課税にできます。住宅取得等資金贈与の特例を利用して、孫に財産を渡すことができるでしょう。
本特例は、贈与者が受贈者に対して、自身の持ち家を贈与するために利用される制度ではありません。贈与者が受贈者に対して、住宅購入や改築をするための資金を渡す時に利用する制度になります。この特例の申請期限は2023年12月31日までとなっており、現時点で期限の延長は発表されていません。受贈者や住宅にさまざまな要件は必要なものの、利用できる場合はメリットがあるため、孫へ住宅等取得資金の贈与を検討されている場合は期限に注意しておきましょう。

孫に相続するメリット

孫に相続するメリット

孫に相続をする一番のメリットは、被相続人本人の希望を実現できるということでしょう。法定相続人という存在が法律で規定されていますが、これはあくまで遺言などがなかった場合に備えた規定であり、最も重視されるべきは本人の意思です。もともと、相続の対象となる財産は被相続人のものであるため、その本人が自由に処分できるのが原則ですし、その意思は尊重されなければなりません。

もう1つのメリットとしては、相続税の負担軽減が見込めることです。特に養子縁組をした場合には、前述の通り課税機会を一度減らすことができ、また、相続人の数が増えることで基礎控除額を増やすことができます。ただし、必ずしも相続税の負担が減るとも限らないので、事前のシミュレーションは欠かせません。

孫に相続するデメリット

孫に相続をするデメリットとしては、財産承継が予定されていた親族と孫との間で争いが起こる恐れがあるということが挙げられます。遺言や養子縁組の事実を知らされておらず、孫との関係性が良好でない場合などには、財産をめぐってトラブルになることも考えられます。

また、相続税の課税額が2割加算されることにより、孫が納付すべき金額が増えてしまうというデメリットもあります。祖父母から親、親から子へと順に相続が行われた場合の最終的な納税額に比べると少なくなるかもしれませんが、その時点における支出は増えてしまいます。不動産など現金以外の財産を与えた場合には、換価をしなければかえって孫の生活を圧迫することになりかねません。

孫に相続させる場合の注意点

孫に相続させる場合の注意点

孫に相続させるために、特に遺言書や養子縁組を活用する場合には、遺留分の侵害など孫以外の相続人とのトラブルにならないよう注意が必要です。
また、遺贈(遺言による相続)や養子縁組によって遺産を渡す場合は、通常の法定相続人への相続よりも2割高い相続税がかかるので、税制面での注意も必要です。
生前贈与であれば本人が亡くなる前に対処するため、計画的に孫に財産を渡しやすいといえます。しかし、非課税の範囲内でできるかどうか、特例や非課税制度の条件を満たしているかどうかなどをよく確認してから行わなければなりません。

まとめ

まとめ

孫にも相続することは可能です。死後に相続させる方法もあれば、生前贈与として計画的に財産を渡すこともできます。贈与する財産の種類や目的に応じて特例も設けられていますので、上手く活用すれば課税額を下げられるでしょう。ただし法改正の影響でこれまでと異なるルールが適用されますので、注意が必要です。不安な方は、信託銀行や弁護士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

孫への相続時にはメリットやデメリットも踏まえて、財産を整理するとよいでしょう。

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