60代からでも考えるべき住み替えのメリットや失敗しないコツ
定年退職や子供の独立など、ライフステージが大きく変わることの多い60代。長年住んできた自宅からの住み替えを検討する人も少なくありません。今回は60代以上の高齢者が住み替えをするメリットやその効率的な方法、予算などについて解説します。

目次
住み替えを考えている高齢者はどのくらいいる?

まずは、住み替えについて高齢者がどのような意識を持っているのかを見てみましょう。
2016年にNPO法人「老いの工学研究所」が60歳から91歳までの高齢者を対象に行った「高齢期の住まいと住み替えに関する調査」の結果(※1)によると、「現在の住まいを『終の棲家』と考えている」と回答した人は男性では58%、女性では45%にとどまることが明らかになりました。一方、「住み替えを検討している」と回答した人の割合は男性で21%、女性で24%。「わからない」と答えた人が男性で21%、女性で31%に上りました。
つまり、全体の半数近くが今の住居を『終の棲家』と決めているわけではないという結果となっています。今の住まいから、『終の棲家』にふさわしい住まいへの住み替えを希望する、あるいは住み替える可能性があると考えている高齢者が多いことが浮き彫りになりました。
また、同じく「老いの工学研究所」が2019年に40歳から92歳までの男女を対象に行なった「高齢期の住空間に関する調査」(※2)では、「高齢期には生活環境のダウンサイジングが必要」と回答した人が男性は75%、女性は82%に。男女ともに高齢期には、コンパクトな住まいへの住み替えが必要だと考えている人が多いことも分かっています。
まずは、住み替えについて高齢者がどのような意識を持っているのかを見てみましょう。
2016年にNPO法人「老いの工学研究所」が60歳から91歳までの高齢者を対象に行った「高齢期の住まいと住み替えに関する調査」の結果によると、「現在の住まいを“終の棲家”と考えている」と回答した人は男性では58%、女性では45%にとどまることが明らかになりました。一方、「住み替えを検討している」と回答した人の割合は男性で21%、女性で24%。「わからない」と答えた人が男性で21%、女性で31%に上りました。
つまり、全体の半数近くが今の住居を“終の棲家”と決めているわけではないという結果となっています。今の住まいから、終の棲家にふさわしい住まいへの住み替えを希望する、あるいは住み替える可能性があると考えている高齢者が多いことが浮き彫りになりました。
また、同じく「老いの工学研究所」が2019年に40歳から92歳までの男女を対象に行なった「高齢期の住空間に関する調査」では、「高齢期には生活環境のダウンサイジングが必要」と回答した人が男性は75%、女性は82%に。男女ともに高齢期には、コンパクトな住まいへの住み替えが必要だと考えている人が多いことも分かっています。
※1:老いの工学研究所『高齢期の住まいと住み替えに関する調査:高齢者の約半数が「住み替え予備軍」』詳しくはこちら
※2:老いの工学研究所『高齢期の住空間に関する調査:「高齢期には、生活環境のダウンサイジングが必要』詳しくはこちら
住み替えのタイミングはいつ?

住み替えのタイミングは人によって異なりますが、高齢者の場合、主に次のようなタイミングで住み替えを実行に移すことが多いとされています。
住み替えのタイミング①子供の独立
同居していた子供が就職や結婚で家を出て夫婦2人暮らしになると、それまでほど広い住空間が必要ではなくなるため、よりコンパクトで管理がしやすい住まい、コストパフォーマンスの良い住まいへの住み替えをする人が多いようです。一方、子供夫婦と同居するために二世帯住宅への住み替えをする人もいます。
住み替えのタイミング②定年退職
通勤に便利な場所に住んでいたものの、定年退職をして通勤をしなくなると、住むエリアの選択肢が広がります。定年退職を機に以前から住みたかった場所への住み替えや故郷へのUターン、地方や海外への移住をする人も珍しくありません。

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住み替えのタイミング③介護
自分自身や家族の介護が必要になったことをきっかけに、介護がしやすいバリアフリーの住まいや高齢者用施設などへの住み替えをするケースもあります。

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住み替えのタイミング④家の老朽化
長年住んでいた家が老朽化し、快適に暮らせなくなったことを理由に住み替えを検討する人も少なくありません。
住み替えのタイミング⑤体力の低下
年齢とともに体力が衰えてくると、買い物や通院などのための移動が億劫に感じられるようになってきます。特に交通の便が悪い場所や徒歩圏内に商業施設がない場所に住んでいる場合は、免許を返上するなどして車の運転ができなくなると予想以上の不便を強いられることに。そこで、より便利な生活を求めて、近くに商業施設や病院などがある都市部への住み替えをする高齢者もいます。

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住み替えを決めたら、まず何をすべき?

では、実際に住み替えを決めた場合、どのような手順で住み替えを進めればよいのでしょうか。住み替える場所や家によって詳細は異なりますが、いずれの場合も必要になってくるのは、以下の3つのステップです。
①新しい住まいを探す
住み替え先のエリアを決め、地元の不動産業者に相談しながら物件を探す方法が一般的です。地方や海外への住み替えを検討している場合は、インターネット等で情報を集めるのも良いですが、エリア内のウィークリーマンションなどに1週間程度滞在して、住み替え後の生活を疑似体験してみても良いでしょう。都市部からの移住促進に力を入れている自治体の中には、おためし移住用の宿泊施設を用意しているところもあります。
②引っ越し準備をする
先にも述べたとおり、高齢者は住み替えにあたって、今より広い住まいではなくコンパクトな住まいを好む傾向にあります。仮に今の住まいよりもコンパクトな住まいに住み替えをした場合、今の住まいにある家財道具をそのまま新しい住まいに収めることができないかもしれません。引っ越しまでの間に、少しずつ不用品を整理し、身軽に住み替えができるように心がけましょう。
③現在の住まいをどうするか決める
住み替えと言うと、どうしても住み替え先の新しい住まいのことを優先して考えてしまうかもしれませんが、今住んでいる住まいをどうするのかを決めることも大切です。
売却して住み替えの費用や老後資金に充てる、人に貸す、子供や親族に譲渡するなど、様々な選択肢がありますが、できれば金融機関や不動産業者、ファイナンシャルプランナーなど第三者の客観的な意見も聞いた上で判断をすることをおすすめします。
特に自宅の売却や賃貸を考えている場合は、自宅の資産価値や市況、売却のタイミングを見誤らないために、複数の業者の意見を聞いて比較検討するようにしたほうが良いでしょう。なお、新しい住まいがみつかる前に今の住まいを売却してしまうと、次の住まいがみつかるまでの間、寝泊まりする場所を確保しなくてはならない点にも注意してください。
住み替えにはどんな費用が必要?
次に、住み替えに必要な費用についてみていきましょう。ここでは、住み替えにあたって新たに住居を購入する場合の費用について確認します。
取得費用
住居を取得すると言っても、マンションか戸建てか、あるいは新築か中古かなど、不動産の種類によって費用は大きく異なります。まずは、マイホーム購入にはどのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。独立行政法人住宅金融支援機構が住宅ローン「フラット35」の利用者を対象に行った調査(※3)によると、購入するマイホームの種類と平均所要資金は、それぞれ以下のような結果となっています。あくまでも平均値ではありますが、1つの目安として参考にしても良いでしょう。
不動産の種類 | 平均所要資金 |
---|---|
マンション | 4,437万円 |
土地付き注文住宅 | 4,113万円 |
建売住宅 | 3,442万円 |
注文住宅 | 3,395万円 |
中古マンション | 2,983万円 |
中古戸建 | 2,473万円 |
※1 独立行政法人住宅金融支援機構「2018年度フラット35利用者調査」P9,P13 詳しくはこちら
なお、現在の自宅を売却したお金で住み替え用の住宅を新たに購入する予定の場合は、まず不動産業者に売却額を査定してもらい、査定額を超えない範囲で住み替え用の住居を探すようにすると良いでしょう。
仲介手数料
住み替えにあたって、不動産業者を介して住まいを購入したり売却したりする場合は、原則として仲介手数料がかかります。
仲介手数料には、売買・賃貸借ともに、法律で「上限」が定められており、不動産会社は、それを超える仲介手数料を請求することはできないことになっています。
① 賃貸借の場合の上限額(貸主と借主が支払う仲介手数料の合計の上限)
家賃の1カ月分(共益費・管理費などは含まない)+消費税
② 売買の場合の上限額(400万円以上の物件の場合。売主・借主それぞれが支払う手数料の上限)
売買代金(消費税分は除く)の3%+6万円+消費税
税金
住み替えにあたって新たに不動産を購入した場合は「印紙税」、「登録免許税」、「不動産取得税」を納めなければなりません。税額は購入する住まいの広さや価格などによって異なりますが、税額の目安を予め確認しておき、購入予算にプラスしておくと安心です。
①印紙税
住宅の売買契約書や住宅ローンの契約書などを交わす際にかかる税金で、原則として、収入印紙を契約書に貼って納税します。税額は契約書に記載されている金額によって決まります。例えば、5,000万円以下の不動産を売買した場合の、印紙税額は1万円です。
②登録免許税
登録免許税は登記にあたって登記を行う者(不動産登記の場合はその不動産の所有者)が国に納める税金で、税額は、原則として次の計算式で求めることができます。なお、税率は登記の種類によって異なります(0.4%~2%)。
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額✕税率
③不動産取得税
不動産取得税は土地や建物など不動産を取得したときに支払う税金で、土地と建物のそれぞれに課され、次の計算式で求めることができます。税率は原則4%ですが、土地と住宅については2021年3月31日の取得までは3%に引き下げられています。
不動産取得税額=不動産の固定資産税評価額✕税率
引越し費用など
住み替え先への引越し費用や新生活を始めるにあたっての諸経費も、念頭においておく必要があります。ハイシーズンを避ける、荷物を最小限に抑えるなどすれば引っ越しにかかる費用を抑えることができるかもしれません。
このように、住み替えには新居の購入費用以外にも、多額の費用がかかります。高齢になってからの住み替えを考えているなら、1日も早く計画的に資金の準備を始めることをおすすめします。
住み替えない人にはリバースモーゲージがおすすめ
もちろん、住み替えをせず、住み慣れた自宅に最後まで住み続けたいと願う人や、事情があって住み替えができない人もいます。その場合に活用したいのが、銀行などの金融機関で提供されている融資制度「リバースモーゲージ」です。
リバースモーゲージとは、自宅に住み続けながら自宅を担保に融資を受け、契約者の死後に自宅を処分することで借入金を返済する仕組みのこと。一般的にリバースモーゲージで受けられる融資は自宅の評価額の50~70% 程度とされています。
例えば、1,000万円と評価された自宅を担保に入れてリバースモーゲージを利用すると、500万円~700万円の融資を受けられるということです。また、融資の使途が限定されていないことも、リバースモーゲージのメリットのひとつ。融資を受けたお金を生活費の足しにしたり、趣味に使ったりすることで、老後の生活をよりゆとりあるものにできるかもしれません。

リバースモーゲージとは?仕組みからメリット・デメリットまでFPが徹底解説!
まとめ
子供の独立や定年退職などを機に、住み替えを検討する高齢者は少なくありません。住み替えを検討している場合は、今住んでいる自宅をどうするのかを考えることから始めましょう。自宅を売却もしくは人に貸すことによって住み替えの資金にできるのか、それともできないのかを考えると、住み替えにかけられる予算を割り出しやすくなります。
住み替えにかかる費用は、新しい住まいの場所や種類によって大きく異なりますが、税金や不動産の仲介手数料、諸経費などを含めると数千万円単位の費用がかかることも珍しくありません。後悔しない住み替えをするためには、家族で話し合うのはもちろん、金融機関の担当者や不動産業者、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも大切です。
ご留意事項
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