企業年金とは?公的年金の上乗せされる仕組みや種類を理解しよう

老後の生活設計に不可欠な退職金制度の中でも、退職金を一時金ではなく、年金として受け取れる制度が企業年金です。本記事では、企業年金の概要や種類ごとの特徴を解説します。よくある疑問もまとめているので、参考にして老後の資金を考えてみてください。

企業年金とは?公的年金の上乗せされる仕組みや種類を理解しよう

企業年金とは

企業年金とは

企業年金とは退職金制度のひとつで、企業が積み立てた資金を運用して、従業員の退職時に年金として給付します。従業員の老後の生活をより豊かにするために、企業が導入している制度で、積み立てている資金は企業の資産とは分けて管理されます。企業によっては、従業員が掛金を上乗せすることもできます。給付される期間や、給付のしかた(一時金との併用など)は「年金規約」に定められています。

公的年金とは

公的年金は、国が運営している年金制度で、老齢基礎年金、老齢厚生年金として老後に受け取ります。国民年金に10年以上加入した人は、老齢基礎年金を受給する資格があります。老齢厚生年金は、会社員や公務員が加入する厚生年金から支給されるもので、老齢基礎年金に上乗せして支給されるものです。

企業年金と公的年金の違い

ここで、企業年金と公的年金の違いを確認してみましょう。
企業年金は各企業が任意で設けている福利厚生制度ですが、公的年金は全国民に加入が義務付けられています。したがって、企業年金の制度を導入していない企業もあります。

企業年金の掛金は、原則として企業が支払い、従業員が上乗せして支払う場合もあります。一方で公的年金の保険料は、企業と従業員(被保険者)が折半して支払います。

給付については、企業年金は加入している人の生死に関係なく一定期間年金が支払われる保証期間があるものや、保証期間を確保しつつ、加入している人が生きている限り年金が支払われるものなど、いくつかのパターンがあります。
一方、公的年金は受給している人が死亡すると、その時点で終了します。

企業年金の種類

企業年金の種類

企業年金には、いくつかの種類があります。ここでは、以下の5つを解説します。

・確定給付企業年金(DB)
・企業型確定拠出年金(企業型DC)
・厚生年金基金
・中小企業退職金共済(中退共)
・特定退職金共済(特退共)

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB)とは、原則として企業が掛金を積み立て、資金の管理・運用をし、従業員の受給開始年齢となったときに年金として給付するものです。
掛金の運用状況に関わらず、あらかじめ受け取れる年金額が確定していることから、「確定給付企業年金」(DB)と呼ばれます。運用の責任は企業が負うことになります。DBには基金型、規約型、総合型があります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業が掛金を毎月拠出し、従業員自身が資産の運用を行う制度を「企業型確定拠出年金」(企業型DC)といいます。
企業型確定拠出年金は、従業員が預金、年金保険、投資信託などの金融商品を選択してその資金を運用し、60歳から75歳までの間に、年金または一時金で受け取ります。受け取る金額は運用の成果によって増減し、その責任は従業員自身が負います。
また「マッチング拠出」といって、従業員が掛金を上乗せできる場合があります。1年間の掛金の上限額は、マッチング拠出分と合わせて66万円、前述のDBなどの制度を併用している場合は33万円です。

厚生年金基金

厚生年金基金は、国の厚生年金の一部を基金が代行し、さらに独自のプラスアルファの給付を行う企業年金のひとつです。最近では、運用環境の悪化で国の代行部分を返上したり、解散したりする基金もあります。2014年以降は新規の設立ができません。

中小企業退職金共済(中退共)

中小企業退職金共済(中退共)は、独自の退職金制度を持つことができない中小企業が対象の制度です。企業が掛金を積み立て、従業員は上乗せすることができません。60歳以上で退職するなどの要件を満たせば、年金として受け取ることができます。その際は、退職した従業員が直接中退共本部に請求します。

特定退職金共済(特退共)

特定退職金共済(特退共)は、地域の各商工会議所など、国の承認で設立した特定退職金共済団体が運営するものです。前述の中小企業退職金共済と重複して加入することも可能ですが、複数の特定退職金共済制度への加入はできません。

企業年金にまつわる疑問を解消

企業年金にまつわる疑問を解消

企業年金は企業によっては導入されていなかったり、導入されている種類も様々であったりします。ここでは、普段関心を持つことが少ない企業年金について、疑問点を解消しておきましょう。

企業年金がない会社もある?

厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によれば、退職給付(一時金・年金)の制度がある企業は80%を超えています。そのうち、年金のみまたは年金と一時金の併用としている企業は約4分の1しかなく、企業年金制度がある企業は少数派といえます。特に企業の規模が小さくなるほど、企業年金制度を導入している割合は少なくなっています。

自分が企業年金に加入しているかどうかを確認するには?

在職中の人は、勤務先の退職金・企業年金の担当者に確認してみましょう。制度の詳細については年金規約で確認できます。
確定給付企業年金(DB)の場合、現時点の企業年金の原資は社内システムで確認できることがあります。
企業型確定拠出年金(DC)の場合は、運営管理機関のウエブサイトで確認できます。
中退共や特退共の場合は、それぞれの問い合わせ先に確認してください。

中途退職した場合、企業年金はどうなる?

確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金は、一時金での受け取りのほか、要件(勤続年数や退職時の年齢)を満たせば、年金として受給することができます。要件を満たさない場合は、企業年金連合会または個人型DC(iDeCo)などに移換することもできます。移換した場合は、その後の問い合わせ先について、必ず把握しておきましょう。
なお、企業型確定拠出年金(企業型DC)の場合は、60歳未満で退職するとiDeCoに移換します。

転職による退職の場合は、転職先に確定給付企業年金(DB)や企業型DCの制度があれば、そこに移換することもできます。
ただし確定給付企業年金(DB)の場合は、その会社に制度があり、かつ規約に「移換することができる」旨の規定が記載されている場合のみ移換が可能となるので、注意が必要です。
中退共・特退共の場合は、一時金のみの受け取りとなります。転職先に中退共の制度があれば、移換することができる場合があります。

企業年金はいつからもらえる?

企業年金はいつからもらえる?

「確定給付企業年金(DB)は60歳から」などのように、受け取る年齢を年金規約で定めていますので、確認してみてください。「確定給付企業年金(DB)は60歳から(加入期間が通算10年以上の場合)75歳までの間」に受給を開始します。

企業年金も繰上げ受給や繰下げ受給はできる?

確定給付企業年金(DB)は年金規約で繰下げ受給を定めることができますので、実際にどのようになっているかを確認してみましょう。ただし、繰上げ受給の制度はありません。

まとめ

企業年金とは退職金制度のひとつで、企業が積み立てた資金を運用して、従業員の退職時に年金として給付します。企業年金は働いている期間と受給する期間を合わせると、非常に長い付き合いになります。したがって、その間に転職などで働き方が変化したり、企業年金制度の変更や廃止にともなって、移換手続きを行うケースも出てきます。

また、企業型確定拠出年金(企業型DC)では運用商品の選択や運用環境によって、受け取れる年金額が変化します。企業年金に加入している人は、公的年金を補完する制度であることを改めて認識し、ご自身の制度に関心を持ちましょう。

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