就職・退職時の国民年金から厚生年金への切り替え方法を解説
就職や退職、転職など、働き方が変わるときには、国民年金と厚生年金の切り替えが伴う場合があります。どんな時に切り替えが必要で、どのような手続きを行うかなど、公的年金の手続きについて解説します。特に、国民年金への加入手続きを忘れたときのデメリットなども知っておきましょう。

目次
「働き方」で変わる 国民年金と厚生年金

公的年金制度には国民年金と厚生年金があります。それぞれのポイントを押さえておきましょう。
国民年金:自営業者や学生など
「基礎年金」とも呼ばれ、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人すべてが加入する年金です。国民年金の被保険者は、3種類に分けられます。自営業者や学生、無職の人などの「第1号被保険者」、会社員や公務員など厚生年金に加入している「第2号被保険者」、第2号被保険者に扶養されている配偶者である「第3号被保険者」です。
第1号被保険者の保険料は、月1万6,610円です(2021年度)。
国民年金から受け取れるものには、老後の生活を支える老齢基礎年金、一定の障がい状態になったときをサポートする障害基礎年金、被保険者が亡くなったときに生活を維持されていた遺族に支払われる遺族基礎年金があります。
厚生年金:民間企業の会社員や公務員など
民間企業に勤める会社員や公務員などが加入する年金です。厚生年金に加入している人は国民年金にも加入している形になり(「第2号被保険者」)、両方から年金を受け取ることができます。
厚生年金の保険料は、毎年4~6月に支払われる給与をベースに計算した「標準報酬月額」に厚生年金保険料率(18.3%、2020年9月〜)を掛けて算出します。保険料の半分を個人が負担し、毎月の給与から差し引かれます。残り半分は雇用主が負担します。
厚生年金から受け取れるものには、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金があり、いずれも基礎年金に上乗せして支給されます。
■国民年金と厚生年金の概要図

国民年金から厚生年金へ切り替える場合

国民年金と厚生年金の切り替えが必要なケースにはどのようなものがあるか、確認してみましょう。
まずは国民年金から厚生年金への切り換えが必要なケースには、次のようなものがあります。
・学生が就職をして会社員・公務員になった
・離職していた人が再就職をした
・自営業者が会社員・公務員になった
・130万円未満だった収入が130万円以上に増えた(企業規模によっては106万円)
国民年金から厚生年金の切り替えは勤務先が手続きしてくれる
国民年金だった人が厚生年金へ加入する場合の申請手続きなどは、就職先の会社が行ってくれます。入社が決まると、必要な書類を提出するように指示されますので、それに従いましょう。通常は、マイナンバーや年金手帳(基礎年金番号通知書)の提出などを求められます。
また、年金ではありませんが、国民健康保険については、就職をしたら原則14日以内に役所へ「国民健康保険の喪失手続き」を提出する必要があります。新たに加入した健康保険証または健康保険被保険者資格証明書、それまでの国民健康保険証、マイナンバーが確認できる書類などが必要です。休日でも手続き可能な日があったり、郵送でも可能な場合があったりするので、役所に電話で相談をしてみましょう。
厚生年金から国民年金へ切り替える場合

厚生年金から国民年金への切り換えが必要なケースには、次のようなものがあります。
・会社員・公務員が離職して自営業や無職になった
・会社員・公務員が転職をしたが1ヵ月以上間が空いた
・上記の会社員・公務員の被扶養配偶者
・130万円以上だった収入が130万円未満に減った(企業規模によっては106万円)
厚生年金から国民年金への変更手続きは、自分自身で行うものが多いので注意が必要です。
厚生年金から国民年金の場合は加入手続きを忘れずに!

厚生年金から国民年金へ変更になるケースでは、厚生年金の脱退手続きは元の職場が手続きをしてくれますが、国民年金への加入手続きは自分で行う必要があります。退職後14日以内に、居住地の役所か年金事務所での手続きが必要で、退職日がわかる証明書(離職票など)と年金手帳、本人確認書類を持参します。
国民健康保険への変更も自動では行われませんので、退職した日から14日以内に加入手続きが必要です。加入するには、健康保険資格喪失証明書を持参して窓口で手続きします。
会社員・公務員から自営業になった人の被扶養配偶者(第3号被保険者)も、同時に国民年金への加入が必要ですので、手続きを忘れないようにしましょう。例えば、夫の転職で次の職場が決まるまで1ヶ月以上間が開く場合は、被扶養配偶者も同じ手続きが必要になります。
国民年金への加入手続きを忘れた場合はどうなる?

国民年金から厚生年金については職場が行ってくれるので忘れることはありませんが、問題は、厚生年金から国民年金の場合です。国民年金への加入手続きをうっかり忘れていた場合、保険料の納付期限から2年以内に納めなければ「未納」となってしまいます。未納のままにしておくと、将来の老齢年金額が減ってしまうだけでなく、万が一のことが起きた時に、障害年金や遺族年金を受給できない可能性もあるので注意しましょう。また、未納が続いて受給資格期間の10年に達しないと、老齢年金を受給できない場合もあるので注意が必要です。
手続きを忘れていたことに気づいたら、すぐに居住地の役所や年金事務所の窓口で手続きをおこないましょう。このとき、未納期間の年金保険料は原則、一括納付を求められます。未納期間が長いとまとまった出費となるので注意してください。
ちなみに、失業や収入の減少により国民年金保険料が払えない場合は、保険料免除や納付猶予を受けることもできるので、窓口で相談するといいでしょう。ただし、過去の分はさかのぼって免除・猶予を受けることはできません。
まとめ
公的年金や健康保険などの社会保険の手続きは、誰かが手取り足取り教えてくれるわけではありません。本人や家族が意識をしていないと、ついつい忘れがちになります。こうした公的保険の知識は、「社会で生きる力」のひとつとして常に関心を持っていることが大切です。
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