異母兄弟へ遺産相続を徹底解説!相続額の割合や計算式、注意点とは
異母兄弟が遺産相続の対象となる場合、どのように遺産分割協議を進めるのでしょうか。この記事では、異母兄弟とは何かを定義したうえで、相続の割合から計算式までを具体的に解説します。また、異母兄弟と円滑に話し合いを進めるための注意点も参考にしてみてください。

そもそも異母兄弟(姉妹)とは?
異母兄弟(姉妹)とは、母親が異なる兄妹(姉妹)関係を示す言葉です。たとえば、父親が再婚し、前妻・後妻それぞれの間に子どもを持った場合、この子ども同士は異母兄弟となります。
また、父親に愛人がいて、妻との間に生まれた子ども以外に愛人との間にも子どもがいる場合も異母兄弟となります。このとき、子の両親が婚姻しているか否かは関係ありません。
父親も母親も同じ子ども同士を「全血兄弟姉妹」と呼ぶのに対し、異母兄弟のことを「半血兄弟姉妹」と呼ぶこともあります。ただし、これは母親が同じで父親が異なる異父兄弟姉妹にも用いられる言葉です。
異母兄弟(姉妹)も相続が認可される

まず、人が亡くなった際には、亡くなった人の遺産の相続人が誰であるかを調査する必要があります。その際の相続人調査において、はじめて異母兄弟の存在が判明するという事例も少なくありません。父親が亡くなった場合、異母兄弟に対しても遺産を相続する権利が法律上認められているため、異母兄弟にも遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。婚姻関係にない愛人との間に生まれた子どもについても、亡くなった父親が認知さえしていれば、異母兄弟として相続権が認められます。

「遺産分割協議」とは?遺産分割協議書の書き方や手続きの注意点を解説
このとき注意しておきたいのが、異母兄弟が相続できる遺産の割合です。
民法第900条第4項では、以下のように定められています。
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
【参考】e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」 詳しくはこちら
これが具体的にどのような意味を示しているのか正しく理解するために、いくつかの例をみていきましょう。
亡くなった父親の遺産を相続する場合
条件を以下のように設定します。
・父親と後妻の間に子どもが2人(A・B)いる
・父親と離婚した前妻の間に子どもが1人(C)いる
・父親が死亡、3,000万円の相続財産がある
このとき、各相続人が相続する遺産は、以下のような計算式で求めることができます。
【後妻(死亡時の妻)が相続する遺産】
3,000万円×1/2=1,500万円
【3人の子ども(A・B・C)各自が相続する遺産】
3,000万円×(1/2×1/3)=500万円
自身の兄弟姉妹の遺産を異母兄弟と相続する場合
亡くなった者に子どもや両親、祖父母がいない場合には亡くなった者の兄弟姉妹が相続人となり、異母兄弟にも相続権が発生しますが、親が死亡した場合の相続とは、相続人の相続分が違うので注意が必要です。このケースでは、以下のように条件を設定します。
・父親と後妻の間に子どもが2人(A・B)いる
・父親と離婚した前妻の間に子どもが1人(C)いる
・父親と後妻(死亡時の妻)はすでに死亡している
・父親と後妻の間に生まれた子ども「A」が死亡、3,000万円の相続財産がある
死亡したAの兄弟「B」と異母兄弟「C」のそれぞれが受け取る遺産は、次の計算式で求められます。
【兄弟「B」が相続する遺産】
3,000万円×2/3=2,000万円
【異母兄弟「C」が相続する遺産】
3,000万円×1/3=1,000万円
兄弟姉妹と異母兄弟で相続分が異なる理由は、上記のとおり民法第900条第4号の定め」があることによります。
また、相続順位とは、被相続人の遺産を相続できる優先順位のことです。相続順位は、以下のように法で定められています。なお、配偶者は常に相続人となるため(民法第890条)、以下では配偶者以外の相続順位について記載します。
・第1順位:死亡した人の子ども
・第2順位:死亡した人の直系尊属(父母/祖父母など)
・第3順位:死亡した人の兄弟姉妹
【参照元】国税庁公式サイト「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」 詳しくはこちら
兄弟姉妹と異母兄弟の相続分は、これらの者の「親が死亡した場合」では差が生じません。一方で、「兄弟姉妹が死亡した場合」では、異母兄弟が受け取れる相続分は、亡くなった者の両親を同じくする兄弟姉妹の半分になるのです。

遺産相続の基本・法定相続人の範囲と相続順位をわかりやすく解説
異母兄弟(姉妹)と遺産分割する際の注意点

遺産分割協議では、すべての相続人の合意が必要です。しかし、異母兄弟との話し合いでは、トラブルに至るケースも多く見られます。どのような点に配慮すれば、できるだけ円満に解決できるのでしょうか。
連絡方法を丁寧に
父親が亡くなったときなど、異母兄弟にも相続権がある場合には、連絡の仕方(方法)に気を配る必要があります。面識のある相手ならともかく、面識のない相続人を突然訪ねてしまうのだけは避けた方がいいでしょう。
事情を分かっていない相手が困惑するのはもちろん、突然訪ねるような非常識な行為に不信感を与えてしまえば、その後の話し合いに影響が出てくるかもしれません。
また、一方的に遺産分割協議書などの相続に関する書類を押し付けてしまうのも望ましくない方法です。
まずは手紙や電話で事情を説明すると、円満に話し合いを進めやすくなります。事情を説明する際は、父親が亡くなったことや葬儀に案内できなかった事情、今後の法要などについて丁寧に伝えるようにしましょう。
感情を抑えて冷静に対応する

異母兄弟と遺産分割に関する協議をする場合、お互い言いたいことが色々とあるかもしれませんが、感情的になって衝突してしまうことだけは避けたいものです。円満な解決を望むのであれば、気持ちを抑えて冷静に対応する必要があります。自分の意見を相手に押し付けるのではなく、相手の意見もしっかりと聞くように心掛けましょう。
手紙やメール、電話で話を進めていると、感情のぶつかり合いになり、協議が難航するといったケースも少なくありません。適切なタイミングで顔を合わせて話をしたほうが、円滑に話が進めやすくなるでしょう。
たとえば、相続財産のほとんどは、自分の兄弟と両親だけで築いてきたものであり、異母兄弟には相続を放棄してほしいというケースもあるでしょう。そうした際、感情に任せて一方的に「放棄してほしい」と伝えてしまっては、トラブルに発展しかねません。
遺産は法律に則って相続されるため、他の相続人に対して遺産を相続させないといったことはできないのです。
異母兄弟にも「父親に何もしてもらえなかった」といった言い分があるかもしれません。何らかの事情により、相手の相続放棄を望む場合であっても、相手が「少しぐらいは遺産が欲しい」と主張するのであれば、必要最低限の遺産を渡して円満解決をはかるという手もあります。
異母兄弟(姉妹)とトラブルになった場合は?

遺産分割協議は簡単ではありません。どんなに冷静に対処しても、話し合いが進まない場合もあります。そのようなときは「遺産分割調停」を申し立てる方法もあります。
遺産分割調停とは、調停委員が間に入って話し合いを進めてくれる裁判所での手続きのことです。調停委員は、法律に基づいたプロフェッショナルな視点で適切なアドバイスをしてくれます。
また、弁護士のような法律の専門家に相談するのも一つの手です。特に、お互いが感情的になってしまった場合には、弁護士に代理人となってもらった方が、相続人間で適切に話を進められ、問題が解決しやすくなるでしょう。

相続のきほんの「き」〜分割相続と知っておくべき分割の方法など〜
まとめ
亡くなった父親の遺産を相続する際、兄弟姉妹と異母兄弟の間で相続分の差はありません。一方、兄弟姉妹の相続財産を異母兄弟と分割する場合には、異母兄弟が受け取る相続分は兄弟姉妹の半分となります。
異母兄弟が関わる遺産相続協議は、トラブルに発展しがちです。専門家のサポートも視野に入れながら、お互いに感情的にならず、冷静に話し合いを進められるようにしましょう。
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