異母兄弟にも遺産相続が発生する!相続額の割合や計算式、注意点とは

異母兄弟にも遺産相続が発生し、遺産分割の割合が決まっています。この記事では、異母兄弟とは何かを定義したうえで、相続の割合や計算式を具体的に解説します。また、異母兄弟と円滑に話し合いを進めるための注意点も参考にしてみてください。

異母兄弟にも遺産相続が発生する!相続額の割合や計算式、注意点とは

異母兄弟(姉妹)にも相続権がある

異母兄弟(姉妹)にも相続権がある

人が亡くなった時、亡くなった人(以降、被相続人)の遺産を相続する権利のある人(以降、相続人)が誰であるかを調査する必要があります。
ほとんどの場合、配偶者や子供など家族が相続人になりますが、相続人の調査で家族や被相続人の友人も知らない異母兄弟(姉妹)が見つかるケースがあるからです。

もし、異母兄弟(姉妹)が被相続人から認知されている場合、異母兄弟(姉妹)にも相続権があるため、異母兄弟(姉妹)とも遺産を分けます。なお、この遺産の分け方を決める話し合いを「遺産分割協議」といい、その結果には相続人全員の合意が必要です。

そもそも異母兄弟(姉妹)とは?

異母兄弟(姉妹)とは、母親が異なる兄弟(姉妹)関係を示す言葉です。
例えば、父親が再婚し、前妻・後妻それぞれの間に子供を持った場合、この子供同士は異母兄弟(姉妹)となります。
また、父親に愛人がいて、妻との間に生まれた子供以外に愛人との間にも子供がいる場合も異母兄弟(姉妹)となります。
この時、子供の両親が婚姻しているか否かは関係ありません。

なお、片親が違う兄弟(姉妹)は「父親が同じで母親が別のケース(腹違い)」と「母親が同じで父親が別のケース」がありますが、この記事ではこれらをまとめて「異母兄弟(姉妹)」と呼ぶことにします。

相続権のある異母兄弟(姉妹)の認知方法

異母兄弟(姉妹)が相続権を得るには、被相続人の子供であると認知されていることが条件です。
認知の方法には届出による認知、遺言による認知、裁判による認知、の3つの方法があります。なお、母親との親子関係は出生時に判明されますので、相続に認知を必要とするのは父親のみです。

・届出による認知
父親が自治体に「認知届」を提出する方法です。この方法は父親が任意で行うため「任意認知」とも呼ばれます。子供が成人している場合は子供の承諾書が必要、胎児の場合は母親の承諾書と共に母親の本籍地に提出するなど、状況に応じて手続きが変わります。

・遺言による認知
遺言書に認知を認めることを書いておく方法です。認知する子供が客観的にも判断できるよう、出生日・住所・戸籍筆頭者などを明記します。相続人は、被相続人が亡くなり、遺言書が公開されて子供の存在を知ることになります。
なお、遺言書に書く行為は父親が任意で行うため「任意認知」に含まれる方法です。

・裁判による認知
子供や母親が父親に対して認知を求める方法です。まず、裁判所に認知調停を申し入れ、話し合いを行います。認知調停で合意することができない場合は裁判所に判断を委ねます。
裁判所で父親の子供であると認められると、父親の意思とは関係なく認知されたことになります。この方法は「強制認知」とも呼ばれます。
なお、子供からの認知請求は父親が亡くなった後3年間認められており、死後に認知が認められることを「死後認知」と呼びます。

これらの方法で子供が認知されると、父親の相続権が得られます。

異母兄弟(姉妹)の法定相続分

異母兄弟(姉妹)の法定相続分

異母兄弟(姉妹)にも相続権がありますが、相続できる遺産の割合に注意が必要です。
民法第900条第4項では、法定相続分について以下のように定められています。

子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

【参考】e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」 詳しくはこちら

この部分を簡単にまとめると、次のようになります。
・親や祖父母などが死亡した場合、異母兄弟(姉妹)間の法定相続分は同じ
・兄弟姉妹が死亡した場合は、母親(もしくは父親)が違う兄弟姉妹の法定相続分は、両親が同じの兄弟姉妹の半分

それぞれの具体的な例をみていきましょう。

父親の遺産を異母兄弟(姉妹)が相続する場合

条件を以下のように設定します。

・父親と後妻の間に子供が二人(A・B)いる
・父親と離婚した前妻の間に子供が一人(C)いる
・父親が死亡、3,000万円の相続財産がある

この場合の法定相続人は、後妻・子供A・子供B・子供Cの4人です。父親の遺産相続であるため、異母兄弟に法定相続分の差はありません。ですから、各相続人の法定相続分は、以下のような計算式で求めることができます。

【後妻(死亡時の妻)の法定相続分】
3,000万円×1/2=1,500万円
【3人の子供(A・B・C)の法定相続分】
3,000万円×(1/2×1/3)=500万円

兄弟(姉妹)の遺産を異母兄弟(姉妹)が相続する場合

続いて、兄弟姉妹の遺産を相続する場合を見ていきましょう。このケースでは、以下のように条件を設定します。

・父親と後妻の間に子供が二人(A・B)いる
・父親と離婚した前妻の間に子供が一人(C)いる
・父親と後妻(死亡時の妻)はすでに死亡している
・父親と後妻の間に生まれた子供「A」が死亡、3,000万円の相続財産がある
・Aに配偶者はいない

Aに両親や子供、配偶者がいないため、法定相続人は両親が同じ兄弟の「B」と、異母兄弟の「C」の二人です。異母兄弟「C」の法定相続分は「民法第900条第4項」より、両親が同じ兄弟「B」の二分の一です。「B」と「C」の法定相続分は、次のように求められます。

【兄弟「B」の法定相続分】
3,000万円×2/3=2,000万円

【異母兄弟「C」の法定相続分】
3,000万円×1/3=1,000万円

異母兄弟(姉妹)の相続で起こりがちなトラブル

異母兄弟(姉妹)の相続で起こりがちなトラブル

異母兄弟(姉妹)は、お互いに面識がない場合や相続が発生して初めて存在を知る場合などがあり、相続が複雑になる傾向があります。

被相続人が遺言書を作成していれば遺言書通りに分配しますが、法的に有効な遺言書がない場合は、相続人が遺産の分配方法を決めなければなりません。
なお、法定相続分は目安であり、実際の分配方法は遺産分割協議で相続人全員の合意を取る必要があります。場合によっては、初めて会う異母兄弟(姉妹)とも話し合いをしなければなりません。

異母兄弟(姉妹)との相続で起こりやすいトラブルを確認しておきましょう。

異母兄弟(姉妹)の連絡先が分からない

異母兄弟(姉妹)の存在を相続まで知らなかった、もしくは存在を知っていても現在の連絡先が分からないケースです。この場合、遺産分割協議に参加してもらうために、連絡先を調べなければなりません。

もし、知人や親戚などが異母兄弟(姉妹)の連絡先を知っていれば紹介してもらうことができるかもしれませんが、誰も知らない場合や音信不通の場合は被相続人の戸籍から順を追って調べていくことになります。異母兄弟(姉妹)の連絡先を調べる手順の概略は、次のようになります。

1.被相続人の全ての戸籍を入手
2.被相続人の戸籍から異母兄弟(姉妹)の本籍確認
3.異母兄弟(姉妹)の本籍の自治体で戸籍の付票を入手
4.異母兄弟(姉妹)の戸籍の付票から現在の住所を調べる

被相続人が引越しが多い人であったり、異母兄弟(姉妹)が複数人いる場合は、多数の自治体に書類作成の依頼をすることになります。このような作業が苦手な人は行政書士や税理士、司法書士などの専門家に依頼することもできます。

異母兄弟(姉妹)と相続割合で揉める

「異母兄弟(姉妹)の相続で起こりがちなトラブル」の章でもお伝えした通り、法定相続分は遺産分配の目安です。
遺言書がない場合は、各相続人の相続分は話し合いで決めますが、面識のなかった相手からの相続では、より多くの遺産を手に入れようとするケースもあります。異母兄弟(姉妹)が片親で経済的に辛い思いをした場合などは「せめて遺産は多く受取りたい」と主張するかも知れません。

一方、両親が同じ兄弟姉妹は、異母兄弟(姉妹)が現れたことにより想定していた相続分が減ってしまうことに困惑する人もいるでしょう。

異母兄弟(姉妹)の相続のトラブルを防ぐ方法

異母兄弟(姉妹)の相続のトラブルを防ぐ方法

異母兄弟(姉妹)との相続トラブルに何か対策はあるのでしょうか。ここでは、相続問題での対立をできるだけ回避する方法を紹介します。

法定相続人を特定しておく

異母兄弟(姉妹)はセンシティブな問題でもありますので、家族内で話題にあげにくいかもしれません。自分自身の死を考えたくない両親と相続の話し合いをするのは、難しいと感じる人もいるでしょう。

ただ、将来両親が亡くなった時に異母兄弟(姉妹)の存在確認をしたり、連絡先を調べたりするのは膨大な手間がかかります。親が亡くなり心理的にも辛い時に調査をするのは、強いストレスを感じるかもしれません。滞りなく相続手続きをするために、早めに異母兄弟(姉妹)の存在を把握しておく方が確実かも知れません。

事前に連絡を取っておいて関係性を作る

可能であれば、異母兄弟(姉妹)と親が元気なうちから関係作りをしておくのも一案です。異母兄弟(姉妹)同士の関係性が保たれていれば、親に何かあった時に連絡しやすく、安心でしょう。
また、相続時にお互いに思いやることで、滞りなく手続きを進められる可能性もあります。

遺言書を作成しておく

遺言書があるケースでは、遺言書に従って遺産を分配するため、比較的争いやトラブルが少なく遺産を分割することができます。
ただし、法的に有効な遺言書を作り、相続人の遺留分を侵害しないことが重要です。
遺留分は、相続人に最低限保障される遺産取得分です。遺留分は遺言でも奪うことができない権利で、保障額は各相続人の法定相続分の二分の一と決められています。

もし、作成した遺言書が法的に無効であったり、誰かの遺留分を侵害している場合は、遺言書の指定通りに遺産分割できない可能性があります。

弁護士などの専門家に相続のサポートを依頼する

遺産分割協議の際、当事者だけでは感情的になってしまい協議が難航することがあります。この時、第三者が間に入ることで冷静に話し合いができる場合があります。

また、両親が生前に異母兄弟(姉妹)がいると分かっているのであれば、プロのアドバイスを受けながら時間をかけて対策を取ることもできます。

確実に渡したい資金は生命保険を利用する方法も

もし、確実に渡したい資金があれば生命保険を利用するのも1つの方法です。
生命保険は受取人の固有の資産のため、遺産分割対象になりません。資金を渡したい相手を受取人として死亡保険を契約すると、自分自身の死後、保険金が支払われます。

まとめ

亡くなった父親の遺産を相続する際、両親が同じ兄弟姉妹と異母兄弟(姉妹)の間で相続分の差はありません。ただし、異母兄弟(姉妹)が父親から認知されていることが条件です。認知に父親の協力が得られない場合は裁判で争うことになります。

異母兄弟(姉妹)が関わる遺産相続協議は、お互い面識がないこともありトラブルに発展しがちです。専門家のサポートも視野に入れながら、お互いに感情的にならず、スムーズに話し合いを進められるようにしましょう。

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