【FP解説】つみたてNISAは夫婦で倍に!iDeCoも活用して備えよう

NISAやiDeCoといった資産運用を夫婦でやる場合、メリットやおすすめの活用方法があります。この記事では、つみたてNISAの基本から投資と貯蓄に回すお金の配分、夫婦でのNISAとiDeCoの使い分けまでを解説します。将来の資産形成や老後の資金の準備に役立ててください。

【FP解説】つみたてNISAは夫婦で倍に!iDeCoも活用して備えよう

夫婦でやればメリット2倍!つみたてNISAの基本

夫婦でやればメリット2倍!つみたてNISAの基本

最近ではNISAについても周知されてきていますが、改めて「つみたてNISA」の基本を確認しておきましょう。

つみたてNISAとは?

「つみたてNISA」はNISA、すなわち少額投資非課税制度の1つで、積立投資に対する税制優遇制度です。年間の積立額が40万円以下で積立期間は最長20年間、投資額最大800万円までの運用益が非課税となります。

また、つみたてNISAで購入できるのは、金融庁があらかじめ選定している長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られているのもポイントです。具体的には比較的リスクの低い商品や、信託契約期間が無期限ないし20年以上等、長期で運用する事を考えた商品が多く見受けられます。

また、新NISAの登場によって以下の事項が決まっているので、あわせて確認しておきましょう。

・2023年末までに投資した分は投資した年から最長20年間は非課税で運用可
・2024年以降の新規投資はできない(新NISAの「つみたて投資枠」を利用する)

出典 

2024年からは新NISAが始まる

令和5年の税制改正に伴い、2024年1月1日から新NISAがスタートします。新NISAでは「一般NISA」と「つみたてNISA」が一体化し、非課税保有期間が無期限となるほか、生涯非課税限度額も大きく引き上げられています。

【現行のNISA制度と新NISA制度の違い】

夫婦でやればメリット2倍!つみたてNISAの基本

夫婦で一人1口座開設するメリット

ここでは、夫婦で一人一口座開設するメリットについて紹介します。

非課税枠が2倍になる

夫婦で二人でつみたてNISAを活用する事で、家庭のつみたてNISAの非課税枠が2倍になります。

一人 二人
年間投資上限額 40万円 80万円
非課税保有期間 20年間 20年間
合計の最大利用可能額 800万円 1,600万円

一人で利用する場合と比べ、二人であればより多くの非課税枠を活用できます。また、つみたてNISAは投資で得た利益に対して税金が課されない事も大きな特徴でしょう。

例えば、1,600万円の投資に対して400万円の利益が出たと仮定した際、本来であれば利益に対して約81万円(400万円×20.315%)の税金が課税されます。しかし、つみたてNISAであれば400万円に対して税金が課されないため、手元に多くのお金を残す事が可能です。

このように、夫婦でつみたてNISAを活用するメリットは大きいといえます。

目的に合わせて運用商品を選べる

夫婦でつみたてNISAを活用するメリットとして、目的に合わせて運用商品を選べる点が挙げられます。例えば、次のような使い分けが挙げられるでしょう。

・夫:マイホーム購入資金の積立につみたてNISAを活用する
・妻:子供の教育費の積立につみたてNISAを活用する

出典 

つみたてNISAは非課税期間が20年ある事から、短期的ではなく中長期的な目的に向けて資金の積み立てをするとよいでしょう。また、つみたてNISAではいつでも投資商品を売却できるため、万が一の際でも安心です。

口座も分散されてリスクヘッジ

夫婦でそれぞれつみたてNISAの口座を開設する事で、リスクヘッジに役立つでしょう。投資の基本に「長期・分散・積立」といった三原則がありますが、夫婦それぞれが口座を持てば「分散投資」が可能になります。

1つの金融商品だけに資産を投じてしまうと、万が一その商品が値下がりした際に生じた損失を補う事ができません。しかし、夫婦で投資対象を分ける事でこうしたリスクに備えられます。


また、夫の口座では安定を重視したインデックスファンド、妻の口座では少しアクティブファンドにもチャレンジしてみる等投資戦略を分けてもよいでしょう。

NISAやiDeCo、投資と貯蓄のバランスはどう振り分ける?

NISAやiDeCo、投資と貯蓄のバランスはどう振り分ける?

NISAと並んで資産形成でiDeCoを検討する人も少なくありません。ここではiDeCoの概要とNISAとの使い分けについて解説します。

iDeCoとは?

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、NISA同様に制度を活用して投資をし、税制優遇が受けられる年金制度です。20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者であれば加入できます。

従来は企業型DCに加入している会社員の場合、規約でiDeCoに加入できると定められている場合でなければ加入が認められていませんでした。しかし、2022年10月の法改正によって、規約に定めがなくても原則としてiDeCoへ加入できる事になったのです。

ただし、企業型DCの加入者掛金の拠出(マッチング拠出)を選択している、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計が拠出限度額を超えてしまう場合は加入できない点に注意が必要です。

なお、iDeCoは老後資金の準備として考えられている事から、基本的には60歳以降でなければ資金を引き出せません。まずはNISAを優先して考え、残った余裕資金をiDeCoに回すのも1つの手でしょう。また、NISAはほかのNISAと併用できませんが、NISAとiDeCoは併用可能です。

NISAとiDeCoは将来への備え

NISAもiDeCoも税制優遇があり、魅力的な制度である事から活用を考える方も多いかも知れません。しかし、いずれの制度も投資の一種であり、利用にあたっては投資と貯蓄のバランスを考える事が大切です。

【投資と貯蓄に対する考え方】

投資:短期間では元本を下回る恐れが高く、長期的な目線で考える必要がある
貯蓄:運用というより近い将来に必要となる資金や何かあった際の備えとして考える

出典 

このような性質の違いを踏まえたうえで、半年ほどの生活費と10年以内に必要となる可能性が高いお金はどの程度なのかを把握する事から始めてみましょう。そのうえで、当面使う予定がないお金をNISAやiDeCoに回す事をおすすめします。

なお、先にも述べましたが、iDeCoは60歳になるまで原則として資金を引き出す事ができません。そのため、まずはNISAから活用し、それでも余裕があればiDeCoを検討するとよいでしょう。

夫婦でNISAとiDeCoを活用しよう

夫婦でNISAとiDeCoを活用しよう

NISAやiDeCoは夫婦でそれぞれ利用できるほか、両制度は併用可能なため、できれば最大限に活用して資産形成を行いたいと考える方も多いでしょう。

ここでは、夫婦で活用する際の例をパターン別に3つ紹介します。

・夫婦の片方が会社員・もう片方がパートタイマーの場合
・夫婦の片方が会社員・もう片方が専業主婦の場合
・夫も妻も会社員の場合

出典 

夫婦の片方が会社員・もう片方がパートタイマーの場合

例えば、夫が会社員で妻がパートタイマーで子供がいる場合、まず夫が一般NISAやつみたてNISAで教育費の準備を行います。そして妻が所得税の掛からない103万円未満で働いている場合、iDeCoにおける国民年金の第3号被保険者の上限である2万3,000円ほど毎月の収入を上げて、年間130万円未満にしましょう。こうする事で所得税も掛からずに妻の年金を増やせます。この時点でまだ資金に余裕があるようであれば、夫婦でつみたてNSIAとiDeCoを併用するのも1つの手です。

夫婦の片方が会社員・もう片方が専業主婦の場合

例えば、夫が会社員で妻が専業主婦で子供がいる場合、まず夫が一般NISAやつみたてNISAを活用して教育費等の準備を行いましょう。また、妻が専業主婦の場合にはiDeCoに加入するよりも、夫婦でNISA制度を活用する事をおすすめします。収入が夫頼りの状況で60歳まで引き出せないiDeCoに投資するのは、少々リスクが高いでしょう。

夫も妻も会社員の場合

共働き夫婦の場合、それぞれの会社でiDeCoに加入できるか確認のうえ、それぞれがiDeCoで老後資金の準備を行うといいでしょう。さらにつみたてNISAで、教育費や10年以上先に使う目的のために長期運用をしておくと安心です。

こうすれば夫婦ともにiDeCoの所得控除が活用できるだけでなく、つみたてNISAで得た利益は非課税となる事から、効率的な資産形成が可能となるでしょう。

夫婦でNISAをやるうえでの注意点

夫婦でNISAをやるうえでの注意点

ここでは夫婦でNISAをやるうえでの注意点を2つ解説します。

夫(妻)からの元手資金が110万円を超えると贈与税がかかる

夫(妻)からの元手資金が110万円を超えた場合、贈与税がかかる点に注意が必要です。また、贈与は判断基準が難しい事もあり、その時点では問題として扱われないケースも少なくありません。しかし、相続時に発覚するケースが多いほか、きちんと贈与税を申告していなかった場合には以下のペナルティが課される恐れがあります。

・延滞税
・無申告加算税
・重加算税

出典 

中でも、「重加算税」は悪質な無申告と判断された場合に適用されるほか、本来支払うべき贈与税に対して40%もの税金が課されてしまいます。経済的にも大きな負担を負う事から、夫(妻)からの元手資金で110万円を超えないように気をつけましょう。

使わなかった非課税枠を後から使う事はできないので注意

現行のつみたてNISAでは、使わなかった非課税枠を後から使う事はできないので注意しましょう。例えば、ある年に30万円しか使わなかった場合、使わなかった10万円を翌年に繰り越して本来年間40万円の非課税枠を50万円とする事はできません。また、途中で一部の資金を引き出した場合も、その枠を再度使う事はできなくなります。

とはいえ、2024年からスタートする新NISAでは投資枠の再利用が認められる事になりました。そのため、現行のつみたてNISAよりも使い勝手がよくなるでしょう。とはいえ、NISAはあくまで投資の1つです。どの程度の資産を運用に回すのか事前にきちんと考えておく事が大切です。

まとめ

まとめ

つみたてNISAやiDeCoは、夫婦で資産形成をするうえでのメリットが大きいものです。ただ、両者の優先順位は、家族環境や家計の状況に応じて変わってきます。貯金を全額投資に回すのではなく、目的に応じて費用の分配を考えたり、商品の選び方を変えたり工夫しましょう。子供が小さい、あるいは住宅ローンの繰り上げ返済を考えている場合等、積立をすべてiDeCoにしてしまうと、まとまった支出が必要な時にお金がないという状況に陥る恐れがあるでしょう。

まずは60歳になるまでにどの程度のお金が必要かを考えて、つみたてNISAを優先するか、iDeCoとの併用を行っていくかを判断するといいでしょう。また、NISA制度は2024年から新NISAがスタートし、従来の制度よりも使い勝手がよくなります。今現在、NISAを利用していない方はぜひ、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

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