【FP解説】つみたてNISAは夫婦で倍に!でも、iDeCoや貯蓄との配分はどうする?
NISAやiDeCoといった資産運用には関心があるものの、自分にはどちらがあっているのか、どちらを選べばよいのか疑問だという人もいるでしょう。この記事では、つみたてNISAの基本から投資と貯蓄に回すお金の配分、夫婦でのNISAとiDeCoの使い分けまでを解説します。

夫婦でやればメリット2倍!つみたてNISAの基本

最近ではNISAについても周知されてきていますが、改めて「つみたてNISA」の基本を確認しておきましょう。
つみたてNISAとは?
「つみたてNISA」はNISA、すなわち少額投資非課税制度のひとつで、積立投資に対する税制優遇制度です。年間の積立額が40万円以下で積立期間は最長20年間、投資額最大800万円までの運用益が非課税となります。
現在の制度では2018年から2037年までに開設されたつみたてNISA口座が対象となりますが、2020年(令和2年)の税制改正でつみたてNISAの対象は5年間延長され、2042年までに開設された口座となりました。
つみたてNISAを通して購入できるのは、金融庁があらかじめ選定している長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託で、比較的リスクの低い商品や、信託契約期間が無期限ないし20年以上など、長期で運用することを考えた商品です。

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夫婦なら1人1口座開設できるのでメリット大!
つみたてNISAは他のNISAと併用できません。ただし、NISAで利用する口座は1人1口座の開設が可能ですので、夫婦の場合、それぞれつみたてNISA口座を開設できます。夫婦で考えると40万円の2人分で年間80万円まで、月額では合計で6万6,666円が積立できるわけです。
年間で80万円の積立となれば資産形成としてのメリットは大きいといえるでしょう。特に結婚されたばかりの夫婦や、子供が生まれて教育費の準備を考える夫婦には活用をおすすめしたい制度です。
使わなかった非課税枠を後から使うことはできないので注意
ただし、つみたてNISAの非課税枠である40万円については、ある年の満額を使わなかった場合、その使わなかった非課税枠を後から使うことはできません。加えて、途中で引き出した場合も、その枠を再度使うことはできなくなります。これらの点には注意が必要です。
もっとも、毎月積立できる金額が少なく、非課税枠を使いきれない場合でもつみたてNISAを利用することは検討するべきでしょう。
NISAやiDeCo、投資と貯蓄のバランスはどう振り分ける?

NISAと並んで資産形成でiDeCoを検討される人も増えてきています。
iDeCoとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、NISA同様に制度を活用して投資をし、税制優遇制度が受けられる制度です。現在は自営業者や専業主婦、公務員、一部の会社員などが加入できますが、2022年10月からは企業型確定拠出年金の加入者でもiDeCoに加入することが容易になります。
iDeCoは老後資金の準備として考えられていますので、基本的には60歳以降でなければ引き出せません。ただ、掛け金の全額が所得税控除の対象で、受け取るときにも税制優遇が受けられるため、活用したい人もいるでしょう。
また、NISAは他のNISAと併用できませんが、NISAとiDeCoは併用も可能です。

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NISAとiDeCoは将来への備え
NISAやiDeCoは一種の投資です。そこで、利用にあたっては、こうした投資と貯蓄とのバランスを考えておかねばなりません。
NISAやiDeCoは税制優遇があるので活用したい制度ですが、投資は短期間では元本を下回ることもあるため、長期で見ておく必要があります。他方、貯蓄は運用というよりも近い将来に使うための資金や何かあったときの備えとして捉えるのが望ましいものです。
半年分くらいの生活費と10年以内に使うお金を考えて、当面使わないお金は預貯金や定期預金などの元本を割り込まない、少しでも金利のよい商品に預けておくのもよいでしょう。
1月~半年程度までで使う短期資金と10年スパンでの中期資金を分け、ライフプランから逆算して投資と貯蓄に振り分ける資金を決めることが大事です。
夫婦で考えるつみたてNISAとiDeCoの使い分け

NISAやiDeCoは夫婦でそれぞれ利用でき、併用も可能です。できれば最大限に活用して資産形成を行いたいところでしょう。
そこで、夫婦が活用できる例を以下に示します。
一般NISA・つみたてNISA・iDeCoのおさらい
一般NISAは1年間の投資額が最大120万円に対して、運用益や配当金などが非課税となり5年間の非課税期間があります。5年後にロールオーバーという制度を使うことで、さらに5年間の非課税期間を継続することが可能となります。
つみたてNISAは1年間の投資額が最大40万円までとなっており、20年間の積立ができます。
iDeCoは5,000円から積立を行うことができ、加入している年金制度によって上限が設けられています。掛金は全額所得税控除の対象で、運用期間中は非課税で運用可能です。受け取りは60歳以降から可能で、一括もしくは年金として受け取れます。
■一般NISA・つみたてNISA・iDeCoのまとめ
非課税枠 | 期間 | 特徴 | |
---|---|---|---|
一般NISA | 年間120万円 | 5年(最大10年) | 個別株や投資信託などが対象で選択肢が広い |
つみたてNISA | 年間40万円 | 20年 | あらかじめ20年以上の運用期間でコストの低い商品などが選定されている |
iDeCo | 掛け金全額が所得控除の対象 受け取り時に退職所得控除若しくは、公的年金等の雑所得として課税 | 20歳から60歳まで 最低10年の運用期間が必要 | 60歳以降にならないと引き出すことが基本的にはできない |
夫婦が会社員・パートタイマーの場合
NISAやiDeCoは個々人で利用できるため、夫婦の場合2人ともに制度を活用できます。
夫婦2人でつみたてNISAを開設してもいいのですが、目的別に利用する制度を分けることも考えられます。たとえば老後資金を確実に貯めるためにiDeCoを活用しながら、つみたてNISAを行うのもよいでしょう。
NISAで教育資金の準備、iDeCoで年金額の増額を目指す
夫が会社員、妻がパートタイマーで子どもがいる場合、まず夫が一般のNISAやつみたてNISAで教育費の準備を行います。そして妻が所得税の掛からない103万円未満で働いているなら、iDeCoにおける国民年金の第3号被保険者の上限である2万3,000円ほど毎月の収入を上げて、年間130万円未満にします。こうすることで所得税も掛からずに妻の年金を増やせるのです。また、ゆとりがあるようでしたら、夫婦でつみたてNSIAとiDeCoを併用することも検討しましょう。
夫婦が共働きの場合
共働き夫婦の場合、それぞれの会社でiDeCoに加入できるか確認の上、それぞれがiDeCoで老後資金の準備を行うといいでしょう。さらにつみたてNISAで、教育費や10年以上先に使う目的のために長期運用もしておきます。
こうすれば夫婦ともにiDeCoの所得控除が活用でき、つみたてNISAで得た利益には課税もされないので、効率的な資産形成が可能となるでしょう。
まとめ

つみたてNISAやiDeCoは、資産形成をする上でのメリットが大きいものです。ただ、両者の優先順位は、家族環境や家計の状況に応じて変わってきます。
子どもが小さい、あるいは住宅ローンの繰り上げ返済を考えている場合など、積立をすべてiDeCoにしてしまうと、まとまった支出が必要な時にお金がないという状況に陥るおそれもあります。
まずは60歳になるまでにどの程度のお金が必要かを考えて、つみたてNISAを優先するか、iDeCoとの併用を行っていくかを判断するといいでしょう。

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