つみたて(積立)NISAは解約できる?デメリットやほかの解決方法も解説

「家計が苦しくなった」「商品の運用成績が振るわない」等の理由で、つみたてNISAを途中で解約する人は少なくありません。 つみたてNISAを解約する時は、デメリットを踏まえて慎重に検討することが大切です。 本記事では、解約だけではなく積立の停止や減額等より効果的なケースまで分かりやすく徹底解説します。

つみたて(積立)NISAは解約できる?デメリットやほかの解決方法も解説

つみたてNISAはいつでも解約できる

つみたてNISAは、所定の基準を満たした投資信託へ投資ができ、得られた分配金や売却益(譲渡益)が最長20年間にわたって非課税となる制度です。長期間にわたる積立・分散投資を支援するための非課税制度ではあるものの、好きなタイミングで無料で解約することもできます。

つみたてNISAの解約方法には「保有する資産を売却して現金化する」「つみたてNISAの口座を廃止する」の主に2種類があります。

運用中の商品をすべて売却して現金化する場合、金融機関につみたてNISAの口座は残り続けます。将来的に積立投資を再開する可能性があるのなら、商品の売却のみでとどめておいた方がよいかもしれません。

つみたてNISAの口座を廃止したいのであれば、金融機関で所定の手続きが必要です。口座を廃止する時は、事前に保有する商品を売却するか課税口座(特定口座・一般口座)に払い出しをする必要があります。
また、口座を廃止した場合、商品の積立を再開するためには金融機関で再開設の手続きが必要となります。

つみたてNISAを解約するデメリット

つみたてNISAを解約するデメリット

つみたてNISAを解約すると、保有資産を現金化して毎月の積立を停止できますが、以下のようなデメリットもあります。

・分散投資の効果が少なくなる
・複利効果が少なくなる
・使用した非課税枠は再利用できない

分散投資の効果が少なくなる

つみたてNISAは、投資初心者に向けた資産形成方法の1つで長期間にわたる積立投資を前提とした制度です。積立投資とは、あらかじめ決まった金額を、毎月や毎年等決まったタイミングで続けて投資することです。

つみたてNISAの対象商品である投資信託は金融商品であるため、時間の経過とともに価格が変動します。まとまった金額を一度に投資すると、価格が高い時に購入してしまう「高値づかみ」をしてしまうかもしれません。

その点、積立投資であれば決まったタイミングで自動的に買い付ける仕組みになっています。商品の価格が高い時は少なく、安い時は多く購入するため、高値づかみを避けやすくなります。

ここで、投資信託を毎月10,000円ずつ6回購入した時の例をご覧ください。

つみたてNISAを解約するデメリット

上記の例では、10,000円ずつを6回に分けて購入することで、最終的な購入口数は61,034口となりました。

1万口あたりの基準価額が10,000円の時に60,000円を一括で投資すると、購入口数は6万口となります。もし、基準価額が12,000円の時に60,000円をまとめて投資してしまうと、50,000口しか購入できません。

一括で投資するのではなく、複数回に分けて一定金額を購入した方が、より多くの口数に投資できる可能性があるだけでなく、高値づかみも避けやすいのです。

また、つみたてNISAで投資できる投資信託という商品は、国内外の株式や債券等値動きが異なる資産に分散投資しやすいです。投資信託を長期運用すればするほど、時間や資産が分散されることによるリスクの軽減効果が高まりやすくなります。

しかし、つみたてNISAを途中で解約して積立を中断してしまうと、分散投資によるリスクの軽減効果が低くなってしまい、損失が発生しやすくなります。

複利効果が少なくなる

つみたてNISAの投資先の株式等で利益が発生した時に得られる配当金は、再投資に回されます。運用で得られた利益が投資元本に加えられて運用されることで、利子が利子を生み資産が雪だるま式に膨らむ「複利効果」を得られます。

例えば、毎月2万円を積み立てるとしましょう。想定利回りは年3%とする場合、積立期間が5年と20年では、運用成果に以下の違いが生じます。

・運用期間10年:279.5万円(投資元本240万円・運用収益39.5万円)
・運用期間20年:656.6万円(投資元本480万円・運用収益176.6万円)
※本シミュレーションはあくまで年率5%で毎年運用できたと仮定した時のものであり 将来の運用成果を保証するものではありません
※本シミュレーションでは、運用時や売却時の手数料は考慮していません

投資元本が2倍に増えているのに対し、運用収益は約4.5倍に増えました。
積立期間が長いほど複利効果が働きやすくなり、高いリターンが期待できます。しかし、積立を途中で止めてしまうと、複利効果の恩恵を受けにくくなってしまいます。

使用した非課税枠は再利用できない

つみたてNISAは、年間40万円までの新規投資によって発生した利益が最長20年にわたって非課税となる制度です。非課税で投資できる金額の上限は、最大で800万円です。
つみたてNISAの口座で保有している商品を売却しても、非課税投資枠は復活しません。

例えば、すでに20万円の非課税枠を利用していたとしましょう。口座内の残りの非課税枠は20万円です。10万円分の商品を売却しても、非課税投資枠の残りは30万円には増えず、20万円のままとなります。

つみたてNISAを解約する前に考えたいこと

つみたてNISAを解約する前に考えたいこと

つみたてNISAを途中で解約すると、分散投資によるリスクの軽減効果や複利効果の恩恵が得られにくくなってしまいます。また、解約をしてもすでに利用した非課税投資枠は再利用できません。
そのため、本当につみたてNISAを解約すべきかどうかをよく考えることが大切です。

例えば「運用中の商品で損失が発生している」という理由で解約をしたいのであれば、そのまま運用を続けた方がよいかもしれません。

損失が発生していると、さらに拡大してしまわないか不安を感じるものです。しかし、積立期間が長くなることで分散投資の効果が働きやすくなり、将来的に利益が生じる可能性があります。

急な資金が必要になった時は、つみたてNISAを解約するのではなく、預貯金をはじめとしたほかの方法で工面できないか検討してはいかがでしょうか。

家計が苦しいという事情であれば、つみたてNISAを解約するよりも、通信費や水道光熱費、保険料等の支出を削減した方が効果的かもしれません。
つみたてNISAは運用期間が長ければ長いほどメリットを得られやすい制度であるため、解約を避けて運用を続ける方法がないかよく検討してみましょう。

つみたてNISAを解約する以外の方法

つみたてNISAを解約する以外の方法

つみたてNISAを解約するほかにも、以下の方法で状況が改善できる可能性があります。

・積立額を減らす
・積立商品を変更する
・積立をストップする
・積立資金の一部を現金化する
・金融機関(口座)を変更する

1つずつみていきましょう。

積立額を減らす

「転職をして世帯収入が減った」「子供が成長して教育費が増えた」等の理由で家計が苦しくなった時は、月々の積立額を減らすのも1つの方法です。

例えば、毎月33,000円を積み立てているのであれば、 積立額を5,000円や10,000円等に減らすことでつみたてNISAを解約せずに済むかもしれません。

金融機関によっては、100円や1,000円等の少額から商品を積み立てられます。家計に余裕がない時は、積立額を減らしてつみたてNISAを継続できないかを検討するとよいでしょう。

積立商品を変更する

つみたてNISAの非課税投資枠は年間40万円が上限ですが、積み立てる銘柄の変更に制限はありません。積み立てている商品の運用成績が振るわない場合は、商品を変更する方法があります。
ひと口に投資信託といっても、投資対象や期待できるリターン等は商品によって異なります。商品を変更することで、高いリターンを得られるかもしれません。

また、変更手続き後もこれまで積み立てた商品は引き続き非課税で運用されます。そのため、運用成績が向上するまで引き続き保有し、タイミングを見計らって売却することも可能です。

積立をストップする

収入の減少や支出の増加によって資金の捻出が難しくなった時は、積立を一時的に停止する選択肢もあります。

新規積立を停止したとしても、2023年末までにつみたてNISAの口座で買い付けた商品は、2042年末まで最長20年にわたって非課税で運用できます。非課税保有期間中であれば、商品を売却して利益を得たとしても税金はかかりません。

また、家計に余裕ができたタイミングで積立を再開することも可能です。将来的につみたてNISAを再開する可能性があるのなら、新規の積立を停止するとよいでしょう。

積立資金の一部を現金化する

子供の進学資金やマイホームの購入資金等が必要になった時、つみたてNISAの口座にある商品の一部を売却する方法があります。必要な分だけを現金化することで、残高は引き続き非課税で運用できます。

例えば、つみたてNISAの口座に100万円分の資産があるとしましょう。必要資金が50万円である場合は、保有資産のうち50万円分を現金化することで、残りの50万円は引き続き運用できます。

ただし、つみたてNISAを途中で売却しても非課税で投資できる枠は復活しません。また、商品や金融機関によっては売却手数料がかかることもあるため、事前によく確認したうえで手続きをしましょう。

金融機関(口座)を変更する

「現在の金融機関が取り扱う商品では利益が見込めそうにない」と考えているのであれば、つみたてNISAの口座を開設する金融機関を変更する方法があります。

NISAの口座を開く金融機関は、1年に1回であれば変更が可能です。金融機関を変更する時は、変更した年の前年10月1日〜当年の9月30日までに手続きをする必要があります。

また、変更前の金融機関で運用していた商品は、引き続き同じ金融機関の口座で非課税保有期間が終了するまで保有できます。損失が発生している時は、利益が出るまで待ってから売却することも可能です。

ただし、 つみたてNISAの非課税枠をすでに利用している場合、金融機関を変更できるのは 翌年からとなります。

つみたてNISAの口座を解約する方法

つみたてNISAの口座を解約する方法

つみたてNISAの口座を廃止する場合は、 金融機関に「非課税口座廃止届出書」を提出します。また、運転免許証やパスポート等の「本人確認書類」の提示や写しの提出を求められるのが一般的です。

口座の廃止手続きは、インターネットの会員専用ページやアプリ、金融機関の窓口、コールセンター等で受け付けられています。金融機関によって受付の窓口や必要書類等が異なるため、事前に手順等を確認をしておきましょう。

つみたてNISAの解約手続きが完了すると、金融機関から「解約通知書(非課税口座廃止通知書)」が送られてきます。

非課税口座廃止通知書は、つみたてNISAを再開する時に必要となることがあります。将来的につみたてNISAを再開する可能性がある場合は、非課税口座廃止通知を手元に保管しておきましょう。

保有商品を現金化する方法

つみたてNISAの口座で保有する資産の一部または全部を現金化したい時は、インターネットの会員専用ページやアプリ、店舗の窓口等で売却の手続きをします。手続きをすると、4~5営業日で現金化されます。

ただし、資産を売却するだけでは引き続き同じ商品が積み立てられてしまうため、積立を停止したいのであれば手続きが別途必要です。

積立をストップする方法

ネット証券はもちろんほとんどの金融機関は、インターネットの会員専用ページやアプリ、店舗の窓口等で積立を停止したり、積立額を減らしたりすることができます。

積立を停止しても、売却しないかぎり保有する資産は引き続き口座で保有されます。保有資産を現金化する時は、商品の売却手続きが必要です。

つみたてNISAの口座を解約するタイミングの注意点

つみたてNISAの口座を解約するタイミングの注意点

つみたてNISAは、商品から損失が発生していない時に解約することをおすすめします。損失がある時に解約すると「売却益にかかる税金が非課税となる」というつみたてNISAのメリットが生かせないためです。

また、短期間で辞めてしまうより長期投資した方が、時間分散によるリスクの軽減効果や複利効果の恩恵を受けやすくなります。リーマンショックやコロナショック等の経済危機が訪れると、相場が下落して保有する商品が元本割れしやすくなります。
しかし、経済危機による下落は一時的なものであり、やがては相場が回復する可能性が高いため、一時的な感情に流されて商品を売却するのはおすすめできません。

家計に余裕がない時は、積立額を減らしたり積立をストップしたりする方法もあります。つみたてNISAは、運用成績が好調であり売却益が生じるタイミングで解約をする方がよいでしょう。

つみたてNISAを解約した後、再開する場合

つみたてNISAは、解約したあとに再開することも可能です。ただし、口座を廃止した場合は、再開設の申し込み手続きが必要となります。

つみたてNISAを再開する方法

保有する商品を売却したのみであり、つみたてNISA口座を廃止していないのであれば、積み立てる商品を選び、積立金額と購入開始日を設定することで積立を再開できます。

つみたてNISAの口座を廃止した場合は「NISA口座開設申込書(非課税口座開設届出書)」に必要事項を記入し以下の書類を同封して金融機関に提出し、再開設の手続きをします。

・課税口座廃止通知書
・本人確認書類(運転免許証・パスポート等)
・マイナンバー(個人番号)確認書類のコピー(口座の廃止前にマイナンバー未登録の場合)

つみたてNISAの口座をもっていた金融機関と別の金融機関で口座を再設定することも可能です。

ただし、つみたてNISAの口座を再開設するためには、金融機関と税務署の審査を再度受けなければなりません。また、口座を廃止する前に1度でもつみたてNISAの取引をしていた場合、 同年内の再設定はできず最短で翌年からとなります。

2024年からは新しいNISAとなる

つみたてNISAと一般NISAで商品の新規買い付けができるのは、2023年末までです。令和5年度税制改正の大綱によって、2024年1月から新しいNISAが開始されるためです。
新しいNISAでは、つみたてNISAの同様の役割である「つみたて投資枠」と、一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」が新設されます。

2024年からは新しいNISAとなる

※①整理・管理銘柄、②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外

例えば、2023年につみたてNISAを解約しており、2024年から積立を再開する場合は、新しいNISAの口座で行うことになります。

新しいNISAのつみたて投資枠では、つみたてNISAの3倍の金額である120万円を1年間で積み立てることができます。また、非課税保有期間が無期限に延長されたため、時間や資産の分散によるリスクの軽減効果や複利効果の恩恵も受けやすくなりました。

新しいNISAの制度内容については、以下の記事をご確認ください。

まとめ

まとめ

つみたてNISAは、保有する資産の売却や口座の廃止をいつでもできます。資産の売却手続きや口座の廃止手続きはさほど難しくありません。

しかし、つみたてNISAを途中で解約すると、投資する時間や資産の分散によってリスクを抑える効果や、複利効果による恩恵が受けにくくなります。

そのため、安易につみたてNISAを解約するのではなく、積立額の減額や商品の変更、積立の停止等の方法で対処できないかを考えましょう。

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