2024年から大変更!ジュニアNISAの廃止や新NISA制度をFPが解説

ジュニアNISAは2023年末で廃止となり、廃止に当たって2024年からの変更点等があります。ジュニアNISAが廃止される理由や今から活用するメリット、注意点を解説します。2024年からの新NISA制度と併せて、ジュニアNISAの非課税枠の賢い活用方法も参考にしてみてください。

2024年から大変更!ジュニアNISAの廃止や新NISA制度をFPが解説

ジュニアNISAとは?

ジュニアNISAとは?

ジュニアNISAとは、3種類あるNISA制度(少額投資非課税制度)のうちの1つです。通常、株式投資や投資信託等の売却益や配当に対してかかる約20%の税金が、NISA制度を利用すると一定の範囲で非課税になります。
未成年を対象としているため、管理方法や目的、非課税投資枠等に特徴があります。

未成年者対象の少額投資非課税制度

ジュニアNISAは、未成年者(以前は1月1日時点で0~19歳。2023年1月1日からは成人年齢の引き下げに伴い0~17歳)を対象とした少額投資非課税制度です。購入方法として、株式売買や投資信託の積立投資(累積投資契約に基づく買付け)があります。ジュニアNISAの資産の運用管理は、口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等)が代理で行います。

ジュニアNISAは、銀行をはじめ金融機関で開設する預金口座や証券口座と異なり、教育や就職等、子供の将来を見据えた資産形成のための口座として位置づけられているため、払い出しに制限があります。原則は、口座開設者である未成年者本人が、3月31日時点で18歳である年の翌年1月1日以降でないと払い出しできません。

口座開設者が18歳になる前に払い出しする方法もありますが、その場合の条件として、ジュニアNISAの口座は廃止となり、払い出した利益は課税対象になります。売却益や過去に受け取った配当にも課税される点も大きな損失となる可能性があります。

年間80万円分まで投資できる

ジュニアNISAの非課税投資枠は、一人あたり年間80万円までです。非課税期間中、毎年上限の80万円分の投資をした場合、最大400万円分の非課税枠を利用できます。その年の非課税投資枠が余った場合は、翌年に繰り越せません。

例えば、非課税投資枠を40万円分利用して、未使用枠として40万円分が余っていたとしても、翌年利用できる枠は、その年の上限である80万円までです。

5年間は非課税で運用できる

ジュニアNISAの非課税期間は、最長5年までと決まっています。非課税期間中は、元本に対する配当や売買益が非課税です。上場株式の配当金、ETFやREITの分配金を非課税にするには、証券会社の取引口座内でお金を受け取る「株式数比例配分方式」を選択する必要があります。

5年の非課税期間が終了したあとの資産の扱いは二通りあります。1つは課税口座(一般口座)に移すことです。もう一方は、さらに5年間の非課税枠を使ったロールオーバーをすることです。

ロールオーバー(移管)とは、翌年の非課税投資枠に資産を移すことです。資産の時価が年間の上限である80万円を超えていても移せます。

ジュニアNISAが2023年末で廃止される理由

ジュニアNISAが2023年末で廃止される理由

ジュニアNISAは2023年末で廃止となります。制度廃止される理由として、NISA制度の抜本的な拡充の実施や利用者の少なさがあります。
2022年に政府が決定した「資産所得倍増プラン」の柱の1つに「NISAの抜本的拡充・恒久化」があり、そのプランとして「成長と資産所得の好循環」を目指すことや具体的な目標としてNISAの総口座数と買い付け額を5年間で倍増させることを掲げました。NISA制度の拡充・恒久化は、目標達成のために実行される政策の7つの柱のうちの1つです。

2024年1月から、「今までよりも分かりやすく、使い勝手がよい制度」に衣替えすることが「令和5年度税制改正の大綱」で明らかになっており、ジュニアNISAもその変更点に含まれています。
金融庁が公開している「令和2年度税制改正について」の資料にも、ジュニアNISA終了の理由として、利用実績が乏しい旨が記載されています。

廃止にあたってジュニアNISAの変更点

廃止にあたってジュニアNISAの変更点

2024年以降は、払い出し制限やロールオーバー等の扱いが変わります。現行のジュニアNISAと比較した時の主な違いを以下で紹介します。

新規投資できるのは2023年末まで

ジュニアNISAで非課税枠を使った投資が可能なのは2023年末までです。2024年を境にNISA制度が新しくなるため、口座の新規開設や新規の投資ができません。

18歳未満でも引き出すことができる

ジュニアNISAの払い出しの制限は、廃止される2024年以後なくなります。口座開設者が18歳かどうかに関係なく、資産の全額を非課税のまま払い出し可能です。

非課税期間が成人まで延長された

ジュニアNISAの制度の廃止後も、口座開設者が18歳未満の場合があります。その場合は、金融商品を継続管理勘定に移して18歳まで非課税で保有可能です。そのため、駆け込みで今年中(2023年中)に新規口座開設をしても遅くはありません。

継続管理勘定に移して18歳まで非課税で保有可能な金額に上限はなく、ジュニアNISA内で運用され80万円以上となっていても全額を移せます。新規の買い付けはできず、売却のみが可能です。

制度の廃止前に18歳を迎えた場合は、今まで通り自動でNISA口座が開設され、資産を移すことになります。しかし、2024年1月からは、18歳になってもNISA口座へは移せず、課税口座に払い出されるため気をつけましょう。

自動的にロールオーバーされる

2024年以後は、口座開設者が未成年の場合に限り18歳になるまでの間、資産が継続管理勘定へ自動的にロールオーバーされます。

これまではロールオーバーする際に手続きが必要でしたが、2024年からは必要ありません。

廃止が決まっていてもジュニアNISAをするメリット

廃止が決まっていてもジュニアNISAをするメリット

ジュニアNISAと2024年スタートの新NISAは切り離して運用されるため、今からジュニアNISAを始めたとしても非課税枠等の面でメリットがあります。

家族で活用できる非課税枠が増える

ジュニアNISAで保有している資産は、現行の制度が終了したあとも子供が成人するまで非課税のまま保有できます。そのため、制度の終了前に口座で投資しておくことで、家族で使える非課税枠を増やすことが可能です。

NISA口座は一人あたり1つまでしか開設できず、一人が利用できる非課税枠も限られています。例えば、両親と子供の3人家族の場合、両親がそれぞれ一般NISAとつみたてNISAを選択していたら、年間の非課税枠は160万円です。そこに、今からジュニアNISAを使って投資を行うと、80万円分の非課税枠が増えます。合計すると240万円です。

実際にいくらになるかはそれぞれの家族構成によって変動します。子供の多い家庭の場合、多くの非課税枠を確保できるため、廃止前に開設するメリットは大きいでしょう。

2024年以降も非課税投資枠を使って運用できる

ジュニアNISAが終了する前に非課税枠を使っておくことで、新NISA開始後も子供が成人するまで非課税を受けられるメリットがあります。新NISAの口座や非課税枠は前の制度と完全に分けた状態で運用管理されるため、ジュニアNISAで投資した分は、新NISAの非課税投資枠に含まれません。

もし2023年末までに急いで投資するなら、年間の投資枠上限である80万円分まで活用できます。

教育資金を蓄えながら非課税で資産運用できる

ジュニアNISAは、子供の教育資金等の将来必要なお金を貯めることを目的にした制度のため、子供が大学進学前の18歳になるまでは払い出し制限があります。制限があることで確実に資金を蓄えられる点は安心です。

しかし、利便性が低くなる点がデメリットになり、利用があまり増えませんでした。
2024年からはデメリットだった払い出し制限がなくなるため、以前よりも柔軟に資金を活用できるようになります。子供が成人するまでは非課税で運用し続けられるため、貯蓄するよりも効率よく資金を増やすことが可能です。

ジュニアNISAの廃止に伴う4つの注意点

ジュニアNISAの廃止に伴う4つの注意点

利用状況調査によると2022年9月末時点で一般/つみたてNISAの口座数が1144万口座なのに対して、ジュニアNISAは74万7114口座に留まっています。こうした利用実績の乏しさ等が原因となり、2023年末で終了することになりました。ジュニアNISAの廃止に伴う4つの注意点を整理しておきましょう。

<注意点1>新規投資は2023年12月末まで

すでにジュニアNISAの口座がある人も、今から新たに開設する人も、新規投資ができるのは2023年12月末までです。

新規でジュニアNISAを開設したい場合は、交付申請書の提出期限までに手続きを済ませる必要があります。期限は2023年9月末までとされており、証券会社によって締め切りが前後する可能性があります。

<注意点2>18歳未満でも非課税で払い出せるようになるが、全額一括のみ

2024年以降は、払い出し制限がなくなり、18歳未満でも非課税で引き出すことができるようになります。ただし、非課税口座で運用を続けながら一部を引き出すことはできず、あくまでも利用中のジュニアNISA口座を解約し、全額を一括で引き出すことを意味します。

<注意点3>ロールオーバー手続きが不要になる

ジュニアNISAの非課税期間である5年を過ぎた資産は、手続きなしで自動的にロールオーバーされます。以前は手続きが必要でしたが、現行のジュニアNISA制度の終了後は手続きが不要です。時価が80万円以上でも全額が対象になります。

ロールオーバーされた口座では、新規の投資はできませんが売却は可能です。また、未成年のうちは非課税を受けた状態で引き続き運用が可能です。
18歳になった時、特定口座をもっている場合は特別な手続きなく特定口座に移されます。特定口座がない場合は一般の課税口座に移されます。

<注意点4>成人になると非課税保有の資産は課税口座に払い出される

ジュニアNISA制度終了前の仕様では、18歳を迎えるとNISA口座が開設され、つみたてNISAと一般NISAのどちらの口座にするか選択できるようになっています。一般NISAを選択した場合は、その後手続きを踏むことで、株式や投資信託をそのまま移すことも可能です。

2024年以後も未成年の人は、18歳を迎える年の年末まで引き続き口座や継続管理勘定で資産を保有し続けられます。制度終了前と異なる点として、払い出し先は課税口座になる点には注意しましょう。

2024年からのNISAの賢い活用方法

2024年からのNISAの賢い活用方法

新NISAと併せてジュニアNISAを運用することを視野に入れつつ、現行のNISA制度が廃止される2024年に向けて今利用できる非課税枠を活用しておくことが大切です。ここでは、2024年からのNISAの賢い活用方法を解説します。

ジュニアNISAはロールオーバーして継続管理勘定で運用する

ジュニアNISA制度終了後は、子供が成人になるまで口座の資産を継続管理勘定で非課税運用管理できます。払い出しの制限もなくなるため、任意のタイミングで払い出せます。以前と異なり、廃止後は新NISA口座にそのまま移行できない点には注意しましょう。

現在、廃止決定してからジュニアNISAの開設数が急に増加しています。その理由としては、2024年以降から払い出し制限がなくなり、子供の教育資金を好きなタイミングで引き出せること、早くから子供に投資を始めさせる機会になること、非課税枠の有効活用が可能になること等、さまざまな目的で利用しやすくなったためです。

なお、非課税等のメリットを目当てに資産運用を始めるのはよいですが、その時の相場変動で資産が目減りしたり、元本割れしたりするリスクも伴います。自分で対象商品の情報収集したり、銘柄の過去の実績を調査したり、タイミングを見極めることが重要です。

新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠を利用する

2024年からは、制度内容が充実した新NISAの非課税枠を活用した投資がおすすめです。新NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります。どちらも併用可能となり、口座の開設期間だけでなく資産を非課税で保有できる期間も無期限です。

資産を非課税で保有できる限度額も拡充され、両方の投資枠の合計1800万円(成長投資枠は1200万円まで)が上限です。以前の制度と異なり、翌年を待たなくても、資産を売却した時に空いた投資枠をすぐに再利用できます。年間投資枠の上限も増額され、つみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円まで投資可能です。

現行NISA制度の資産は、2024年以後も非課税期間のうちは運用を続けられます。新NISAへのロールオーバーは不可能ですが、現行NISA口座で投資した分は、新NISAの非課税枠外での保有となり、合算されずに別の枠として扱われます。そのため、2023年末で終了予定の現行NISA口座を使っている場合は、慌てて売却せず、そのまま資産を保有しておいた方が、残っている非課税期間を有効活用できます。これからの新NISAと併せて資産運用するのがおすすめです。

まとめ

まとめ

ジュニアNISAが2023年末で完全に終了する前に非課税枠を利用することで、2024年以降も子供が成人するまでは非課税で運用できます。払い出し制限もなくなるため、資金の引き出しタイミングが自由になり、使いやすくなる点も重要なポイントです。新NISAと併用することで非課税枠の有効活用が可能なため、制度が終わる前に早めに活用を検討してみてください。

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