50歳でアーリーリタイアするためのライフプランの立て方や貯蓄額を解説

アーリーリタイアとは、定年を迎えるよりも前に早期退職や引退することを指します。この記事では、50歳でアーリーリタイアするためのライフプランの立て方や必要な貯蓄額について解説します。仕事に縛られることなく自由な時間が増えるため、考えておきたいポイントも参考にして人生100年時代を楽しみましょう。

50歳でアーリーリタイアするためのライフプランの立て方や貯蓄額を解説

アーリーリタイアとは?

アーリーリタイアとは?

アーリーリタイア(早期リタイア)とは、一般的な定年退職年齢よりも早い時期に退職することを意味します。特に40代〜50代で子供が自立したタイミングや、ある一定のキャリアを築いたタイミングがアーリーリタイアを考えるきっかけになるでしょう。
アーリーリタイア後に仕事を全くしない「完全リタイア」や、アルバイトやフリーランスで収入を得る「セミリタイア」などの種類があります。

アーリーリタイアと似た「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉もあります。FIREは、支出を可能な限り抑えて貯蓄率を上げ、早期に資産形成して定年前に経済的自立を達成し、その資産を運用しながら自由に好きなことをするという生き方で、近年注目が集まっています。

これまでの日本企業の終身雇用制度からより自由な働き方や生き方が広がり、アーリーリタイアをして、第二の人生を楽しんでいる人が増えています。
しかし、アーリーリタイアには資金や計画が重要で、メリットだけではなく、デメリットもあります。アーリーリタイアを目指す方は、アーリーリタイアの目的や計画を明確にしておきましょう。

アーリーリタイアに必要な貯蓄額

アーリーリタイアに必要な貯蓄額

アーリーリタイアするとこれまでの収入がなくなるため、貯蓄や年金、運用などによって資金をやりくりする必要があります。ここでは、同じ年齢の夫婦二人世帯が50歳でアーリーリタイアし、ともに90歳で死亡するものと仮定し、日常生活に必要な生活資金や趣味などの娯楽に必要な資金を求めてみました。

日常生活に必要な資金については、総務省が毎年発表している「家計調査報告(※)」が参考になります。この調査によると、二人以上の世帯の消費支出は、1世帯あたり1ヶ月平均約30万円です。

楽しみのために必要な資金を月額5万円とし、日常生活に必要な資金と合計して月額35万円を64歳まで継続的に支出するとします。65歳以降は同調査の65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出約25万円、同様に楽しみのために必要な資金を月額5万円、合計30万円を支出するとします。

アーリーリタイア以降の収入については、65歳以降の夫婦世帯の公的年金の金額である約22万円とします。ここまでを踏まえ、アーリーリタイアした場合に必要な50歳以降に必要な資金の合計は、以下のようになるでしょう。

・50歳から64歳まで
35万円×12ヵ月×15年=6,300万円・・・(1)

・65歳から90歳まで(公的年金による収入が見込める)
(30万円-22万円)×12ヵ月×25年=2,400万円・・・(2)

(1)+(2)=8,700万円

アーリーリタイア時に保有する各種金融資産に退職金を加え、まずはこの金額を目安に準備を進めるとよいでしょう。

ただし、ここで求めた8,700万円は90歳で金融資産がゼロになるシミュレーションとなります。歳を取ると病気になるリスクが上がることはもちろん、場合によっては介護が必要となるケースも想定されます。そのため、8,700万円という数字はあくまでも1つの目安と捉え、もうすこし余裕を持って資金を準備しておく必要があるでしょう。

【参考】家計調査報告〔家計収支編〕2023年平均結果の概要 詳しくはこちら
【参考】「令和4年度の年金額改定についてお知らせします」詳しくはこちら

アーリーリタイアするためのライフプランの立て方

アーリーリタイアするためのライフプランの立て方

最低限の日常生活やゆとりある生活のために必要な資金額や、アーリーリタイアまでに準備できる金融資産など、諸条件は人によって異なります。そのため、アーリーリタイアのための計画を立てる際には「キャッシュフロー表」を作成してみると「見える化」されたプランニングが可能になります。
以下のキャッシュフロー表は、夫:45歳と妻:43歳の夫婦で夫が50歳になってアーリーリタイアを検討するために作成したものです。

※ファイナンシャル・プランナーが実際に作成したキャッシュフロー表を一部改変しております。

■現在の計画におけるキャッシュフロー表

アーリーリタイアするためのライフプランの立て方

(赤字):マイナス

【注目ポイント】
※1:夫のアーリーリタイア
※2:住宅ローン全額繰上げ返済
※3:アーリーリタイア後、年間収支はマイナスに転じる
※4:60歳で金融資産がマイナスに転じる
※5:試算の結果、75歳時点で金融資産が約1,000万円不足することが分かる

現状の計画では、50歳でアーリーリタイアし、受給した退職一時金で住宅ローンを全額繰上げ返済する場合、66歳以降金融資産がなくなってしまい、75歳時点で約1,000万円不足することが試算の結果から分かります。

■夫がセミリタイアをした場合のキャッシュフロー表

アーリーリタイアするためのライフプランの立て方

(赤字):マイナス

【注目ポイント】
※1:夫のセミリタイア
※2:住宅ローン全額繰上げ返済
※3:夫のセミリタイア後、年間収支はマイナスに転じる
※4:セミリタイア後、夫は年収100万円の仕事に就業
※5:試算の結果、75歳時点で金融資産が残っていることが分かる


そこで、完全にリタイアするのではなく、就業時間を減らして非常勤で勤務したり、アルバイトしたりする「セミリタイア」をするという方法があります。50歳から65歳まで、年収100万円程度の仕事に15年間就業することにより、1,500万円の改善が期待でき、先程の試算で75歳時点で不足していた金融資産を賄うことができる想定となります。

また、これらの例では金融資産について運用益を見込んではいません。早期退職後のプランに加えて、資産の一部を不動産投資や株式投資、投資信託などで運用することによって効率的に金融資産を増やすことができるでしょう。投資方法は、自分のリスク許容度に合わせて利回りや年数など事前に想定を算出したうえで検討しましょう。

キャッシュフロー表の作成によって現状の問題点がよくみえるようになるほか、広い視野でライフプランの実現にむけた具体的な対策が立てやすくなります。

50歳でアーリーリタイアするメリット

50歳でアーリーリタイアするメリット

50歳でアーリーリタイアをすることで、これまで多くの時間を費やしていた仕事から解放され、自分の時間を確保することができます。ここではアーリーリタイアによって得られるメリットを3つ、紹介します。

自由な時間が増える

アーリーリタイアすれば、仕事に縛られることなく、自分の好きなことに時間を使えるようになります。趣味や旅行、ボランティア活動など、これまでなかなかできなかったことに打ち込める機会が広がるでしょう。これまで多くの時間を仕事に費やして働き詰めだった方は、人生をより豊かに過ごすことができるようになるでしょう。

健康的な生活が送れる

働き盛りの50代は、生活習慣病やガンなどに罹患するリスクが高まるほか、ストレスから体調を崩しやすい年代でもあります。アーリーリタイアすれば、仕事による労働や責任に追われないため、ストレスから解放される可能性が高いです。運動や休養、趣味などを通じて健康的な生活を送ることができるでしょう。

新たな可能性に挑戦できる

アーリーリタイア後は、これまでとは全く異なる分野で新しいキャリアに挑戦することもできます。
例えば起業したり、学びなおしをしてスキルを身につけたりと、自らの可能性を広げる機会に恵まれます。家族と過ごす時間を充実させられるほか、仕事以外の新たなチャレンジに時間を費やすこともできるでしょう。
最近は、アーリーリタイア後に地方に移住したり、海外暮らしを楽しんだりする人もいます。

アーリーリタイアのデメリット

アーリーリタイアのデメリット

アーリーリタイアによって自由な時間が増える、ストレスから解放されるといったメリットがある一方、いくつかのデメリットがある点に注意しなければなりません。

生活が厳しくなる恐れがある

アーリーリタイアをし、特に公的年金の受給が始まるまでは、それまでに形成した金融資産を取り崩しながらの生活になります。アーリーリタイア時の金融資産の額が少なければ、金融資産が尽きるまでの期間が短くなり、生活が破綻する恐れがあるでしょう。

また、アーリーリタイア後の生活が厳しくなり、正規雇用で再就職を検討しても、実際に就職先を見つけるのはそう簡単なことではありません。医療費の高騰なども踏まえると、経済的な不安材料が多く、収入が途絶えるリスクを十分に検討する必要があります。

老齢厚生年金や企業年金の額が減少する

50歳を過ぎた人のねんきん定期便に掲載されている年金受給額の数字は、公的年金(国民年金と厚生年金)に60歳まで継続加入したと仮定して、65歳からの受給額の見込みです。アーリーリタイアによって厚生年金の被保険者資格を喪失すると、実際に受け取る老齢厚生年金の金額は減少します。
また、受取金額が少なくなるのは老齢厚生年金だけではありません。定年より早く退職することで、老後の生活設計の基盤となる退職一時金や企業年金の金額も減少します。

信用力が低下する

会社員として雇用されていることや安定した収入があることは、思っている以上に社会的な信用があり、アーリーリタイアによって信用力が低下する点はデメリットの1つです。
定期的な収入がなければ信用力が低下し、老後に備えた住まいの建て替え・買い換えに必要な住宅ローンが組めなくなる可能性があります。新たにクレジットカードが作れなくなることにも注意が必要でしょう。

50歳でアーリーリタイアする際に考えるポイント

50歳でアーリーリタイアをする際は、特に考えるべきポイントがあります。綿密に計画を立てたつもりでも上手く行かなかったり、デメリットを理解していても失敗してしまったりすることもあるかもしれないので、注意点を確認しておきましょう。

アーリーリタイア後の資金は足りるか

アーリーリタイアをしても、月々の支出はこれまでと同様に発生するうえ、よりよい生活を求めるのであれば出費が増える可能性があることも考慮しなければなりません。退職後の生活費を賄えるだけの蓄えがあるかを見極めることはもちろん、別途資産運用などで資金を準備しておくことが大切です。

昨今では男女ともに平均寿命が延びていることもあり、80歳を超えて生きられる可能性も十分にあります。その場合、さらに多額の生活費や医療費、介護サービスの利用料などが家計を圧迫する恐れもあるでしょう。
老後は節約を心がけることを前提にしたとしても、心身ともに健康で充実した生活が送れるだけの資金は用意しておかなければなりません。

アーリーリタイアの目的は明確か

アーリーリタイアの目的は、人によってさまざまです。
例えば、仕事に縛られる生活からの解放を求めてアーリーリタイアをするケースもあれば、趣味や旅行、ボランティアなどに打ち込むことを目指す場合もあるでしょう。
また、事業を起こすなど新たなキャリアに挑戦したいと考えている人もいるかもしれません。

いずれにせよ、アーリーリタイアを成功させるには、目的をしっかりと明確にしておくことが大切です。明確な目的がないと、リタイア後に充実感が得られず、虚無感に襲われてしまう恐れがあります。

アーリーリタイアによって変化する生活

アーリーリタイアによって、生活は大きく変化します。仕事に縛られずに自由な時間が増えるというメリットがある一方、生活スタイルの変化に対応できるかが問われるでしょう。時間の使い方や生活リズムづくり、家族関係の見直しなど、リタイア前とは異なる工夫が求められます。

また、自由時間をどう活用するかを考えることも大切なポイントです。充実した時間を過ごすために新しい趣味を見つけたり、ボランティア活動に参加したり、スキルアップに励んだりと、さまざまな選択肢の中から自分に合ったものを探してみてください。

アーリーリタイアによって変化する人間関係

仕事を離れることで、職場での人間関係が失われてしまうというデメリットがあります。長年に渡って築いてきた対人関係が一変するため、リタイア後にそれを補う新たな人間関係を一から構築していくことが欠かせません。趣味のサークルに加入したり、地域のコミュニティ活動に参加したりすることで、新しい出会いや交流の輪が生まれるでしょう。

また、外部の人間関係だけでなく、リタイア後は家族とより濃密な時間を過ごすことができます。アーリーリタイアをした後は、これまで以上に人との繋がりを大切にし、周囲から孤立しないようにすることが大切です。

まとめ

まとめ

人生100年時代だからこそ、50歳というタイミングで人生の後半を長く楽しむことができるアーリーリタイアという選択肢があるのかもしれません。
しかし、一般的にはアーリーリタイアは急に思い立ってできるものではなく、計画性が重要です。
メリットやデメリットを把握して生活設計を立てることはもちろん、タイミングと目的を明確にしましょう。また、アーリーリタイア後の生活や人間関係が今とは大きく異なることについても理解したうえで、今後のご自身の人生を見つめてみることをおすすめします。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

編集部おすすめ記事

この記事もおすすめ