高齢者のリフォームのポイントとは?安心で快適な老後生活に備えよう!

老後に住み慣れた場所で安全に暮らすならば、自宅を高齢者の生活に合った仕様にリフォームを施しておくと安心です。本記事では、老後に向けたリフォームの必要性や工事内容、優先順位、費用、助成金制度等、事前に押さえておきたいポイントについて解説します。

高齢者のリフォームのポイントとは?安心で快適な老後生活に備えよう!

老後のリフォームの必要性

老後のリフォームの必要性

老後に安全かつ快適な暮らしを送るには、家のリフォームが重要です。老後に備えたリフォームの必要性として、主に以下の理由が挙げられます。

体力や体の機能の低下

高齢者向けのリフォームの主な目的は、「段差によるつまずき等から起こりうる事故の防止」「高齢者が自分の力で行動できる生活の形成」「介助者の介護負担の軽減」の3点です。つまり、高齢になって体力や運動機能が低下していく中、日常生活を安全に送るために、老後のリフォームが必要であると考えられます。

例えば、東京消防庁によると、高齢者の事故原因の8割以上を占める「転倒」のうち5割以上が「住宅等居住場所」で発生しています。現時点において、何不自由なく暮らせていても、高齢になって運動機能が落ちていく中で、今の家が安全に暮らしやすい環境であるかどうかはわかりません。

古い家は、バリアフリーの観点が不足しているため、段差が多くてつまずきやすかったり、廊下やトイレの幅等が狭く車椅子で通りづらかったり、不便が生じるおそれもあるでしょう。
高齢になってこれまでのような健康状態で暮らすことが難しくなったとしても、生活しやすい環境に整えるために「バリアフリーリフォーム」を施しておくと安心です。

【参照】東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」詳しくはこちら

自宅の老朽化

自宅の老朽化対策としても、老後のリフォームは欠かせません。一般的な木造住宅の法定耐用年数は22年です。新築で購入した家であっても、定年退職時にはこの耐用年数を大きく超えていることは珍しくないでしょう。老朽化した家は、単に美観や快適性を損ねるだけではなく、実際に生活自体を困難にしたり、住む人の安全を脅かしたりしてしまうおそれがあります。

例えば、外壁や屋根の塗装や補修工事をずっと施していない場合、雨漏りが発生する可能性が考えられます。また、古い耐震基準で設計された家に住んでいたり、シロアリ等の害虫被害に遭って、家の基礎に不具合が見つかったりする場合も問題です。地震等の災害発生時に、予想以上の被害を被ることもあるでしょう。

体力のある若い世代ならともかく、高齢者がこのような問題のある家に住み続けることは不安でしょう。住み慣れた家で安心して長く暮らすためにも、家のリフォームは必要です。

老後の生活に合わせた間取りに

老後の生活に合わせた間取りに、リフォームを施す必要性もあります。

例えば、50代前後になると子供が就職や結婚等により、家を出ていく家庭が多いでしょう。その場合、これまで子供が使っていた部屋は空き部屋になります。もちろん、子供の帰省用にその部屋を取っておくことも、1つの選択肢ですが、実際に長期間過ごしている自分たち用に活用することも素敵な考えです。

子供部屋がほかの部屋と隣接している場合、その壁を撤去すれば、広い部屋を作れます。あるいは定年退職後に、自分の趣味用の部屋等に改造することもよいかもしれません。これまで3〜4人で暮らしていた家を、二人暮らし用の家へとリフォームを施す作業は、夫婦二人で老後を迎えるための準備として、楽しいものです。

あるいは逆に、家庭のある子供が同居を誘ってくる可能性もあります。その場合には、同じ家で暮らしつつも、お互いのプライバシーを守れる、2世帯住宅へのリフォームがおすすめです。

いずれにしても、高齢化によって生活スタイルが変わっていく中で、住む場所を最適化するために、家のリフォームは重要でしょう。

より快適な空間に

家の空間をより快適にするためにも、リフォームは役に立ちます。高齢になると暑さや寒さに弱くなり、ただの風邪が肺炎にまで発展するリスクが高くなってくることから、少しでも快適になる空間が求められます。

例えば、二重窓ガラスにして、外気の暑さや寒さを遮断したり、効率的な空調システムに切り替えることで、部屋間の寒暖差を小さくしたりすること等が可能です。家の中で過ごす時間が増えることを考慮して、採光の見直しもおすすめです。

さらに、経済的な観点や環境保護の観点、また火事等のリスクを防ぐためにも、オール電化を採用することもおすすめです。定年退職後に増えるであろう「おうち時間」を快適にするために、早いうちから始めるリフォームは、一考に値します。

老後のリフォームの種類

老後のリフォームの種類

老後の生活にふさわしいリフォームの種類はさまざまです。以下に挙げる事例を参考に、自宅に適したリフォームを思い描いてみましょう。

バリアフリー化

バリアフリー化は、運動機能が低下したり体が不自由になった場合でも、安全な生活を送れるリフォームを指します。例えば、以下がバリアフリー化の具体例です。

・玄関前の階段をスロープに替える
・家の中の段差をなくす
・階段や廊下等に手すりを付ける
・部屋の出入口やトイレ等を車椅子が通れる広さに拡張する

手すりの設置や段差の解消等は、数万~数十万円で済みますが、トイレの拡張等間取りの変更を伴う工事は、100万円を超えるものもあります。

耐震リフォーム

耐震リフォームはその名の通り、住宅の耐震性能を上げる工事です。地震の怖いところは、家が倒壊してその下敷きになるリスクがあることです。そうした命の危険を未然に防ぐための対策として、耐震リフォームが施されます。

耐震リフォームの相場は約150万円ですが、家の状態や築年数によって金額は大きく変わります。地震大国の日本で暮らしている以上、大地震はいつか必ず来るものと考えて、対策しておくことがおすすめです。

雨漏り対策リフォーム

雨漏り対策リフォームは、屋根や外壁を補修して、雨漏りを防ぎます。雨漏りは、実害を被った経験がないと軽視されがちですが、雨水は家の建材をみるみるうちに腐食させ、次第に家全体の構造に悪影響を与えてしまいます。
雨漏りの対策に必要な屋根や外壁の塗装・補修費用は、約10~50万円かかります。塗料の種類や塗装の範囲等によって金額が変わり、屋根材の交換等の大掛かりな補修が必要であれば、約100~200万円かかる可能性もあるでしょう。家の外側の工事は足場を組む費用が生じるので、屋根や外壁を同時に済ませた方が、費用負担が小さく済みます。

間取りの変更

間取りの変更は、生活スタイルに合わせて、暮らしやすい家を目指すリフォームです。例えば、キッチンと居間をつなげて開放感のあるリビングやダイニングにしたり、2つの部屋をつなげて広い寝室にしたりできます。家事や生活の動線を改善して、家の中を効率的に動けるようにするためにも有効です。

家の構造にも影響を与える大きな工事になりやすいため、費用相場も高めです。間仕切りの設置やドアの新設等の軽い工事なら、約10~30万円で済ませられますが、部屋を大胆につなげたり、水回りの配置を変えたりする大きな工事になると、500万円以上かかることも考えられます。

2世帯住宅化

2世帯住宅化は、1階と2階それぞれにキッチンやお風呂、トイレを設置する等して、同じ家の中で2世帯が無理なく暮らせる環境を整えます。「親の介護に備えたい」「親に育児を手伝ってもらいたい」等のニーズに適しています。

2世帯住宅リフォームの費用相場は、約500~1,200万円が一般的です。どこからどこまでを各世帯専用のものにするか、共有のものにするかによって、工事内容や金額は変わります。大きな費用負担になるので、実施するか否かは、家族間でよく話し合うべきです。

リノベーション工事

リノベーション工事は、今ある住宅に新しい機能や価値を与える工事です。設計士やデザイナー等に依頼して、自分の望み通りに柔軟に変更できるため、自分好みの家を作り変えたい場合におこないます。費用相場は、工事範囲等によってさまざまで、100万円以下で済む場合もあれば、1,000万円以上かかる場合もあります。

断熱リフォーム

断熱リフォームは、家の断熱性能を高めて室温の変化を緩やかにします。高齢者になると、夏場に熱中症で亡くなる人もしばしばいるため、快適さを求めるだけではなく、健康を守るためにも重要です。費用相場は約20~100万円で、断熱性が高い住宅はエアコンを使う頻度等も減らせるので、省エネ効果も期待できます。

オール電化リフォーム

オール電化リフォームは、これまでガスをエネルギーとしていたコンロや暖房等を電気で動かすため、火災のリスク軽減や光熱費の節約等につながります。リフォーム費用は、簡単な工事なら約50~100万円で済ませられるでしょう。

リフォーム費用を削減できる制度

リフォーム費用を削減できる制度

リフォームには興味があるけれど、老後の生活に備えて資金の支出を抑えたい人は、以下に挙げる方法を活用してみてください。

介護保険制度

介護保険における基準の中で、「要支援1~2」もしくは「要介護1~5」のいずれかの認定を得ていれば、介護保険による住宅改修費の助成制度を利用できます。補助対象となる工事費用の上限は20万円(消費税込み)で、なおかつ支給額は工事費用の7~9割なので、支給額の上限は18万円です。

制度の利用は原則一人につき1回が基本ですが、工事内容は20万円以内であれば複数に分かれていても問題ありません。対象の工事内容は、手すりの設置や段差の解消、移動用の床材や引き戸への変更等、多岐にわたります。

補助金を利用する際には、事前に自治体の担当窓口に、必要書類を提出しなければなりません。また、工事前に支給されるわけではなく、工事費用を支払った後の補助金申請により、初めて支給されます。補助金の詳しい申請方法については、地域のケアマネージャーや近くの自治体窓口に問い合わせてみるとよいです。

長期優良住宅化リフォーム推進事業補助金

長期優良住宅化リフォーム推進事業補助金は、子育てしやすい環境の整備や住宅の省エネ化・長寿命化等を推進するための補助金制度です。バリアフリー化等、老後のリフォームも対象に含まれます。

補助金費用は、長期優良住宅の認定を得る場合で最大250万円、得ない場合で最大100万円という条件において、リフォーム費用の3分の1まで援助を受けられます。

高齢者住宅改修費支援サービス

高齢者住宅改修費支援サービスは、千葉県千葉市が実施しており、介護保険制度の要介護・要支援認定を得ている65歳以上の人が、リフォームをおこなう際に支給される支援制度です。

対象のリフォーム内容は、手すりの設置や段差の解消等のバリアフリー化が該当します。リフォーム費用から介護保険の自己負担割合(上限2~6万円)を控除した金額で、70万円まで援助を受けられます。

重度障害者等住宅改造費の助成

重度障害者等住宅改造費の助成は、重度障害者の日常生活の支援を目的とした、各自治体が住宅のリフォーム費用を助成する制度です。こちらも、基本的にバリアフリー化が対象となります。

支給要件や支給額は各自治体によって変わりますが、身体障害者手帳や療育手帳で一定以上の級数を認定されている人が得られる仕組みです。

リフォーム減税

リフォーム減税は、所得税の税額控除の1つです。10年以上の住宅ローンを組んでリフォームをおこなった場合、年末時点でのローン残高における0.7%の所得税を控除できます。この控除を受けられるのは最大10年間、控除対象の借入限度額は2,000万円までです。

すでに紹介したように、2世帯住宅化や間取りの変更等リフォーム工事のなかには、1,000万円以上の費用がかかるものもあります。そうした高額なリフォーム工事をおこなう際に住宅ローンを組む場合は、この制度を利用した方がよいでしょう。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、自宅を担保に銀行や信用組合、ノンバンク等の金融機関等から資金を借り入れし、相続時に自宅を売却して借入金を返済する、不動産担保ローンの一種です。借入期間中は利息のみ支払うケースと、利息分が借入残高に加算され、存命中は利息や元本の支払いが不要なケースがあり、金融機関や融資商品によって異なります。

借入金をリフォーム費用にあて、担保である自宅に住み続けることができるため、公的年金や預貯金だけではリフォームができない方におすすめです。

リフォームをおこなう前に知っておくべき注意点とは?

リフォームをおこなう前に知っておくべき注意点とは?

リフォームによっては費用がかかり、高齢者を相手に悪質な業者に巡り合う可能性もあります。リフォームに着手する前に、以下の注意点を意識するようにしましょう。

関係者達が納得いくまで十分に話し合いをおこなう

リフォーム業者を慎重に選んでも、100%トラブルを回避できるわけではありません。「無料なので点検させてください」「今ならお試しサービス中です」等の営業トークには要注意です。

予想外の追加工事や手抜き工事の被害に遭わないために、契約はすべて書面で残す、打ち合わせ時にメモを取る、家族と逐一情報を共有する等、工事内容を十分に吟味してから、工事請負契約書を締結しましょう。

信頼できるリフォーム会社へ依頼する

安心できる高齢者向けリフォームの発注には、工事の実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。国土交通省が提供する事業者選択サイトを活用すれば、工事の内容や範囲、数量や単価が適正かどうか助言を得られます。できれば2社以上で見積もりを取り、リフォーム業者には補助制度を積極的に利用したい旨を伝えると無難です。

まとめ

高齢者向けリフォームは、人生100年時代を安心して過ごすために必要な工事です。突発的な事故を防止し、介助者の負担を軽くすることで、心身ともに健康な生活を送りやすくなります。
手持ちの資金が足りない場合は、リバースモーゲージ型のリフォーム融資や補助金・助成金制度等を、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

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