相続税の申告を自分で行うメリット・デメリットは?手続き方法も解説

相続税の申告手続きを専門家に頼らずに自分だけでできないか、と思われる方もいるでしょう。結論としては、可能ではあるものの難しい部分もあります。ここでは、相続税の申告を自分で行うメリットやデメリット、手続き方法などを説明します。

相続税の申告を自分で行うメリット・デメリットは?手続き方法も解説

相続税の申告が自分でできるのはどのような場合?

相続税の申告が自分でできるのはどのような場合?

相続税の申告を納税者本人が問題なく行うには、いくつかの条件が必要です。まず、手続きに関する知識が求められます。いつまでに、どのような書類を、どこへ提出するのかを理解していなければなりません。次に、相続税計算の前提として、被相続人や相続人が誰で、相続財産にはどのようなものがあり、評価額はいくらで、財産を相続人同士でどう分けたかを示す必要があります。そのうえで、さまざまな特例の適用の有無を判断し、税額を計算して書類を作り、一定の期間内に申告・納税を済まさなければなりません。そのため、自由に動ける十分な時間が必要です。

相続財産や相続人が少ないシンプルなケースでは、税務署の職員に相談すれば滞りなく手続きを進められることもあるでしょう。しかし、相続財産が高額な場合や財産評価が難しい場合など、申告ミスのリスクが高いケースにおいては、はじめから税理士など相続の専門家に相談するのが確実といえます。

相続税の申告を自分で行うメリットは?

相続税の申告を自分で行うメリットは?

相続税の申告を自分で行うと、手間も時間もかかります。それにもかかわらず自分で相続税の申告を行うメリットは、出費を抑えられる点にあります。

税理士への依頼報酬の節約

自分で申告を行うことで、税理士に支払う報酬を節約できます。一般に、税理士報酬は遺産総額の0.5~1%といわれており、仮に遺産が1億円であれば報酬だけで50万~100万円がかかります。こうした出費がなくなるのは大きなメリットとも考えられるでしょう。

相続税の申告を自分で行うデメリットは?

相続税の申告を自分で行うデメリットは?

自力での相続税申告にはデメリットもあります。特に意識しておきたいのが、作業時間と手間、相続税を多く支払ってしまう可能性、申告間違いと追徴課税のリスクです。

作業時間と手間の発生

相続税の申告を行った場合、相続税の計算の適切さや相続財産の網羅性、その評価方法、遺産分割の有無についてそれぞれチェックされます。これらを示す資料は申告手続きをする本人がすべて用意しなければなりません。被相続人と相続人の関係を示す戸籍関係資料に加え、土地建物や美術品などの相続財産の価額評価を行い、それを証拠資料としてまとめる必要があります。

さらに、税額軽減に関する特例の適用を望む場合、その適用を受ける旨を記載した申告書の作成や適用を受けるために必要な資料等も用意することになります。このような資料集めは、具体的な手続きを調べながら行うにはかなり大変であり、時間と手間がかかります。

高い相続税を支払ってしまう可能性

相続税は税額の計算において様々な控除や特例など、国が認めた範囲で税額を抑えられる場合があります。自分だけで申告手続きを進めると、こうした制度を見逃して本来よりも高い相続税を支払ってしまう可能性があります。また、相続財産の評価についても、適切に評価を行うことができなければ過大に評価することとなり、それに応じて税額が増えてしまうことがあるでしょう。

申告書に誤りがあるリスク

相続税を申告の誤りにより実際よりも少なく申告した場合には、過少申告となり、修正申告に基づき納付すべき税額と修正申告を行った時期に応じて、次の過少申告加算税が課される場合があります。

・原則:50万円までは10%、50万円を超えた部分は15%
・税務調査通知前の修正申告:加算なし
・税務調査通知後、調査実施前の自己申告:50万円までは5%、50万円を超えた部分は10%

なお、税理士が申告書の作成に関して、計算・整理し、又は相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付していた場合には、税務調査の事前通知の前に税理士に対して意見聴取が行われることになります。仮に、この意見聴取をきっかけに申告の誤りに気付いて修正申告を行った場合には、税務調査通知前の修正申告となり過少申告加算税の支払いは免れることができます。

ところが納税者本人が申告した場合、税理士による書面添付制度を活用することができないため、税務調査の事前通知があった時点から、過少申告加算税がかかることになります。加えて、納税者本人が作成した相続税申告書には作成した税理士の名前の記入欄が空欄になります。この場合は申告書が誤っている可能性が高いと判断され、税務調査が入りやすくなるといわれています。

相続税の申告を自分で行うときの手続きとは?

相続税の申告を自分で行うときの手続きとは?

相続税の申告を自分で行う場合、必要な書類を準備し、申告書を作成したうえで税務署へ提出するという流れを経ます。流れ自体はシンプルですが、それぞれ気をつけるべきポイントがあるため、注意深く確認する必要があります。

必要な書類の準備

まず、相続税の申告書が必要です。これは国税庁のWebサイトか、各地の税務署で手に入れることができます。

次に、相続税申告に必要な関係書類を用意しなければなりません。代表的なものとしては、本人確認書類としてのマイナンバー記載の書類や被相続人と相続人の関係を明らかにするための戸籍謄本、相続財産の分割状況を確認するための遺言書又は遺産分割協議書などがあげられます。遺言書がなく遺産分割協議書を作成した場合には相続人全員の印鑑証明書も必要となります。

さらに、財産関係書類も併せて用意します。これは相続財産がいくらあり、どれだけの評価額で、相続税の納税義務があるのか、納税義務がある場合にはその税額を確認するためのものです。主なものとしては預貯金の金額を確認するための残高証明書や不動産の登記情報の記載された登記簿謄本、死亡保険金の支払通知書などがあります。

これらの書類や資料は役所や金融機関など、それぞれ手に入る場所が異なります。特に役所などは基本的に平日でなければ窓口が開いていないため、計画的に取り揃える必要があるでしょう。

【参考】国税庁「相続税の申告手続」詳しくはこちら

申告書の作成

書類が準備できたら、国税庁のWebサイトもしくは税務署で手に入れた申告書に必要事項と金額を記入し、作成していきます。相続税の申告書は第1表から第15表まであり、それぞれ付表や控えも用意されています。一見するとかなり複雑で記載事項も多いように思えますが、国税庁のパンフレット「相続税の申告のしかた」や市販の書籍などを参考に記載していくことができます。

【参考】国税庁「相続税の申告のしかた」 詳しくはこちら

申告書の提出

作成した申告書および各種関連資料は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。管轄税務署は国税庁のWebサイトにある税務署検索を活用すれば、郵便番号もしくは住所の入力によって確認することができます。
注意すべき点は、相続税の申告書の提出期限が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月ということです。遺産分割協議の作成や相続財産の評価などには一定の日時を要しますので、早めの手続きを心がけることが大事です。

相続税の申告を自分で行うときにかかる費用は?

相続税の申告を自分で行うときにかかる費用は?

自分で申告する場合、税理士への報酬は不要ですが、まったく費用がかからないわけではありません。たとえば戸籍謄本や住民票などは取得に手数料がかかりますし、被相続人の死亡診断書などのコピー代金も必要です。状況によって変わりますが、必要書類の収集のために数千円から数万円は見積もっておくと無難でしょう。

かつては戸籍関係書類について、原本の添付が必要でしたが、現在では戸籍関係書類のコピーの添付でもよいことになりました。原本ではなくコピーの提出で済ませられるものはコピーにすることで、書類の収集費用を抑えることもできます。

まとめ

相続税の申告は自分でもできますが、これまで解説したように手間や時間が多くかかり、申告書の誤りなどのリスクもあります。特に相続についての知識がない場合には、デメリットの方が大きく、費用がかかっても申告手続きは専門家に任せた方が間違いもなくスムーズに進みます。まずは相続の専門家への相談を検討しましょう。

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