相続費用にはいくらかかる?費用を低く抑えるコツは?

相続にかかるお金というと相続税を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実は相続には税金以外にも、さまざまな費用がかかります。いざというときに慌てずに済むよう、費用の目安を知っておきたいものです。そこで、今回は相続にかかる費用の概要と費用を低く抑えるためのコツを紹介します。

相続費用にはいくらかかる?費用を低く抑えるコツは?

相続にかかる費用はケース・バイ・ケース。まずは状況を把握しよう

相続にかかる費用はケース・バイ・ケース。まずは状況を把握しよう

相続にかかる費用は、相続対象となる財産の種類や額、相続人の数などによって異なるため、一概には言えません。相続税とは別にどのぐらいの費用がかかるのかの目安を知るためには、相続する財産や相続人について事実関係を整理し、正確に状況を把握する必要があります。

遺言書の有無を確認する

相続には大きく分けて「法定相続」「遺言による相続」「分割協議による相続」の3つがあります。遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って相続することになり、遺言書がない場合は民法の規定に従って法定相続を行うか、相続人全員で協議して相続財産の配分を決める「分割協議による相続」をすることになります。

相続の種類

相続の種類内容
遺言による相続被相続人が遺言書により相続の内容を決める
法定相続民法で定められた相続人(被相続人の配偶者と血族)が法定分を相続する
分割協議による相続相続人全員で分割協議を行い、協議結果に従って相続をする

相続財産をリストアップする

相続財産をリストアップする

遺言書の有無に関わらず、相続発生後なるべく早い時期に、亡くなった人(被相続人)にどんな財産上の権利・義務があるのか、つまり、どんな財産があるのかをリストアップします。ここでいう財産には、金銭や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産も含まれていることに注意が必要です。


■プラスの財産の例
・現金
・預貯金
・有価証券
・不動産(家や土地など)
・動産(美術品、貴金属、宝石、自動車、船舶など)
・その他(ゴルフ会員権、リゾート会員権など)

■マイナスの財産の例
・未払いのローン
・借金
・未払いの家賃
・未払いの医療費
・未払いの税金 など

マイナスの財産のほうが多い場合は相続を放棄することもできますが、相続放棄をするためには、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなくてはなりません。マイナスの財産が多いことを知って相続放棄をしたいと思っても、3ヶ月が経ってしまうと、放棄できなくなってしまいます。その意味でも、相続財産のリストアップは早めに行うようにしてください。

相続人とその連絡先を確認する

財産のリストアップと同時進行で、相続人の確認を進めましょう。遺言書に相続人が指名されていれば、原則としてその内容に従って手続きを行います。法定相続の場合は、相続人となるのは被相続人の配偶者と血族に限定されています。配偶者は必ず法定相続人になりますが、血族は全員がなれるわけではなく、以下の優先順位が定められており、優先順位の高い人が1人でもいる場合は相続人になることができません。
 

血族の優先順位

順位血族
第1位子および代襲相続人(※)
第2位両親などの直系尊属
第3位兄弟姉妹および代襲相続人(※)

※代襲相続:相続人が死亡していた時にその子や孫が代わりに相続すること

相続にかかる費用の基本

相続に関する事実関係が整理でき次第、相続の手続きを始めることになりますが、この手続きには一定の費用が必要です。ここでは、相続手続きにかかる基本的な費用を5つ紹介します。

1.戸籍謄本や住民票等の収集

まずは、以下2~4の手続きを行うために必要な戸籍謄本や住民票などを収集します。収集にかかる費用は自治体によって異なります。ここでは一例として、渋谷区役所の窓口に出向いて収集した場合の金額を併記しています。

■相続人に関するもの
・相続人全員の現在の戸籍謄本(被相続人と同じ戸籍の人は不要):450円/通
・相続人全員の住民票:300円/通
・相続人全員の印鑑証明:300円/通

■被相続人に関するもの
・出生から死亡までの全ての除籍謄本:750円/通
・被相続人の死亡の記載のある住民票の除票(住民票記載事項証明書):300円/通

なお、戸籍謄本は原則として本籍地である市町村の窓口に出向いて請求します。住所地と本籍地が遠い場合は、移動の交通費がかかることも頭に入れておきましょう。窓口に行けない場合は郵送で請求することもできますが、その場合は別途、郵送料が必要です。郵送の場合、上記の費用を定額小為替証書で支払わねばならない場合が多く、その手数料(100円/1枚)もかかります。

2.残高証明書の収集

口座を管理している金融機関から「残高証明書」を取得し、口座残高を確認します。残高証明書の取得費は銀行によって異なります(ゆうちょ銀行は1通あたり510円、都市銀行は770円~880円)。

また、解約手続きを行う際には、被相続人や相続人の戸籍謄本や印鑑証明書など銀行が指定する書類を提出する必要があり、これらの書類を取り寄せるには前述のとおりの費用がかかります。口座の数が多い場合は、書類の費用だけでかなりの金額になってしまうことを頭にいれておきましょう。

3.不動産登記手続き

3.不動産登記手続き

不動産を相続する場合は、相続不動産の所有権を被相続人から相続人に移転するために、「所有権の移転の登記」を行う必要があります。所有権の移転の登記には、被相続人や相続人の戸籍謄本や印鑑証明などのほかに、以下の書類の提出が求められます。

・相続不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 600円/通
※戸建て住宅等の場合は土地と建物それぞれ1通ずつ必要です
・固定資産評価証明書 400円/通(東京都の場合)
※戸建て住宅等の場合は土地と建物それぞれ1通ずつ必要です

また、不動産登記の申請にあたっては、必ず登録免許税を納付しなければならず、納付しない場合、申請が却下されます。登録免許税の金額は原則として以下の計算式で算出します。

登録免許税=固定資産評価額✕登録免許税率(=0.004)


つまり、固定資産評価額が3,000万円の不動産であれば、登録免許税として12万円を納付する必要があるということです。

4.相続税の申告

相続税の申告を行う際には、税務署の窓口で申告書用紙を受け取り、必要な内容を記入の上、所定の書類を添えて申告します。必要な書類は種類が多い上に、相続する不動産の種類等によって異なるので、以下の国税庁のサイトで確認してください。

【参考】国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」 詳しくはこちら

なお、相続税には基礎控除額が設けられており、正味の遺産額(土地・建物や預金等の財産から借入金や未払金等の債務を引いたもの)が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除額は下記の計算式で算出し、正味の遺産額が基礎控除を超える場合、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いたものが相続税の課税対象となります。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

わかりやすい例として、法定相続人が妻と子供2人(計3人)の場合をみてみましょう、
この場合、相続人が3人なので、基礎控除額は3,000万+600万×3人=4,800万円 となります。この3人が相続した遺産の総額が1億4,800万円とすると、1億4,800万円-4,800万円(基礎控除)=1億円が課税対象の遺産ということになります。

さらに、1億円を法定相続分で分割した場合、3人の相続額は以下の通りです。
妻:5,000万円(相続総額の2分の1)
子供1:2,500万円(同4分の1)
子供2:2,500万円(同4分の1)

このようにして相続額が算出できたら、下記の相続税速算表に照らしあわせて相続税の額を算出します。
妻の相続税額:5,000万円✕20%(税率)-200万円(控除)=800万円
子供1の相続税額:2,500万円✕15%(税率)-50万円(控除)=325万円
子供2の相続税額:2,500万円✕15%(税率)-50万円(控除)=325万円

相続税速算表

課税価格税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

【参考】国税庁「相続税の税率」 詳しくはこちら

相続にかかる費用を安く抑えるには?

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1.自分で手続きを行うのが最安だが手間と時間がかかる

ここまで見てきたとおり、相続には税金だけでなく、手続きにもさまざまな費用がかかります。もちろん自分ですべての手続を自分で行えば費用は抑えられますが、いずれの手続きも煩雑で時間がかかります。特に相続税の申告や相続税の算出は非常に煩雑かつ難解なため、自分で行うには一定の知識が必要な上、膨大な時間と労力を要します。また、役所は基本的に平日昼間しか窓口業務を行っていないため、手続きのために何度も仕事を休まねばならない人も出てくるでしょう。
こういった労力と時間をかけることが難しい場合は、税理士や司法書士、信託銀行といった専門家に代行を依頼することをおすすめします。
また、そもそもとして、相続が発生する前に、以下のような点を踏まえ、専門家とよく確認し、話し合っておくことで、スムーズな相続手続きを行うことができます。

①税制の変化(時代に合った商品の活用)
②民法の改正(居住権などの活用)
③不動産の将来に向けた活用方法の検討
④目的に沿って計画的な贈与の実施
⑤信託商品や保険の活用
⑥想いを伝えるための遺言の活用

相続手続き代行サービスを提供している税理士事務所はインターネットなどで簡単にみつけることができ、費用についてはお得な場合があります。ただし、こういった自動見積もりサービスは、交通費や面談費、各種書類取得費など別途加算されるケースが多いので、ここで提示される見積もりはあくまでも目安でしかありません。ざっくりとした費用感をつかむ場合に、利用すると良いでしょう。

費用面だけで判断するのではなく、相続人の全員が納得してトラブルのない相続を行うために、専門家を上手に活用し、慎重に対応することをおすすめします。

費用よりも時間を重視しなければならない場合も!相続準備は早めが肝心

費用よりも時間を重視しなければならない場合も!相続準備は早めが肝心

もちろん、少しでも費用を抑えるために、相続に関する手続きをすべて自分で行おうという人もいるでしょう。その場合、注意しなくてはならないのは、相続手続きには期限があるということです。

■期限がある手続きの例
・相続放棄:相続があることを知ってから3ヶ月以内
・準確定申告(被相続人に代わって行う確定申告):相続開始から4ヶ月以内
・相続税の申告:相続開始から10ヶ月以内
・遺留分の減殺請求(法定相続人として遺留分を取り戻すための請求):相続があったことを知ってから1年以内

これらの期限を過ぎてしまうと大きな不利益を被る可能性があるので、相続の手続きは常に早めを心がけることが大切です。自分で手続きを行っている途中でも、上記の期限に間に合わないことが予測される場合は、速やかに専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

相続には税金の他に各種手続きに伴う費用がかかります。税金も手続きの費用も、相続する財産の内容や種類、相続人の数によって異なりますが、いざというときに概ねどのくらいかかるのかの目安を知っておくことが大切です。手続きの中でも不動産の登記や相続税の申告は手続きが複雑で難しいので、十分な労力と時間が割けない場合は、税理士や司法書士など専門家に代行を依頼することをおすすめします。代行にかかる費用もケース・バイ・ケースなので、できれば複数の専門家に見積もりを取って比較・検討の上、選定するようにするとよいでしょう。

ご留意事項
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