バリュー平均法とは?メリット・デメリットやドルコスト平均法との違いを解説

バリュー平均法は、あらかじめ定めた目標額になるよう金融商品を購入したり、売却したりする投資手法です。今回は、バリュー平均法のメリットやデメリット、ドルコスト平均法やノーセルバリュー平均法との違い等を解説します。自分にあった投資手法を知り、資産運用にチャレンジしてみましょう。

バリュー平均法とは?メリット・デメリットやドルコスト平均法との違いを解説

バリュー平均法とは

バリュー平均法とは

バリュー平均法は、1980年代にアメリカの学者、マイケル・エデルソン氏が発表した投資手法です。この投資手法では、購入(投資)する金融商品と最終目標額をあらかじめ決め、変動する市場価格に対応しながら、目標額に達するように定期的にその金融商品を購入していきます。バリュー平均法では、変動する市場価格に対応しながら目標額を目指しますが、目標額を超過した場合はその分を売却します。購入だけでなく売却もしながら目標額を達成していくこともあります。

例えば、5年後に120万円貯めるという目標を立てます。月に直すと、60ヶ月で120万円ということなので、毎月2万円ずつ金融商品を購入(投資)して資産を増やすことになります。初回(1ヶ月目)は2万円分購入します。
1ヶ月後(2ヶ月目)、市場価格が上がり当初2万円だった価値が2万5,000円になっていたとします。この場合、2ヶ月目の目標額である4万円(毎月の投資額2万円×2ヶ月目)を達成するために、1万5,000円分購入します。

1ヶ月後(2ヶ月目)、市場価格が下がり当初2万円だった価値が1万円になっていた場合は、3万円購入することになります。
あるいは1ヶ月後(2ヶ月目)、市場価格が急激に上昇して当初2万円だった価値が4万2,000円になっていた場合、2ヶ月目の目標額4万円を2,000円超過しているので、2,000円分を売却して4万円にします。

このように、バリュー平均法は毎月同じ額を投資していくのではなく、市場価格の上昇・下降によって変動する資産の評価額を計算しながら、目標額になるように投資額を変更していきます。

バリュー平均法のメリット

バリュー平均法のメリット

バリュー平均法の主なメリットは、2つあります。
1つ目は、最後まで投資を継続すれば目標額を達成できることです。期間と最終目標額を定めたうえで、月ごとの目標額を設定しているので、定めた期間、月ごとの目標額を達成する投資を続けていけば、目標額を達成できます。

もう1つは、平均取得単価が下がりやすいことです。平均取得単価とは1株を平均いくらで購入したかを表すもので、株の購入に支払った総額(手数料も含む)÷株数で算出できます。バリュー平均法では、投資の対象となる金融商品の市場価格の変動に対応して、投資額も変動します。価格が下がると投資額は多くなる一方、価格が上がると投資額は少なくなります。長期的にみると市場価格は上がる傾向にあるので、投資額が少なくなり、最終的に平均取得単価を下げられる可能性が高くなります。

バリュー平均法のデメリット

メリットもある一方で、バリュー平均法にもデメリットはあります。
まず、自分で投資額を計算して取り引きしなければいけないということです。毎回同じ額を投資するなら自動積立ができますが、バリュー平均法は、金融商品の市場価格の変動に対応して投資額が毎回変わるので、自分で投資額を計算して取り引きしなければなりません。そのため手間と時間がかかるでしょう。

次に、複利の恩恵を受けにくいというデメリットがあります。複利とは利息を投資元本に追加し、投資元本を増やしながら再投資することです。バリュー平均法では、目標額を超えた場合、超過分を売却しなければならないので、投資元本を増やしても結局は売却しなければなりません。

さらに、市場価格の大幅な下落や長期にわたる下落によって投資額が大きくなり過ぎて、続けられなくなる恐れがあることもデメリットといえるでしょう。設定した期間、投資し続けられれば、最終目標額を達成できるのがバリュー平均法です。しかし、市場価格の変動によって投資額が増大してしまい、投資が続けられなければ目標額は達成できません。

シミュレーションしてみよう!

シミュレーションしてみよう!

ここでは、バリュー平均法を用いた投資額のシミュレーションをしてみます。まずは運用期間、最終目標金額を決めます。今回は、5年間で300万円と設定します。
次に、積立回数を決めます。毎月積立ることとして年12回×5年の60回投資します。60回の積立で300万円を貯めるということは、1回の投資で5万円(300万円÷60回)ずつ資産を増やしていくことになります。
そのため毎月の目標金額は5万円、10万円、15万円、20万円というように5万円ずつ増加します。このように設定した毎月の目標額を達成できるように、投資時の保有資産評価額から、毎月の投資額を決めます。

バリュー平均法シミュレーション

1ヶ月目 2ヶ月目
目標金額 50,000円 10,0000円
金融商品の価格 1,000円 500円
保有資産の評価額 0円 25,000円
投資額 50,000円 75,000円
購入口数 50口 150口
売却口数 0口 0口
累計口数 50口 200口

毎月5万円の目標金額だと2ヶ月目は10万円です。たとえば、初月は金融商品の価格が1,000円なので、5万円にするには50口購入します。しかし2ヶ月目に商品価格が半額に下落してしまった場合、購入口数を150口に増やし、投資額を7万5,000円にしないと目標額の10万円に到達しません。このようにバリュー平均法では、金融商品の価格が変動すると、毎月の投資額と購入口数も変わります。

ドルコスト平均法との違い

ドルコスト平均法との違い

ドルコスト平均法は、バリュー平均法とよく比較される投資手法です。金融商品の価格変動に対応して投資額が変わるバリュー平均法に対し、ドルコスト平均法は、金融商品の価格変動に関係なく、あらかじめ決めた投資額を毎回投資し続ける手法です。そのため、金融商品価格が上昇すると購入する口数が減り、価格が下落すると口数が増えます。バリュー平均法もドルコスト平均法もどちらも効果的な投資手法ですが、それぞれの特徴と違いを解説します。

投資額

バリュー平均法とドルコスト平均法の大きな違いは、毎月の投資額が変動するか、しないかです。

バリュー平均法は、保有資産の評価額と目的額の差を投資で補うため、金融商品の市場価格が下がり保有資産の評価額が下がると、投資額が上がります。逆に金融商品の市場価格が上がり保有資産の評価額も上がると、投資額が下がるというように、投資額が変動します。
一方、ドルコスト平均法は、あらかじめ設定した投資額で毎回投資するので、金額は変動せず一定です。そのため「iDeCo」(個人型確定拠出年金)や「つみたてNISA」(少額投資非課税制度)で適用しやすい投資手法とも言われています。

運用効率

バリュー平均法、ドルコスト平均法ともに市場価格が下落した時に株を多く購入するため、運用効率が良くなります。

市場価格が下落すると、保有資産の評価額も下がります。そのため、保有資産の評価額と目標額の差を投資で補うバリュー平均法は、市場価格が下落した際、投資額が一定のドルコスト平均法よりも多くの株を購入することになります。そのため運用効率はドルコスト平均法よりも良くなる傾向にあります。

取り引き内容

バリュー平均法は、投資時に目標額が達成されている場合、超過分を売却する必要があります。そのため金融商品の購入だけでなく、時として「売却」という取り引きが生じます。一方、ドルコスト平均法では金融商品の「購入」という取り引きしか生じません。

管理

バリュー平均法は、投資家本人が、市場価格の変動に対応して、投資の度に投資額を算出しなければならず、手間がかかります。一方、ドルコスト平均法の場合は、毎回決まった額を投資するので自動積立の設定を行えます。

何年後にいくら貯めたいという明確な目標があり、投資に時間をさける場合は、バリュー平均法での運用に向いています。明確な目標はないものの、運用効率の良い方法で手間をかけずに資産を増やしたいという場合は、ドルコスト平均法での運用が適しています。それぞれの特徴を理解したうえで、投資する目的や条件を考慮し、自分に合った適切な投資手法で運用することが大事です。

ノーセルバリュー平均法との違い

ノーセルバリュー平均法は、バリュー平均法をアレンジした投資手法です。バリュー平均法を提唱したマイケル・エデルソン氏の著書「ノー・セル・バリュー平均法」で発表されました。バリュー平均法とノーセルバリュー平均法の投資手法に大きな違いはありませんが、目標額を超過した分の扱いが異なります。

超過分の扱い

バリュー平均法では、保有資産評価額が目標額を超過した際、超過分を売却しますが、ノーセルバリュー平均法は売却せずに保有し続けます。つまり、バリュー平均法での取り引きは「購入」と「売却」ですが、ノーセルバリュー平均法の取り引きは「購入」のみです。売却がないノーセルバリュー平均法は、株を売却する際の取り引き手数料が発生しないので、バリュー平均法と比べて手数料を抑えられます。

そのほかにも、ノーセルバリュー平均法は、金融商品の市場価格が下落しても、保持している超過分で増加した投資額分をカバーできます。そのため、投資の継続が困難になりにくく、バリュー平均法よりも目標額を達成する確率が上がります。ただ、投資を開始したばかりで超過が発生していない時期に市場価格が大幅に下落すると、バリュー平均法と同様に投資の継続が困難になる場合があります。

まとめ

まとめ

バリュー平均法は、購入(投資)する金融商品と最終目標額と投資期間を定め、目標額に達成するように毎月の購入額と売却額を決定します。
毎回、投資額を自分で算出する等管理に手間がかかりますが、設定した期間に投資し続けられれば確実に目標額を達成できるうえ、平均取得単価が下がり運用効率が良くなる確率が高いといった特徴があります。

そのほかの投資手法として、ドルコスト平均法やノーセルバリュー平均法がありますが、メリット・デメリットを踏まえて自分にあった投資手法を選びましょう。

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