【特集セカンドライフ】第13回 楽しみながら学び続けるセカンドライフを〜堀 紘一さん〜

「特集 セカンドライフ」は、社会で活躍するさまざまな人のセカンドライフ(第二の人生)を聞く特集企画。第13回はドリームインキュベータ創業者で、ボストンコンサルティンググループ日本代表などを歴任した堀紘一さんにお話を伺いました。

【特集セカンドライフ】第13回 楽しみながら学び続けるセカンドライフを〜堀 紘一さん〜

目まぐるしい現役時代から、ゆとりあるセカンドライフへ

堀紘一さん「セカンドライフに正解はない」

―2020年に75歳でドリームインキュベータの取締役を退任されました。現在はどのような生活を送っていますか?

堀紘一さん(以下、堀):ドリームインキュベータだけでなく、ボランティア以外の「対価を受け取る仕事」はほぼすべて退任しました。大学卒業以来、読売新聞入社を皮切りに三菱商事勤務、ハーバード大学院留学・MBA取得(日本人初の首席取得)を経てボストンコンサルティンググループの日本代表に着任、そして55歳でドリームインキュベータ創業……と、我ながら目まぐるしい人生を送ってきたので、今のように自由な時間がたっぷりある生活を送るのは社会人になって初めてのことです。

現役時代は常に社用車で移動していましたから、最初のうちは、久し振りに乗る地下鉄や電車の勝手がわからずに四苦八苦したり、スーパーでクレジットカードが使えるようになっているのを知って驚いたりしたりと、新たな発見や気づきの多い、充実した毎日を送っています。

自由時間がたっぷりあるので、ゆっくりYouTubeやNetflixで動画を見たり、友人と食事に行ったりする楽しみも増えました。まさに、セカンドライフを謳歌しているというところでしょうか。

「生涯現役」に未練なし。母の遺言も後押しに

堀紘一さん「「生涯現役」に未練なし。母の遺言も後押しに」

―堀さんのような起業家の場合、「生涯現役」を貫く方も珍しくありません。現役引退に迷いはなかったですか?

:ありませんでしたね。ドリームインキュベータは確かに私の創業した会社ですが、時代の流れとともに、いつの間にか良くも悪くも私が理想としていた会社とは違う会社になっていきました。だったら、すっぱり辞めて、あとは若い人に任せた方が良いだろうと思ったのです。

もちろん、生涯現役で働く人生もありだと思いますし、周囲から「まだまだ働けるのにもったいない」とも言われましたが、私は海外生活が長かったせいか、逆に早くリタイヤしたいという気持ちのほうが強かったですね。日本では退職すると社会から必要とされなくなる……みたいな悲観的なとらえ方をする傾向があるようですが、海外では早期リタイヤしてセカンドライフを楽しむライフプランを選ぶ人が多いんですよ。

結果として、今は心穏やかにハッピーに暮らしていますから、私の場合はリタイヤして正解でした。亡き母が生前、「紘一は頑張り過ぎている。早く引退して自分の人生を大事にしなさい。大切なことがわかるようになるから」と繰り返し言っていたのですが、遺言通りにして良かったと思っています。

セカンドライフに正解はない

堀紘一さん「セカンドライフに正解はない」

―堀さんのように充実したセカンドライフを送るためには、どんな準備をすればよいのでしょうか?

:セカンドライフって、一般的には何十年も一生懸命働いて初めて得られる自分だけの時間ですから、公序良俗に反しない限り、何をやっても本人の自由です。僕の知人でも、現役を引退して好きな昆虫採集に熱中している人もいれば、旅行ばかりしている人もいます。逆に経済的に働き続ける必要はないのに、ずっと働き続けている人もいます。私の友人の作曲家で、彼はもうすぐ80歳になるのというのに飽きもせず作曲を続けていますよ。セカンドライフに「正解」なんてものはないわけですから、人のまねをせず、自分が余生を費やす価値があると信じることをすれば良いのです。

若いうちは貯蓄だけでなく自分磨きにも回すべし

そのためには一定の経済力が必要ですから、現役時代はしっかり働いて収入を得ることが大切です。若いうちは貯蓄ばかりするのではなく、収入の一部を自己投資に回して自分磨きをすると良いでしょう。私自身、50歳までは自分磨きに徹底していました。自分を磨けば仕事の質が上がって収入も増えますし、人脈も広がります。そして中高年以降になったら、本格的に貯蓄や投資をして資産形成をするというのが理想的なのではないでしょうか。

専門家の情報もより良い判断、より良いセカンドライフの備えに

堀紘一さん「専門家の情報もより良い判断、より良いセカンドライフの備えに」

―堀さんご自身は、どのようにしてセカンドライフのマネープランを立てられたのでしょうか?

:恥ずかしながら、私自身は現役時代、忙しくて自分のマネープランどころではなく、自分の資産に関しては無頓着でした。認識が変わったのはドリームインキュベータ創業後、ある銀行の支店長との出会いがきっかけです。当時、私はその銀行に口座すら持っていなかったのですが、彼の熱心な勧めで口座を作ったところ、個人の資産について有益なアドバイスをもらうようになり、数年後には彼の銀行が私のメインバンクになっていました。

お金の相談は金融のプロに

銀行員や証券マンは金融のプロで、当然、私たちよりも新しい情報や専門的な知識を持っています。それらを駆使してマネープランを提案してくれるわけですから、付き合っていて損はありません。信頼できる担当者を見つけて、何でも相談できる関係を築いておくと、それが結果としてセカンドライフへの備えに繋がっていくのではないでしょうか。私は金融以外の分野でも、例えば、医療とか法律など専門的な知識が必要な分野では専門家の助言やサポートを受けるようにしています。もちろん、何事も最終判断は自分自身で下すべきですが、より良い判断をするために情報は多いに越したことはないからです。

若い人から学び、若い人の未来を支えたい

堀紘一さん「若い人から学び、若い人の未来を支えたい」

―まだ始まったばかりのセカンドライフですが、今後、堀さんはどんな目標をもって過ごしたいですか?

:いろいろなことに興味があります。今、一番気になっているのは、実はファッションです。最近はコロナの影響もあるのか、ビジネスのシーンでも楽な服装を選ぶ人が多くなっていますよね。男女問わず、スーツを着ている人が減っているそうですし、おしゃれそのものへの関心が薄れている気もします。でも、私たちは自分で思っている以上に、身に着けているものの影響を受けるんです。明るい色の服を着ていると気持ちが前向きになりますし、きちんとした服装をすれば背筋が伸びて仕事のやる気も出ます。

また、相手に与える印象も服装で変えることができます。だらしない服装の人はだらしない印象ですし、清潔感のある服装の人からは誠実な印象を受けます。海外のビジネスパーソンは、そのあたりをよく心得ていて、TPOに応じて服装を上手く使い分けています。これからは彼らと接してきた経験を活かして、自分自身の装いを楽しむのはもちろん、周囲の人に装いに関するアドバイスをしてあげたいと思っているところです。

数々のトップリーダーたちに導かれた自身が、今後は次の世代に還元する

それと、目標というわけではありませんが、何らかの形で若い人たちの役に立ちたいという気持ちは強いですね。というのも、私自身、読売新聞に入るときには渡邉恒雄さんに、三菱商事に入るときには叔父に、ボストンコンサルティングに入るときには同社の創業者であるブルース・ヘンダーソンに……という具合に、人生の節目節目で年長者から目を掛けられ、導かれながらキャリアアップし、新たな世界へと足を踏み出すことができたからです。彼らとの出会いや助言がなければ、今の私はないといっても過言ではありません。

だからこそ、彼らに受けた恩を、今度は私が若い世代に還元していきたいと願っています。そのためには、まずは若い人たちのことを知ろうと思って、人気YouTuberの配信などを見ているのですが、いやあ、正直言ってよくわかりませんね(笑)。でも、知らない世界のことを学ぶのは、何歳になっても面白いものです。これからも、若い人たちに学びながら見識を深め、求められる役割を果たしていきたいと思っています。

※この記事は2021年11月に行った取材をもとに作成しております。

今回お話を聞いた人

株式会社読売新聞、三菱商事株式会社、株式会社ボストンコンサルティンググループ日本代表、株式会社ドリームインキュベータ創業者
堀 紘一(ほり こういち) さん

堀 紘一(ほり こういち)さんプロフィール

【堀 紘一氏プロフィール】
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction )。株式会社読売新聞、三菱商事株式会社、株式会社ボストンコンサルティンググループ日本代表を経て、株式会社ドリームインキュベータ創業。2020年に同社取締役を退任。「正しい失敗の法則」(PHP研究所)、「一流の人は空気を読まない」(角川書店)、「リーダーシップの本質」(ダイヤモンド社)など著書多数。

出典 

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